アニメを斬る!

アニメ関連の話題をメインに、美少女DJ2名が会話形式でお送りする、仮想ラジオブログ!

アニメを斬る!

ヘッダー画像(第1回へ誘導)
— 最 新 記 事 —
【アニメ1クール総評その5】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2024年の冬アニメ】
【悲報】『ぼざろ』の虹夏・山田・喜多「ぼっちちゃんには工場か品出しのバイトがお似合いだよw」【ぼっち・ざ・ろっく!】
【まほあこ】アニメ『魔法少女にあこがれて』、円盤でB地区を特典に付ける【公式乳首設定を解禁】
【卒業のフリーレン】コスプレなフリーレンさん、高校卒業を果たす【祝・アウラ前日譚が書籍化へ】
【立て看板シリーズ】二次創作『多浪のフリーレン』さん、京大2次試験で浪人生を煽りまくる【葬送のフリーレン】
【悲報】グリットマンの作監が謝罪するも、太ももがデブ過ぎな宝多六花さん、そのままフィギュア化へ【GRIDMAN UNIVERSE】
【悲報】『葬送のフリーレン』の「重い女」フェルンさん、原作で痩せた悲しい姿になる【変わり果てた姿で見つかる】
【葬送のフリーレン】フェルンさん、アクリルスタンドでビキニになる為に、強制ダイエットさせられてしまう【デブではない】
【ネタバレ注意】新型フリーダム(ストフリ)の名称予想企画の結果発表!【劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
【悲報】イザークさん、極楽湯コラボメニューにて『種まきミルク』を提供してしまう【劇場版ガンダムSEED FREEDOM】
【リゼロ】レムさんのフィギュア、完全にネタが尽きた模様wwww【Re:ゼロから始める異世界生活】
【勇気爆発バーンブレイバーン】ブレイバーンの正体(中身)や真主人公(ルイス)について考察してみた
【悲報】SPY×FAMILYのヨルさん、スト6とのコラボでブサイク過ぎて炎上wwwwwwww
【悲報】セイバー(アルトリア)さん、変わり果てた姿で見つかる【Fate/FGO】
【邪神ちゃん公式】「違法アップロードを合法化」というパワーワードで違法アップローダーとの最終決戦へ【二次創作は許諾申請でOKに】
【アニメ1クール総評その4】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2023年の秋アニメ】
【葬送のフリーレン】有識者さん「日本オタク史に残る偉業、『エルフといえば? フリーレン』になったのだ」
【葬送のフリーレン】原作の名シーンを麻雀で再現した二次創作『雀荘のフリーレン』が話題に
【超絶悲報】ラクス・クラインさん(20)のドレス姿、流石にキツすぎる……【劇場版ガンダムSEED FREEDOM】
【悲報】ストフリ後継機ではない新型フリーダムが公開されてしまい名称予想企画どうしよう【劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
【リコリス・リコイル2期】2025年Season2、魔法少女モノに路線変更か
【ガンダム 水星の魔女】シュバルゼッテさん、デザイン初期(発注時)はグエル用の機体だった事が判明【悲報】
【悲報】スパイファミリー(SPY×FAMILY)さん、TVアニメSeason2のキービジュアルで、主人公ロイドがモブと化すwwwwww
【アニメ1クール総評その3】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2023年の夏アニメ】
【悲報】オンラインくじ『スパイ教室』(秋の祝祭)にて不人気キャラがグッズからリストラされるwwww上位の3人はグッズ優遇!
【オリジナルアニメ限定】2000年以降のクソアニメで打線を組んでみた【球詠・新越谷高校風】
【悲報】メイリン・ホークさん(18)、たった2年で大幅劣化し、おばさん化してしまう【劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
【公式よりお気持ち表明】スレッタとミオリネの結婚が「なかった」風にボカされてしまう【機動戦士ガンダム 水星の魔女】
【告知】新型フリーダム(3代目)の名称を予想する企画について【劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
【悲報】ラクス・クラインさんに美容整形の疑惑が浮上してしまう【劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
【アニメ1クール総評その2】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2023年の春アニメ】
【アニメ1クール総評その1】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2023年の冬アニメ】
【2022年の秋アニメ】視聴完走した作品の感想を述べてみた【機動戦士ガンダム 水星の魔女、他12本】
【2022年の夏アニメ】視聴完走した作品の感想を述べてみた【リコリス・リコイル、他4本】
【2022年の春アニメ】視聴完走した作品の感想を述べてみた【パリピ孔明、他9本】
【2022年の冬アニメ】視聴完走した作品の感想を述べてみた【ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜、他5本】
【2021年の秋アニメ】視聴完走した作品の感想を述べてみた【マブラヴ オルタネイティヴ、他4本】
【フィギュア】不滅のボーカロイド『初音ミク』の商品ラインナップを紹介【新作 / おすすめ】
【アニメ『MAJOR 2nd』中学生編】Wヒロインとして着替えと活躍が期待される道塁を特集する【メジャーセカンド】
【PS4/Nintendo Switch】キャプテン翼 RISE OF NEW CHAMPIONSがヤバすぎと話題沸騰【ジャンル:サッカーアクション】
