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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第1部(第21話)

 

第二章  王位継承権 7 ―共闘―

 

         7

 校舎の屋上から、締里は突発的なイベントを眺めていた。
 ギャラリーの盛り上がりとは反比例して、締里の心は静かに冷めていく。
「茶番……ね」
 ため息と共に愛銃を特殊ホルスターから取り出し――統護の背中へと照準を定めた。
 狙撃用魔術――準備オーケー。
 相手の【基本形態】の索敵機能のトレースおよび瞬間ジャミングをテスト。
 ロックオンはしない。【基本形態】を立ち上げ済みの戦闘系魔術師ソーサラーを相手に魔術的なロックオン機能を使用すれば、ほぼ確実に逆探知されるからだ。よってスナイパー魔術師は基本的に有視界(目視)で照準する。
 オールグリーンだ。いつでも撃てる。
 そして、締里はトリガーへ掛けた指を引くタイミングを窺う。

         

 統護は足下を掴まれた土の足を、力ずくで振り払って跳躍した。
 その一瞬後、足下を大剣が通過する。
 観衆が目を見張るほどの大ジャンプだ。魔術による身体強化がされていないとすれば、間違いなく世界記録を大幅に塗り替える高さだった。
「間一髪でしたね。しかし……」
 台詞の途中で、美弥子の笑みが微かに強ばる。

 統護は【ゴーレム】兵士を無視し、一直線に美弥子に向かってきた。

 距離は充分に離れているが、統護の脚力ならばものの数秒で接近可能である。
「何のつもりです? 堂桜くん」
 怪訝な表情の美弥子は、『土の要塞』の壁面に多数の銃口を出現させた。
 デザインは大小の円筒を組み合わせただけのシンプルさで、ハンドガン程度の口径だ。しかし、その全てが唸りを上げる。
 ガガガガガガガガガガガガガガガッ!
 一斉掃射だ。
 三十を超える銃口が上下左右に動きながら、莫大な数の弾幕をばらまいていく。
 足下を狙った弾丸の雨に、統護は大幅な迂回を強いられる。
 しかし弾丸には怯まず、統護は走りながら言った。
「なんでもあり。……【ゴーレム】以外の攻撃をそっちがしてくるのなら、こっちもなんでもありでいかせてもらうぜ。文句はないよな?」
「まさか術者を直接叩くつもりですか」
「常道だろう? 魔術戦闘では」
 とにかく離れていては話にならない。接近しての格闘戦にもちこむのだ。
「確かに。しかし、センセも舐められたものですね」
 美弥子は「やれやれ」と頬を歪めた。
「つまり先生を狙ってOKって事だよな。よかったぜ。ビビッて拒否されなくて」
「蜂の巣にしてあげますよ。死なない程度にね」
 一転して冷徹な顔で告げる。その表情は紛れもなく【ソーサラー】の貌だ。
 銃口一つにつき、毎分三百発の土の弾丸を吐き出していく。しかも薬莢排出も廃熱も必要としないエンドレスだ。数自慢の反面、ホーミング機能やロックオン機能は備えていない。統護相手にロックオン機能は無効であると見越した上で、美弥子は物量で圧倒しにきている。
 しかし統護は、瀑布ともいえる弾丸の群を躱しながらジグザクに疾走した。
 当たらない。掠りもしない。
 接近さえ許していないが、あまりのパフォーマンスに、美弥子は目を見開いて驚愕した。
「な。どうして!?」
「【ゴーレム】を維持したままじゃ、これが先生のリソース――意識容量の限界だ」
 いかに【AMP】による魔術補助が強力だろうと、元となる【ゴーレム】を形成し、維持しているのは紛れもなく美弥子本人である。
 美弥子には数多の銃口を全て自在にコントロールするだけの余力はなかった。魔力のリソースを確保する為に、数パターンずつの動きを、銃口数組毎に組み合わせて制御していた。
 そして銃口群の基本照準を統護に合わせようにも、統護の動きについてこられなかった。
 パターンさえ見切ってしまえば、統護にとって弾丸の数は問題ではない。
「キツイなら消してもいいんだぜ? 魔術制御のお荷物になっている【ゴーレム】を」
 統護は挑発的に笑ってみせる。
 【ゴーレム】兵士は高速で走り回る統護を追いかけるも、まるで付いていけなかった。
 むろん【ゴーレム】を消せば、撃破されたと同義である。
 ギリぃ! 焦りを滲ませた美弥子は歯ぎしりした。
「まさか、ここまでとは……ッ!!」
 美弥子の命に従って、史基の相手をしていた《クレイ・ウォーリアー》が、統護の前に立ち塞がった。
 統護はその《クレイ・ウォーリアー》の剣撃さえも、易々とかい潜った。
 だが、もう一体の【ゴーレム】に追いつかれ、挟撃にあう。
 美弥子は銃口全てを一点に集中する。
 これで終わり――と、最大出力で魔力を込めるその寸前。

