アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第6部(第49話)

第四章  宴の真相、神葬の剣 11 ―オルタナティヴVSエレナ⑤―

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         11

 ――主役、主人公。

 エレナは昔からこのフレーズが大好きである。
 いつだって、何処だってこの堂桜エレナは人生において、主人公で主役であった。
 常に人生のスポットライトを独占してきた。
 自分が舞台にいる時は、自分が中心となり、周りの全てが脇役になるのである。
 むろん自分が若輩という程度は理解できている。いくら天才中の天才――戦闘系魔術師ソーサラーであろうとも、偉大なる先達が年月を掛けて熟成させてきた各専門分野においてまで勝てるなどと自惚れてはいない。
 それに脇役には脇役としての良さと輝きがあると、敬意も払っている。人生という舞台は、主人公のみでは味気ない。一人芝居はエレナの趣味ではなかった。配役は多い方が良い。
 しかし自分は主役でありたい。中心は自分なのだ。
 エゴで我が儘と理解していた。
 エレナが拘ったのは、人生における主役の座とスポットライト。

 それも女性として、である。

 堂桜淡雪? 戦闘系魔術師ソーサラーとしては、まだまだ未熟だ。女としては、確かに可愛いし美貌に恵まれているだろう。けれど一般基準においては、という但し書き付きで。世界レヴェルには到底及ばない。所詮はニホンおよび東洋基準の枠組みでの美少女だ。ついでに小便臭いおチビさんである。一度だって、女としては眼中にはなかった。
 世界で活躍している超一流のモデルや女優? 全てこの堂桜エレナの前にひれ伏した。スーパーモデルでさえ、自分からスポットライトを奪えなかった。輝きが足りなかった。モデルとして世界一となった時には、拍子抜けしたくらいだ。
 黒鳳凰みみ架? 美しさは認めよう。美貌は絶世で、世界一のスーパーモデルである、この堂桜エレナをも凌駕している。だが、彼女はスポットライトを望んでいない。むしろ陰日向を好んでいる。ヒロインにはなれても、主役として輝く事のない女に過ぎない。自分とは何もかもが、正反対だろう。
 ルシア・A・吹雪野? 方向性こそ違うが、みみ架と同等の美しさを誇る謎のメイド少女。きっと神様に世界の美貌を、みみ架と共に二分して与えられた存在。しかし表舞台を避けて暗躍する女には、興味がない。仮にルシアが主役として光を帯びるケースになっても、その場に自分は無縁に違いない。

 ――そして、オルタナティヴ。

 裏家業である『何でも屋』であるのに、表社会にまで主役としての強烈なカリスマを放っている少女。状況証拠から、その正体は『劣等生になった堂桜統護』が出現する前の堂桜財閥の御曹司、と推定されている。
 同族ながら、生まれながらにして自分よりも格上だった主役が、自分と同じ女性として再登場するやいなや、世界に対して、強烈にその存在とカリスマをアピールした。
 立場の変化なんて関係なく、少女自身の生まれ持った輝きで。
 あるいは、その揺るぎない生き様で。
 エレナが嫉妬する程に主役・主人公をやっている女である。
 特に、セイレーン戦。
 今は亡き『最強の戦闘系魔術師ソーサラー』との魔術戦闘で、オルタナティヴは鮮烈に主人公であった。伝説の【ウィザード】と推定されている統護を、完全に脇役に追いやっていた。セイレーン亡き今、エレナはセイレーンを倒して、あの輝きを手中にはできない。だからこそ……

「……――証明するわ。貴女を倒して、この堂桜エレナは《神声のセイレーン》よりも強いと。誰よりも、オルタナティヴ、貴女に対して」

 今や一億人の凡人よりも、この紅い目の少女一人に認めさせたいのだ。
 主役は――貴女ではなくこの堂桜エレナだと!
 今までの攻防は、次の攻防の為の前座に過ぎない。さあ、本番だ。
 この場に当たっているスポットライトは、どちらの物か。
 いや、スポットライトは渡さない。相手が誰であってもだ――
 オルタナティヴはクールに待ち構えている。互いの言質を信じて、エレナが繰り出す最高で最強の一撃を。待っている。待ってくれている。ああ、なんて格好いい少女だろうか。
 応えるべく、これが最後の一振りだと、エレナが叫んだ。

