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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第1部(第36話)

 

第三章  それぞれの選択 13 ―封印解除―

 

         13

 

 今日の戦闘訓練は中止であった。
 アリーシアは、異母兄がけしかけてくる【黒服】集団と交渉に臨むつもりだ。
「交渉のテーブルとしては、ちょっと大き過ぎかも」
 そう言って校舎の屋上を見回す。
 初日以外では異母兄と側近の女性【ソーサラー】は姿をみせていない。
 校舎の影に控えているアクセル6にも、アリーシアの意図は伝えてある。今日は戦闘にはならない筈だ。その事を彼は悔しがっていた。彼なりに経験値を積んでいたのだろう。
 そして今日も、昨日と同じ時刻。

 

 戦闘装束――【黒服】を装備した魔術師の一個部隊――五名が現れた。

 

 裏社会ではその装備から【ブラック・メンズ】とも通称されている、魔術戦闘のプロフェッショナル集団である。
 彼等は【エルメ・サイア】とは異なり、基本的に金銭でのみ契約を果たす傭兵だ。
 臆すことなくアリーシアは声を張り上げる。
「今日は抵抗する意志はありません。貴方達の中で、隊長格は誰?」
 扇状に並んでいる五名の外見は酷似しており、個別での認識が困難なほどだ。
 しかし、一名の【ブラック・メンズ】が一歩前に出た。
「私が部隊長だ。話を聞こうか《インビジブル・プリンセス》」
「兄の要望に従い、話し合いの場を持とうと決意しました」
「その場とは?」
「そちらが指定する場ならば、私は護衛を連れて行きます。こちらが指定する場に応じるのならば、フレアと名乗った側近の帯同を認めます」
「会談の趣旨は?」
「兄に、直接話します」
 リーダー格の【ブラック・メンズ】は確認する。
「つまり、貴女は王子に代わってファン王国を継承する覚悟を固めた――のですね」

 

 その言葉と同時に、【黒服】部隊は一斉に襲撃を開始した。

 

 予想外の展開にアリーシアは固まった。
 アリーシアに【ブラック・メンズ】達の攻撃用【魔導機術】――雷の閃光が襲いかかる。
 ガガガガガッガガアアッ、ン!
 音が鳴り終わっても、アリーシアは無事であった。
 半透明な白い壁に雷撃は遮断されている。
 淡雪が誇る『雪』の防御魔術――《ダイヤモンド・インターセプト》だ。
「貴方達、どうして」
 轟々と唸る雪を操る黒髪の少女の怒りに、リーダー格の男はビジネスライクに答えた。

 

「王位継承権を放棄するのならば応じる。それ以外の場合はは抹殺して欲しい、との依頼だ」

 

 愕然となるアリーシア。
 本当に自分を殺すつもりだったなんて。
 五名の【ブラック・メンズ】は意識をリンクさせると、屋上全体をドーム状に覆う【結界】を形成した。
 最も単純なパラメータ設定――一切の侵入を拒むという超物理的障壁型の隔離【結界】だ。
 独立した異界を演出するこのタイプの【結界】は単純に魔術的な強度・密度そして出力を要求されるがゆえに、人数が多ければ多いほど、シンプルにその効果を発揮する。
 今までは【結界】など使用しなかった。
 つまり――前回まではあくまで牽制で、今回は本気で殺しにくる、という事だ。
「逃げ場はありません。貴女が王位継承権を放棄して兄君の意志に従うというのならば、命は助けるように、との依頼も受けています。さて、どうしますか?」
 その脅迫にアリーシアは……

 

「――《ショットガン・フレイム》!!」

 

 ズガガガガガガガガガガガ!
 数日前とは桁違いの精度と威力を誇る炎の散弾をもって、回答とした。
 赤毛の少女の成長を証明する【魔導機術】は、しかしプロの戦闘集団には通じない。
 以前のアリーシアならば、それで気勢を削がれていただろう。だが――今の彼女は違った。
 誓いと誇りが彼女を変えたのだ。
 否、これが本当のアリーシアかもしれない。
 敵陣形と自身の相対位置を考慮しながら駆け出し、二撃目の準備に入っていた。
 緋色に煌めく炎の爆撃と、黄金色に輝く雷の轟きが、激しく交差する。
 ほんの一時とはいえ、どうにかアリーシアは戦っている。
 均衡が崩れ【ブラック・メンズ】に屈するまでに、そう時間はかからないだろう。
 淡雪はアリーシアの奮闘を目にし、感嘆し、自身がフリーになったこの時間を有用する決意を固めた。

 

 封印を――解除する。

 

