アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第3部(第35話)

第四章  光と影の歌声 4 ―【ドール】―

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         4

 統護とオルタナティヴはしばらく無言のままだった。
 特に展示ブースに立ち寄らない。
 ただ会場内の通路を進むだけだ。
 彼女はすれ違う男性客の注目を集めている。奇抜ともいえる紅いラインの入ったセーラー服に黒マントを羽織った出で立ち。加えて中性的で怜悧な美貌。
(これが……女になった俺の姿か)
 自分の容姿は決して美男子とはいえない。だが、性別の反転でこうも印象が変わるのか。性別によって映える造形というものがあるのだろう。
 不思議な感覚に統護は陥る。
 左右逆になっているとはいえ、鏡で見ている自分の容姿と似ているとは思えない。けれども優季は一目で統護の面影だと見抜いたと言った。特に――その目が同一だと。
 何から訊けばいいか。
 その為には、どう話し掛ければいいのか。
 疑問は沢山ある。
 根本的に、オルタナティヴはどうやって女性になったのか。
 オルタナティヴが不意打ち気味に言った。
「誘っておいて悪いけれど、アタシは何も話せないわ」
「何も?」
「お前が疑問に思っている事柄のほぼ全て。言えるのならば云っているわ」
 台詞に込められたイントネーションが絶妙であった。
(つまり『云えない』って事なのか)
 統護は試してみる。
「それって物理的にか? それとも精神的にか?」
「前者よ」
 そう答えたオルタナティヴは、心なしか顔を歪めた。
 ずくん! と統護にも奇妙な感覚がのし掛かる。胸騒ぎにも似た痛痒である。
「色々とタブーがあるようだな」
「ええ。どうやら共鳴しているようだから、おそらく伝わったでしょう?」
 統護は頷く。
「お前がアタシの正体に気が付いているのならば、アタシ達の接触は最低限にするべきよ。もしもアタシが『本来の存在』としてのラベルを取り戻してしまうと、逆にお前は……」

 ――この世界で堂桜統護として存在できなくなる。

 忠告の最後の一言。オルタナティヴは声には出さすに唇の動きだけで統護に伝えた。
 それでも苦しそうだ。
 統護は背筋を凍らせる。
(そうなれば……俺はどうなる?)
 いや、堂桜統護である自分とは、いったい何者なのだろうか。
 そして納得した事もある。
「淡雪に正体を名乗れないのは、そういった制限が掛けられているからか」
 オルタナティヴは首肯する。
 いつの間にか、人混みから外れて休憩用の広場に二人はいた。
 混雑しているが、空いている場所がないわけではない。人気エリアに人が流れ込んでいる。特に屋外では、晄が挑む公開オーディションに客が集中し始めていた。
 統護はベンチに腰掛け、オルタナティヴを促す。
 オルタナティヴは自動販売機で二人分の缶コーヒーを購入してから、統護に続いた。
「奢りよ」
「ああ、サンキュ」
 流石に自分自身だけあって、好きな銘柄は同じである。
 二人とも一気に飲み干した。シンクロしたように同じ動作だった。
 飲み終えて一息つくと、オルタナティヴが呻くように言った。
「淡雪の事だけど……、お前に任せていいのか、正直いって迷っている」
「姉だとアイツに名乗れないお前が、それを言うのかよ!」
 思わず声を荒げ、統護はオルタナティヴを睨む。
 オルタナティヴも統護を睨んでいた。
 同じ形、しかし色が異なる、相似の視線がぶつかった。
「アタシにお前を責める資格がない事くらいは重々承知している。けれど、お前はアタシに代わってちゃんと淡雪の兄をやれているのか? どうなんだ!?」
「兄とか妹とか……正直わからないんだよ、俺」
 唇を噛み、意気消沈した統護に、オルタナティヴは大きく嘆息した。
 きつかった表情が、弛緩する。
「やはりね。そうだろうと思った。それをお前に確かめたかった」
「どういう事だ?」
「お前の元の世界に堂桜淡雪という妹が存在していない事を知っているって意味よ」
 統護の双眸が大きく見開かれた。
「まさか、ひょっとしてお前、俺の元の世界を知っているのか?」
 オルタナティヴは「違う」と呟き、首を横に振る。
 これを伝えたかった――と真剣な目を向けて、

「……あらゆる可能性と共に無限に存在している平行世界で『堂桜淡雪が存在している世界』は、唯一この【イグニアス】だけだからよ」

 オルタナティヴに成る過程でそれを識ったと、統護と同じ目を持つ彼女は言った。

 