「――《ハイブリッド・ヒート・ハンマー》ァぁあああああッ!!」

 全力だ。全開だ。全力全開だ。全てのチカラを注ぎ、砕きにいく。オルタナティヴの魔術のみならず、彼女のプライドを根刮ぎ砕いてみせる。
 そして人生で最高の敬意を込める。

 貴女は最高の強敵だったと!

 真上からオルタナティヴに振り下ろされた鉄槌。
 受けて立つオルタナティヴは『金属円盤によるシールド』を展開する。
 先程と同じとは。ハッタリだったか。
(魔術理論に工夫を懲らそうが、所詮は小手先ッ)
 自分のハンマーにも対《フォーススター・ドライヴ》用のサブルーチンを付加してある。防御など――無駄だ。無理だ。無為だ。無力だ。無謀だ。無策だ。無効だ。
(問題ない、ないない。ないないないないないないないないないぃ)
 砕け散れ。いや、超圧力によって溶け散れっ!

 どバンっ!! 金属円盤が打突面を中心として溶解した。

 大きく波打つ。メタルジェットの超圧力が、金属シールドから個体性質を簒奪したのである。液体のごとくドロドロに砕けたシールドは、《パーフェクト・レッドウィング》からの熱により、さらに溶かされていく。
 終わりだ。後はそのまま打ち抜くだけ。
 エレナはオルタナティヴを見た。見たいのは、顔だ。
 無惨に敗北を喫して、果たしてどんな表情を――
 不敵に笑んでいる。オルタナティヴは「ニィ」と頬をあげて、こう唱えた。

「――《エレメント・シフト》」

 オルタナティヴが切り替えた使用エレメントは【水】。
(狙いは、金属で足止めしての二重防御?)
 悪足掻きだ。エレナはそう判断した。いかにオルタナティヴの魔術理論と魔術オペレーションが天才的であっても、ここから二つ目の派生魔術は起動が間に合わない。魔術師の超時間軸を以てしてもだ。ハンマーが液体化した金属を打ち抜き、オルタナティヴを倒すのが先となる。
 仮に二層目の展開が間に合ったとしても、その二層目も破壊するのみ。
 意地など張らず、素直にハンマーのスウィングから身を逸らせばいいものを。
 絶対に防げないのだ。誰にも防御できないのである。この堂桜エレナのハンマーは。

「「 貴 女 の 敗 け よ 」」

 一字一句、綺麗に台詞が重なり、エレナの両目が見開かれた。
 振り切りにいっているハンマーが。
 
 液体状にされた金属が、ハンマーを絡め捕って――拘束していく。

 砕いたはず――だったのに。
 狙いは二層防御ではなかった。水を再凍結化させた防御壁ならば、熱で突破できる。しかし液体金属ではなく、ハンマーで液体化させた金属は――ッ!!
 オルタナティヴの頭上スレスレでハンマーは止まっていた。
 ビクともしない。完全に固定されている。
 それだけではなく、《ガイア・メタルハンマー》は専用【AMP】ごと機能停止させられている。HEAT機構が作動した隙を狙われて、疑似ウィルスを仕込まれたのだ。
 ゼロ距離状態からの再度のメタルジェットが間に合わなかった。個体性質を奪っても熱で金属を気化させられなかった。仮に最初から液体金属であったのならば、最初のメタルジェットで何ら問題はなかったはず。
 エレナとしても、溶かした氷盾を再凍結させる――という防御方法は想定していた。その場合は熱で強引に振り切るだけだ。
 それが、まさか、溶解させられた金属を疑似液体に見立てる事(変換)により【水】のエレメントで、暫定的に操作してくるなんて――
 発想が凄いというよりも、個体性質を失った溶解金属を【水】のエレメントでコントロール可能という、オリジナル魔術理論が凄すぎる。
 やられた。ハンマーの打撃面を完全に封じられている。
 オルタナティヴが涼やかに言った。

