アニメを斬る!

アニメ関連の話題をメインに、美少女DJ2名が会話形式でお送りする、仮想ラジオブログ!

アニメを斬る!

ヘッダー画像(第1回へ誘導)
— 最 新 記 事 —
【まほあこ】『魔法少女にあこがれて』最新フィギュア、ほぼ裸になってしまうwwwww【マジアマゼンタ】
【アニメ1クール総評その7】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2024年の夏アニメ】
【キン肉マン】ゆでたまご 嶋田先生、早とちりでSNSにて一般人にブチギレ凸った件を謝罪する【完璧超人始祖編】
【ロシデレ2期決定】「性の対象にするの止めない?」地下鉄の“美少女アニメイラスト”に嫌悪の投稿も、寄せられる反論「どこが性的?普通の絵にしか見えない」【アーリャさん】
【グレンダイザーU】新たな魔神「マジンガーX」爆誕! スペイザーや円盤獣の技術を取り込み究極進化!!
【マケイン】2024夏アニメ「負けヒロインが多すぎる!」温水の家が豪邸すぎると話題にwwwwwwww
【悲報】Fateシリーズに憧れるのを断念したのか、対魔忍のティッシュカバー、下品すぎて一線を超えるwwwww
【ガルクラ/迷子】トゲナシトゲアリとMyGO、対バンライブの開催が決定!! 円盤にチケ申し込み券封入【ガールズバンドクライ×BanG Dream!】
【アニメ1クール総評その6】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2024年の春アニメ】
【朗報】ガンダムSEED FREEDOMのアグネスさん、初期構想では桑島る予定だったが生存に変更されていた【死亡フラグ回避】
【くぎゅうううう】釘宮理恵(44)「えっアニメ『Lv2からチート』のOPを歌うんですか?」→結果
【アニメ1クール総評その5】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2024年の冬アニメ】
【悲報】『ぼざろ』の虹夏・山田・喜多「ぼっちちゃんには工場か品出しのバイトがお似合いだよw」【ぼっち・ざ・ろっく!】
【まほあこ】アニメ『魔法少女にあこがれて』、円盤でB地区を特典に付ける【公式乳首設定を解禁】
【卒業のフリーレン】コスプレなフリーレンさん、高校卒業を果たす【祝・アウラ前日譚が書籍化へ】
【立て看板シリーズ】二次創作『多浪のフリーレン』さん、京大2次試験で浪人生を煽りまくる【葬送のフリーレン】
【悲報】グリットマンの作監が謝罪するも、太ももがデブ過ぎな宝多六花さん、そのままフィギュア化へ【GRIDMAN UNIVERSE】
【悲報】『葬送のフリーレン』の「重い女」フェルンさん、原作で痩せた悲しい姿になる【変わり果てた姿で見つかる】
【葬送のフリーレン】フェルンさん、アクリルスタンドでビキニになる為に、強制ダイエットさせられてしまう【デブではない】
【ネタバレ注意】新型フリーダム(ストフリ)の名称予想企画の結果発表!【劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
【悲報】イザークさん、極楽湯コラボメニューにて『種まきミルク』を提供してしまう【劇場版ガンダムSEED FREEDOM】
【リゼロ】レムさんのフィギュア、完全にネタが尽きた模様wwww【Re:ゼロから始める異世界生活】
【勇気爆発バーンブレイバーン】ブレイバーンの正体(中身)や真主人公(ルイス)について考察してみた
【悲報】SPY×FAMILYのヨルさん、スト6とのコラボでブサイク過ぎて炎上wwwwwwww
【悲報】セイバー(アルトリア)さん、変わり果てた姿で見つかる【Fate/FGO】
【邪神ちゃん公式】「違法アップロードを合法化」というパワーワードで違法アップローダーとの最終決戦へ【二次創作は許諾申請でOKに】
【アニメ1クール総評その4】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2023年の秋アニメ】
【葬送のフリーレン】有識者さん「日本オタク史に残る偉業、『エルフといえば? フリーレン』になったのだ」
【葬送のフリーレン】原作の名シーンを麻雀で再現した二次創作『雀荘のフリーレン』が話題に
【超絶悲報】ラクス・クラインさん(20)のドレス姿、流石にキツすぎる……【劇場版ガンダムSEED FREEDOM】
【悲報】ストフリ後継機ではない新型フリーダムが公開されてしまい名称予想企画どうしよう【劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
