アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第6部(第15話)

第二章  スキルキャスター 1 ―始まり―

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         1

 美濃輪里央は【セントイビリアル学園】の普通科に在籍している高校生である。
 里央は魔導科ではなく普通科だから一般人、魔術師ではないから一般人――かというと、異を唱える者の方が多いであろう。魔導科がある学園として【セントイビリアル学園】は名門校だ。
 【魔導十三校】と通称されるトップ3においても、頂点という評価を得ている。そして魔導科のみならず、普通科や他の学科でも【セントイビリアル学園】は超一流校なのだ。
 その名門校の普通科で二年主席――全国模試でも十位前後――その里央を『一般』『普通』と形容するには、少々無理がある。要するに全国レヴェルの優等生、エリートだ。

 現在、里央とエレナは高級ハイヤーの後部座席に座っている。

 このハイヤーは【堂桜グループ】系列下であり、エレナの専属執事である芳三郎が手配していた。首尾よくブティックを脱出したエレナは、行きに使用して、帰りも乗る為に道端に待機させていたタクシーから、このハイヤーに乗り継いだのだ。
 昼食は車の中で済ませていた。途中で仕出しの高級和食弁当が届けられたのだ。その和食も里央のリクエストに添った物であった。
 目的地に向かって街中を走行している最中である。
 指定された場所には、このまま法定速度でギリギリで間に合う位置――と、エレナは里央に言っていた。エレナが余計なアクションを起こせない様に、相手は時間と地理を計算しているのだろうとも。
 里央は大人しくしている。自分の扱いは実に丁重であった。
 エレナはスマートフォンに転送されてきた里央のプロフィールを確認すると、感心の言葉を漏らした。
「……へえ。T大・理Ⅲで現役合格確実視、それどころか、主席合格を争うメンバーか」
 里央はエレナの呟きに驚く。
「うわぁ。個人情報が簡単に調べられているなんて。やっぱり堂桜って凄いんだ」
「専門の諜報機関を幾つか抱え込んでいるから。基本的に、各派閥に一つ以上。情報統制、情報規制といった裏工作はお手の物かしら。とはいっても、今時のネット社会、完全に誤魔化すのも難しくなっているわ。だから情報もみ消しは最後の手段ね」
 事実として、ブティックでエレナが起こした騒動と、世界一のスーパーモデルが経歴を隠していた堂桜一族の【ソーサラー】だったという事が、早くもインターネットを賑わしている。ファッション業界では、今年一番のサプライズだ。
 当然ながら、騒ぎの内容は、エレナが里央を浚った件も込みとなっている。
 エレナが隣の里央を見て、呆れ顔になった。
「ちょっとは恐がったり不安がったりすれば? まるで物怖じしていないって変わっているにも程があるわ。一応、貴女は誘拐されているのよ?」
 ここまで里央は全く抵抗していないし、逃げ出す素振りすら見せていない。
 エレナに言われて、里央は首を傾げた。
 今さら、エレナは何を言っているのだろうと。だから隠さずに本音を話す。
「エレナさん、いい人っぽいですからね。出席日数も、もしも足りなくなるんなら、それはその時かなぁ……って思っちゃったり。自分自身、特に夢がないから、とりあえず両親と教師の勧めに従って【セントイビリアル学園】に通って、T大を受験するってだけなんですよ。やりたい事が見つかったら案外あっさりT大に受かっても中退するかも。本当をいうと、私自身は学歴には興味ないし。社会に出て企業で仕事できるタイプじゃないの自分で分かってますし。自分が一流企業でバリバリ働くとか、公務員でキャリア組になるとか、学者や研究者になるとか、そういう『出来る女』な姿、想像できませんよ。それに実は、MKランキングっていうの凄く楽しみ。ワクワクしちゃってます。これは勘ですけど、対抗戦よりも面白そうかなぁ」
 最初はみみ架の役に立ちたいだけだったが、振り返れば対抗戦は楽しかった。
 できれば、またあんなスリルとカタルシスを味わいたい――と、密かに願っていたのである。
 暢気に楽観視しているという自覚はある。けれど、エレナは信用に足る人物だ。
「けっこう大物ね、貴女。道理であの『外見の美貌に反比例した性格ブス』の友達をやれていると納得したわ」
「ミミ、偏屈で素直じゃないですけど、人は好いですよ。色々と不器用なだけなんです。本人は孤高を気取っているつもりかもしれないけれど、実際は友達多いですから。ミミはただの知人だって主張するけど」
 それでも、みみ架は変わってきている。
 堂桜統護への好意を認め、彼の女達と仲間になり、その影響か、自分や周囲への態度が変化した。表面上は『友達ではなく知人』と譲らないままだが、それでも違ってきている。
 それはとても好ましい事だと、里央は親友として嬉しい。
 もっとも友達へのサービスが旺盛で、社交的なみみ架はちょっとイメージではないが。
 里央のスマートフォンは没収されている。しかも完全に破壊されてしまった。GPS機能による逆探知を防ぐ為である。
 エレナだけではなく、里央も警察沙汰や大事にはしたくない。
 よって自発的に、エレナのスマートフォンを借りて家族には連絡済みである。詳しい事情はネットで調べられるから、とにかくしばらく家出します――と。それでも堂桜が手を回してフォローする家族はともかく、エレナが挑発したみみ架とオルタナティヴは、状況からエレナを信用せずに、里央を奪回する為にエレナを追うしかない立場だ。二人には申し訳ないが、今回の件が終わったら謝ろう。
 そう。今回の同舟は、エレナのMKランキング参戦が一段落するまでの話となっている。
 浚われた直後こそ動揺していたが、今では自分の判断で此処に座っているのだ。
 里央はエレナに言った。
「あ、そうそう。お母さんと妹にサイン入りTシャツを贈って下さって、ありがとうございました。二人ともエレナさんの大ファンだったので。引退、残念がってましたよ」
「貴女は?」
「えへへ。ご免なさい。ファンじゃないです」
「あら正直ね。今の私はもうモデルじゃないから、別に気にしないけれど。それじゃ、一つだけ確認させてもらえないかしら。貴女、さっき私を『いい人っぽい』と言ったけれど、どうして? 少なくとも私は田河さんに酷い仕打ちをして、傷付けたわ」
 簡単な質問で試してくるんだな、と里央は拍子抜けした。
 もしも自分がエレナの立場だったのならば、こんな簡単な質問で判断しようとしない。
「田河さんの未来を思えば、あの別れ方がベストだと思います」
 里央は淡々と説明した。
 あの場面、エレナが自分達を目にして、みみ架に仕掛けたのは予定外の偶然だ。けれども、エレナは心愛との別離を考える時期に差し掛かっていた。だから、みみ架との遭遇をまたとない機会と捉えて、心愛を突き放した。完膚なきまでに心愛の希望を破壊して。