「まずは予告通りに、貴女の《ヒート・ハンマー》を攻略したわよ、エレナ。そして次はライトクロスを決めてみせるわ」

 砕かれたのは、オルタナティヴではなくエレナのプライドであった。
 ウィンクを添えて手招きで挑発してくるオルタナティヴに向かって、一直線にダッシュする。こうなったら完全KOで叩きのめす。それもチョッピング・ライトで。そうしないと気が済まない。砕けたプライドを慰められない。
「エレナお嬢様、どうか冷静に!」
 しかし芳三郎の声は、エレナの耳には届かなかった。
 完全に頭に血が登っている。
 破られた《ヒート・ハンマー》の魔術理論は改良すればいいが、この屈辱はそうはいかないのだ。こんな恥は人生初だ。絶対に、絶対に、絶対に――ッ!
(許さないわ!!)
 近接戦闘の間合いになる。しかし、有効射程距離はリーチの長いエレナのみだ。
 オルタナティヴには、まだ遠い。
 蹴りから入ると見せかけて、パンチからいく。それもリードブローなしでの逆ワンツーだ。ダイレクトに伸びのある右ストレート。そこから大胆な右拳とは対照的な、ややショート気味に軌道を調整した左ストレートへと繋げる。
 オルタナティヴは軽やかに躱した。
 これまでの近接戦闘とはリズムが決定的に異なっている。エレナから仕掛けたという構図は同じでも、流れはオルタナティヴが主導していた。
 冷静なオルタナティヴの真紅の双眸。
 明らかに一発を狙っている。予告通りにライトクロスだろう。ライトクロスをブラフに、他の攻撃という事はない。エレナにもそれは伝わっていた。真っ向勝負だ。
「ダメだ。お嬢様、ダメですっ!!」
(問題ないわ、芳三郎)
 右の跳び膝蹴り。オルタナティヴがガードする。まだダメージが残っているのか、後方に軽くよろけた。いける。依然として自分が優勢だ。《ヒート・ハンマー》を攻略されたとはいえ、ノーダメージなのだから。
「雑です!! 丁寧にいって下さい、お嬢様!」
 いいえ。我慢できない。今すぐだ。強引にでもKOでブッ倒す。
 エレナは左バックハンド・ブローを放った。
 高速旋回してくる左裏拳を、オルタナティヴはウィービングで避ける。無駄が削ぎ落とされている洗練された回避動作だ。完全に裏拳を見切っている。けれども……
(問題ない、わ)
 もう一段階、ギアを上げられる。正真正銘のトップギアだ。
 最速で、もう一回転する。二回転目にいく。

 ダブルで放たれる、再度の左バックハンドが加速した。

 ギュぅォぉう! 巻かれた空気が唸る。
 これがエレナの『本当の奥の手』だ。一回転目よりも速く、キレがある一撃。
 当たれば一発KO必至の角度と破壊力である。
 神懸かった反射だった。オルタナティヴは二回転目の左裏拳さえも躱す――が、体勢が崩れている。スウェーバックで上体が後ろに倒れていた。
 ニィ、と凶悪に笑むエレナ。
(もらったっ!)
 狙いは一発KOではなく、相手の体勢を崩す事である。
 やや不自然な姿勢で上体を逸らしたオルタナティヴを、チョッピング・ライトで狙い打ちだ。ここまでがエレナのシナリオなのだ。
 視線が合う。ゾクリ、とした。この怖気は――ッ!!
 先程と同じである。
 だが、二度目は逃げない。このまま勝負にいって、そしてKOする。
 腸が煮えくり返っているのだ。何が何でも殴り倒す。
(問題ないっ!!)
 先程よりも打ち頃の位置に相手の頭がある。ライトクロスは封じているのだ。エレナは全体重を乗せて、右拳を打ち下ろした。
 狙い易い、と思っていたが、不意に気が付いた。

