アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第6部(第12話)

第一章  何でも屋の少女、再び 11 ―執事―

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         11

 その男の名は、光葉一比古という。
 インターネット界隈では一部の層に絶大な知名度と人気を誇る二十代の青年だ。
 体格がいい。正確には骨格(フレーム)に恵まれているというべきか。
 身長は百九十センチに届かない程度だ。細身であるが、立ち姿からも力感に溢れている。
 見る者が見れば、一目で強者(兵)と判断できるだろう。
 夏であっても彼は厚手のヨットパーカを着ており、頭部をフードで深く覆っている。そしてサングラスの代わりにサバイバルゲーム用ゴーグルを装着している。
 ゴーグルはファッションだけではなく、多機能スコープとしても使用できる代物だ。
 魔術の逆探知を嫌い、ゴーグルのみならず使用している道具は可能な限り純粋な電子機器で揃えている。今では【魔導機術】が施されていない機器は、逆にレア物として高価品扱いなので入手が困難だったりするが、金と手間は惜しまなかった。
 レンズが捉えている紅目でポニーテールの少女を、一比古はゴーグルのメモリに記憶させた。
 ファイル名はオルタナティヴとする。
(うぅ~~ん、あまり彼女には出しゃばって欲しくないかなぁ)
 邪魔といえば邪魔だ。
 彼女にイベント招待状を送る予定はない。
 しかし、MKランキングの趣旨としては、もしもオルタナティヴがランカーを倒した時には、彼女のMKランキングへの参戦を認めないわけにはいかない。
 仮にそうなったのならば、主催者として歓迎しよう。
 一比古は独りごちた。
「本当は彼女と少し話しがしたかったが……、今は無粋かな」
 視線の先には、オルタナティヴと彼女を待っていたであろう一人の男性。
 先を越された以上、今は彼に譲ろう――と一比古は病院から去った。

         

 その男の名は、篠塚という。
 オルタナティヴは篠塚の登場に困惑を隠せない。
 老境に達している彼は、普段と同じく黒い燕尾服に身を包んでいる。執事長である篠塚は、堂桜本家の屋敷に務める使用人を束ね、かつ本家の財政管理も任されている男だ。
 今は存在していない『家司』を己が役職として、篠塚はあえて名乗っていた。

「し、篠塚。……どうして、お前が此処に?」

 フルネームは篠塚文昭。オルタナティヴは想定外に過ぎる事態に、ポーカーフェイスを維持できないでいた。本当ならば、徹底して他人のふりをしなければならないのだ。
 けれど震える声で名と共に質問してしまった今、もう赤の他人としては振る舞えない。
 執事は恭しく腰を折った。
「許可なく、こうして参上した無礼をお許し下さい、お嬢様」
 お元気そうで何よりです――と、頭を上げた篠塚はハンカチで涙を拭う。齢七十を超えても威厳と誇りに溢れている創建な男が初めて見せた、老いた者にしか許されない年齢相応の弱さに、オルタナティヴの心が軋んだ。
 自分は篠塚を切り捨てたのだ。それも何も告げずに、だ。

 全てを棄てて出奔した、あの日。
 そう月日は過ぎていないのに……、以降の日々の密度と充実感から、遙か昔と錯覚する。

 彼女は素っ気なく言った。
「どうやら今更とぼけても無駄そうね。察するにロイドから聞いたのかしら?」
 口調は微かに強ばったままである。どうしても普段の余裕(クール)を演出できない。
「はい。彼は私の執事としての弟子ですから」
 確認する事はまだある。
「アタシの事情と正体をお前に教えたのは……、堂桜統護か」
 篠塚が首肯した。
「お嬢様もご存じの通りに、現在、統護様は優季様を伴って不在となっておられます。記憶喪失に陥った淡雪様の為、当分の間は戻られない予定です。お二方の世話とバックアップは、ルシアの部下が三名、帯同しました。統護様は出発する前に、私にお嬢様について教えてくれたのです」
「あ、アイツ……」
 勝手な真似をして、とオルタナティヴは歯軋りした。

 ――堂桜統護とオルタナティヴは、本来ならば同一人物である。

 いや、オルタナティヴこそが『この世界の』堂桜統護に他ならなかった。
 彼女はかつて堂桜統護として、周囲から天才魔術師と賞賛を浴びせられる御曹司だった。
 彼は堂桜財閥を背負う身であったのだ。
 エリート中のエリート、孤高の天才少年だった堂桜統護。極一部を除いて他人を寄せつけない、その在り方の最大の理由は心である。
 性同一性障害。つまり彼の心は少女のそれだったのだ。男ではなかったのである。
 誰にも打ち明けられず、男として振る舞う日々は正真正銘の地獄だった。
 そして、ついに堂桜統護は堂桜統護である己を――棄てた。