【フィギュア】止まらないホロライブ――全リリースを紹介【白上フブキが初】
【アニメ版ワンパンマン】ヒーロー紹介『戦慄のタツマキ』がロリセクシーな件【One Punch-Man】
【メニュー】『ダンベル何キロ持てる?』筋トレ講座を鍛える箇所別にまとめてみた【器具】
【再放送版ハチナイ】アニメ『八月のシンデレラナイン Re:fine』、もう作画崩壊とはいわせない【試合プレー場面まとめ】
【GIF動画で検証】名作女子ベースボールアニメ『大正野球娘。』の作画を振り返る【大正義野球娘】
【フィギュア】毛利蘭ねえちゃんの角が『ねんどろいど』でヤバい件【名探偵コナン】
【ぼっち料理】ハック(Hac) ちょこっと家電 贅沢鍋&グリルおすすめしてみる【Φ12cm HAC2254】
【アニメ版ワンパンマン】ヒーロー紹介『地獄のフブキ』が可愛い件【One Punch-Man】
【アニメ版ワンパンマン】ヒーロー紹介『サイタマ(ハゲマント)』の戦績【One Punch-Man】
【いもいも級の衝撃】きららアニメ『球詠』第4話の先行海外(北米)配信版が作画崩壊【dアニメ版と比べてみた】
【萌えすら捨てて】作画崩壊風きららアニメ『球詠』のプレー場面を集めてみた【野球を追求】
【アニメ『MAJOR 2nd』】沢 弥生様のご活躍を追いかけてみる【メジャーセカンド】
【上条当麻】旧約(第1部)までの男女平等パンチを振り返ってみる【その幻想をぶち殺す】
【ハッカドール】伝説のお仕事アニメ、KUROBAKOを振り返ってみる【本家SHIROBAKOもよろすこ】
【海外での認識】織田信長のキャラデザを振り返る【日本人のイメージ】
【とあるシリーズ】能力者LEVEL5と各キャラの勢力分布を復習してみよう【禁書目録/超電磁砲】
【範馬刃牙/バキ】ごきげんな朝食(あさめし)【完全再現を目指してみた】
【HG/MG/RG】フリーダムガンダム&ストフリが超かっこいい件【登場シーン】
【松智洋先生なんと2作目】はてな☆イリュージョン、第4話でほぼ全編が作画崩壊【いもいもの悪夢再来か】
【登録方法】アニメをネット視聴する動画配信サービスは「dアニメストア」がオススメ【TVでもOK】
【HGCE/MG】デスティニーガンダムが超かっこいい件【まるで悪役】
【旧OPと新訳を比較】Zガンダムの変形シーン(機構)の進化を振り返る【ガンプラ系YouTubeも紹介】
【妖怪人間ベム】歴代アニメOPの比較と美少女化したJKなベラさん【令和版BEM】
【響/翼/クリス】戦姫絶唱シンフォギアXV 変身バンク集【マリア/調/切歌】
【第1期~第4期】シンフォギアの歴代ラスボス&フィニッシュシーン GIFバージョン【無印/G/GX/AXZ】
【第1期~第4期】シンフォギアシリーズの変身バンク集 GIFバージョン【無印/G/GX/AXZ】
【ハチナイ】『八月のシンデレラナイン』の野球描画に震えるがいい【作画崩壊な令和野球娘。】
【ジョジョ第5部】チョコラータ戦での無駄無駄ラッシュにおける原作とアニメの比較【黄金の風】
【鉄血ガンダム】伝説の「止まるんじゃねえぞ……」を振り返ってみた【オルガ・イツカの名台詞】
中古品『Panasonic Let's note CF-S10』(ワジュンPC)の購入レビュー
【アニメ版4期】キャプテン翼 必殺シュート集 ~中学生編~【完璧な再現】
【俺達の芋芋】作画崩壊アニメいもいも、感動の大団円【最終回、第10話】
【これが俺達の芋芋】作画崩壊アニメいもいも、第9話でまたも大惨事に【伝説級の特殊ED爆誕】
【各キャラ解説】シンフォギアシリーズの変身バンク集 まとめ【各ギア設定付き】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~切歌編~
シンフォギアシリーズの変身バンク ~マリア編~
【アニメ版4期】キャプテン翼 必殺シュート集 ~小学生編~【完璧な再現】
【緊急特番】俺が好きなのは妹だけど(作画崩壊している)妹じゃない【第2話で最速作画崩壊】
【アニメ2ndオープニング】刃牙のOPにみるアニメ3D技術の進化【グラップラー刃牙/バキ】
【ゲゲゲの鬼太郎】6期鬼太郎より2018年度アニメ界、クソ女・オブ・ザイヤ―が爆誕【第6期新章突入】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~未来&イグナイト編~
【マジンガーZ】リアル系ロケットパンチを放つスーパーロボを語る【超重神グラヴィオン】
【アニメ6期】ゲゲゲの鬼太郎、独断的な『神7』を大発表【西洋妖怪編へ】
【3代目ジョジョ 承太郎】スータープラチナの「オラオラ」、ベスト5【最強スタンド】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~響編~
【スーパーロボット】コン・バトラーVの新旧映像比較【昭和合体ロボ】
【アニメJOJO】ジョジョのOP映像、ベスト5【第5部決定】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~翼編~
【超次元サッカー】キャプテン翼の映像比較【再びアニメ化】
【アニメ】ゲゲゲの鬼太郎、6期で萌えに迎合する【猫&犬】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~クリス編~
【プラレス】ホビーバトル系アニメの歴史、推移を語る【ガンプラバトル】
【ゲーム版と】FateのOPアニメの変移を辿る【FGOも】
【二人組】最高のアニメ番組内ユニットは?【歌手限定】
【放送延期】万策尽きた……、ンゴ【総集編】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~調編~
【独断】Fateシリーズ最高のコミカライズは?【選考】
【サイボーグ009】003(フランソワーズ)のキャラデザ変移【歴代アニメ版】
ヘッダー画像下ライン

魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第1部(第36話)

第三章  それぞれの選択 13 ―封印解除―

スポンサーリンク

 

 

         13

 

 今日の戦闘訓練は中止であった。
 アリーシアは、異母兄がけしかけてくる【黒服】集団と交渉に臨むつもりだ。
「交渉のテーブルとしては、ちょっと大き過ぎかも」
 そう言って校舎の屋上を見回す。
 初日以外では異母兄と側近の女性【ソーサラー】は姿をみせていない。
 校舎の影に控えているアクセル6にも、アリーシアの意図は伝えてある。今日は戦闘にはならない筈だ。その事を彼は悔しがっていた。彼なりに経験値を積んでいたのだろう。
 そして今日も、昨日と同じ時刻。

 

 戦闘装束――【黒服】を装備した魔術師の一個部隊――五名が現れた。

 

 裏社会ではその装備から【ブラック・メンズ】とも通称されている、魔術戦闘のプロフェッショナル集団である。
 彼等は【エルメ・サイア】とは異なり、基本的に金銭でのみ契約を果たす傭兵だ。
 臆すことなくアリーシアは声を張り上げる。
「今日は抵抗する意志はありません。貴方達の中で、隊長格は誰?」
 扇状に並んでいる五名の外見は酷似しており、個別での認識が困難なほどだ。
 しかし、一名の【ブラック・メンズ】が一歩前に出た。
「私が部隊長だ。話を聞こうか《インビジブル・プリンセス》」
「兄の要望に従い、話し合いの場を持とうと決意しました」
「その場とは?」
「そちらが指定する場ならば、私は護衛を連れて行きます。こちらが指定する場に応じるのならば、フレアと名乗った側近の帯同を認めます」
「会談の趣旨は?」
「兄に、直接話します」
 リーダー格の【ブラック・メンズ】は確認する。
「つまり、貴女は王子に代わってファン王国を継承する覚悟を固めた――のですね」

 

 その言葉と同時に、【黒服】部隊は一斉に襲撃を開始した。

 