【リコリス・リコイル2期】2025年Season2、魔法少女モノに路線変更か
【ガンダム 水星の魔女】シュバルゼッテさん、デザイン初期(発注時)はグエル用の機体だった事が判明【悲報】
【悲報】スパイファミリー(SPY×FAMILY)さん、TVアニメSeason2のキービジュアルで、主人公ロイドがモブと化すwwwwww
【アニメ1クール総評その3】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2023年の夏アニメ】
【悲報】オンラインくじ『スパイ教室』(秋の祝祭)にて不人気キャラがグッズからリストラされるwwww上位の3人はグッズ優遇!
【オリジナルアニメ限定】2000年以降のクソアニメで打線を組んでみた【球詠・新越谷高校風】
【悲報】メイリン・ホークさん(18)、たった2年で大幅劣化し、おばさん化してしまう【劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
【公式よりお気持ち表明】スレッタとミオリネの結婚が「なかった」風にボカされてしまう【機動戦士ガンダム 水星の魔女】
【告知】新型フリーダム(3代目)の名称を予想する企画について【劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
【悲報】ラクス・クラインさんに美容整形の疑惑が浮上してしまう【劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
【アニメ1クール総評その2】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2023年の春アニメ】
【アニメ1クール総評その1】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2023年の冬アニメ】
【2022年の秋アニメ】視聴完走した作品の感想を述べてみた【機動戦士ガンダム 水星の魔女、他12本】
【2022年の夏アニメ】視聴完走した作品の感想を述べてみた【リコリス・リコイル、他4本】
【2022年の春アニメ】視聴完走した作品の感想を述べてみた【パリピ孔明、他9本】
【2022年の冬アニメ】視聴完走した作品の感想を述べてみた【ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜、他5本】
【2021年の秋アニメ】視聴完走した作品の感想を述べてみた【マブラヴ オルタネイティヴ、他4本】
【フィギュア】不滅のボーカロイド『初音ミク』の商品ラインナップを紹介【新作 / おすすめ】
【アニメ『MAJOR 2nd』中学生編】Wヒロインとして着替えと活躍が期待される道塁を特集する【メジャーセカンド】
【PS4/Nintendo Switch】キャプテン翼 RISE OF NEW CHAMPIONSがヤバすぎと話題沸騰【ジャンル:サッカーアクション】
【フィギュア】止まらないホロライブ――全リリースを紹介【白上フブキが初】
【アニメ版ワンパンマン】ヒーロー紹介『戦慄のタツマキ』がロリセクシーな件【One Punch-Man】
【メニュー】『ダンベル何キロ持てる?』筋トレ講座を鍛える箇所別にまとめてみた【器具】
【再放送版ハチナイ】アニメ『八月のシンデレラナイン Re:fine』、もう作画崩壊とはいわせない【試合プレー場面まとめ】
【GIF動画で検証】名作女子ベースボールアニメ『大正野球娘。』の作画を振り返る【大正義野球娘】
【フィギュア】毛利蘭ねえちゃんの角が『ねんどろいど』でヤバい件【名探偵コナン】
【ぼっち料理】ハック(Hac) ちょこっと家電 贅沢鍋&グリルおすすめしてみる【Φ12cm HAC2254】
【アニメ版ワンパンマン】ヒーロー紹介『地獄のフブキ』が可愛い件【One Punch-Man】
【アニメ版ワンパンマン】ヒーロー紹介『サイタマ(ハゲマント)』の戦績【One Punch-Man】
【いもいも級の衝撃】きららアニメ『球詠』第4話の先行海外(北米)配信版が作画崩壊【dアニメ版と比べてみた】
【萌えすら捨てて】作画崩壊風きららアニメ『球詠』のプレー場面を集めてみた【野球を追求】
【アニメ『MAJOR 2nd』】沢 弥生様のご活躍を追いかけてみる【メジャーセカンド】
【上条当麻】旧約(第1部)までの男女平等パンチを振り返ってみる【その幻想をぶち殺す】