 素粒子レヴェルで身体の全てを再構成して、心の在り方と同じ少女の躯を手に入れた。

 生体データはそのままに。
 念願の少女の身を手に入れた対価として〔制約〕を背負う事になったが。
 彼女は〔制約〕により堂桜統護として名乗れなくなっている。言動にも制限が掛けられていた。制限の一部は、過日の統護との高次元リンケージによって解除されているが、詳細に確認はしていない。確実なのは、再び〈資格者〉としての権利を取り戻した事だけだ。
 けれど、オルタナティヴにとっては〈資格者〉云々はどうでもいい。
 この世界――【イグニアス】の〈創造神〉が、無限の平行世界から集めた堂桜の血脈を転生させて開催している『神のゲーム』へ参加、すなわち回答が許される権利を有する堂桜の〈資格者〉。つまり集められた全ての堂桜が資格を有しているのではないのだ。
 選ばれし〈資格者〉は七席。いや自分の復籍で八席に増えたかもしれない。
 〈儀式〉を完成させて正解を唱えれば、その〈資格者〉にはゲームの勝利者として、新しい〈神座〉が与えられる――と約束されている。
 けれどオルタナティヴは〈神座〉には興味がない。〔神〕に成りたいと思わない。
 自分はあくまで人として生きて、人として死ぬのだから。
 辛いのは、淡雪に姉として振る舞えない制限である。
 自らに課せられたオルタナティヴという名と、平行世界からの堂桜に紛れている、この世界のみの堂桜である淡雪の真実を推察すれば、この少女の身を与えてくれた超越存在――すなわち〔神〕が、何を狙っているのかは想像可能だ。
 その時は、喜んで『代わり』になる覚悟である。
 見返り無しに、メリットなしに、人間一人をわざわざ救済する〔神〕などいない。
 自分の境遇に哀れんで少女にしてくれたのならば、その〔神〕は全ての性同一性障害者に救いの手を差し伸べるか、逆に性同一性障害そのものをなくすはずである。
 ホシの秘密。セカイの真実。そして……魔術。
 あの時の記憶にも封印が掛けられている。満足に思い返す事さえままらないのだ。
 また自分がオルタナティヴに換わった事と、堂桜統護の異世界転生がリンクしている事も、ほぼ間違いないと推理していた。
 自分をオルタナティヴに換えた〔神〕と、統護の異世界転生に関与した〔神〕が同一なのかは、現時点では不明だ。