 予想外の展開にアリーシアは固まった。
 アリーシアに【ブラック・メンズ】達の攻撃用【魔導機術】――雷の閃光が襲いかかる。
 ガガガガガッガガアアッ、ン!
 音が鳴り終わっても、アリーシアは無事であった。
 半透明な白い壁に雷撃は遮断されている。
 淡雪が誇る『雪』の防御魔術――《ダイヤモンド・インターセプト》だ。
「貴方達、どうして」
 轟々と唸る雪を操る黒髪の少女の怒りに、リーダー格の男はビジネスライクに答えた。

 

「王位継承権を放棄するのならば応じる。それ以外の場合はは抹殺して欲しい、との依頼だ」

 

 愕然となるアリーシア。
 本当に自分を殺すつもりだったなんて。
 五名の【ブラック・メンズ】は意識をリンクさせると、屋上全体をドーム状に覆う【結界】を形成した。
 最も単純なパラメータ設定――一切の侵入を拒むという超物理的障壁型の隔離【結界】だ。
 独立した異界を演出するこのタイプの【結界】は単純に魔術的な強度・密度そして出力を要求されるがゆえに、人数が多ければ多いほど、シンプルにその効果を発揮する。
 今までは【結界】など使用しなかった。
 つまり――前回まではあくまで牽制で、今回は本気で殺しにくる、という事だ。
「逃げ場はありません。貴女が王位継承権を放棄して兄君の意志に従うというのならば、命は助けるように、との依頼も受けています。さて、どうしますか?」
 その脅迫にアリーシアは……

 

「――《ショットガン・フレイム》!!」

 

 ズガガガガガガガガガガガ!
 数日前とは桁違いの精度と威力を誇る炎の散弾をもって、回答とした。
 赤毛の少女の成長を証明する【魔導機術】は、しかしプロの戦闘集団には通じない。
 以前のアリーシアならば、それで気勢を削がれていただろう。だが――今の彼女は違った。
 誓いと誇りが彼女を変えたのだ。
 否、これが本当のアリーシアかもしれない。
 敵陣形と自身の相対位置を考慮しながら駆け出し、二撃目の準備に入っていた。
 緋色に煌めく炎の爆撃と、黄金色に輝く雷の轟きが、激しく交差する。
 ほんの一時とはいえ、どうにかアリーシアは戦っている。
 均衡が崩れ【ブラック・メンズ】に屈するまでに、そう時間はかからないだろう。
 淡雪はアリーシアの奮闘を目にし、感嘆し、自身がフリーになったこの時間を有用する決意を固めた。

 

 封印を――解除する。

 

 すなわち、堂桜一族のみに可能な特権――『スーパーユーザー』認証で魔術を行使する。
 通常、魔術師が専用【DVIS】によって【魔導機術】を行使する時、【DVIS】を介して軌道衛星【ウルティマ】へとログインして高次元の電脳世界へと精神接続する。
 だが、魔術師の意識内に電脳世界を展開させる事が可能なのは、実は【ウルティマ】だけではないのだ。
 魔術師がオリジナルの【魔導機術】を使用する際に必要となる外部演算領域が、【ウルティマ】に搭載されている超次元量子スーパーコンピュータ【アルテミス】というだけなので、仮に同等の演算機能とプラットフォームを備えている機構ならば、理論上は代替可能だ。
 とはいっても、現実として基本的に一般ユーザーは【ウルティマ】へのIDしか専用【DVIS】に登録されていない。
 しかし【魔導機術】の起動を可能とする演算機能とプラットフォームを備えている機構は、【ウルティマ】に搭載されている【アルテミス】だけではない。
 少なくとも他に五つは存在が確認されている。
 うち三つは違法ログインによって行使される【アンノゥン】と呼ばれてる接続経路。この三つの接続先となる軌道衛星は、未だに特定されていない。
 残りの二つは堂桜財閥が管理しているサブ経路。
 当然ながらシステム運用として必須となる、【ウルティマ】がダウンした時や、【ウルティマ】のメンテナンス時に代用する七つのサブ人工衛星群――【スターアース】が一つ。
 そして――

 

「――スーパーACT」

 