【ハッカドール】伝説のお仕事アニメ、KUROBAKOを振り返ってみる【本家SHIROBAKOもよろすこ】
【海外での認識】織田信長のキャラデザを振り返る【日本人のイメージ】
【とあるシリーズ】能力者LEVEL5と各キャラの勢力分布を復習してみよう【禁書目録/超電磁砲】
【範馬刃牙/バキ】ごきげんな朝食(あさめし)【完全再現を目指してみた】
【HG/MG/RG】フリーダムガンダム&ストフリが超かっこいい件【登場シーン】
【松智洋先生なんと2作目】はてな☆イリュージョン、第4話でほぼ全編が作画崩壊【いもいもの悪夢再来か】
【登録方法】アニメをネット視聴する動画配信サービスは「dアニメストア」がオススメ【TVでもOK】
【HGCE/MG】デスティニーガンダムが超かっこいい件【まるで悪役】
【旧OPと新訳を比較】Zガンダムの変形シーン(機構)の進化を振り返る【ガンプラ系YouTubeも紹介】
【妖怪人間ベム】歴代アニメOPの比較と美少女化したJKなベラさん【令和版BEM】
【響/翼/クリス】戦姫絶唱シンフォギアXV 変身バンク集【マリア/調/切歌】
【第1期~第4期】シンフォギアの歴代ラスボス&フィニッシュシーン GIFバージョン【無印/G/GX/AXZ】
【第1期~第4期】シンフォギアシリーズの変身バンク集 GIFバージョン【無印/G/GX/AXZ】
【ハチナイ】『八月のシンデレラナイン』の野球描画に震えるがいい【作画崩壊な令和野球娘。】
【ジョジョ第5部】チョコラータ戦での無駄無駄ラッシュにおける原作とアニメの比較【黄金の風】
【鉄血ガンダム】伝説の「止まるんじゃねえぞ……」を振り返ってみた【オルガ・イツカの名台詞】
中古品『Panasonic Let's note CF-S10』(ワジュンPC)の購入レビュー
【アニメ版4期】キャプテン翼 必殺シュート集 ~中学生編~【完璧な再現】
【俺達の芋芋】作画崩壊アニメいもいも、感動の大団円【最終回、第10話】
【これが俺達の芋芋】作画崩壊アニメいもいも、第9話でまたも大惨事に【伝説級の特殊ED爆誕】
【各キャラ解説】シンフォギアシリーズの変身バンク集 まとめ【各ギア設定付き】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~切歌編~
シンフォギアシリーズの変身バンク ~マリア編~
【アニメ版4期】キャプテン翼 必殺シュート集 ~小学生編~【完璧な再現】
【緊急特番】俺が好きなのは妹だけど(作画崩壊している)妹じゃない【第2話で最速作画崩壊】
【アニメ2ndオープニング】刃牙のOPにみるアニメ3D技術の進化【グラップラー刃牙/バキ】
【ゲゲゲの鬼太郎】6期鬼太郎より2018年度アニメ界、クソ女・オブ・ザイヤ―が爆誕【第6期新章突入】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~未来&イグナイト編~
【マジンガーZ】リアル系ロケットパンチを放つスーパーロボを語る【超重神グラヴィオン】
【アニメ6期】ゲゲゲの鬼太郎、独断的な『神7』を大発表【西洋妖怪編へ】
【3代目ジョジョ 承太郎】スータープラチナの「オラオラ」、ベスト5【最強スタンド】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~響編~
【スーパーロボット】コン・バトラーVの新旧映像比較【昭和合体ロボ】
【アニメJOJO】ジョジョのOP映像、ベスト5【第5部決定】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~翼編~
【超次元サッカー】キャプテン翼の映像比較【再びアニメ化】
【アニメ】ゲゲゲの鬼太郎、6期で萌えに迎合する【猫&犬】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~クリス編~
【プラレス】ホビーバトル系アニメの歴史、推移を語る【ガンプラバトル】
【ゲーム版と】FateのOPアニメの変移を辿る【FGOも】
【二人組】最高のアニメ番組内ユニットは?【歌手限定】
【放送延期】万策尽きた……、ンゴ【総集編】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~調編~
【独断】Fateシリーズ最高のコミカライズは?【選考】
【サイボーグ009】003(フランソワーズ)のキャラデザ変移【歴代アニメ版】
ヘッダー画像下ライン

魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第3部(第34話)

第四章  光と影の歌声 3 ―対面―

スポンサーリンク

 

 

         3

 午後になった。
 ロイド手製のサンドイッチを皆で食べた後、統護と晄は優季達一行と別れ、『堂桜・ミュージック・コンテスト』と明日の『堂桜・スーパー・ミュージック・フェア』のステージとなる屋外展示会場へと向かった。
 本日の公開オーディションは、午後十五時からのスタート予定である。
 ステージ裏に仮設されている出場者用の控えブースとは別に、榊乃原ユリ専用の休憩用ブースが設置されていた。このMMフェスタの目玉だけあり、十二畳以上のスペースだ。
「ここか……」
 統護はドアの前で呟いた。アポイントは取り付けてある。
 ユリと彼女の専用スタッフも昼食を終えているはずで、ドアをノックすれば晄をユリに引き合わせる事ができる。
 二人を面会させた後は、晄は出場手続きをとり、統護とは別行動となる運びだ。
 統護は晄に意思確認をする。
「それじゃ約束通りに、憧れのゆりにゃんとのご対面だけど、覚悟はいいか?」
 緊張でガチガチになっている晄は、ロボットのように頷いた。
 つられて――統護も緊張を自覚する。
 このドアの向こう側には――オルタナティヴがいる。
 一応誘ったのだが、淡雪は予想通りに帯同を拒否した。彼女曰く「すでにユリには挨拶を済ませている」との事だ。もちろん本音は別であろう。
(さてと……、俺はどうしようかな)
 おそらくオルタナティヴは淡雪達への対応と同じく、統護にも他人行儀に距離を置くだろう。
 統護も同じ態度を返せば、それで終わる。
 場合によっては、二度と統護とオルタナティヴは交わらない。

「――どうしたの? 統護くん」

 不安そうな晄の声で、統護の意識は戻された。
「あ、いや。なんでもない。そっちは?」
「うん。私は大丈夫だから。榊乃原ユリさんに逢えるなんて――夢のよう」
 コンコン、と統護はドアを軽く叩いた。
 ドアが開かれて、隙間からマネージャーと思しき青年が顔を覗かせる。
「堂桜統護様ですね」
「ああ。約束通りに榊乃原ユリさんに面会にきた」
「お待ちしておりました。それでは中にどうぞ」