 ――角度が  

 ライトクロスを打てなくしていた拳の射角(傾斜)が、無くなっている。
 ほぼ垂直かつ真正面だ。上から急勾配をつけて打ち下ろしているはずの右拳が、オルタナティヴと正対してしまっている。オルタナティヴがスウェーしている為だ。
 理解した。オルタナティヴは最初からコレを狙っていたのか。
(も、問題……な、な)
 オルタナティヴは真正面からチョッピング・ライトを捉える為に、苦し紛れと見せかけて、意図的にスウェーバックの体勢を取っているのだ。そして会話術でチョッピング・ライトを誘った。この体勢だと、常人ならば下肢が保たずに満足なパンチなど打てない。彼女の超人的な足腰があってこその芸当だ。
(な、な、なァ……ッ)
 エレナが理解した時には、すでに手遅れだった。
 止まれない。
 こうなったら相打ちでもいい。体勢的には自分が有利――
 オルタナティヴがヘッドスリップした。
 チョッピング・ライトがオルタナティヴの右肩の上を通過する、と同時に、反り返り気味の上半身を振り戻しながら、オルタナティヴは斜め上に右ストレートを伸ばした。力ずくで左肘を後ろに引いて、強引に肩を回転させている。ドンピシャのタイミングだ。

 右腕同士が交差して――ライトクロスが炸裂する。

 ドごォォオん!! 芯を打ち抜いた打撃音。
「がハァっ!」
 エレナの口から血飛沫が吹き上がり、折れた奥歯が飛んだ。
 前に突っ込んでいたエレナの上半身が、振り子運動の様にエビ反りになった。夜空を仰ぐエレナ。真後ろに倒れそうだが、堪える。だが、ヨタヨタと力ない千鳥足で後退していった。意識してのバッグステップではなく、ライトクロスの威力で弾き返されているのだ。
「え、エレナお嬢様ぁ!」
 完璧なタイミングでのカウンターに、エレナの下肢は生まれたての子鹿の様になっている。下からの右ブローで体重が乗っていなかった為に、辛うじて一撃失神は逃れられた。
 エレナはどうにか上半身を直立させる。下半身は不安定なままだ。
 オルタナティヴが追撃にいく。
 サウスポー・スタイルにスイッチしてのワンツー・ストレートだ。辛うじてガードに成功したエレナ。今度はエレナが反撃する。左バックハンドと見せかけての――右バックハンドだ。
「苦し紛れね、エレナ」
 ダッキングしてかい潜るオルタナティヴ。余裕がある。
 オルタナティヴの言う通りであった。この右裏拳は奥の手でも温存していた攻撃でもなく、反射的に繰り出しただけの工夫も意図もない拳だった。
 対して、オーソドックスにスタンスを戻して、ダッキング&ステップインしているオルタナティヴのディフェンスには、明白な意図がある。このレヴェルの戦闘になると、単に距離を詰めるのではなく、踏み込みの角度とパターンを技術的に使い分けるのは必須なのだ。
 左構えから右構えへのスタンスの変更だけで、ほぼ真っ直ぐに近いステップインなのに、最小限のロスでの左側へのターンをオルタナティヴは実現させている。
 右サイドの死角を掌握された。右膝で迎撃可能だが、足腰が反応してくれない。そしてオルタナティヴは左ブローの初動に入った。アッパー? それともフック?
(斜め下からのスリークォーターね)
 ふと脳裏にフラッシュしたのは、統護の対オーフレイム戦だ。
 オルタナティヴも統護である。劣等生ではない優等生の統護。〔魔法使い〕ではない天才魔術師の統護。それがオルタナティヴという少女である。
 スマッシュだ。彼女も統護であるのだから、あの変則の左ブローが飛んでくる。
 タイミングと軌道を予測して、クロスアーム・ブロックで――
(問題ない。ないったら、ない)
「違う、お嬢様! スマッシュじゃないッ!!」
 左フックだ。斜めに傾いたフックが、下から上へとスウィングされてきた。
 スマッシュとは軌道が違う。拳の返しも打ち方も、純粋な左フックそのものである。スリークォーターである一点を除いて。しかし斜め下からの軌道で単純にフックを振るっても、相手に拳が届かない。だが、オルタナティヴはダッキングからの反動を利用して、上半身ごと伸び上がってきた。つまりスリークォーターの左フックが、そのままスライドして間合いに入ってくる。
 ダッキング+斜めの左フック+両膝のバネの使い方――
 ガゼルパンチだ。オルタナティヴがガゼルパンチを隠し持っていたなんて。
(問題な、、)

