アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第6部(第22話)

第二章  スキルキャスター 8 ―ムサシVSロイド①―

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         8

 右の貫手――揃えた五指の狙いは、正確に相手の喉元だ。
 ムサシの双眸が照準と共に細められた。
 ヒュぅドゥ! 暗い空気を裂きながら繰り出された渾身の右手は、しかし空振りに終わる。
 一比古が上体を斜めに捻って回避した。
 そのまま滑るような足捌きで、ムサシの右サイドに回り込む。
 一比古がムサシの右肘を極めにきた。左手で右上腕を押さえて、鈎状に曲げた右腕をムサシの前腕に引っかける。そのままテコの原理によって、ムサシの右肘を逆関節に――
「ちぃ!」
 肘関節破壊――の寸前、ムサシは左の掌底を、自分の右肘内側に打ち込んだ。
 一瞬だけ速く、ムサシの右肘が逆関節ではなくエルボーショットとなり、一比古の顔面へ飛んでいく。
 咄嗟にムサシの右腕を離した一比古は、大きくバックステップした。
 右肘を振り切った反動で上体を右後方へ捻りあげるムサシ。
 上半身とは反対の捻転エネルギーが下半身に伝達して、右上段回り蹴りが生み出された。
 ぅヴぁぁシィィイぃッ。竜巻のような蹴りで空気が嘶く。
 が、ヒット音はない。ゆらり、ゆらり、と蜃気楼のごとく、一比古は避けてみせた。
 ムサシは蹴り足を引き戻し際、そのまま掛け蹴り気味に後ろ回しで振り抜く。
 それも当たらない。するり、とまたもや躱された。
 独特のボディワークだ。あまり見栄えはしない回避法だが、それだけに捉え際が不鮮明だ。
 次は左の下段蹴りだ。
 反撃可能な間を与えずに、ムサシは蹴り技を連撃する。
 急所を狙った間断ない連撃、連打こそが、ムサシの格闘技の身上だ。
 そのスピードと手数を実現させる身体と業。特に《打芸》と呼んでいる打と打の繋ぎの技法が、ムサシが師から受け継いだ最も大切な奥義といっても差し支えない。
 すでに十度、打撃を重ねた。
 蹴りだけではなく、裏拳と貫手も巧妙に交えて、変化を付けていく。
 コンビネーションに必須となるフェイントは不必要だ。

 何故ならば《打芸》の繋ぎには、本能的に人の意識を惑わす動きが織り込まれている。

 故にフェイントに要するタイムラグなしの最速で、ムサシは高度な連打を可能とするのだ。
 通称ならばフェイントなしの連打など、正直過ぎて稚拙の一言であるが、ムサシのフェイントなしの連打はフェイントありのコンビネーションよりも技術レヴェルが高い。
 巧遅でも拙速でもない功速。それが《打芸》の妙である。
 さらに十度、打撃を積み上げた。
 一方的に攻撃はしている。最初の肘関節以外、何もさせていなかった。

 しかし――当たらない。

 相手の防御が上手なのか。ムサシの《打芸》が通じないのか。それとも……
(やはり前世の記憶頼みのシャドーじゃ、これが限界かよ)
 格上どころか、同格の相手さえ不在の単独修業。そのツケがこの初実戦で回ってきた。
 前世では試合と野仕合を何度か経験しているが、流石にブランクが空きすぎだ。
 短期決戦どころか、長期戦になっている。
 ならば戦法を変えるまで。
 左の直突きを引かず、一比古の襟奥を掴む。力ずくで引きつけて、右手も相手の前襟を取る。
 上体を崩して、すかさず変形の払い腰を狙った。
 打撃のみではない。ムサシは『打・極・投』の全てを扱えるのだ。
 ヴゥァ。空気を巻いて宙に舞っていたのは、一比古ではなくムサシであった。

 逆に投げられた。

 しかも投げの軌道が低く鋭い。そして畳の上で行う柔道の試合とは違い、下は固いアスファルトだ。
 当然ながら受け身はタブーとなる。受け身は試合用、もしくは地面が柔らかい土の場合に限って有効な技術だ。
 ムサシは右の五指から接地、クッションを付けて掌を着ける。次いで、手首→肘→肩へと衝撃緩和を繋げて、最後に背中を落とした。これを一瞬で行い、ダメージを最小限に留める。
 これは師に授けられた《投芸》の奥義の一つだ。
 咄嗟の緊急回避ではなく、普段から鍛えている動作ゆえに、ムサシの右腕は壊れない。
 ゴォキ!! アスファルトに叩きつけられた瞬間、お返しとばかりにムサシは仰向けのまま、強烈な左オーバーヘッドキックを一比古にヒットさせる。
 側頭部を捉えた。当たり自体は浅い――が、効かないはずがない角度だった。
 後方に回転して間合いをとってから、すかさず起き上がるムサシ。
 無手ではなく《ステータス・オープン》して〔スキル〕を起動させるべきか……
 対して、一比古は大きく後退して、両手を軽く掲げてアピールする。