 淡雪が『スーパーユーザー』としての認証ワードを呟き、彼女の専用【DVIS】であるペンダントの飾り部が、声紋認識を行い、堂桜一族でもごく限られた者にしか経由できない接続先へとアクセスを試みる。
 専用【DVIS】内の宝玉が、紅ではなく白銀の光を煌めかせた。
 アクセス先は通常時の【ウルティマ】ではなく、堂桜那々呼の血脈が開発・管理しているステルス型軌道衛星――【ラグナローク】だ。
 世界中から【魔導機術】使用のログインによって、常時、約二億五千万以上アクセスされている【ウルティマ】とは異なり、この【ラグナローク】は堂桜家の人間が【魔導機術】を行使する為だけに存在している。
 封印解除の為に、淡雪は現在の状況をコード化して転送した。
 アリーシア姫を護る必要性。
 封印解除して戦っても【結界】があるので、周囲への存在が少ない事。
 最後に【ブラック・メンズ】達という強敵の存在。
 これらを総合判断し、勝利条件を得る為には封印解除が必要だと申請する。
 瞬時に認証がおり、淡雪の封印が解除された。
 二つの軌道衛星【ウルティマ】と【ラグナローク】が、淡雪の為に一般ユーザーが通常時に使用可能な領域の、実に二百五十五倍という演算リソースを臨時確保し、かつ量子的に同調してサポートしつつ並列演算を開始する。

 

「――《シャイニング・ブリザード》」

 

 淡雪が呟いた瞬間が皮切りとなる。
 っごぉォオおぉおおおぉおぉおオオおぉおォおおおオ。
 空間を蹂躙するように空気がうねった。
 白銀の輝きがランダムに乱舞する。

 

 絶対零度に近い雪結晶の吹雪が、淡雪を中心として爆発的に発生した。

 

 その冷気の余波を受け、ドーム状の【結界】がギシギシと音を立てずに軋みあがる。
 アリーシアと締里は無事だが、【ブラック・メンズ】達は物質の分子運動を押さえつける超低温により、その動きを縫い止められた。魔術抵抗(レジスト)を許さない。彼等の戦闘装束に備わっている耐魔機能と、【基本形態】による防御コーティング、なにより淡雪の手加減がなければ、瞬時に氷付けになって砕けていただろう。
 これが淡雪が封印解除した時の【基本形態】――真のチカラだ。
 攻撃魔術ではない。
 しかし顕現させただけで、その基本性能によって、彼女がその気になれば半径二キロ以内を絶対零度と化せるのだ。耐魔性能を持たない物質ならば分子運動を停止させる事さえ可能な、禁断のチカラであった。
 通常状態の《クリスタル・ストーム》は小規模から中規模クラスに分類される【結界】であるが、この《シャイニング・ブリザード》は大規模クラスに分類される――本来ならば三桁にも及ぶ魔術師を要する大魔術だ。
 慈悲をかけて殺さないが、今の淡雪が魔術出力をあげると、【雷】の隔離【結界】ごと、彼等を吹き飛ばしてしまえる。
 幻想的かつ圧倒的な光景にアリーシアは目を丸くし、呆然となっていた。
 雪女と化した美しき少女は、ゆっくりと右の掌を標的へと向ける。
「これでとどめです」
 淡雪の前に、氷の槍が八本、創り出された。
 殺しはしない。ただ【ソーサラー】としては再起不能になってもらう、と淡雪はつき出している右腕を振り下ろそうと――

 

 ガン、という銃声がそれを遮った。

 

 どさり、という鈍い音。
 淡雪の身体が、前のめりに倒れ込んだ。痛烈にダウンしたというよりも、躓いて転んだといった感じの呆気なさだ。
 背中から彼女を撃ったのは――締里であった。
 施術者が倒れ、【結界】を軋ませていた幻想的な猛吹雪は、幻のように消える。
「悪いわね、淡雪。貴女のそれは予定外だから」
 淡雪を見下ろし、締里は冷酷に言った。
 《シャイニング・ブリザード》の対象設定外からの、予想できない不意打ちであった。
 倒れたまま動かない淡雪を見て、アリーシアが絶叫する。

 

「あ、、あぁ、あわゆきぃいいいいいぃいいいいいい~~~~~~~~~~~っ!!」

 

 涙に塗れたその悲鳴は【結界】に阻まれ、統護には届かない――

 

 

前のページ   目次へ   次のページ

 

 

注記)なお、このページ内に記載されているテキストや画像を、複製および無断転載する事を禁止させて頂きます。紹介記事やレビュー等における引用のみ許可です。

 

 

 本作品は、暴力・虐め・性犯罪・殺人・不正行為・不義不貞・未成年の喫煙と飲酒といった反社会的行為、および非人道的、非倫理思想を推奨するものではありません。また、本作品に登場する人物・団体などは現実とは無関係のフィクションです。