アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第1部(第06話)

第一章  異世界からの転生者 4 ―監視―

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         4

 古びた壁時計に目をやる。
 今朝も三十二人分の弁当を作り終えたアリーシアは、時刻を確認し、舌を出した。
「いっけない。時間が押しているわ」
 彼女は右手首に嵌めているリング型の【DVIS】に魔力を送り、厨房内の調理機器を全て停止させる。味を考えると、ガスを使用した火力の高いコンロが欲しいが、この厨房には予算の都合で最も安価な、【魔導機術】による熱源を使用した調理器具しかない。
 安全で便利。しかしアナログよりも味気ない。それが【魔導機術】の魔術機器だ。
「うわぁ~~ぁ! 今日は豪華だね」
 大小様々の弁当箱の中身を覗いて、小学生低学年の男児が喝采をあげた。
 起きたばかりなのか、まだパジャマ姿だ。
 弁当のおかずは、唐揚げにハンバーグにミニグラタン、そしてだし巻きと栗金団だ。冷凍食品ではなく全て手作りだった。大量に作るのならば、手間はかかるが材料費を抑えられる。
 男児がやって来たのを皮切りに、他の小学生組も厨房に雪崩れ込んでくる。
 十人を超える小学生達は、アリーシアの実の兄弟ではない。
 しかし、大切な家族だ。
 今年の高校二年になる少女のフルネームは、姫皇路ひめおうじアリーシア。
 姫や皇、といった大仰な漢字が宛がわれている姓だが、アリーシアは孤児であった。
 やや癖のある赤い髪と紅い瞳が、彼女が純粋なニホン人ではないと、雄弁に主張している。美人と評して誰もが異論を唱えないであろう顔立ちも、西洋系の特徴が混在していた。
「お姉ちゃん、どうして今日は豪華なの?」
 妹分達にそう訊かれて、アリーシアは笑顔で教えた。
「今日は由宇也の誕生日だから」
 だから高校から真っ直ぐに帰って、誕生日会用のケーキを焼くつもりだ。
 最年長だった二人が高校を卒業して社会に出た。同い年のルームメイト――島崎しまざき和葉かずはも里親が見つかり巣立っていった。急な話だったが、和葉が幸せになれれば、それでいい。
 よって今年から施設では最年長になったアリーシアは、みんなのお姉さん役という使命に燃えている。
「さあ、これから朝ご飯を作るから、寝坊している人を起こしてくるコト」
 気合いを入れ直そうと、アリーシアは腕まくりした。
 はぁ~~い♪ という元気のよい子供達の返事が厨房内に響く。
 此処――孤児院【光の里】では、小さな子でも一つ以上の仕事を担当しているのだった。


 孤児院【光の里】から飛び出した、赤い髪の女子高生を遠目から監視する瞳。
 若い女――少女だ。
 彼女はアリーシアと同じ学校の制服に身を包んでいた。
 ただし、二年次からある魔導科の物ではなく、普通科一年の制服だ。年齢詐称して二年として潜入できたのだが、魔導科には編入できなかったので無意味と判断した。その辺りの身辺調査は、流石に国内【魔導十三校】の頂点といったところか。
 アリーシアは歩きではなく、走っている。速い。なかなかの健脚振りだ。
『――今日は珍しく遅刻寸前だな』
 イヤホン型【AMP】に入ってきたチームからの無線。
 通信担当はアクセル3が当番か。普段はアクセル8がメイン通信係だが、久しぶりのオフとの事だった。
 少女は素っ気なく応える。
「女だからな。男には理解できない準備が色々とある」
 魔術で暗号化されているとはいえ、絶対ではないのだ。よって余計な通信は好ましくないし、アクセル8ならば無駄口は決してしない。さりとてチームの輪も重要である。
『お前も少しは着飾ったらどうだ? 年相応に』
「任務で必要ならば、オシャレにも気を遣う。それも技術として身に付けている」
 無線先(アクセル3)は何も言わなくなった。呆れているのだろう。
 確かに少女のルックスは、飾り立てると抜群になる。
 逆にいえば、普段は全く飾り立てていないという事でもあった。無表情かつ愛想が欠落している彼女は、影で周囲から機械人形めいていると云われている。実際、少女は己を血の通った人間だとは思っていなかった。
 ようやく姫君が少女が潜んでいる曲がり角を通過した。猛然と加速していく。スカートの裾がはためいている。恥じらいも何もあったものではない豪快なフォームだ。
 彼女はアリーシアと一定の距離を保ちながら、走り始めた。
 小走りに見えるが、アリーシア以上に速い。
 アリーシアは小学生時代から無遅刻無欠席を継続しているので、今日も間に合うだろう。
「本日も異常なし。このまま学校まで追跡する」
 報告に『了解』と返信がきた。