 ガゼルパンチがエレナのガードを破壊する。

 ガゴォ!! 直撃は免れたものの、エレナの頭部が真上に引っこ抜かれた。
 さらに左ミドルをもらって、後ろへ大きく吹っ飛ばされてしまう。
 左拳にキスを添えて、オルタナティヴが言った。
「あら、スマッシュだと思った? アタシはオルタナティヴ。堂桜統護じゃないわ」
 形勢逆転だ。
 エレナの表情は虚ろで、身体全体がグラグラと揺れている。
(も、問題、問だイぃ、も、んん、んンンンっ)
 歯を噛みしめた。エレナは必死に自分を鼓舞する。効いたのは認めるが、この程度では倒れない。絶対に倒れてなるものか。ダウンなどあり得ないのだ。
「もう無理です、エレナお嬢様っ」
 芳三郎が二人の間に割って入ろうとした。邪魔をするな。まだ戦える。執事なのに、主人の意志に背くなんて。《パーフェクト・レッドウィング》が芳三郎を払い除ける。
 その隙を、オルタナティヴは逃さない。
 ドン、ドン、ドン、ドン、チュドウッ、ぐぅドォンッ!!
 容赦なく攻撃魔術を連発して、エレナの【基本形態】を撃ちまくる。滅多打ちならぬ、滅多撃ちだ。ほぼ無抵抗状態の《パーフェクト・レッドウィング》は甚大なダメージを重ねていく。このまま破壊されてしまえば、エレナの魔術は強制停止だ。
 芳三郎が戦慄した。強い。なんという圧倒的な戦闘スペックなのだと。そして、このオルタナティヴをも上回っていた《神声のセイレーン》とは、一体どれ程の強さだったのかと。
 意識朦朧のエレナには、魔術オペレーションへのリソースはなかった。
 懸命に意識を繋いで、【魔導機術】の維持で精一杯である。
 けれど、【基本形態】が攻撃魔術の盾になってくれるだけで、エレナにとっては充分だ。
 魔術の炸裂音が聞こえる。どこか遠い感じだ。まるで他人事の様……
(後、七秒。いえ、五秒で、いい)
 それだけの時間を《パーフェクト・レッドウィング》が持ちこたえて、猶予を稼いでくれれば、どうにか最悪の状態から立て直せる。
(……後、三秒)
 思考がクリアに戻ってきた。視界の歪みと、地面の揺れもだ。
 足腰に力感が戻ってくる。エレナはバックステップした。いける。このまま――
「上です!! エレナお嬢様、上からっ!」
 その声に反応して視線を上げると……

