アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第6部(第64話)

第四章  宴の真相、神葬の剣 26 ―オルタナティヴVS此花⑥―

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         26

 

 セカンドACT――オルタナティヴの【ワード】が高らかに澄み渡る。
 少女の専用【DVIS】は右手に嵌めている指輪。そして対となる専用【AMP】は左手の指輪である。既存システムの一時シャットダウンからの【DRIVES】システムへのアクセスと共に、二つのリングを胸の前で力強くぶつけた。
 その挙措の反動で、豊かな、されど大き過ぎない形良い双丘が弾む。
 キィぃん。砕け散る二つの指輪。
 神々しい光彩を放つ粒子と化した【DVIS】と【AMP】は、破壊されたのではない。
 オルタナティヴの『心の在り方』に応じたカタチに変化するプロセスなのだ。
 【DRIVES】システムへのアクセスが認可される。【魔導機術】システム再起動。電脳世界内の【アプリケーション・ウィンドウ】に、新たなる魔術プログラムがインストールされてくる。『 』になっている初期設定値を初めとして、全パラメータを変更していく。
 封印解除――『スーパーACT』した時の様な外部演算領域に変動はない。だが、逆に拡張用の臨時演算領域に掛かっていた負荷がダイレクトに施術者を襲う。
 この『セカンドACT』最大の欠陥である莫大な負荷が、オルタナティヴの身体を軋ませていく。常人どころか一流の戦闘系魔術師にさえ耐えられないストレスである。現状、耐えきれるのは僅かに三名――【ナノマシン・ブーステッド】完全体の笠縞陽流、耐セカンドACT用薬物【レジスター】の投与が可能な《究極の戦闘少女》楯四万締里、そして超人化した肉体を獲得したオルタナティヴだ。
 元々の専用使用者として想定されていたルシア・A・吹雪野も耐えられるのは道理であるが、彼女はオリジナル【DRIVES】の外部流出と他者の使用に際して、発展型・進化系の開発に着手しており、すでに『セカンドACT』を廃棄していた。

 

 しかしオルタナティヴの【DRIVES】だけは、他の二名とは似て非なる代物だ。

 

 締里と陽流の【DRIVES】は、ルシア・A・吹雪野の専用強化システムの流用品として基本的には本来の設計に沿って機能している。けれどオルタナティヴが起動させる【DRIVES】は、開発者の意図を超えたイレギュラーとして起動するのだ。
 それは――使用エレメント。
 ライセンスをパスとして単純にシステムに認可される締里と陽流とは異なり、オルタナティヴが【DRIVES】の立ち上げを可能とする重要なキーは、『心の在り方』なのである。

 

「地・水・火・風、全ての概念を空と化す――」

 

 唇から紡がれた台詞。心が澄んでいく。今の彼女は『色即是空』そのもの。
 システムからの負荷に耐えきると『 』になっている初期設定値が『空』となった。
 それこそがオルタナティヴの使用エレメントでもある。締里と陽流が【DRIVES】によって多数のエレメントのマルチタスクを可能とするのとは対照的に、単体で複数のエレメントを操れるオルタナティヴが【DRIVES】で顕現できるのは、たった一つのエレメントだ。
 再セットアップ――完了。

 

 ――【空】のエレメント。概念魔術をカタチにする。

 

 輝く光彩をオルタナティヴは両手で掴み、大きく左右へと広げる。その軌跡を辿る様に粒子が細長く成形されていく。カーブを描く棒状へと収束していく光を携え、彼女は軽やかに半回転する。そして半身に構えたオルタナティヴの手には、変化を終えた【DVIS】と【AMP】の複合体が握られていた。

 

 この【DVIS】と【AMP】の直列操作(ダイレクト・ライド)こそが【DRIVES】という魔術システムの真意だ。

 

