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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第1部(第53話)

第四章  解放されし真のチカラ 17 ―統護VSユピテル①―

 

         17

 殺しから逃げる為の手段。
 フレアに《デヴァイスクラッシャー》をそう断じられた。
「だからどうした」
 まったくその通りだ。対【ソーサラー】戦で【DVIS】の破壊を狙うのは、相手を殺めたくないからである。優先順位を可能な限り【DVIS】の破壊に置くのは、【DVIS】を破壊してしまえば、大抵の戦闘系魔術師ソーサラーは戦闘行為を中止するからだ。
 殺していいのならば、問答無用で相手の頭蓋骨を拳で粉砕すれば、それで終わる。
 そんな勝ちは統護にとって価値はない。
「殺し合いしているつもりのアンタには悪いが、俺にとっての戦いは殺し合いじゃない」
「甘いわね」
 フレアは《レッド・アスクレピオス》に炎弾を吐かせつつ、自らの腕にも炎の鞭――正確には鞭を模した蛇を顕現させた。
 遠距離からの炎弾の連続発射と、変幻自在の蛇の鞭によるコンビネーション。
 つまり炎弾は個別で繰り出す派生魔術ではなく、【基本形態】の基本性能のみで実現させているのだ。おそるべき魔力総量と意識容量である。
 炎弾はあくまで距離をキープする牽制で、攻撃は蛇の鞭。攻撃が当たらずとも無理して攻撃偏向にならない為、統護は距離をつめるタイミングが掴めないでいた。
「お前の身体能力とボクシング技術は確かに脅威だけれど……、それはあくまで人の身としての話。【ゴーレム】や【召喚獣】に置き換えれば、それほど大した性能でもないわね」
 フレアは最初から長期戦の構えである。
 ロングレンジでの攻撃手段を持たない統護は、防戦一方に追い込まれた。
 表情から余裕が消える。
 それ以上に、相手に隙がなかった。
 強い――と実感する。
 戦闘系魔術師――【ソーサラー】としての強さだけではない。魔術云々ではなく、フレアは戦闘技能者として純粋に優れていた。
 策を弄してどうこう、というレヴェルではない。

「統護、もういいから降参してっ!!」

 思わず声の方を向いてしまいそうになる。
 安心しろアリーシア。
 アリーシアが目を覚ましたのを察した統護は、――〔言霊〕を唱えた。
 ごぉぉぉおおぉおおおっ……

 統護の周囲に『炎の渦』が巻き起こり、フレアの攻撃を全て遮断した。

 フレアの魔術を一歩も動かずに防いだ統護は、余裕をもってアリーシアへと向く。
 アリーシアは唖然となっていた。
 それはフレアも同様だ。
「どうして? 統護は魔術が使えないはずじゃ……」
 気を取り直したフレアが、総攻撃を繰り出してくるが、統護は全て炎の渦でガードする。
 統護は事もなげに言った。

「ああ。確かに俺は魔術『は』使えない」

 しかし似て非なる別のチカラは使用可能だ。
「だ、だってそれってどう見ても……ッ!!」
「どう見ても、か。まあ、このレヴェルに出力を抑えていると区別つかないよな」
 出力を上げると観測しているであろう軌道衛星に露呈してしまう。
 今の今まで、安易に使用しなかった理由のひとつだ。
 しかしルシアのお陰で、軌道衛星の観測を遮断できるという既成事実ができていた。
 とはいっても、学校屋上での使用を躊躇ったのは、【ウルティマ】だけは観測していると分かっていたからだ。
 統護は膝をつき、地面に手の平を乗せた。
 浪々と祈りの言葉――〔言霊〕を捧げ、統護を中心とした〔結界〕を形成する。
 規模は統護を中心として半径三百メートル程に設定した。
 ルシアの広域大規模魔術《アブソリュート・ワールド》に極力、似せた。観測を遮断された軌道衛星が、ルシアと同じ魔術が発動された、と誤認するように。
「いったい何をしたの、統護?」
「情報遮断用の〔結界〕を張った。これで心置きなく戦える」
 アリーシアではなく、フレアが目を血走らせて叫ぶ。
「お前はいったい何者だッ! 堂桜統護」
「何者っていわれても、――俺は堂桜統護。それ以外の何者でもない」
 統護は噛み締めるように言った。
 そう。結局のところそれだけなのだと、この世界の友人達に教えてもらった。

 ――この異世界【イグニアス】にきて、驚いた。

「ただ、俺には〔精霊〕が視えるんだ」

 ――だって、元の世界では微量にしか感じられなかった息吹が、ハッキリと感じ取れた。

「そして〔精霊〕と会話ができるんだ」

 ――それに【イグニアス】は人と世界に魔力が満ちていた。自分とは似て非なる魔力が。

「俺は数多の〔精霊〕たちにお願いして、様々な超常現象を体現できるんだ」

 ――元の世界では極小さな現象だったけれど、この世界では天災レヴェルで顕現できる。

「機械と電脳を通じて超常現象を魔力によって引き起こしている魔術――【魔導機術】とは異なり、俺は技術を必要としない。俺の超常現象は〔精霊〕に魔力を供給する事によって直接、世界の理に作用して体現する契約であり法規だから」

 ――元の世界では一子相伝だった。昔はもっと自然と〔精霊〕力に満ちていたという。

「そうだな。【魔導機術】が堂桜財閥が世界に広げた『魔の技術』ならば、いま俺が体現している超常は、堂桜一族が古来より細々と守ってきた『魔の法則』といったところかな」

 ――元の世界では〔霊能師〕と呼称されていたけれど、この世界では……

「ゆえに魔術師ではなく、俺は……〔魔法使い〕と名乗ろうか」

 その名乗りあげと同時に、統護を包んでいた炎の渦が一瞬で消える。
 余韻である風が、統護の髪をさらりと揺らした。


 このチカラを継承する為に、歴代の堂桜(堂奥=蘊奥)は幼少時より先代となる父から数多の修練を課せられている。わざの会得はその副産物だ。統護も自然の中で己を磨き上げる事に、多くの時間を費やしてきた。当代の堂桜として、神魔との〔契約〕を引き継ぐに相応しい肉体と〔魂〕を造り上げる、その為だけに。


 それが統護の真実。
 統護はアリーシアに微笑みかける。
「覚えているか? 屋上で言ったろ。特別にお前に見せてやる、本物ってやつを……てな」
 けれどアリーシアは理解できていない様子だ。
 そして理解できたのか、フレアが戦慄していた。
「そ、そ、そんな莫迦な。【魔導機術】の開発理念の元になっている〔魔法〕が実在しているだと? 伝説の〔魔法〕を、伝説の理をお前は本当に使えるというのか。〔魔法〕を模して、少しでも〔魔法〕に近付ける為の【魔導機術】システムだというのに。お前には必要ないから、だから。だからなのか!?」
 震える声に対し、統護は静かに答えた。
「さあな。俺が【DVIS】に拒絶される本当の理由は正直、分からないよ」
 フレアは笑った。
 心の底から楽しそうに、そして嬉しそうに。
「そうか。〔魔法使い〕……か。戦闘系魔術師を【ソーサラー】と呼んでいるのだから、さしずめお前は――伝説の存在である【ウィザード】といったところか」
 アリーシアが呆然と呟く。

「統護が……伝説の【ウィザード】」

 フレアは【基本形態】である《レッド・アスクレピオス》を消した。
 そして宣言する。
「嬉しいわ。伝説の【ウィザード】が相手ならば不足はない。今度はワタシが見せる番ね」
 本当のチカラを、と両目を妖艶に眇めた。

 

 

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