 ――オルタナティヴが高々と夜空を舞っていた。

 それも魔術の風を纏い、《パーフェクト・レッドウィング》をハイジャンパーのごとく背面から飛び越えて。
 美しく華麗な跳躍だ。
 【風】のエレメントに切り替えている。魔術オペレーションに割り当てる余力のなかったエレナには、オルタナティヴの攻撃魔術が【風】だと解析できなかった。そして、使用エレメントを【風】にしたのは、《パーフェクト・レッドウィング》を攻撃する為ではなく、この大跳躍の為だった。
 まだ視界は歪んでいる。地面も揺れている。
 そして、データとして知っていても、初見でこのアクロバティックかつダイナミックな動きに対応するのは極めて困難であった。
 エレナは金縛りに遭った様に動けない。もう少しで回復だった。
(後、一秒なのに、一秒だったのに)
 一秒後に迫る未来を、エレナは認められないでいる。
(……ま、まさか)
 信じたくないが、まさか、まさか、まさかまさか。
 体軸を横に傾けて、オルタナティヴは鋭くスピンして加速した。
 ライトクロスが攻防の軸となるサンデー・ブローならば、この大技は勝負を決める為のフィニッシュ・アーツ。
 エレナの瞳が絶望で染まる。
 まさか、まさかぁまさかまさかまさかまさか――

 ま さ か、敗 け る というの!? この堂桜エレナが!!

「はぁぁあああああああああッ!」
 上半身のスピン力を時間差で下半身へと捻転させて、オルタナティヴの白い脚が死に神の鎌と化した。制服ミニスカートの裾が踊る。見事な脚線美を誇る太股と脹ら脛が、艶めかしく、そして豪快に躍動。更に再加速した左踵がエレナの頭部を無慈悲に薙いだ。

 フライング・ニールキックが決まる。

 ドゴぎゃッ!! 首から上を刈り取るような一撃だ。
 倒れた。頭部を痛打されたエレナは、顔面からダイブしてのダウンを喫する。前のめりから地面に突き刺された顔を支点にバウンドし、痛々しく横方向への側転で数回転すると、うつ伏せ状態で大の字を晒した。
 もの凄い勢いでの倒れ方に、芳三郎の顔が凍り付く。
 決定的なダウンシーンだ。
 けれど失神していなかった。震える四肢が、微かに動き出す。
 なにも見えない。衝撃でエレナの視界は真っ暗に染まっていた。それでも本能で起きあがろうと、もがいた。両腕を突っ張って、懸命に上半身を引き上げる。
 ダウンは認めよう。自分が倒れるなんて、倒されるなんて夢にも思っていなかった。自分は常に倒す側だと思っていたのに。だが、これは悪夢ではなく現実なのだ。現実は受け入れる。それに、ここから逆転KOで勝てば、まさしく主役に相応しい。
「ま、敗ける……はず、が。この、私が」
 視界に色が戻ってきた。顔を上げる。オルタナティヴが映った。
 おかしい。エレナは疑問に思う。どうして彼女は魔術を停止しているのか。そして構えを取っていないのだ。何故そんな瞳で自分を見ている。これでは、まるで……
(そんなわけが、ない、から)
 認めない。終わりなんて。まだ終わっていないのだ。続きはあるのだ。絶対に敗けるはずがないのである。この程度のダメージなど……
(問題ない、わ)
 終わってない。悪いけどもう少し待って。すぐに立ち上がって再開に応じるから。
 エレナは立ち上がった。さながら幽鬼の様である。
 すでに魔術は強制停止していた。エレナはその事さえも、自己認識できない状態だった。
 オルタナティヴは静かな瞳で、エレナを見つめるだけだ。
 立ったというのに、どうして戦闘再開しないのだろう。そうか。失念していた。ファイティングポーズを取っていないから、オルタナティヴは掛かってこないのだ。
「ぅ、ぉぁ、ッ」
 拳が鉛の様に重い。だが死力を振り絞って、エレナは両拳を肩口まで上げる。
(問題ない。問題、ない)
 ほら、これで再開だ。終わりではない。終わっていないのだ。敗けるなど、あり得ない。ここから劇的に逆転KOだ。主役らしい逆転劇を演出する。役者の違いを見せてやる。だから、早く掛かってきなさい。掛かってきなさいよ。掛かって、掛かって……
「か、か、かかって、かか、」