 起動時に掛かる過負荷の正体――外部(軌道衛星)にある拡張用演算領域の代替ストレスとは、すなわち【DVIS】と【AMP】の直列操作実現の為に、己を仮想【DVIS】化した際の負荷なのである。
 従来の【AMP】システムでは、魔術師が【DVIS】によって【魔導機術】を操り、拡張機器である【AMP】を並列にコントロールする。しかし、この【DVIS】と【AMP】の並列操作では、どうしても魔術師側のロスが避けられなかった。機器を二重に介すからだ。
 ここでいうロスとは操作性ではなく、魔術出力と魔術強度の面が大きい。
 むしろ操作面に関していえば、従来の【DVIS】および【AMP】システムで完成といえよう。反面、出力と強度が犠牲になっているというだけで。
 従来システムのままで魔術出力を強化する為には、【魔導機術】システム側に拡張用演算領域を追加で提供させるしか手段がなかったが、それにメスを入れたのが――《最凶の天才》こと堂桜那々呼であった。
 セカンドACT用の特殊【AMP】――オルタナティヴの左手エンゲージ・リング、締里のコンバットスーツ、そして陽流のパイロットスーツ。いずれも術者を象徴している。
 魔術師が秘める特性と、その出力形態をダイレクトにインジケートできる【AMP】の提供と、魔術師自身を仮想【DVIS】化する事によって実現する【DVIS】と【AMP】の疑似一体化および魔術師と【AMP】の疑似統合化がコンセプトだ。
 自身の特性を強化できるセカンドACT用の特殊【AMP】のみに限定されるが、戦闘系魔術師のポテンシャルに追従して飛躍的に向上する魔術出力は、拡張魔術――マスターACTとスーパーACTに劣らない。
 名付けて『ダイレクト・ライド・インジケート・ヴジュアル・エンゲージ・システム』。
 頭文字を繋げた略称が【DRIVES】である。
 過負荷というデメリットの為、オリジナルの使い手は前途の三名で打ち止めになっている。しかし、過日の《隠れ姫君》事件での流出を切っ掛けに、その発展型や進化系の開発が水面下で進められ始めた、次世代の【魔導機術】ともいえるのだ。
 そしてオルタナティヴが秘める特性とは――

 

 一振りの大太刀である。

 

 黒髪と灼眼少女の衣装と同調した、朱色と漆黒を基調とする太刀だ。
 鞘はない。誇らしげに輝く美しい刀身を収めるべき鞘は、使い手の心そのものだから。
 一見して刀型の【AMP】である。しかしカタチは同一でも実態はまるで違う。

 

 この太刀――《朧影月》は刀を象っている極小型【結界】だ。

 

 いわば《朧影月》とはオルタナティヴの心が生み出した『カタナのセカイ』なのである。
 みみ架が、琉架が、モニタ越しの観戦者達が、顕現した《朧影月》に息を飲む。
 里央が感動した声を漏らす。
「凄い。実際に見ると、あんなに綺麗な刀だったんだ……」
「そうだね、里央ちん。セイレーン戦での映像とは印象が全然違う。本物はマジ凄い」
 みみ架は覚悟を持って戦場を見据えた。

 

 ついに、ついにオルタナティヴが剣戟魔術師として覚醒した――と。

 

 両目を潰している為に、《朧影月》を視覚補助魔術で脳神経に投影されるワイヤフレームでしか認識できない此花は凄絶に嗤った。
「刃を抜いたわね、剣戟魔術師ッ! ならばそのチカラ、〔神〕に代わって、この《エレクトロマスター》が斃す!!」
「来なさい《エレクトロマスター》。小細工せずに真っ直ぐにね」
「言われなくとも――ッッ!! アンタなんかに、アンタなんかぁぁあああっ!」
 絶体絶命まで追い込まれて、此花は開き直った。
 良く言えば腹を括った。悪く言えば、駆け引きと戦闘プランを棄てた。ボクシングで例えるのならば、アウトボックス(技術戦)を断念して防御度外視の殴り合いに出る。KOされるリスクは高いが、それしか手がない。相手が殴り合いに応じてくれなければ終わりだが、オルタナティヴは最後まで付き合ってくれる、と確信していた。総括するとパニックにならず、かつ戦意を喪失しなかっただけでも、現状の此花は賞賛に値する。
「最後の勝負よ!! キョンシー達!」
 此花は《デジタライズ・キョンシー》達の感情(脳内の電気化学反応)を、彼等の脳内(シナプス)に潜ませている【電子】を操作して揺さぶった。
 恐慌状態にされた《デジタライズ・キョンシー》達が、オルタナティヴに掛かっていく。
 連携などない。陣形もない。
 多種多様な攻撃魔術を繰り出しながらの個々の特攻だ。
 冷静だった。オルタナティヴは沈着冷静に全ての魔術を《朧影月》で斬り伏せた。

 

 斬撃で魔術を断つ。

 

 攻撃魔術で相殺、迎撃したのではない。
 防御魔術でブロック、無効化したのでもない。
 魔術という現象を『概念』として捉えて、その『概念』を斬ったのだ。斬られた『概念』は、魔術的な因果の逆転によって、結果、素粒子レヴェルで根源の魔術も斬られてしまう。