 

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 アリーシアは不思議な夢を視ていた。
 本当の自分は、別の国から逃げてきたお姫様だという波瀾万丈な逃亡劇だ。
 貴女様はファン王家の血を引く由緒正しき第一王女なのです。
 そんな言葉が、夢の世界にオーケストラの演奏のごとく響き渡る。
 違う、ちがう、わたしは、私は――
 お、きな、さい。お――きな――

「――起きなさい、返事をしなさい、姫皇路さん!!」

「は、はいぃ!」
 担任の怒声をぶつけられて、アリーシアは飛び上がるように起立した。
 夢から強制帰還され、今が授業中であると再認識する。
 慌てて腰を九十度に折った。
「すいませんでしたっ」
 此処は魔導科二年B組の教室。
「もうGWは終わっているのですよ。二年次になり、念願の魔導科に選抜されて浮かれる気持ちも分かりますが、しっかりしなさい。いいですか、これは姫皇路さんに限らず、他の皆さんもですよ」
 担任教師である琴宮ことみや美弥子みやこ(二十八才、婚活中)の言葉に、教室内の空気が引き締まる。
 それなりのスタイルをしているのに、ビジネススーツが全く似合わない童顔教師だが、それゆえ逆に、言葉には力が籠もっている。
 この【セントイビリアル学園】の魔導科の専門教師(魔術教師)といえば、魔術関連の仕事でも超エリートと羨まれる内のひとつである。
 アリーシアは顔を顰めた。弁当と誕生パーティの仕込みで寝不足だったとはいえ、授業中に居眠りしてしまうとは。
「皆さんは魔術師の卵として、各自用の調整された専用【DVIS】を個人所持する事が法的に認められるようになりました。皆さんが秘める魔力が国家に認められた証でもあります」

 この世界――【イグニアス】では誰もが魔力を秘めている。

 しかし魔術師ではない者が所有する簡易型汎用【DVIS】は、あくまで施設や機器に埋め込まれている【DVIS】を起動させるスイッチ以上の役割を持たない。仮に多機能な魔術プログラムがインストールされていても、魔術師としての技能(=魔術オペレーション能力)がなければ使いこなせない。
 魔術師ではない一般人は、コントロールを外部プログラムに依存して、かつ魔力不足分は【畜魔力装置(マナ・コンデンサ)】から不足分を補って貰うシステムになっている。
 しかし、魔術師用に個人調整された専用【DVIS】は、根本的に異なる。
 美弥子は教壇から出入口まで歩き、照明電灯のスイッチを切った。
 明かりが窓から差し込む太陽光だけとなり、照度が落ちる。
「電気、ガス、石油といったエネルギーは非常に効率が悪いです」

 次いで美弥子はスイッチの横に埋め込まれている宝玉――【DVIS】に指で触れた。

 すると教室全体が柔らかい光で包まれた。
 これは施設型の【間接魔導】である。
「魔力を込め照明魔術を起動させました。センセが込めた魔力ですと、ここから約三十分は消えません。このように【DVIS】に使用者の魔力を流し込み、【DVIS】に繋がっている魔術機構を動作させる事こそ【魔導機術】システムと呼ばれる近代社会の要となる技術です」
 これは教育用である学校の照明であり、通常の施設の魔術照明では、定期的に魔力を補充する魔術師が勤務している。また、現在でも起動用エネルギーや予備エネルギーとして電気設備は残っていた。発電所や電柱は今でも現役である。税金で運営されていて職業保護の側面も強かった。
 美弥子は大股で教壇に戻り、アリーシアを諭した。
「姫皇路さん。貴女の右手首のリングは、多くの者が望んでも手に入らなかった物。特別な物なのです。だから……ってぇ!!」
 チュドドドドッぅ!
 台詞を途中で止め、美弥子は窓際最後列へチョークを飛ばす。
 投擲したのではない。複数のチョークを弾丸のごとく撃ち出したのだ。