「参った。私の敗けだよ。つまりは君の勝ちだ」

 あっさりと降参した一比古に、ムサシは「ああン!?」と顔を顰めた。
 腹立たしさを隠さずに、相手を挑発する。
「ふざけんじゃねえぞ、コラ。こんなんで終わりとか納得できるワケねえだろが」
 一方的に攻めてはいたが、有効打は一発のみだ。
 しかも一比古は明らかに手の内を隠している。仮に【ソーサラー】だとしたら、まだオリジナルの戦闘用魔術を起動すらしていない。そして自分を投げた技術――
 この男は底知れない、とムサシは感じていた。
 ゴーグルとフードで表情は窺えないが、飄々とした口調で一比古が言う。
「正直にいうと、私は戦闘者でも格闘者でもなくてね。身に付けている格闘技は防御と投げ技だけと言っても過言じゃないんだ。もちろん戦闘系魔術師ソーサラーでもない。私の技術はあくまで自衛の手段に過ぎないんだ。だから攻め手は一切持たない」
「素直にそれを信じろってかぁ?」
「敗北を認めたじゃないか。分かり易く説明すると戦場ジャーナリストは非武装が原則だろう。武装していたら戦場で撃たれても文句はいえない。私も同じだ。魔術戦闘のプロモーターなんだよ。だから自分から攻撃はしない。咄嗟に投げてしまったのは、君の動きがあまりに鋭かった為だ。地面に落とす時に、引き上げて手加減していたのは分かっていただろう?」
 ち! とムサシは忌々しげに舌打ちした。
 あの投げが手加減されていたのは、ムサシも感付いていた。
「どうやら君は実戦経験どころかスパーリングすら不足している様だ。打撃はスパーリング不足でもセンスで誤魔化せるが、組み技や寝技、極め技はスパーリングなしだと限界がある」
「まぁな」と、その点は認めるしかない。
 前世での経験と、単独での打ち込み稽古、そしてイメージトレーニング。
 いくら天才であってもそれだけの訓練では、人を相手にした実践練習を積んでいる相手には、投げ、極め、寝技で対等に渡り合える道理がないのだ。

「……とにかく、私は君の味方だ、芝祓ムサシ」

 その一言で、ムサシは緊張を解いた。
 此花を見ると不安そうだ。しかし、名前まで知られているのならば、逆にハッキリした。
「確かにアンタが敵だったら、とっくに俺は警察にお縄になっているか」
「理解してくれて感謝するよ」
 一比古はバラバラ死体に歩み寄ると、抵抗なしで左前腕を手に取った。
「死体処理についても協力しよう。それから君達の犯行は一部始終記録してある。仮に君が私を口封じに殺したとしても、君と渚此花さんは終わりだ」
 此花が強ばった口調で言った。
「私達を脅そうっていうの?」
 芝居がかった大仰さで肩を竦めて、一比古は即座に否定した。
「まさか。私は味方だと言ったはずだ。これからは君の殺人に私も協力するよ。そして殺人とは別のもう一つの欲求……、戦闘系魔術師と戦いたいという願いもプロデュースしよう」
「それでテメエに何の得があるってんだ?」
 胡散臭い。あまりにも胡散臭かった。
「私はMKランキングという闇ファイトを仕切っている身なんだ。むろんMKランキングでの試合では殺人は我慢してもらうが。得というか、理由は、単純に君が欲しいんだよ、MKランキングにね。君は戦闘系魔術師ソーサラーではないが、なかなか面白い存在だ。伝説の武――『堂奥の業』を思い起こさせる古流の格闘法に、認識した事象を〔スキル〕化して取り込める異能。予定しているイベントの隠し球には最適だ」
「テメエの駒になれってか? 俺を舐めるなよ」
 怒りの口調。ムサシの顔に険がこもる。生憎と簡単に利用されるつもりはない。
 他人を利用するのは好きだが、他人に利用されるのは大嫌いである。
「どう解釈しようが君の自由だが、選択肢はないはずだろう? それに戦闘系魔術師ソーサラーと戦えば、相手のオリジナル魔術を〔スキル〕化して保持できる。実戦経験も積める。つまり君はより強くなれる。君にデメリットはないはずだ、《スキルキャスター》」
 確かにその通りだ。
 少なくとも、抑えられた犯行証拠と一比古の身元を突き止めるまでは、反撃の態勢が整うまでは、表向き従う他はないだろう。癪だが、戦闘系魔術師ソーサラーと戦えるのは悪い話ではない。
 一比古はあくまでフレンドリーな態度を崩さないでいる。
「分かったよ。そのMKランキングってのに参戦してやるぜ」
 隙あらば寝首を掻いてやる――と心に秘めて、ムサシは誘いに応じた。

