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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第1部(第05話)

 

第一章  異世界からの転生者 3 ―魔術―

 

         3

 淡雪が口にした魔術という単語。
 この【イグニアス】世界の人間は、誰もが大なり小なり『魔力』と呼称されている生体エネルギーを秘めていて、意図して魔力を利用する技術を社会規模で確立しているという。
 統護がいた元の世界にはない技術だ。

 ――今の自分が『強力な魔力』を秘めているのは、この【イグニアス】世界に転生した故か、と統護は解釈した。

 元の世界では、魔力を知覚可能な者なんて、極一部だったのだが。
 淡雪は胸元に手を入れ、服の中に入れていたペンダントの飾り部分を、翳して見せた。
 それは手の平のサイズの四分の一ほどの八角形のチップである。
 縁は金色で、中央に紅い宝石が埋まっていた。大枠はシンプルなデザインだが、細部に紋様の様な回路が複雑に走っている。

「これが魔術の起動に必要なコア。通称【DVISデヴァイス】です」

 デヴァイス――『ダイレクト・ヴィジョン・インジケイター・サポートシステム』の頭文字を繋げた名称だと教えられた。
 形状・大きさは多岐に渡って規格化されており、出力も登録者の魔力によって異なる。
 国家から魔術師と認定を受けた者は、業者にオーダーメイドで発注し、専用【DVIS】を所持する事が法的に許されるのだ。個人用に調整された専用【DVIS】でなければ、各々の魔力を効率的に運用するのは難しく、また無意識下にあっても精確に魔力を供給する必要がる為に、形状にも嗜好を反映させる者が多い。
 つまり統護の元の世界おける従来の魔術師と、この異世界の魔術師は定義が違う。後に魔導科の講義で、統護が把握していた従来の魔術師は、古代魔術師(=【メイジ】)と再定義されている事を学ぶ。

 魔術師ではない一般人も、簡易型の汎用【DVIS】を携帯している。

 また個人で所有する【DVIS】パーツと、施設等に埋め込まれている【DVIS】装置は、根本的に役割が異なっている。
 魔術師用の専用【DVIS】は、OSが内蔵されているRAMチップに複数のアプリケーション(ソースコードによる魔術プログラム)が個別用に書き込まれており、魔術師のコントロールで複数の【魔導機術】を操作可能になる。
 一般人用の簡易型汎用【DVIS】は、施設等の【DVIS】を起動する、単純なキーとしての役割しかもたされていない。
 【DVIS】だけではなく、魔術も二種類に大別される。
 個人用【DVIS】により、魔術師が施設等に敷設されている【DVIS】の【魔導機術】回路のサブプログラムにアクセスして起動する【間接魔導】と、魔術師が各々の専用【DVIS】に内蔵されたオリジナルプログラムのみで起動する【直接魔導】という区分だ。
 膨大な容量の魔術プログラムを実際にコンパイルして演算処理するのは、【DVIS】内の演算機能ではなく、外部に存在している超次元量子スーパーコンピュータの役割となる。その超次元量子スーパーコンピュータへアクセスする為のIDとなるのも【DVIS】だ。
 他にも【AMPアンプ】と呼ばれる補助機器があるが、それは後で説明するといわれた。
 基本概要は以上との事だ。
「……なるほどな。おおよそは把握できた」
 つまり魔術師は魔力を【DVIS】に注いでシステムを介さないと、いくら魔力を秘めていても魔術として体現できないというわけだ。本物か嘘かは別にして、だが。
「この【DVIS】の開発ノウハウと特許を、我が堂桜一族が独占しているのです」
「魔術関連の利権を事実上、牛耳っているってわけか」
 淡雪が頷いた。
 にわかには信じられない。元の世界の堂桜一族とは、随分と規模が異なっている。秘匿しながら一子相伝している『逸史の血脈』どころか、まさか世界に名だたる大財閥とは。
「では、お兄様を調べさせてもらいます」
 彼女は小さく「――ACTアクト」と呟く。
 ACT――『アクセス・クリエイト・トランスファーメーション』の略語である。
 その呟きで、ペンダントの飾り部であった【DVIS】内の宝玉が輝く。
 ヴン! 宝玉内に英文がスライドしていき、足下に白銀に輝く【魔方陣】が顕れた。

「――《バイオ・アナライズ》」

 術式(魔術プログラム)を実行する【ワード】を唱えた。
 淡雪は白い額を、統護の額にそっと合わせた。

「魔力を極限まで抑えて下さい。そうしないと精確にスキャンできません」

「難しいな」

「? ノイズが混じっています。こんな事が。もっと魔力を低く」

「こうか?」

「ええ。それで何とか……」
 統護の身体が温かい光で包まれる。体中を不思議な感覚が走査する。
 これが【魔導機術】か。どうやらこれはこれで本物だと、統護は受け入れた。
 と、同時に。
 妹と名乗っているとはいえ、同年代の少女と額を合わせている。そんな姿勢に、統護は胸の高まりを抑えるのに苦労していた。

「貴方、誰ですか!!」

 鋭い誰何。驚愕と脅威に染まった表情で、淡雪が飛び退く。
 統護に向けた右手には、白く輝く微細な結晶の流れが衛星のように回っていた。
 それだけではなく、いつの間にか部屋全体を占めていた結晶群が、緩やかに踊っている。
 ある意味、幻想的な風景だ。
 おそらく《バイオ・アナライズ》という【魔導機術】とは別だろう。