「テメエにばっかり、いいカッコさせるかよォ!!」

 【ゴーレム】からフリーになった史基が、炎のビッグウェーブに乗って美弥子の頭上に躍り上がった。
 波飛沫の弾丸で牽制する中、炎のサーブボードを巨大な一本の槍へと変化させる。
 その槍を見舞おうとする寸前。

「甘いですね。――《ランスシング・ダンス》」

 冷徹な【ワード】と共に、美弥子は壁面から槍の形状を模した突起を数十、生み出した。
 槍先が一気に伸びる。ずがガガがッ!
「くそったれが」
 史基は咄嗟にサーブボードを槍から楯へと変化させ、直撃は免れた。
 しかし機動力であるサーフボートを槍群に縫い付けられ、史基は動きを封じられる。
「これで終わりです、堂桜くん!」
 次の瞬間、美弥子は二体の《クレイ・ウォーリアー》を相手している統護へ固定した銃口群を、照準なしで一斉射撃した。
 ゴゴゴゴゴゴゴゴォ!!
 衝撃そのものの重低音が連なった。射撃というよりも爆撃と呼んだ方がいい総攻撃は、《クレイ・ウォーリアー》二体と地面を致命的なまでに削りまくる。
 土煙があがり、爆撃地帯が茶色の煙幕で覆われた。
 その煙幕がくぐもっている中。
 統護が辛うじて形状を維持している【ゴーレム】を踏み台に、壁面が展開されていない美弥子の背後へと飛んだ。
 だが、それも美弥子の予想の範囲内だ。
 隙を突いて攻撃しようとした史基に、『土の鉄槌』を下し地面に叩きつける。
 次の瞬間。美弥子の壁面――《グランド・フォートレス》そのものが大きく変化した。
 例えるのならば、サーベルの生えた総入れ歯だろうか。
 がばぁ、と上下ではなく左右に展開。

 凶悪なソレは主である美弥子だけを避けて、統護を喰らおうとする巨大な顎になる。

「受けなさいッ!! ――《クラッシュ・スナップ》」
 ぐぅぉオん。巨大な顎が、空中の統護を噛み砕こうとした、その瞬間。
 顎に生えている牙が、一本だけ――バキン、と折れた。
 目を丸くした美弥子の顔が凍りつく。
 折れた牙の噛み合わせが欠けた隙間から、統護は《グランド・フォートレス》内に侵入した。
 攻め手が尽き、愕然と立ち尽くす美弥子に、統護は余裕の表情で告げる。

「――この勝負、『俺達』の引き分けですね」

 美弥子に返事する時間さえ与えず、統護は当て身で美弥子を気絶させた。
 一瞬だけ逡巡したが、美弥子は無抵抗を選択した。
 同時に、彼女のオリジナル魔術であった【基本形態】の『土の要塞』と【ゴーレム】の兵士二体が、溶けるように土へと還った。【魔導機術】が停止したのだ。
 これで決着であった。
 観衆から大歓声があがる。
 生徒達は喝采をあげ、教職員達は揃って苦み走った顔になる。
 気絶した美弥子を片腕だけでお姫様だっこしている統護に、史基が憮然と言った。
「特別に今回だけは、ひとつ貸しにしてやるよ」
「だからよ。最初から悪いのは俺だっての。引き分けって事だし一緒に掃除しようぜ」
「癪だが、それについては異存はない」
 笑みは交わさなかったが、二人は自然とハイタッチを交わした。
 再び、歓声が湧き起こった。

         

 締里は愛銃の銃口を下ろす。
「――ったく、これでいいんでしょう。これで……」
 本当に茶番だ。
 自分でなければ瞬間ジャミングに失敗し、美弥子の【基本形態】の自働サーチ機能で狙撃を察知されて、防がれていたかもしれない。最悪で反撃される。それ程、高度な魔術理論だった。純粋な狙撃は戦闘系魔術師ソーサラーには通用しないのが常識だ。魔術を併用しての魔術スナイプであっても、成功させるのは至難の業である。
 超一流のスナイパー魔術師である締里だからこそ、辛うじて成功できたといえよう。
 得意分野による仕事で、先日の汚名返上といったところか。
(借りは返したわよ、劣等生)
 大団円的なオチだが、締里はニコリともしない。
 こんな回りくどい真似をしなくとも、と苦々しく締里は思った。
 嬉しそうなアリーシアが目に入る。
 いやに目に付く。そして胸がざわつくのだ。
「随分と私らしくないな、最近」
 無機質な戦闘人形キリング・ドールとして開発製造(ロールアウト)された。
 余計な感情を排除し、ただ任務をこなすだけの存在になっていた筈なのに。
(彼女――アリーシア姫を見ていると)
 不思議と締里の感情は大きく揺らいでしまう――

 

 

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