 招かれた室内は、組み立て式コンテナをベースしているとは思えない程、豪華だった。
 丁度品だけではなく、壁紙も一級品である。
「初めまして、堂桜統護さん」
 ここ数日、あらゆるメディアで姿を見かけている若い女性が、挨拶してきた。
 メディアで報じられた姿と全く同じ外見に、統護は不思議と感動する。
 彼女――榊乃原ユリに、統護も挨拶を返した。
「本日は無理いって申し訳ない。面会に応じてくれてありがとうございます」
「いいえ、とんでもございません」
 ユリは大人の女性であった。
 面会に応じる条件が、ゆりにゃんキャラを演じなくて良い事――であったので、統護は特に驚かない。彼女のファンである晄も、その件は承知している。素のユリとゆりにゃんが別である事を知らないファンなど、ニワカ・モグリもいいところである。
 軽く右手を握り合う。
 そっと視線を巡らせると、マネージャーの青年にもう一名の若い女性がいる。
(……いた)
 高級品で統一されている場にそぐわない、黒いマントを羽織ったセーラー服タイプの学生服に身を包んでいるポニーテールの少女。
 オルタナティヴだ。
 彼女の切れ長な目は、よく見慣れている目。
 鏡合わせの瞳。
 それが自分に向けられている。殴り合った時は、アリーシアのピンチで気が付く余裕がなかった。しかし、こうして視線を合わせると――本当に奇妙だ。
 そして淡雪が思い至らないはずがない。
 統護はユリから離れる。
 後ろに隠れるように立っている晄を促した。
 意を決した晄は、ユリへと歩み寄る。膝が微かに笑っているのはご愛敬だ。
 承知しているユリから声を掛けた。
「初めまして。榊乃原ユリです。応援してくれていて、ありがとう」
「い、いいいい、いいえ! とんでもないですぅ。ここ、こちらこそ無理いってしまい!」
「気にしないで。これで堂桜の御曹司様へ義理立てできれば安いものだもの」
「は、は、はいぃいい」
 ユリの方から握手されて、晄は有頂天である。
「お話は伺っているわ。今日のステージに挑戦するんですって? 私も特別審査員なの。貴女の歌、楽しみにしているわ」
「とと、とんでもない!」
 真っ赤になっている晄が、ユリにデータディスクを差し出した。
「これ! 私の歌です。その……生よりも、きっとこっちの方がいいかと。是非、ユリさんに聴いて貰えたらなって、そう思って、用意しました」
「ふぅん」と、ユリの顔つきが変わった。
 プロの貌だな、と統護は感じる。
 ユリは音楽プレーヤーにディスクをセットして、ヘッドフォンを装着した。
 晄は慌てる。
「え!? いま聴くんですか?  そんなの後で――」
「黙って」
 その一言で晄を黙らせ、ユリは目を瞑ってヘットフォンからの歌に集中する。
 真剣な表情だ。右足のつま先が曲調に合わせて、リズムを刻む。
 最初は怯えていた晄であったが、ユリがのめり込んでいく様子に、自信と期待を深めていた。
 統護にも分かる。晄の歌は――光を纏っているのだ。
(いける。通用しないはずがない。やれるんだ。晄の歌は世界にだって……)
 ふぅ、と息を吐いてユリはヘッドフォンを外した。
 晄はユリに感想を求めた。頬が紅潮している。
「あの……。どうでした?」
 怯えはない。対人恐怖症とは思えない程、しっかりとした口調である。
 歌こそ晄の全て。ならば臆する道理などない――
 ユリは端的に言った。