「返答いかんによっては――撃ちます」

 警告、否、脅迫に統護は目を丸くした。
 ちょと待て。物騒に過ぎる。どうなっているのか、サッパリ理解できなかった。
「誰って、だから堂桜統護だ。最初からいってるだろ、この世界とは違う世界からきたと」
 敵意はない、と統護はハンズアップする。
 冷静さを取り戻したのか、淡雪は右手をおろし、白銀の魔術を消した。
 それで冷えた空気が元に戻る。
 部屋の隅々にまでに浮かんでいた結晶群も消えていた。
 まるで周囲の空間ごと『白銀の魔術』の影響下にあったようだ。この時の統護は、【ソーサラー】が魔術戦闘で運用する【基本形態】という概念をまだ知らない。
 攻撃魔術を引っ込めても淡雪の表情は険しいままだ。
「信じられない解析結果ですけど、貴方は姿形は寸分違わずにお兄様と同一ですが、遺伝的にみると完全な別人。魔力性質も全く別。血統的には遠縁ですらありません」
 その言葉で統護は理解した。
 異世界での同一人物=同一血族ではないようだ。
「そうか。やはりこの世界の堂桜統護の身体に、俺の意識が憑依したってわけじゃないのか」
 元の世界の身体そのまま転移した、という感じでもない。
 間違いなく元の世界での身体は素粒子レヴェルで分解・消滅してしまった、と知覚していた。
 感じる魔力や身体感覚の差異は、転生時の再構成が原因と考えるべきだろう。
 困惑した顔で淡雪が首を横に振る。
「どうやら、突飛に過ぎますが、異世界からの転生を信じるしかありません」
 同じく淡雪も事態を飲み込み始めた様子である。
 仕方なしに異世界転生を認めたという案配だ。
「整形したって可能性は考えないのか?」
「どんなに精巧な整形であっても、私の《バイオ・アナライズ》は誤魔化せませんから」
「しかし医者要らずな便利な魔術だな」
「あくまで解析だけです。それに魔術師である医師は極少数ですし、魔術師でも《バイオ・アナライズ》が使用できる者も少数。この私であっても、貴方の微小な魔力でノイズを発生させてしまう程、制御が難しい魔術なのです。測定系の医療機器に【DVIS】内蔵させて、《バイオ・アナライズ》を【間接魔導】として利用できるようにする研究も続けられておりますが、やはり複雑なプログラムは【直接魔導】でなければ制御が難しいのが現状です」
 淡雪の話によると、いくら便利でも【魔導機術】は万能ではないらしい。
 魔術プログラムを実行すれば、魔術師ならば誰でも同じ結果――という程、簡単な話ではなく、失敗(エラー)してしまう者もいるのだ。
 それでも元の世界に比べ、環境汚染やエネルギー問題は随分と良好な世界である。
 二人はしばし無言になった。
 淡雪は敵対する意志はないように思える。ひたすらに混乱しているようだ。

 さて、これからどうするべきか……

 とりえあず当面の生活は何とかなりそうだ。淡雪頼りの他力本願だが。
 危機的状況ではあるが、思案するまでもなかった。今の自分は、元の世界では得られなかった待望のチャンスを得ている。この世界には己を縛る鎖はない。しがらみがないのならば――本当に人生をやり直せるのでは?
 少なくとも、今の自分から脱却できるかどうか、試せるのは確かだ。
 大財閥の御曹司なんて柄ではないけれど、この世界の自分は、そう、……自由である。
 古来より脈々と続いていた堂桜の呪縛から、この異世界で解き放たれたのだ。
 統護は思い切って申し出た。
「なあ、淡雪」
「なんですか?」
「悪いけど、当面はこの世界の堂桜統護として過ごさせてもらうぜ」
 言語や貨幣・経済・社会体系については、日本とニホン、ほぼ同じだ。
 大きな違いである【魔導機術】は、どうにか付き合っていくしかないだろう。
 小ぶりな顎に指を当て、淡雪は数秒、思案する。
「もちろんですわ。お兄様の姿をした異世界人をこのまま野に放つなど、堂桜一族の直系として見過ごせません。けれど、貴方はこれからどうするおつもりなのですか?」
 その問いに、統護は真っ直ぐに答えた。
「元の世界に戻る方法を探す」
 未練はなかったが、やはり最後には還る以外の選択肢は思い浮かばなかった。
 すぐか、あるいは遥か先か、いずれ元の世界に還る時。
 果たして自分はどう変わっているのだろうか。
 あるいは変われないままか。
 決意を果たすと、心の霧が晴れたような清々しさだ。
「交換条件があります」
「なんだ」
「私の本当のお兄様を捜すのを手伝って下さい」
 統護に断る理由はない。
 自分とて、この世界本来の堂桜統護に会ってみたい。まだ存在しているのならば。
 気持ちを切り替えろ。
 さあ、終わったと思った人生を、この異世界からリスタートさせよう。


 ――こうして。
 異世界人としては他人、この世界の堂桜統護としては妹である、淡雪と出逢った。
 正真正銘、世界の命運を握る出逢い。
 それも、無限に存在している数多の平行世界を含めての――

 

 

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