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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第1部(第20話)

 

第二章  王位継承権 6 ―模擬戦―

 

         6

 頭上の日差しが強い、とある首都圏のありふれた街中。
 黒いマントを羽織った学校制服姿の少女――オルタナティヴは、輝くような紺碧の空のもと、背中を預けている街路樹が張っている枝葉を日傘にし、気軽な口調で会話していた。
 人と対面で話しているのではない。
 衛星通信での通話だ。
 手にしている情報端末は特別製で、分単位で更新されている厳重なファイアウォールに守られている魔導型軌道衛星【ウルティマ】への通話ジャックが可能だった。
 いわば世界一安全な秘匿回線である。
「……というわけで、約束のブツを早急に頼むわ」
 彼女の口調は、その法外な要求に対して、いささか不謹慎なほど気楽だ。
 根回しは済んでいる。
 交渉が成功すれば、自身の生体データは秒を待たずして先方に渡るはずだ。
 それで知られてしまう事もあるが、それよりも――欲しいブツがある。
「渋らないでよ。だって基礎理論は完成しているんでしょう? 後は製造して実験する段階だって。ならばアタシを実施試験に使用するっていうのも、ありじゃないかしら。ええ、そうよね。元々は貴女の為だけのワンオフ技術だって知っているわ。だからこそアタシがこの機会に横取りしたいな、って思ったわけで」
 通話先の罵倒は涼しげに聞き流す。
「いやいやいや。アタシは代弁者に用はないのよね。ただ伝言をしてくれればいいから」
 口の端を釣り上げて、オルタナティヴは断言する。
「別にいいわよ? 嫌だっていんだったら王子様の寝首を掻くだけだから――」
 チラリと護衛の女性と共に近くにいる偽名・エルビスのファン人に、冷徹な視線をやった。
 彼女は返事を待たずに通話を切る。
 絶対安全な秘匿回線へのジャックとはいえ、これ以上の会話は【ウルティマ】からの逆探知を受ける危険が高かった。
 グシャ。これはもう使用不能だ。オルタナティヴは携帯情報端末を軽々と握り壊す。

「――さて、これで本当に後戻りはできなくなったわね」

 後悔はなかった。
 黒髪の少女は青空を眩しげ見上げる。
 今ならば――遥か遠くに在るこの空に、手が届きそうな気がした。

         

 突発的なイベント――否、トラブルを、みみ架は離れた位置で見ていた。
 そんな彼女に纏わり付く小柄な生徒。
「どうしたのミミ? 随分と浮かない顔してさ」
 普通科二年首席の美濃輪みのわ里央りお
 名門校の首席とはいってもガリ勉タイプに程遠く、そしてテディベア的な見た目のイメージ通りに運動は苦手、という自称・みみ架の大親友である。
「別に。下らないな、と思って」
「ミミらしいけど、その割りには劣等生を熱心に見てるよね」
「見てない」
 そう否定したものの、みみ架の視線は彼に釘付けだ。
 原因は、夢。

 ――例の不思議な夢の内容を、忘れてしまった。

 夢に導かれ、古書堂の倉庫で本型【AMP】を発見した、直後から
 記憶が抜けていくのが怖く、懸命に引き留めようとしたが、無駄であった。
 里央がからかってくる。
「ひょっとして、劣等生が気になる? だって前に、劣等生じゃなくて天才で優等生だった頃に、ミミの家に遊びに来てたじゃん」
「あれは別人」
 みみ架は断言した。
「ふぅ~~ん。驚かないけど、ハッキリ言うね」
 不思議だ。忘れまいとした最後の欠片のいくつかに、統護の名前がある。
 彼が気になるのは、別の理由の筈。
 そう。統護が隠している本当のチカラ――

 きっと彼の本質は鳳凰流と同じ

 だから気になっているのに違いないのだ。
(本当に?)
 その疑問に、小脇に抱えている本型【AMP】――《ワイズワード》は答えてくれない。
 彼に対し、強く感じるナニか。
 みみ架の熱視線に、里央はからかうのを止めた。

         

 美弥子の【ゴーレム】――《クレイ・ウォーリアー》の雄々しき姿に、観衆が沸く。
 古代の英雄『ヘラクレス』さえ貧弱にみえる屈強かつ巨大な外見である。
 グラウンドの中央が戦闘舞台となり、美弥子は『土の要塞』ごとグラウンドの端へと移動していた。地面が土ならば、低速で【基本形態】を維持したまま移動可能だ。
 美弥子が離れ、いよいよ開始となる。
 さて……と、と統護は【ゴーレム】兵士を前に、半身になって格闘戦用の構えをとった。
 魔術を使えない以上、肉弾戦しか選択肢がない。
 しかし巨躯を誇る【ゴーレム】が相手だと、ボクシングやその他の格闘技術を用いて戦うのは無理そうである。基本的に統護の格闘技術は対人かそれに準じている代物だ。
 これはなかなかにタイトな条件である。
 タイムアタック勝負でなければ、勝つのは容易い。魔力の源となっている美弥子が、供給源として限界を迎えるまで逃げ切れば【ゴーレム】は勝手に消滅する。これだけ精巧な【ゴーレム】を二体も創り出したのだ。相当な魔力を消費しているのは間違いないだろう。
 だが待ちの一手というのは、状況的に許されない。

「はっ! 統護ぉ。せいぜいご自慢の超人的な身体能力で逃げ回ってな」

 競争相手である史基は嘲笑いを残し、専用【DVIS】を起動した。
 彼の【DVIS】は足首のリングである。
 【魔方陣】が地面に描かれ、そこから炎の奔流が局地的に発生した。史基はその炎の上に立っていた。吹き上がっている炎渦から、僅かに両足が浮いている。
 その秘密は――サーブボード型の炎板であった。