 

 つまり《朧影月》とは『概念』に干渉して素粒子レヴェルで分断する為の概念武装だ。

 

 オルタナティヴの斬るは、剣術の斬るとは、根本的に意味合いが異なる。
 そして『概念』を掴むのに必要な極意こそ――彼女の【空】だ。
 この【空】がオルタナティヴの剣戟魔術師としての使用エレメントであり魔術特性。
 剣戟魔術師は次々と刃を閃かせる。
 魔術を斬られても、斬られても、《デジタライズ・キョンシー》達は怯まずに突進してきた。
 間合いが詰まる。
 けれどオルタナティヴは微塵も動じない。
 何故ならば、【空】の心で掴んでいる『概念』は、彼等の魔術だけではないからだ。
 スタンスを広める。大太刀を腰だめに構え、居合いの体勢に入った。

 

「安らかに眠りなさい。――《斬ノ弐・破邪双閃》」

 

 静謐な【ワード】と共に繰り出された斬撃は、二度、真一文字に煌めく神速だった。
 次の瞬間、九体の《デジタライズ・キョンシー》が、パタリ、と転がる様に倒れ込んだ。
 それだけではない。
 単に戦闘不能にされただけではなく、彼等の姿が変じていく。皮膚が醜く焼けただれていたヒト型の魔導人形の彼等が、――生前の姿に還っていくのだ。
 皮膚だけではなく、焼失した頭髪や体毛までもが元に戻っていた。ヒトの死としての尊厳を取り戻す綺麗な遺体である。
 穏やかな死に顔だ。生前の業からも解放されている。
 遺体に巣喰っていた《デジタライズ・キョンシー》を形成する『概念』のみを斬ってみせた為に実現した奇蹟であろう。再生の仕組みは当のオルタナティヴにも分からなかった。

 

 キュゥごぉぉゥゥウッ!

 

 戦闘は終わらない。此花が《ライトニング・コイルガン》を連射してきた。
 魔術的ロックオンはしていない。下手に魔術的にサーチされたり、軌道演算されるくらいならばと、目視で大雑把に狙いをつけている。とにかく手数で押し切るつもりだ。
 しかしオルタナティヴには通用しない。
 剣戟魔術師は《ライトニング・コイルガン》を斬り伏せながら、悠然と歩み寄る。
 此花は後退するしかなかった。
 どんなに斬られても撃ちまくるしかない。
 僅かでも《ライトニング・コイルガン》が途絶えると、即座に接近されて斃されるだろう。
 此花が喉をひくつかせながら感想を言う。
「ま、まさに最強のチカラね。『概念』さえ捉えれば〔神〕ですら斬れそうなチカラ」
「ええ。アタシの《朧影月》の前には、斬れないモノなど存在しないわ」
 オルタナティヴは思う。
 たとえ〔神〕だろうと斬ってみせる――と。
 世界だって、宇宙だって、物理法則だって、超次元だって、全ての『概念』を斬れる。
 ならばこの《朧影月》は最強か? いや、最強すら根源から断ち斬ってみせよう。
 並の最強、凡百の最強、ありふれた最強など、この刃の敵ではない。
(いえ。たった一つだけ『斬れない』かもしれない)

 

 統護以外の最強は易々と斬れるが、統護が目指す『真の最強』は斬れぬだろう。

 

 クスリ、とオルタナティヴの頬から笑みが零れる。こんな時に戯れ言を。
 けれどアイツが『真の最強』に至った暁には、是非ともKO敗けの借りを返したい。
 此花が泣くように叫ぶ。
「アンタなんか! アンタなんかぁ!! 安全圏に逃げ込まなきゃ戦えない、とびっきりの弱者の気持ちを理解できるはずがないぃぃいイイいッ! 強いアンタなんかにはァ!」
「確かに貴女は戦闘者としては格別に弱いわ。また弱さを客観的に認めているからこそ、相手の攻撃が届かない安全圏に拘って逃げ込める」
 オルタナティヴは眦を決した。
「けれど、攻撃が届かない安全圏に引き籠もってでも勝利を掴みたい――という覚悟は認められるわ。そして他人に蔑まされても恥と見栄を棄てられる、貴女の女性としての強さも」
 腰だめに刀を構え――シャン、という刃が空を滑る音。
 鮮やかな剣閃。オルタナティヴは《朧影月》を斜め上へと居合抜きした。

 

「――《斬ノ壱・紫電一閃》」

 