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 堂桜栄護はボディガード六名を引き連れて、MMフェスタを闊歩していた。
 大した利にならない表向きの挨拶回りは、双子の弟にして堂桜一族当主である宗護に押しつけてある。マスコミの対応も宗護が引き受けている。
 今はそれでいい。裏の権力を固める時期と定義しているのだから。
 ボディガードは全員【ブラック・メンズ】と通称されている、違法かつ危険な仕事を引き受ける裏家業の【ソーサラー】であった。
 特徴を殺した容姿を徹底しており、屈強な体格も見る者に特別な所感を与えない。着ている黒地のビジネススーツ【黒服】は、彼等の通称の由来となっている特殊強化スーツである。
 栄護もオーダーメイド品の高級スーツ姿だ。
 そんな一団にあって、一人だけ裸の上半身に革ジャンといった粗暴な出で立ちがいる。
「なあ叔父貴ぃ。なに気に注目集めてるなぁ、俺等よ」
「お前のその格好が原因だろう、業司朗」
「そうかぁ? 旧時代のギャングみたいにゾロゾロ雁首揃えているそいつ等じゃねえ?」
 業司朗は親指で後ろの【ブラック・メンズ】達を指した。
 栄護としては愚衆の注視など気にならない。来場許可しているマスコミは子飼いにしてある。一般客の盗撮は厳重な警備態勢によって防いでいる。
 抜かりはない。
「この会場の警備態勢は完璧なんだろ? 【黒服】なんて要らなくないか?」
「用心に越したことはない。実際、このイベントで何が起こるのか把握できていないんだ」
 栄護の声に苛立ちが滲む。
 このMMフェスタの会場に、栄護が橋渡しした【エルメ・サイア】の幹部が潜入しているのは確認済みだ。しかし、【エルメ・サイア】で最強の戦闘系魔術師ソーサラーとさえ評される強大無比の魔力を誇る【エレメントマスター】だと判明しているその幹部が、何を企てているのかまでは知らされていない。知っているのは、その幹部の『コードネーム』のみである。
 貸しは作った。パイプは更に強力になった――はずだ。
 単に体よく利用されない為にも、【エルメ・サイア】側の動きを少しでも事前に知りたい。
「……つーか、叔父貴よぉ。何処に向かっているんだよ?」
「泳がせているネズミが嗅ぎつけた場所だ」
 一行が到着したのは、客足が遠のいている閑散としているブースであった。
 出展企業名は【DDC(堂桜・ドールズ・カンパニー)】とある。
 業司朗がせせら嗤った。
「なぁ~~んか、寂しげでショボイな」

「悪かったわね。ショボクて閑古鳥が鳴いていて」

 自己主張の塊のような女が歩み寄ってきた。
 ビジネス用の正装どころか、地下のクラブバーで踊りまくる為と思える挑発的なミニスカート姿だ。攻撃的で派手なメイクは、まるで魔女かピエロを連想させる。
 化粧が濃すぎるので素顔が判然としない、しかし鼻が綺麗で高いのは確かな、この二十代の女は――フルネームを堂桜藍花という。
 栄護は藍花を見て苦笑した。
「相変わらずといったところだな、藍花」
「ええ。栄護さんも変わらない様子で」
 握手を交わす二人の堂桜。
 業司朗が口を挟む。
「お前一人しかいないのかよ?」
「スタッフは休憩中よ。人払いしておけって栄護さんに云われたのよ。とはいっても、私も入れて四名しか来ていないけれど」
 ご覧の通りの弱小零細企業だから――と藍花は自虐した。
 従業員数十四名しかいないと企業紹介パンフレットに記載されている。取り扱っている商品は『介護ロボット』および『家事ロボット』である。
 素っ気なく展示されている品々を見て、業司朗が率直な感想を漏らした。