         

 新人の執事――ロイド・クロフォードは元非合法【ソーサラー】である。
 特殊工作員ではなく傭兵という立ち位置だった。
 依頼を達成する為ならば、躊躇なく法律を破る裏社会の傭兵だ。殺人の経験もある。
 紛れもなく人殺しではあるが、弱者を一方的に殺した事はない。
 暗殺するにしても、相手に相応の理由がなければ依頼を受けなかった。殺害が目的であっても可能な限り相手に生き延びるチャンスは与えていた。つまり魔術戦闘で決着をつけた。

 そんな彼が非合法【ソーサラー】を廃業する契機となったのが、現在の主――比良栄優季という少女と、優季を守る為にロイドを倒した堂桜統護の二人である。

 Dr.ケイネスという女科学者から、優季の保護と監視をするという依頼を受けた。
 依頼人の素性を調べるのは基本中の基本だ。
 ケイネスが信用に足らない依頼人だとは重々承知していた。しかし裏社会の常識では、依頼人に裏切られる事を前提で依頼を受けるのは、そう珍しくない。自分の身は自分で守る。そして契約違反をされて、その上で生き残った場合は、違約金も含めて美味しい仕事でもある。今後の信用を守る為に、相手は違約金を弾まなければならないのだから。
 裏切られても生き残れる――とロイドは判断した。
 依頼自体の難易度も低かった。結果として、ケイネスはロイドを裏切らなかった。
 けれど、監視対象である優季は、ケイネスの計画によって絶命の危機に面する事となる。
 ロイドは彼女を哀れんだ。その反面、理不尽な死には慣れ切ってもいた。
 優季を救う手段などない。それを織り込んで、ケイネスはロイドを監視役に選んだ。
 ロイドは普段通り、プロとして任務を完遂しようとした。
 つまり――優季が絶命する、その時まで護衛と監視をやり遂げようと。
 所詮は任務の為に偽装した仮初めの執事だった。
 けれど、優季の執事としての生活は悪くなかった。異性として優季にどうこうという感情はない。非合法な世界で生きてきて、女への愛情は枯れ果てていた。
 そして優季も、ロイドの素性を感づいていた。
 互いに『仮初め』だと理解した上での――主と執事。
 最後の最後に、優季はロイドに主として命令した。朽ちていく醜い姿を統護に見られたくないから、統護を止めてくれと。そして自分の亡骸を人知れず葬ってくれと。
 その命令を受けた。仮初めではなく、本当の優季の執事として。
 命令は果たせなかった。
 優季を救いに来た統護に、ロイドは敗北を喫した。
 統護は優季を救った。ロイドの期待に応えて。

 その奇蹟がロイドに新しい生き方を決意させたのだ。

 ケイネスからの依頼は、完遂という評価で依頼料を振り込まれて、幕を引いた。比良栄家と大企業【比良栄エレクトロ重工株式会社】は、その事件を経て、大きく内実を変えた。
 優季も比良栄家の令嬢としての本来あるべき立場になり、そしてロイドを正式に専属執事として迎え入れてくれた。執事としての知識・技能など皆無な素人であるロイドを。
 その恩に報い、忠義を尽くす覚悟だ。
 現在、主の優季は統護と共に関東を不在となっている。
 ルシア・A・吹雪野の部下三名がサポートとして随員する事もあり、ロイドは優季の意向で休暇をまとめて消化中であった。
(本当に偶然とはいえ、この自由行動は僥倖だな)
 現在、ロイドは夜警をしている。
 依頼人は、弟子入りしたばかりの師――黒鳳凰弦斎だ。

