アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第2部(第23話)

 

第三章  終わりへのカウントダウン 5 ―居場所―

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         5

 陽流は見慣れぬ街並みを散策していた。
 二度目の出動を控えての視察だ。
 現場の視察を終え、余った時間を自由時間として使っている。
 ミッションにあたり、詳細な3D画像だけでは、現場の雰囲気は掴めない。したがって出動前に、メンバー六名は一日一人ずつ単独で現場の確認と視察に赴いていた。
 これは作戦指示者であるDr.ケイネスの命令であり、また視察後にある程度の自由行動を許可してくれたのもDr.ケイネスであった。
 ケイネス曰く、精神衛生管理の一貫として外出による気分転換は必要との事だ。
 喜んで外出する者が半分。
 残りの半分は、警察や防犯カメラの目が恐く、表には出たがらない。
 陽流は後者だ。
 いくら絶対に大丈夫と念を押された特殊メイクを施されてもだ。
 逃亡生活はごく短時間であったが、陽流の心に大きな傷跡を残していた。
「……もうすぐ、夏か」
 夕方の空を仰ぐ。
 随分と日が長くなってきた。
 春先の壊滅から今日まで、それほど日数が経っていないのに――もう昔のようだ。
「あたしの居場所ってあるんだろうか」
 陽流の両親は、三年前に離婚した。
 物心つく前から夫婦仲は険悪で、陽流という娘と世間体がストッパーとなり、辛うじて仮面夫婦を維持している家庭状態だった。
 しかし忍耐という名のダムは決壊し、父と母は喧嘩別れした。
 養育費と親権を裁判で勝ち取った母に、陽流は戦利品のトロフィーのように連れ去られた。
 母は離婚後半年もしない内に新しい男を作り――陽流から興味を失った。
 居場所を失った陽流は家を出た。
 父の居場所を探したが、ついに突き止められなかった。
 しかし、補導されなかっただけで幸運だったかもしれない。
 途方にくれた夜の繁華街。
 母の財布から抜き取った路銀が尽き、ついに身体を売るしかないと覚悟を決め、そして声をかけた紳士然とした三十代の男性が――

 ――【エルメ・サイア】ニホン支部のリーダーだった。

 彼は陽流の境遇に同情し、そして憤り、身体という対価を求めることなく、陽流を新たなる同志として【エルメ・サイア】ニホン支部に迎え入れてくれた。
 衣食住を提供してくれた。
 縋る場所が其処しかなかった。
 彼等がテロリストだと間もなく理解したが、そういった特殊な集団だからこそ、自分に対価を求めてこないと納得した。いや、対価ならば求められていた。肉体関係ではなく――陽流もテロリストになる事を。

 陽流は少女娼婦よりも少女テロリストを選択した。

 欲しかった場所は暖かい家族。
 けれど手に入れた場所は、テロリストとしての同志。
 無邪気に友達と笑い合いたかったけれど。
 現実には、遠い理想を熱にうなされたように語りかける仲間。
 それでも陽流は頑張った。
 また捨てられたくはなかったから――

「……捨てられるのは、裏切られるのは、もう嫌」

 友達だと信じていた、いや、一方的に友達だと思っていた子に――仲間ごと裏切られた。
 本名を教えてくれなかったクールな彼女は、政府側の特殊工作員でスパイであった。
 事情は理解できるし、他のメンバーように恨みはない。
 きっとなるべくしてなっただけだから。
 ただ彼女に捨てられたという現実だけが、どうしようもなく、純粋に悲しかった。
 陽流に残された場所は――破滅への一本道だ。
 他のメンバーは、投獄された同志の解放と【エルメ・サイア】との再度の関係構築を夢見ているが、一歩引いた立ち位置から俯瞰している陽流には明瞭である。
 間違いなく自分たちはケイネスにとっての捨て駒だ。
 後腐れない使い捨てのテストパイロットだ。
(なにしろ、あたしみたいな下手くそにも操縦させるくらいだもの)
 機体名称《リヴェリオン》と教えられた【パワードスーツ】であったが、陽流の機体だけ他のメンバーと形状が異なっていた。
 扱いやすい試作機だと云われていたが、それでも扱いに四苦八苦している。
 他のメンバーはフルフェースのヘルメットに、特殊なプラグが沢山付いている制式品のパイロットスーツだが、陽流はゴーグル型の試作品に、パイロットスーツも接続部が背中にしかない簡易品であった。
 それだけダウンコンバートしても、足手まといの挙動しかできない陽流に、ケイネスは呆れ顔で、神経接続を促進する注射を施していた。
「最後まで戦おう」
 望んだ友達ではないけれど、それでも大切な仲間なのだから。
 そして最後の居場所なのだから。
 きっと悲惨な終わりを迎えるだろうけれど、それでも最後の最後まで一緒にいよう。
 陽流は足を止めた。
 そして左手側にある白い建物を眺める。

 名称は――孤児院【光の里】。

 ファン王国第一王女にして次期女王である、かのアリーシア姫の大切な場所として有名な、ある意味ニホンで一番の聖域だ。
 自分たちを破滅に追いやった女がいた場所を、そう遠くない最後の時の前に、どうしても目にしておきたかった。

         

 放課後になり、統護は優樹を連れて、ネオ東京シティの国営中央駅にいた。
 ニホンの首都・ネオ東京シティ――総面積約二千二百平方キロメートルの政治・経済の中枢である。全二七市の総人口は一千二百六千万人。都外からの労働人口は、実にニホンの約三十二パーセントが集中している。
「ふぇぇ。凄い人だね」
 大都市の交通機関の集約である国営中央駅の人波に、優樹は圧倒されていた。
 その反応に、統護は思い出す。
「そういえばお前って、堂桜のチャーター便で飛んできたんだっけ」
「うん。堂桜がエスコートしてくれたから、駅の中って初めて。名古屋駅も凄いんだけど、やっぱり人はこっちの方が段違いだね」
「名古屋駅っていえば、地下街がでかいらしいな」
「そうそう」
「今度、案内してくれよ」
 一瞬だけ間を置いて、優樹は笑顔になった。
「うん! 約束するよ」
 その返事に、統護も頬を緩めた。

 

 

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