「売れないだろ? 家庭用の人形ロボなんて」

 工場で生産ラインを支える工業ロボットや、マザーマシンと呼ばれる工作機械ならばともかく、一般家庭において人型ロボットの需要は低い。
 理由は単純で、魔術――【魔導機術】における家電の高性能化および、要介護者のサポートメソッドが確立されているからである。
 また要介護者の身体をサポートする【パワードスーツ】系の技術開発は、主に軍需産業部門が独占していた。それの一部が民間に降下してくるのを転用している。
 藍花は肩を竦めた。
「そりゃあね。それなりに人に劣らない性能の【ドール】を開発・販売しているけれど、買うのは金が余っている好事家のみよ」
 電子機械技術をメインとしたロボットとは異なり、内部に【魔導機術】を組み込まれた人型ロボットを【ドール】という。
 この【ドール】は、所持者が魔術によって使役する一種の【ゴーレム】に位置づけされる。
 文字通りにヒトを象っているモノであるが、その外見はいかに精巧であろうと、やはり人を模倣した人形に過ぎない。
 マネキンを蝋人形へと進化させても、それを生きた人と認識する者は皆無だ。
 特に皮膚が致命的に異なる。人工皮膚と本物の皮膚では、光の当たり加減による微妙な色彩の変化が違ってしまう。皮下脂肪、皮脂、毛細血管を含めた見え方までも再現できる人工皮膚は、まだ開発されていない。
「しかし気持ち悪いぜ。人間そっくりに造っても人間にはならないだろうに」
「外層を光学系魔術で偽装すれば、まあ、誤魔化せない事もないけれど、それだと値段がね」
 初期投資だけではなくランニングコストもバカ高いのが【ドール】の致命的欠点だ。
 【ドール】一体の購入と運用で、家政婦が三人は雇用できてしまう。そして【ドール】よりも家政婦の方が遙かに使い勝手がよい。これでは大衆に売れるはずがない。
 業司朗が顔をしかめる。
「俺様は安くても買わないぜ。こんな気色悪い人間モドキ」
「私だって薄気味悪いって思っているわよ」
「どうせ買っている連中も高級ダッチワイフ代わりなんだろ」
「正解よ」
 名目上は『介護ロボット』および『家事ロボット』であるが、実際は性的利用と観賞を目的とした購入目的が大半であった。
 特に、虐待的なアブノーマルプレイをする変態層が極秘で買い支えている。
「しっかし、お前も貧乏クジ引いたもんだよな」
「別に。最初からクビは織り込み済みだったしね。早々に拾って貰えてラッキーよ」
 藍花は【堂桜グループ】内でも大企業である【堂桜防衛産機】の副社長であったが、過日の違法開発された【パワードスーツ】が起こしたテロ事件においての不正関与を明るみにされ、副社長を解任されていた。正確には、株主を動かした兄――社長の秋護による追放処分だ。
「ラッキー? この零細企業の雇われ社長がかよ?」
 業司朗には、体よく天下り先に放り込まれたようにしか思えない。
 藍花は不敵に笑む。
「ここで結果を出せれば、また中央へ大手を振って返り咲けるって話だったから」
「結果って、赤字企業だろ」
「収益ではないのよ。この【DDC】の株主って、非公開だけれど追跡するとちょっと面白い結果が出てね。いくら赤字を垂れ流しても、潤沢に開発資金がジャブジャブくるって事も含めても信用に足りると判断したわ。私は【DDC】に再起と逆襲を賭けてるの」
「なんだそりゃ」
「私の役割は優秀な技術スタッフの獲得と環境開発の整備と、最後に機密保持ね」
 藍花は業司朗から栄護に視線を移す。
「堂桜系列の有力者――謎のパトロンは、栄護さんじゃないかって疑っているんだけれど、それはやぶ蛇かしら?」
「残念ながら身に覚えがないな」
 新情報に栄護は内心でほくそ笑む。
 この採算度外視の零細企業に、裏ルートとロンダリングを駆使して莫大な資金を流し込んでる一族の有力者がいる。それを確認できただけでも足を運んで話をした甲斐は充分である。
「そう。じゃ、そういう事にしておきましょう。とにかく……目的のモノはこっちよ」
 藍花は二人を先導する。【ブラック・メンズ】達は周囲の警戒にあたった。
 別に存在自体を隠しているわけではなかった。
 それならば展示会場に搬入しなければいいだけである。
 ブース奥の壁の中央にソレは在った。
「これが私が謎のパトロンから開発を命じられている代物よ。例のネズミさんが目を付けていたブツでもあるわ」
 栄護は目を見張った。

 祭壇を模した神秘的なクリアケースに、三体の【ドール】が並んでいる。

 左側には、漆黒のドレスを纏った悪魔めいた少女だ。
「一応、仮の名だけれど《レフトデビル》と命名されているわ」
 右側には、純白のドレスを纏った天使めいた少女だ。
「こっちも仮の名で《ライトエンジェル》ね」
 藍花は背中合わせになってる《レフトデビル》と《ライトエンジェル》に挟まれている着物姿の少女を紹介した。
「最後の真ん中のがメインなんだけれど――名前はないわ。名付けるのを厳禁されているの」
 名無しのメイン【ドール】。
 その生気のない無表情に、栄護と業司朗は「似ている」と声を揃えた。

「この貌、まるで淡雪じゃないか……」

 

 

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