 そう。現在の堂桜統護は異世界からの転生者なのである。

 それも赤子の状態から集められた他の堂桜とは異なり、彼だけが高校二年次での転生だ。
 転移ではあるまい。それならば肉体の超人化に説明がつかなくなる。
 ゆえに今の統護は魔術――【魔導機術】が使えない。彼の魔力はシステムに拒絶されて、キャンセルしてしまうのだ。魔術の起動と行使に必須である【DVIS】を破壊してしまう彼の、その特異現象を、周囲は《デヴァイスクラッシャー》と嘲笑していた。
 天才魔術師であったかつての自分から、魔術を使えない劣等生に身を堕とした統護。
 けれど統護は魔術キャンセル現象を逆手に取った戦い方で、強敵相手の魔術戦闘に勝利を重ねていった。蔑称だった《デヴァイスクラッシャー》が、統護の戦果と共に異名として轟くまで、そう時間は掛からなかった。
 今の彼は世界最強とさえ云われるようになっている。
 もっとも劣等生な成績と、『堂桜ハーレム』と揶揄されている彼の女達の存在があるので、世間一般での統護の評価・評判は最悪であるが。世界最強と一目置かれているのは、あくまで魔術師界と戦闘系魔術師ソーサラーの間に限っての話だ。
(そういえば出会った時、アイツを世界最強と煽ったっけ)
 それが本当に最強と呼ばれるまでに短期間で成長するとは、現実は空想よりも奇っ怪だ。
 オルタナティヴは統護のマヌケ面を思い返し、皮肉げに言った。
「自分で一杯一杯の小者なアタシとは違い、今の堂桜統護は世界と人々の為に【エルメ・サイア】と戦っている男のはず。そんな男が、随分とつまらない真似をしていくものね」
 篠塚は畏まって言った。
「統護様は淡雪様の件について、お嬢様に『申し訳ない』と伝えて欲しいから……と」
 オルタナティヴは首を横に振る。
「あの件でアイツを責めるつもりはないわ。非はアイツにない。篠塚には分からないでしょうが、神魔戦の結果なのだから、ある意味、今の状況は運命なのかもしれない」
 可能な限り詳細に統護と淡雪および関係者の情報を追っている。
 情報料は安くはないが金は惜しんでいない。
 それとは別に、夢を視る事があるのだ。統護がこの世界で経験している事を、自分が統護になって夢の中で追体験している。以前、ルシアが彼女に言った。
 この世界は堂桜統護を必要としてる――と。
 それは統護のみならず『代わりとなったこの堂桜統護』にも当て嵌まるのかもしれない。
 篠塚が不思議そうに首を傾げた。
「魔術戦闘ではなく神魔戦……ですか。この篠塚には分かりかねますが、やはりお嬢様は何やら大きな運命に飲み込まれている身のようですね」
「基本、傍観者のつもりよ。食っていく為の仕事もあるから忙しいしね」
 淡雪を助けたい――と、狂おしい程に思ってしまう時もある。
 だが〔制約〕によって思う様に動けないのだ。統護に淡雪を任せるしかないのである。
(まあ、全てを切り捨てたアタシには、肉親面する資格なんてないけれど)
 だから統護を信じている……が。
 平行世界の自分だとは信じがたい程に、統護は頼りなくダメな男である。能力的に褒められる点が戦闘面だけだ。【エルメ・サイア】を倒すという大志を抱くも、男としての美点や器も皆無ときている。あんなヤツに淡雪を任せている現状は、正直いって歯痒かった。
 特に、周囲から『堂桜ハーレム』とか揶揄されてる女性関係――だらしがなく、主体性なしに優柔不断に複数の女達に流されっぱなしという統護の無様さを耳にする度に、目を覆いたくなる。
 オルタナティヴは篠塚の横を通り過ぎようとした。
「あのバカからの伝言は受け取ったわ。気にしないでと返答して頂戴」
 冷たく言い置く。それで用件は終わりだ。
 そして篠塚とは今度こそ生涯、会う事はないだろう。本当に終わりである。

「お待ち下さいっ! お嬢様ッ!!」

 通り過ぎ際に、涙声で引き留められた。
 足を止めて篠塚を確認すると、彼は肩を振るわせて――泣いていた。
 オルタナティヴは息を飲む。物心ついた頃から知っているが、泣き顔なんて初めてだ。
 けれど後ろ髪を引かれてはならない。
「アタシはオルタナティヴ。名はそれだけ。全てを棄てた『何でも屋』よ」
「過去も、思い出もでございますか?」
「覚えている必要性がある事だけは記憶としてとってあるわ」
「この篠塚は後悔しているのであります」
「何を?」
「お嬢様の心中――苦しみを察する事さえできなくて。私が、私が不甲斐ないばかりに、お嬢様は孤独を孤高にすり替えるしかなかった。お独りで去るしかなかった……」
 オルタナティヴは紅い瞳で、かつての執事を見つめる。
 優しく穏やかな口調を心掛けて、言った。
「恨んでいない。アタシの苦しみはアタシだけのモノだった。そして執事として尽くしてくれた、お前には感謝しかないわ。だからもう過去には拘らないで。今の篠塚が仕える男は、今の堂桜統護でしょう? アタシはお前に、受けた忠義と恩に、何も返せない、何も報えない身なのだから」
 振り切れ、感傷を。そう己の言い聞かせて、オルタナティヴは立ち去ろうと――