「――ま、総評すると素人レヴェルね」

 一切の装飾がないその評価に、晄の表情が凍りつく。
 統護の目には、自信が砕かれたように見えた。
 ユリはプロの貌で淡々と評価を述べる。
「素質は素晴らしいわ。声量、声質、文句なしね。ボイトレも我流ながらもやっているんでしょう。腹式呼吸もできているわね」
 立ち竦む晄の喉を、ユリは摘んで感触を確かめて、口腔を覗き込む。
「ああ。でも声帯が痛んでいるわね。我流でボイトレするから。高音部のゆらぎはそれが原因だったのか。我流といえば歌い方も。カラオケやのど自慢レヴェルなら騙せるけれど、プロの耳にはちょっと厳しいかしらね。けれども――逆にいえば、プロのレッスンを受ければ飛躍的に伸びると思うわよ」
 晄は全身を震わせていた。
 統護は痛感する。プロの耳とはここまで厳しいのか、と。とはいえ、統護にしてもメディアで放送されている格闘技イベントなど児戯に見える。要はそれと同じ話という事だ。
「あの……。私の歌、それが感想ですか?」
 泣きそうな声であった。
「そうね。まあ、かなり甘口で言ったつもり。技術的にはダメダメね。仮に貴女の歌をプロに育てる為に買い取る人達ならば、もっと酷評するでしょうね」
「で、っで、でも。スカウトされた時にはッ」
 ユリは納得顔で頷いた。
「なるほど。確かにこの素質ならばスカウトの声が掛かっても不思議じゃないわね。で、貴女に甘い事ばかり言った――と。それって使い捨て前提で、本気で育てる意志がない証拠だから。おそらくご家族は猛反対したんじゃないかしら」
 晄は無言になる。顔は歪んでいた。
「本気でプロの世界に踏み込みたいのならば、等身大の自分に向き合いなさい。同じくプロを目指す人達とステージで戦いなさい。どうせ大賞は出来レースで決まっているでしょう。しかし聴衆は関係ない。観客を魅了すればプロへの道が拓けるわ」
 晄はユリから視線を逸らした。
「わ、私……。ステージとか関係なく、その、私の歌で何かを感じて欲しいっていうか」
「はぁ?」と、ユリは首を傾げる。
「だから聴いてくれる人の為っていうか……。感じて欲しいんですよ。えへへ」
 卑屈な愛想笑い。統護は思わず視線を逸らした。
「そりゃあ、どんなに下手な歌だって感動してくれるって人はいるでしょうね。けれどプロを目指すには下手な歌じゃ商品にならないって事よ。自分が未熟で下手だって理解している?」
「へ、下手……未熟……」
 裏返った声で、晄は叫んだ。

「プロが目標じゃなくて、もしプロになれれば、もっと聴いて貰えるかもってだけだし!!」

 その一言に、統護は顔を顰める。
 ここまで脆いとは思っていなかった。そして何よりも計算外だったのは――
(晄。お前、本音ではそんなにまで自分の歌に自信あったのかよ)
 見誤っていた。謙虚なヤツだと思っていたが、実は真逆だったとは。
 プロのダメ出しに、それも憧れの歌手からのアドバイスにここまで拒絶反応を示すとは。
 対人恐怖症が原因か。自分の中に閉じ籠もり、肯定意見にしか耳を貸していなかったのか。
 晄はヒステリックに喚く。
「だいたい私の歌は趣味だしぃ! 競争とかコンテストとか、大嫌いだしッ!」
 ユリの表情が冷え切った。
 発せられた声は、それ以上に冷たかった。
「ああ。つまり貴女は自分の歌を聴いて欲しい――のではなく、自分の歌を褒めて欲しいってだけだったのね。私に歌を渡したのも、単に褒めて欲しかったって、それだけだったのね」
 見込み違いだったわ、と呟いてユリはプレーヤーからディスクを取り出す。
「どれだけ素質があってもその性根を直さないと、なにをやっても通用しないわよ」
 そう言って、足下にディスクを落とし、踏み割った。
 晄は愕然と固まる。
 怒りを堪えた声でユリは統護に言う。もう晄を視野に入れていない。
「本気で歌に取り組んでいる子だからって会ってみたらこのザマって、どういう事かしら」
「不愉快な思いをさせて、大変失礼致しました」
 統護は深々と頭を下げるしかなかった。こんな結果になるとは予想外だ。
 ユリは虚空に向けて言った。

「――この子の歌を聴いて私が感じた事? 下手くそかつ甘ったれな性根だけね」

 

スポンサーリンク

 

 

         

 晄はそのままオーディションの受付へと向かった。
 幽鬼のような足取りだった。
 呆然自失であったが棄権せずに参加はするようで、とりあえず統護は安堵していた。
(まともに歌えるかは、アイツ次第か)
 ユリの言葉や態度が厳しいとは思わない。
 あの程度の厳しさは、どんな世界でもプロの域にいけば当然というか、ユリの言葉は優しい程であった。だから統護は晄を慰めなかった。慰めると晄を駄目にしてしまうから。
 プロのリングを目指す者に対しても、同様だった。リング禍や後遺症というリスクを背負うのだから、中途半端なプロ志望者には厳しい現実を突きつける必要があるのだ。
 あの場では、間違った態度をとったのはユリではなく、晄だ。
「――お前を信じているよ、晄」
 どの道、歌を続ける以上はぶつかる壁である。
 乗り越えるか、歌を棄てるのかは、晄本人に懸かっている。