 心愛がエレナに――未練を残さないように。

 未練を残せば、間違いなく心愛はエレナの亡霊に囚われて、未来に悪影響を残すから。
 説明を聞き終えたエレナが、里央に言った。
「別にいい人ぶるつもりなんて微塵もないけど、私はあの人が好きだったわ。一緒に夢を叶えてあげたかったの。モデルになったのは、極論すれば、それだけだった。だから他人に批判されようが、あれがベストの結果だと思っている。その批判は責任をもって甘んじて受け入れる。けれど貴女もそう思ってくれたのならば、どうか私の友人になってくれないかしら。私は貴女を――友人として尊敬する」
 能力と才能の差異・有無とは全く別次元で、人間として向き合いたい――とエレナが里央に申し込んできた。すなわち、立場(地位、魔術師か一般人)や能力・才覚よりも、自分が一番に評価するのは人格だ、とエレナは云った。
「じゃあ、もう私達は友達ですね」
 里央はニッコリと微笑む。こういう大人、今まで傍にいなかったので新鮮だ。
 エレナも笑みを返す。優雅で上品な笑みだ。
 ドキリとした。これが上流社会の人間か。里央にとっては初体験である。
「ありがとう。だけど今回の件が終わるまでは、人質役をお願いね。余興というだけじゃなく、展開によっては、オルタナティヴと黒鳳凰みみ架の助力が必要になる可能性があるから」
 表情を改めて、里央は頷いた。
 突発的であったが、エレナが里央を浚ったのは、意図のある機転だった。額面通りにオルタナティヴとみみ架を挑発してMKランキングに引き込んだり、ニホン滞在中の話し相手が欲しかっただけではないのである。
 ちなみに、里央はみみ架がオルタナティヴに依頼した内容を知らされていなかった。
 この先、みみ架の依頼とMKランキングが交わるとは、この時の里央は知る由もないのだ。
 自分が渦中のキーパーソンになるという運命も。

 