「本当に感謝の気持ちがあるのならば、是非とも恩義を返して貰えませんか? お嬢様」

 思いもしなかった台詞に、オルタナティヴは目を丸くした。
 篠塚はハンカチで目元を拭うと……、少しも泣いていないではないか。仕草だけだ。加えてハンカチには空になっている目薬の容器が包まれている。
 顔を引き攣らせるオルタナティヴ。
「お、お前……、まさか泣き真似か」
 したり顔で篠塚が首肯した。
「ええ。お嬢様の足を止めて言質を引き出すのには、これが一番効果的だろうと、統護様が。流石は統護様です。ご自分の事を一番良く分かっていらっしゃる」
「あ、あ、アイツ」
 猿芝居に引っかかってしまった。
 あの男はどうして下らない作戦ばかり思い付くのだろうか。
 篠塚が言い寄ってくる。
「それで台詞だけで感謝しているのではなく、本心からそう思って下さっているのならば、その気持ちを行動で示して欲しいのです。具体的には、今度こそ本当にこの篠塚に執事としてお仕えさせて下さい。むろん、本日付で堂桜からお暇を頂いております」
 雇い先に対して暇を頂く――退職してきたという事だ。
 統護の伝言役ではなく、まさか馳せ参じてきたとは。
 お前を雇用する余裕などない、とオルタナティヴが突っぱねようとする前に、篠塚が言葉を畳みかけてきた。
「給与はゼロで構いませんので。堂桜からの退職金と今までの貯蓄額は、一般人の金銭感覚ならば一財産といえるだけのものになっておりますから。全てお嬢様の為に使う所存です」
「家族は何と言っている?」
「旦那様と奥様、統護様は快く送り出してくれました。身に余る事に、イザとなれば堂桜のコネを使っても良いという言質まで頂きました。それはお嬢様が拒否なさるでしょうから、本当に最後の手段にしますが」
「違うわ。両親とアイツの事じゃなくて、お前の家族よ」
「妻には先立たれていますし、執事長の立場および堂桜本家の管理は、分家から戻した息子に引き継がせました。見習いの孫はまだまだ半人前ですが、息子はそろそろ一人前になりましたし。それから遺産として不動産を残してきました。要らないと言われましたが、お嬢様に仕える身としては、私にも面倒な物ですので、押しつけてきましたよ。正直、もう七十過ぎの老体です。病床に伏せる様な事になり、足手まといになるのならば、その時は大人しく堂桜に戻りますが、できればお嬢様の傍で笑いながら死にたいと思っております」
 ふぅ~~、とオルタナティヴは深々と溜息をつくしかなかった。
「勝手にしなさい。けれど執事なんて必要としていないから。アタシの役に立ちたいのならば、アシスタントとして非合法行為や荒事にも首を突っ込んでもらうわよ」
 篠塚は笑顔で腰を折った。
「はい。心得ております。これでも立場上、様々な非合法な技術を身に付ける必要に迫られていましたので。そうでなければ暗殺されかねなかったですから。若かりし頃には、特殊工作員を使わずに、私が自ら堂桜本家に害をなした不届き者に天誅を下した事もありました」
 お嬢様のサポートが楽しみです、と篠塚は自信に溢れた声で言った。
(そうだったわね)
 この篠塚は、本家執事長という立場から、様々な堂桜の特殊部隊を指揮していたのだ。それに裏の情報網も所持している。汚れ仕事についても彼は超一級品なのだ。
 フン、と小鼻を鳴らして、オルタナティヴは歩を再開させた。
 一歩引いた位置から、執事が付いてくる。
 オルタナティヴはクールに告げた。
「コレを最初で最後の礼とするわ。ありがとう、篠塚。以後、一切の感謝の言葉、感謝の態度も示さないから。分かったわね」
「そのお言葉を待ち望んでいました、お嬢様。執事として心から幸せです」
 どれ程に献身しても役に立っても主からの感謝など不必要――すなわち仕える事が当然という事である。
「で、委員長の病室は?」
 この場で待ち伏せていた以上、篠塚が事前に調べていないはずがない。
「いや、言わなくていいわ。病室はどうでもよくなったみたい」
「そうでございますね」
 二人の前方に、車椅子に座っているみみ架が、里央に押されて近づいてきていた。肋骨と拳の怪我だけではなく、どうやら下肢の消耗(ダメージ)が深刻な様子だ。
 パジャマではなく私服姿だ。Tシャツにロングパンツという出で立ちである。
 見舞う前に退院してしまった様だ。
「間に合わなかったみたいね。せっかく来たというのに」
 みみ架が言った。
「へえ? まさか私の見舞いに来るなんて、どういう風の吹き回しなの?」
「別に貴女とは違って、アタシは人嫌いでもないし。退院祝として花束、要るかしら?」
「邪魔だから気持ちだけ受け取っておくわ」
 予想通りの返答に、オルタナティヴは篠塚に花束を渡した。本当ならば病室の花瓶に突っ込んで、看護師に任せる予定だったのだ。
 適当に処分しておいて、と目線で伝える。篠塚は小さく頷いた。

 

 

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 本作品は、暴力・虐め・性犯罪・殺人・不正行為・不義不貞・未成年の喫煙と飲酒といった反社会的行為、および非人道的、非倫理思想を推奨するものではありません。また、本作品に登場する人物・団体などは現実とは無関係のフィクションです。