 此花には届かないはずの間合いだ。
 しかし、斬撃は確かに此花を斬り裂いていた。此花の《ライトニング・コイルガン》を。
 撃てなくなった。その事実に此花は愕然となる。
 発動した派生魔術の超常現象を斬られた――のではなく、発動元である《ライトニング・コイルガン》そのものを斬られたのだ。
 魔術プログラムは生きている。コード自体は無事なのに、実行しても『ERROR』としか【アプリケーション・ウィンドウ】に表示されない。しかも原因を診断できないときた。
 つぅーー……。此花の頬に一筋の汗が伝う。
 此花の表情に、オルタナティヴが敬意を示した。
「貴女は強い女性だわ、渚此花。ここで投降してもそれは変わらない。もしも投降してくれるのならば、貴女の存命に全力を尽くすと約束するわ」
「ミスじゃなくて、意図してなのね。キョンシー達の脳を破壊しなかったのは」
「そうね。貴女の為でもあり、不必要に遺体を辱めたくないという、アタシの自己満足よ」
「本当に格好良い人。クールで知的で、だから……ムカツク。凡人の私には鼻につく」
 オルタナティヴは見抜いている。
 もう止められないのだと。此花の『最後のトリガー』はとっくに引かれていた。けれど、それを防ぐ事だけは、どうしてもできなかった。それが悔やまれる。
 此花が【ワード】を叫ぶ。

 

「――〔スキル〕! 『鳳凰流・武芸百般の剣術』!!」

 

 此花の脳に鳳凰流の剣術が上書きされた。
 最終手段として、《デジタライズ・キョンシー》達の脳機能ネットワーク――《スペル=プロセス・ライン》から、自分に〔スキル〕を作用させたのである。
 どバ。此花の耳と鼻から大量の血が噴き出す。
 脳に掛かる過大な負荷によるものだ。
 観戦者の誰もが悲痛な顔になる。けれど、その意味を正確に理解しているのは、オルタナティヴだけであった。
 負荷の正体――それは自らに〔スキル〕を掛けた事によるものではない。
 その程度は大した負担ではないのだ。つまり原因は……
 此花は喀血しながら、更に声を張り上げた。

 

「――〔スキル〕! 《朧 影 月》ッ!!」

 

 此花の手に『光の大太刀』が顕現する。それは紛れもなく《朧影月》であった。
 彼女は〔ラーニング〕していたのだ。ムサシという中継点なしで、ダイレクトにである。
 すなわち《マジックブレイカー》こと氷室臣人が『魔術を分解』する時と同等か、それ以上の負荷が、此花の脳に掛かっていた。
 想像に難くない。すでに此花の脳細胞と脳器官はズタズタになっている。耳や鼻からだけでではなく、眼窩や口腔からも血がオーバーフローし始めていた。
 此花は壊れた脳で、刃を抜いたオルタナティヴに対抗していたのだ。
 最初から未来を棄てて戦いを挑んでいた――とはいえ、これで完全に余命僅かである。
 オルタナティヴは痛ましげに言った。
「貴女は本当に強い女性。もう少しだけ弱ければ、命を大切にできたのに」
 だからこそ、単なるコピーではなく【空】の魔術を再現できる。此花なりの『心の在り方』が、あまりに鮮烈で確固だからだ。それはとても眩しくもあり――哀しくもあった。
 凄絶な笑顔で此花が否定した。
「違うよ。私は世界で一番弱い女だから。私がここまでできるのは、ここまでやってこれたのは、全て〔神〕様の約束と、ムサシちゃんへの愛があったから」
 もう時間はない。
 黙って時を待てば、此花は絶命する。現実的には戦わずに時間稼ぎをするべきだ。
 けれど、そんな結末はオルタナティヴには許せない。
 プライドが許さないのだ。主人公、主役として――此花を救いたいのである。
 ここでむざむざと此花を殺す様ならば、主人公として四流以下だ。
 何の為の《朧影月》――概念魔術なのか。
 巨大なチカラを持ちつつ、最上の結果を出せないのならば、まさに無能で愚者に他ならない。
 それに『もう一人の自分』――統護ならば、絶対に此花を殺す事なく倒すだろう。アイツにできて自分にできないはずがないのだ。アイツ以下の自分など想像したくない。
(綺麗に終わらせる。それこそがアタシの生き様よ)
 最後の攻防だ。
 オルタナティヴは刃の切っ先を翻して、此花へと向けた。

 

「……さあ、成敗しましょうか」

 

 

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