「ちょっと散歩に付き会って貰えないかしら、堂桜統護」

 その声に振り返ると、予想通りにオルタナティヴがいた。
 控え室では互いに言葉を交わさなかったが、無視し切れないのは雰囲気で分かっている。
 彼女が来なければ、統護の方から接触を試みるつもりだった。
 主要な出展企業への挨拶は午前中に終わらせていた。オーディション開始の午後十五時までの時間潰しもある。
「久しぶりだな」
「そう時間は開いていないでしょうに」
「ユリさんの護衛はいいのか?」
 このMMフェスタの警備態勢は、堂桜グループ傘下の警備会社【堂桜セキュリティ・サービス】が独占で引き受けている。たとえ【エルメ・サイア】であろうとも、潜入してテロ行為を実行するのは至難の業であろう。
 とはいっても、やはり傍で付きっきりの方がSPとしては安心である。
 オルタナティヴは皮肉げに肩を竦めた。
「お前が連れてきた子に怒り心頭で、ちょっと一人になりたいって。取り付く島なし」
 この機会に、MMフェスタ会場の巡回をしておくと、彼女は付け加えた。
「悪い。あんなオチになるとは」
 オルタナティヴは呆れ顔になる。
「榊乃原ユリは歌に人生を賭けている女性よ。そんな彼女にあんな子を会わせるなんてねぇ」
 統護はオルタナティヴを睨む。
「誤解するなよ。晄だって歌に人生賭けてんだ。ただ、ちょっと行き違っただけだ」
「随分と入れ込んでいるのね。オーディション、結果出せればいいけど」
「勝つよ。俺は晄を信じている。アイツの歌を信じている」
 オルタナティヴは薄く笑む。
 そして二人はイベントの雑踏へと、並んで歩き始めた。

         

 頭が――痛い。
 割れるようだ。
 ユリはトイレの個室に籠もり、嘔吐を繰り返していた。
(なにも後悔なんて、していないのに)
 売れない歌手じゃなく、榊乃原ユリとして生まれ変わった。
 ゆりにゃんを生み出した。
 スポットライトを一身に浴び――歌で生活できるようになった。
「大丈夫? ユリ」
 ドアの向こうから聖沢の心配そうな声が聞こえてくる。
 遠くから、聞こえてくる……
「平気だから。何も問題ないから大丈夫だって!」
 嘘だ。平気なんかじゃない。だからオルタナティヴを遠ざけた。逃げるように遠ざけた。
 キモチワイ。
 せっかくの『ゆりにゃん』が消えてしまいそう。駄目だ。消してなるものか。

 ――あの子の、晄とかいう子の、歌だ。

 耳朶にこびり付いて、ゆんゆんと反響する。
 まるで『ゆりにゃん』を否定するかのように聴こえてくる。切実に訴えかけてくる。
「光の歌」
 やめてくれ。なにが光だ。
 築き上げてきたモノを否定しないで。今の自分を脅かさないで。
 再び、吐く。胃液すら枯れているというのに。
 呟こう。変身の呪文を。ほら意識を……
「ゆーりにゃん、ゆーりにゃん、ゆーりにゃん、ゆーりにゃん、ゆーりにゃん」
 どうして?
 本当に下手くそな素人ソングのくせに、どうしてあれほどの――

 眩いばかりの光を纏っているのだろうか。

 

 

前のページ   目次へ   次のページ

 

 

注記)なお、このページ内に記載されているテキストや画像を、複製および無断転載する事を禁止させて頂きます。紹介記事やレビュー等における引用のみ許可です。

 

 

 本作品は、暴力・虐め・性犯罪・殺人・不正行為・不義不貞・未成年の喫煙と飲酒といった反社会的行為、および非人道的、非倫理思想を推奨するものではありません。また、本作品に登場する人物・団体などは現実とは無関係のフィクションです。