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 其処は、改装中の空テナントであった。
 関東郊外の街。
 人はそれなりに多いが、かといって都会という程の人口密度ではない。そんな市街地の国道沿いにズラリと並んでいる商業ビルの一つ。その地下一階だ。
 エレナはすでにメイクを変えている。髪型も同じだ。そして大きめのサングラス。
 周囲の目を欺ける変装なのかは分からないが、仮に元スーパーモデルの存在に気が付いた者がいたとしても、戦闘系魔術師にちょっかいを掛けてくる命知らずは皆無だろう。
 ハイヤーの運転手には、別の場所での待機を命じた。
 里央はエレナに付いていく。
 どうしても周囲の視線が気になってしまうが、エレナは堂々としていた。その貫禄と余裕に、里央は内心で舌を巻くしかない。
 二人はビルの裏手口から入った。ドアの施錠とセキュリティは解除済みだった。
 ガチン。ドアが閉まった瞬間、電子錠がかかる。当然、セキュリティ装置もオンだろう。
「と、閉じ込められた!?」
 驚く里央に、エレナが落ち着いた口調で言った。
「違うと思うわよ。出ようと思えば表玄関から出られるし。普通の電子錠でしょうね。鍵がなければ入れないけれど、出るのは自由。だけど、ドアを開けたら発報するわよ」
 注意されて、里央はドアノブに掛けた右手を慌てて離した。
 改装工事中――と注意書きが貼付されている立て札を無視して、エレナが地下への階段を降りていく。非常用の階段だ。里央も後を追った。
「貨物用エレベータを使わないんですか?」
「私が招待者ならば、地下に降りられない設定にしておくわ。加えて、相手の陣地に入っているのよ? 可能な限りエレベータは避けたいの」
(慎重なんだ……)
 けれど、迷わず大胆に行動できる。そんなエレナを里央は凄いと感じた。
 説明されると、全てが『当たり前』程度の事である。けれど、通常とは違う環境に置かれた緊張感で、里央はその『当たり前』まで意識がいかなかった。思考が回らなかった。
 全国模試を解いている様な環境ならば、里央は全国上位の点数を叩き出せる。しかし、通常とは異なる危機的な状況では、四則計算すら暗算できない――と、里央は思い知った。
 天才中の天才なのだ。同等の相手とリアルタイムで戦闘しながら、平行してオリジナル魔術を演算・制御できる【ソーサラー】と呼ばれる『選ばれた人間』は。
 そして、二人は地下の空きテナントに足を踏み入れた。
 施錠云々ではなく、まだ扉そのものがない――ガランドウの空間である。
 フロアが丸々空いている。
 地下なので窓がない。エレナは出入り口の脇にぶら下がっているケーブルを掴む。
 先端に付いているスイッチをスライドさせてオンにした。
 すると――簡易的に設置されていた工事期間限定の臨時電灯がついた。
 天井に張り巡らされている電球の群である。全て剥き出しだ。
 こういった場合、【魔導機術】による照明ではなく、電装をメインに用いる。
 明るさは不十分だ。
 空調が効いていない為、空気が湿っぽい。
 四方は無機質なコンクリート壁で囲まれていた。それしかない。むろん工事用の道具やケーブル類は散見されるが。あまりに無機質で無味乾燥な光景に、里央は疑問に思う。
「ここって元はお店だったんですよね? どうして、こんな」
「知らない? そういえば、こういう知識って学校じゃ習わないわね。原状回復工事といってね。新店舗が元の店の施設を流用しない限り、こうやって一度、更地化するのよ」
「初めて知りました」
「人口密度の高いニホンの都市部でも、こういった場所はいくらでもあるわ。定番ともいえる裏路地だけじゃなくてね。まあ、戦うのにはうってつけのステージでしょう」
 エレナがグルリと空間を睥睨し――視線が固定された。
 里央も視線を追う。