 ――掛かってきなさいッ!!――

 しかし最後の意志は、言葉としてエレナの口から出なかった。
 相手が来ないのならば、自分から――と、一歩前に踏み出したその瞬間に、限界が訪れた。エレナの脚が大きくもつれて、斜めに後ろに倒れ込みながら、身体が力なく半回転する。
 どさっ。芳三郎がエレナの身体を背中から支えて、落下を止めた。
 両腕がダラリと下がり、萎れた花の様に頭が後ろに折れる。顔は夜空を向いているが、その瞳にはもう星は見えていなかった。

「……エレナお嬢様は戦闘続行不可能だ。よって貴女の勝ちです」

 撃沈――完璧にKOされている。
 執事の忸怩たる言葉を受けて、オルタナティヴは言う。
「アタシは今回の事件での主人公を誰にも譲る気はないわ。でも、この戦闘での主役は、どうやらアタシではなくエレナだったみたいね。少し癪だけれど、確かにスポットライトはエレナに集中していたわ。実力的にはセイレーンには及んでいなかった。けれどセイレーンに劣らず、戦い甲斐のある強敵だった。エレナは初めてライバルと思える相手だったわ」
 世辞ではなかった。
 実際に観戦者達の評価は勝者ではなく敗者に集中している。実力伯仲の熱戦だったが、明白にオルタナティヴが上回った。しかし最後の最後まで勝利への執念をみせたエレナの姿に、観戦者達は熱狂したのである。真っ向勝負で壮絶に散ったが、見事な敗戦であった。モニタに表示されて横スクロールしていくコメント群は、エレナへの賛辞で弾幕となっていた。
 敗北こそしたが、内容はエレナにとってのベストバウトだった。
「お嬢様に伝えておきましょう」
「再戦ならば受けて立つわ。お互いに、もっと強くなってからね」
 芳三郎が頷いた。
 オルタナティヴは踵を返して歩き出す。次の戦いが、対戦相手が彼女を待っている。

 ――[ WINNER オルタナティヴ ]

 ランキングが更新されて、4位と5位が入れ替わった。
 そして5位のエレナがリタイアとなり、6位以下が繰り上がった。
 芳三郎が遠ざかっていく勝者の背に声をかける。
「不躾なのは承知で、お願いしてよろしいでしょうか? エレナお嬢様と再戦する時まで、誰にも敗けないで下さい」
「約束するまでもないわ。アタシは生涯不敗を決意しているのだから」
 返事とは裏腹に、また一つ敗けられない理由が増えた。
 こうして注目の好カード――無敗を誇る者同士の全勝対決が幕を下ろした。
 オルタナティヴが堂桜エレナを撃破。
 エレナに初黒星を与えて、自身の無敗レコードを伸ばす。
 この勝利によって、彼女は決勝ステージ進出を、ほぼ確定的とした。

         

 オルタナティヴとエレナ。
 二人の激突を一部始終観終えてから、一比古は言った。
「まさしく世界で一番スポットライトが似合う女だったな。オルタナティヴが相手でも独占したスポットライトに恥じない天晴れな敗北だったよ、堂桜エレナ。この試合の最中、君は世界で一番美しく、そして輝いていた。色々と盛り上げてくれて、いくら感謝しても感謝し足りない。観客達の反応からしても、この戦いの主役は紛れもなく君だった。しかし残念だが君では決勝ステージに立つのには、どうやら役者不足だった様だ。そしてオルタナティヴ。素晴らしい勝利だった。やはり君が勝ち抜いたか。ようこそ決勝ステージへ。君はこの場に踏み入れるのに相応しい女性だよ。もうすぐだ。もうすぐ実現する。その時、このMKランキングの真実を知るといい――」

 

 

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