 これが史基の【基本形態】であり、その名称は《ファイヤ・ライド》だ。

 タイプとしては、アリーシアと同じく『魔術現象・特性を身に纏う』系統であるが、アリーシアの《フレイム・ナックル》よりも高度なオペレーション機能を備えていそうだ。
「ぃィいいいぃいイイイイいっ、ぜェぇえええエエええッ!!」
 己を鼓舞するように史基は雄叫びをあげた。
 【魔方陣】が移動し、吹き上がってくる炎が局地的な渦から、波へと変化する。
 その炎波に、サーフィンのごとく史基は乗っていく。
 波の形状を変化させ、なおかつ自在にその波に乗る事により、史基は変則的で予測困難な超高速移動を実現していた。
「ひィイいゃッほうぅうウ!」
 炎波で、あるいは炎のボードで、更には波から飛ばす炎の飛沫で、多重攻撃を仕掛ける。
 ドン、ドン、ドン、ドォン! 派手な爆発が連続していく。
 その度に観客が盛り上がり、歓声があがる。
 証野史基の名は、現時点でも将来の有望株として学園に名を馳せている。その評判に違わぬ見事な戦いぶりであった。

 ――だが、【ゴーレム】には通じていなかった。

 【ゴーレム】は史基の攻撃を堅実に楯でブロックし、剣撃で死角に回られないように史基の移動ルートを先回りして牽制する。
 時間経過に従い、自信に溢れていた史基の表情が、次第に余裕を失っていく。
 観客達もざわめき始めた。
 美弥子は史基の戦いぶりを冷めた視線で採点する。
「三十点ですね。見事なオリジナル魔術ですけど、動きや見た目の派手さに対してロスが大きいですね。その才能は大いに認めます。しかしその戦術がトリックスターとして機能するには基礎的な戦闘力と経験値が絶対的に不足しています。確かに貴方は優秀な生徒ですが、センセだって学園生時代には、貴方程度の成績を余裕でとっていましたよ?」
 やがて疲労も重なり、史基の動きにキレがなくなってきた。
 移動パターンと攻撃バリエーションを相手に学習されつつあったからだ。
 ――一方。
 統護も【ゴーレム】と激しく交戦していた。
 こちらは完全は一進一退だ。
 動きの速度は完全に統護が上回っている。攻撃も一方的にヒットさせていた。格闘戦というよりも、身体能力を全開にしてのアクロバティックな挙動を生かした攻撃(ヒット&アウェイ)だ。駆け引きが皆無の身体スペック任せの大雑把な戦い方だが、オルタナティヴ戦の経験が生きている。
 しかしいくら【ゴーレム】の身体を破壊しても、即座に破損箇所が修復されてしまう。
「ちっ。面倒くさい相手だぜ」
 防御が硬い。【ゴーレム】だけではなく美弥子の『土の要塞』もだ。
 遠くから魔力放射という選択肢が頭を過ぎる――が、こんな模擬戦で下手に手の内を見せたくない
 魔力を込めた拳で、魔術製の身体を破壊できるが、完全に崩落させるには至らない。
 やはり魔術強度が格別なのだろう。
 好都合な事に、観衆は統護が【ゴーレム】の外層を破壊できる真意を理解していなかった。
 外装ではなくコアだ。
 魔術の核となっている部位に、ダイレクトに拳を叩き込むしかない。
(トラブルの結果とはいえ、まあ、これも経験か)
 淡雪との訓練以外では、模擬の試合とはいえ、初めての魔術戦闘だ。
 統護は【ゴーレム】の身体に埋め込まれている【AMP】を狙うが、どうやら【AMP】は体内でランダムに移動しているようである。よって統護は攻め手に欠けていた。
 そんな統護を、美弥子は掛け値なしに評する。
「凄いですね堂桜くん。肉弾戦としては百点満点です。センセの《クレイ・ウォーリアー》を生身で圧倒できるなんて、本当に人間なんですか? でもこの展開も予定通りだったりします。それからと戦闘系魔術師ソーサラーしては、当たり前ですけどその戦い方では零点ですからね」
「生憎と俺はもう魔術師じゃない」
「そうですね。四大エレメント『地・水・火・風』を自在に操った天才魔術師であった以前の貴方なら、近い将来にはワン・エレメントの極致――【エレメントマスター】にすら届いたでしょうに。しかし今の貴方は、いかに肉体が超人であっても魔術の劣等生に過ぎません」
「……劣等生、か」
 元の世界でも決して優等生ではなかったが、ここまで見事に落ちこぼれるとは。筆記試験に限っては最下位という体たらくである。
 周りにいる魔導科の生徒が規格外の天才ばかりなので、別に落ち込んではいないが。
「残念です。センセだけではなく、この学園には魔術師であった頃の貴方との模擬戦を楽しみにしていた教師も多かったのですよ?」
 会話の最中。
 ぼこボこぼコぉ! 統護の足下の地面が、沸騰したかのように不自然に波打った。
 そして地面から腕が二本生えてきて、統護の足首を掴む。
「なに」と、統護は足下を見る。
 美弥子はしてやったりと笑んだ。

「あら、油断しましたね。魔術戦闘って基本なんでもありですから♪」

 完全に意表を突かれた。
 予想外の箇所から動きを阻害された統護に、【ゴーレム】の剣が唸りをあげて迫る――

 

 

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