 ――そこには、七十インチ程のTVモニタが置かれていた。

 二人の視線がスイッチであるかの様なタイミングで、黒一色のモニタに色彩が灯る。
 映し出されたのは、肩幅の広い青年だ。バストアップ映像である。
 サバイバルゲーム用のゴーグルと目深に被っているフードが、最も目立つ特徴か。
 エレナが言った。
「貴方が、光葉一比古ね。誘いに乗ってニホンまで来てあげたわ。堂桜財閥の諜報力をもってしても突き止められない謎の人物――果たして何者かしら?」
 一比古は即座に頷き、口を開く。
 この空きテナント内の様子をリアルタイムで確認しているのは確実だ。
『会話をしてあげてもいいが、その前にランカーの義務として試合をしてもらわないとね。君がスーパーモデルを引退した件は、私も把握している。堂桜エレナだと世間に明かした以上、ランキングの非表示の解除および君のNYでの初戦は、MKランキングの公式サイトで公開させてもらうとしよう。むろん、これからの試合もだ。君には再生視聴数と対戦相手の強さに合わせたファイトマネーが支払われる。一桁ランカーの試合だと一試合で百万円も珍しくないかな。それがMKランキングの仕組みだ。強者と戦えて金も稼げる。どうだい、素晴らしいプラットフォームだろう?』
 ランキングは50位まである。その他は全員、ランク外扱いだ。ランキング外は非表示の為に、全参戦者の数は不明だが、元ランカーの人数と入れ替わりを計算に入れると、五百人前後ではないか、と推定されている。
 里央はすでにエレナから聞かされていた。
 MKランキングに参戦する本当の目的は、ランキング1位を倒して頂点に立つ事ではなく、偶然、9位ランカーと戦ったエレナの出自を知っており、なおかつエレナの両親しか連絡不可能なスマートフォンに通話を仕掛けてきた光葉一比古の正体なのだと。
 エレナは詰まらなそうに言った。
「闇ファイトで金を稼ぐつもりはないわ。戦闘は金の為、名誉の為ではなく、あくまで自分自身の為――要するに自己満足よ。そして私の自己満足は金では買えないの」
 言外に、安く見るな――とエレナが挑発した。
 里央は緊迫化に喉を鳴らす。エレナは戦いを拒否しているのではなく、金は要らないから、とっとと対戦相手を寄越せ、と要求しているのである。
 一比古が満足げに微笑んだ。
『流石だ、堂桜エレナ。自身の実力のみでスーパーモデルとして世界の頂点に立っただけの事はある。実に誇り高く、そしてエネルギッシュでチャレンジャーな女性だよ』
「お世辞はいいから。9位の次は何位なの? いきなり1位だって構わないわよ? これでも私は多忙な身なのよ。できるだけ時間の無駄は省きたいわ」
『残念ながら、1位は特別でね。開設時以来、不働のままなんだ。そしてMKランキング1位と対戦するのには、君はまだ条件を満たしていない』
「やはり1位は貴方自身なのかしら。MKっていうくらいだし」
 ランキングに入っている者でも、希望すれば名前を非表示にできる。
 また本名を隠して参戦している者も多い。試合がネットで公開されていても、MKランキングに参加している者か、多額の会員費用を払っている特別会員以外は、公式サイトには入れないのだ。ネット・セキュリティと守秘は完璧で、今までデータの外部流出もゼロだ。
 そして、不働の1位はずっと『シークレット』扱いなのである。
『それは教えられないかな。けれど1位は私ではない、と君に敬意を示して明かしておこう。ああ、ようやく君の対戦相手がやってきたよ。遅刻は頂けないが、彼はMKランキングのベテラン上位ランカーでね。困った事に遅刻にも慣れたものだよ。段取りが狂うのだが』
「へえ? それは楽しみね」
『つい先日、トップ4の一人に負けて、ランキングこそ現在12位に後退しているが、歯応えのある相手のはずだ。彼には9位の君に勝って一桁ランキングに返り咲く――というモチベーションもある。参戦して間もない未知の新鋭を除けば、10位台で彼が最強だと保証しよう』
 12位と聞き、拍子抜けといった顔になるエレナ。
 対照的に里央は心配になる。12位に落ちる前のランキングは何位だったのかと。
『この試合に勝った方が、これから始まるイベントへの参加資格を得る。つまり査定でもあるから、いきなり敗退して私を失望させないでくれ、堂桜エレナ』
 この試合はリアルタイムで公式サイトから配信されている、と一比古が付け加えた。
 参戦者および特別会員は、現在、画面の向こうで大興奮というワケである。
 足音が近づいてきた。
 やや乱暴に階段を降りる音が終わり、そして出入口に男性のシルエットが――
 一比古が来訪者に声を掛けた。
『ようやく来たか。対戦相手が待っているぞ。彼女がMKランキング9位の堂桜エレナだ』
 ペロリ、とエレナは軽く舌なめずりする。
 変装用のサングラスを外し、エレナが里央に言った。
「大船に乗ったつもりで観戦していなさい。もしもピンチになったら応援、お願いね」

 ――戦いが始まろうとしている。

 里央は予感する。そして期待と不安に胸を躍らせた。MMフェスタから対抗戦を経て、ファン王国へと舞台を移した、誇り高き【ソーサラー】達が繰り広げる戦い(物語)の次章(ネクストステージ)。
 新しい戦いだ。
 もうじきランキング№9対ランキング№12の魔術戦闘が、幕を開ける。

 

 

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 本作品は、暴力・虐め・性犯罪・殺人・不正行為・不義不貞・未成年の喫煙と飲酒といった反社会的行為、および非人道的、非倫理思想を推奨するものではありません。また、本作品に登場する人物・団体などは現実とは無関係のフィクションです。