 黒鳳凰道場の内弟子が一人、何者かにやられた。

 被害者は、段位が二段で現役の【ソーサラー】でもある道場最強クラスの男である。
 未だに意識不明の重体で、犯人の手掛かりは皆無だ。
 これは弦斎の判断で、外部には秘密裏にしている。治療費とリハビリを全面負担および犯人追及を条件に、被害者の親族を説得した。もちろん多額の口止め料も支払っている。
 黒鳳凰の内弟子が襲われ敗北した――という醜聞を隠したいという意図が、理由の一つ。
 理由の二つ目は、みみ架に知られたくないからだという。
 みみ架はみみ架で、『何でも屋』のオルタナティヴに依頼をしており、何らかの事件に首を突っ込んでいる。加えて、友人の里央が堂桜エレナに連れ去られている。もしもこの件を知れば、彼女はこの件にも関わろうとするだろう。弦斎は孫の邪魔はしたくないと云った。
 そこで白羽の矢を立てられたのが、新弟子――元傭兵であるロイドだった。
 取りあえずは、事件発生現場の見回りからだ。
 むろん人影を避けた区域である。
 賊は明らかに道場関係者と分かった上で、襲撃してきた。
 このまま姿を眩ませるつもりでないのならば、高確率で自分の挑発に乗ってくるはず――

 ……角を曲がると、ロイドを待ち構えている男がいた。

 年齢は二十歳前後か。
 体格は中肉中背だ。ニホン人の成人男性としては平均よりも一回り大きい。
 アスリートとしては、やや物足りない骨格であるが、四肢の肉付きとウェストの細さが、彼の尋常ではない鍛錬を雄弁に物語っている。
 四六時中、トレーニングしていなければ、このレヴェルの肉体にはならないだろう。
 服装はカジュアルな普段着だ。金銭のない若者風で、数分で上下の色以外を忘れるだろう。
 顔は無愛想な美形――のはずだが、全くハンサムには見えない。
 まるで餓えた狼そのもの。特に目つきが凶暴だ。眉間に刻まれている深い皺が、常態化しているのが窺える。
 ロイドは青年に問いかけた。
「他にも二名、死角に隠れている様子ですが、何か意図があっての事でしょうか」
 気配からして、一名は女性でもう一名は男性。半径で十五メートル以内だ。
 直感を信じるのならば、共に若い。
 男が答えた。
「単なるギャラリーだ。大して広い道幅でもないし、余計な邪魔は減らしたいんだよ」
「どうやら貴方が我が師の弟子を襲った賊の様ですね」
 通行人がいない状況は、決して偶然ではない。ロイドにも願ったり叶ったりである。
「だったら? どうするよ」
「通報はしません。警察を介さずに実力にて排除せよ――が、我が師からの依頼なので」
 あくまでトレードマーク的な『すまし顔』を維持するロイド。
 しかし内心では、そこまでの余裕はなかった。
(この相手は……強い)
 倒された内弟子の実力からして、決して弱いはずはないのだが、これは想定よりも上だ。
 相手が発している濃厚な殺気、そして賊である事を否定しなかった。
 躊躇は命取りだ。先手を取りに――

 ロイドが距離を詰めに行くのと、相手のステップインは、ほぼ同時だった。

 一気に間合いが潰れる。鼻先が触れ合いそうな程の超至近距離だ。
 組むか、ショートでの打撃か。
 この状況で選択した展開は、二人共に――左の肘打ちである。狙いはテンプルだ。
 ガキンっ! 互いの左肘が激突した。
 筋力と体重は同格か。ロイドは師から授かった掌底での右ショートアッパーに繋げる。
 相打ちでいい。ポイントはいかに的確に相手の顎先を捉えるかだ。
 男の動きが見える。敵は右の膝蹴りにきたか。
(なんだ!?)

 動きに不自然なノイズを感じる。そこに意識が。これは――まさかフェイントか?

 ドン! 相打ち狙いだったのに、刹那の戸惑いが邪魔をした。
 ロイドの右掌底は不発に終わり、左脇腹に右膝を突き込まれて吹っ飛ばされる。不思議なコンビネーションだった。何故この間合いと状況で、フェイントの幻など……
 追撃させない為に、ロイドはそのままバックステップした。
 このまま近接格闘に付き合うと不利だ。迷わず【ワード】を口にする。

「――ACT」

 戦闘用のオリジナル魔術を起動した。相手が戦闘系魔術師ソーサラーかどうかは関係ない。
 このままではミイラ取りがミイラになる。
 ここから先は魔術戦闘だ――

 

 

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 本作品は、暴力・虐め・性犯罪・殺人・不正行為・不義不貞・未成年の喫煙と飲酒といった反社会的行為、および非人道的、非倫理思想を推奨するものではありません。また、本作品に登場する人物・団体などは現実とは無関係のフィクションです。