 すなわち、堂桜一族のみに可能な特権――『スーパーユーザー』認証で魔術を行使する。
 通常、魔術師が専用【DVIS】によって【魔導機術】を行使する時、【DVIS】を介して軌道衛星【ウルティマ】へとログインして高次元の電脳世界へと精神接続する。
 だが、魔術師の意識内に電脳世界を展開させる事が可能なのは、実は【ウルティマ】だけではないのだ。
 魔術師がオリジナルの【魔導機術】を使用する際に必要となる外部演算領域が、【ウルティマ】に搭載されている超次元量子スーパーコンピュータ【アルテミス】というだけなので、仮に同等の演算機能とプラットフォームを備えている機構ならば、理論上は代替可能だ。
 とはいっても、現実として基本的に一般ユーザーは【ウルティマ】へのIDしか専用【DVIS】に登録されていない。
 しかし【魔導機術】の起動を可能とする演算機能とプラットフォームを備えている機構は、【ウルティマ】に搭載されている【アルテミス】だけではない。
 少なくとも他に五つは存在が確認されている。
 うち三つは違法ログインによって行使される【アンノゥン】と呼ばれてる接続経路。この三つの接続先となる軌道衛星は、未だに特定されていない。
 残りの二つは堂桜財閥が管理しているサブ経路。
 当然ながらシステム運用として必須となる、【ウルティマ】がダウンした時や、【ウルティマ】のメンテナンス時に代用する七つのサブ人工衛星群――【スターアース】が一つ。
 そして――

 

「――スーパーACT」

 

 淡雪が『スーパーユーザー』としての認証ワードを呟き、彼女の専用【DVIS】であるペンダントの飾り部が、声紋認識を行い、堂桜一族でもごく限られた者にしか経由できない接続先へとアクセスを試みる。
 専用【DVIS】内の宝玉が、紅ではなく白銀の光を煌めかせた。
 アクセス先は通常時の【ウルティマ】ではなく、堂桜那々呼の血脈が開発・管理しているステルス型軌道衛星――【ラグナローク】だ。
 世界中から【魔導機術】使用のログインによって、常時、約二億五千万以上アクセスされている【ウルティマ】とは異なり、この【ラグナローク】は堂桜家の人間が【魔導機術】を行使する為だけに存在している。
 封印解除の為に、淡雪は現在の状況をコード化して転送した。
 アリーシア姫を護る必要性。
 封印解除して戦っても【結界】があるので、周囲への存在が少ない事。
 最後に【ブラック・メンズ】達という強敵の存在。
 これらを総合判断し、勝利条件を得る為には封印解除が必要だと申請する。
 瞬時に認証がおり、淡雪の封印が解除された。
 二つの軌道衛星【ウルティマ】と【ラグナローク】が、淡雪の為に一般ユーザーが通常時に使用可能な領域の、実に二百五十五倍という演算リソースを臨時確保し、かつ量子的に同調してサポートしつつ並列演算を開始する。

 

「――《シャイニング・ブリザード》」

 

 淡雪が呟いた瞬間が皮切りとなる。
 っごぉォオおぉおおおぉおぉおオオおぉおォおおおオ。
 空間を蹂躙するように空気がうねった。
 白銀の輝きがランダムに乱舞する。

 

 絶対零度に近い雪結晶の吹雪が、淡雪を中心として爆発的に発生した。

 

 その冷気の余波を受け、ドーム状の【結界】がギシギシと音を立てずに軋みあがる。
 アリーシアと締里は無事だが、【ブラック・メンズ】達は物質の分子運動を押さえつける超低温により、その動きを縫い止められた。魔術抵抗(レジスト)を許さない。彼等の戦闘装束に備わっている耐魔機能と、【基本形態】による防御コーティング、なにより淡雪の手加減がなければ、瞬時に氷付けになって砕けていただろう。
 これが淡雪が封印解除した時の【基本形態】――真のチカラだ。
 攻撃魔術ではない。
 しかし顕現させただけで、その基本性能によって、彼女がその気になれば半径二キロ以内を絶対零度と化せるのだ。耐魔性能を持たない物質ならば分子運動を停止させる事さえ可能な、禁断のチカラであった。
 通常状態の《クリスタル・ストーム》は小規模から中規模クラスに分類される【結界】であるが、この《シャイニング・ブリザード》は大規模クラスに分類される――本来ならば三桁にも及ぶ魔術師を要する大魔術だ。
 慈悲をかけて殺さないが、今の淡雪が魔術出力をあげると、【雷】の隔離【結界】ごと、彼等を吹き飛ばしてしまえる。
 幻想的かつ圧倒的な光景にアリーシアは目を丸くし、呆然となっていた。
 雪女と化した美しき少女は、ゆっくりと右の掌を標的へと向ける。
「これでとどめです」
 淡雪の前に、氷の槍が八本、創り出された。
 殺しはしない。ただ【ソーサラー】としては再起不能になってもらう、と淡雪はつき出している右腕を振り下ろそうと――

 

 ガン、という銃声がそれを遮った。

 

 どさり、という鈍い音。
 淡雪の身体が、前のめりに倒れ込んだ。痛烈にダウンしたというよりも、躓いて転んだといった感じの呆気なさだ。
 背中から彼女を撃ったのは――締里であった。
 施術者が倒れ、【結界】を軋ませていた幻想的な猛吹雪は、幻のように消える。
「悪いわね、淡雪。貴女のそれは予定外だから」
 淡雪を見下ろし、締里は冷酷に言った。
 《シャイニング・ブリザード》の対象設定外からの、予想できない不意打ちであった。
 倒れたまま動かない淡雪を見て、アリーシアが絶叫する。

 

「あ、、あぁ、あわゆきぃいいいいいぃいいいいいい~~~~~~~~~~~っ!!」

 

 涙に塗れたその悲鳴は【結界】に阻まれ、統護には届かない――

 

 

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