 これぞ学園名物、美弥子のオリジナル懲罰用魔術――《チョーク・バレット》である。

 ズガガガガガッ! 音速で五発のチョーク弾が机に炸裂。
 魔術現象である為に、音速であっても周囲へのソニックブームは抑えられていた。
 これこそ魔術特有の妙だ。魔術理論によっては、どんな物理的矛盾さえ実現できる。
 白色の粉塵が巻き起こる。チョークが砕けた粉末だ。着弾後に跳弾や欠片が飛び散るのを防止するまでが、美弥子の魔術の効果である。与える痛みとダメージは大きいが、決して対象に怪我を負わせないノン・リーサルがベースとなっている高度な魔術だ。
 科学兵器とは違い、魔術攻撃は魔術プログラムのパラメータ設定によっては、対象のダメージや負傷までコントロール可能な奇蹟なのである。

 白い煙幕が晴れた後――机は無人であった。

 正確には、天井からぶら下がっていた。
 右手の人差し指と親指を、タイルの隙間にねじ込んで自重を軽々と支えている。
 彼を美弥子は半白眼で睨み付ける。

「相変わらず、魔術による身体強化を疑いたくなる身体能力ですねぇ――堂桜くん」

 怒りを堪えた美弥子の言葉を、さらりと聞き流した統護は、音もなく着地した。
 その身のこなしも尋常ではない。
 戦闘用の【基本形態】を起動していない状態なのに、音速の攻撃に反応できる――という事も筋力と同じく『普通』ではない。超時間軸での魔術オペレーションを可能とする電脳世界を展開していないのである。統護は肉眼と勘で、発射のタイミングを見切っていたのだ。
 クラス中の視線は統護に対して冷めている。
 魔導科二年の主席――証野あかしの史基ふみきは、小馬鹿にした苦笑を浮かべる。
 クラス委員長にして《リーディング・ジャンキー》と呼ばれる読書魔、累丘るいおかみみ架は無関心を装っているが、その目の奥には……
 バトルマニアとして有名な朱芽あかめ・ローランドは大げさに肩を竦めた。
 他にも様々なリアクション。
 そんな中、《ザ・ステルス》と影で揶揄されている『存在感のない生徒』宇多宵うたよいひかるとアリーシアだけが、複雑な表情で俯く。
 むろん天才揃いである魔導科の生徒達は『統護の異常さ』は理解している――が、魔術に対しては、本来からして電脳世界内の魔術オペレーションで対応すればいいだけの話なので、それが出来ない統護を特に凄いと評価はしない。あくまで統護の身体能力は魔術戦闘において、電脳世界の代替品になり得るかもしれない、という程度の感想だった。魔術に対して、有視界に頼り現実世界の時間軸で対応しなければならないという時点で、問題外の欠陥なのだ。
「別に居眠りなんてしていなかったけど」
 統護の言葉に、アリーシアの頬が紅くなった。
 ばん、と美弥子は教卓を叩く。
「寝ていなくとも、つまらなげに窓の外ばかり。全く授業を聞いていなかったでしょう!」
「だって俺、専用【DVIS】壊れちまっているし」
 統護は教室の出入口までいき、照明用【DVIS】に触れる。
 軽く魔力を流す。ボンッ、という爆発音。

 照明スイッチの役割をもつ【DVIS】が、小爆発と共に破壊されてしまった。

 統護は肩を竦めて、予備照明である電灯のスイッチを入れた。
「ね? こんな劣等生が【魔導機術】を学んだって、単なる無駄なんだから」
 その光景に、教室内のあちこちから侮蔑の笑いが起こる。「でた。統護のデヴァイスクラッシュ」とからかう声も聞こえてくる。
 統護はクラスメートの嘲笑を全く気にした様子はないが、アリーシアは唇を噛む。
 美弥子は眉間の皺を深くする。
「世界に名だたる【堂桜エンジニアリング・グループ】の御曹司が、自棄になるのではありません。きっと原因があるはずです。以前の模範的な貴方はどこにいったのですか」
 そもそも【DVIS】が内部から爆発する、など物理的・設計的にあり得ない現象のはずであった。【DVIS】の安全機能は絶対なのだ。
 それに《チョーク・バレット》に備わっている魔術的ロックオン機能が、統護には使えない――無効化されてしまうのも不可解だ。要するに、彼は根本的に異質なのだ。
 無言を返事とした統護は表情を変えずに、自分の席へと戻った。
 つまらなげな彼の視線は、ひとまず黒板に向いたまま。
 美弥子は陰鬱げにため息をつくと、ざわつく教室内を抑え、授業を再開した。


(……魔術師、か)
 窓の外に視線をやり、統護は改めてしみじみと思う。
 元の世界における『本来の』魔術や魔術師とは随分と趣が違っている。ニュアンスが完全にゲームや漫画に登場する魔術や魔術師といったフィクション系の類だ。
 むろん、この【イグニアス】世界も【魔導機術】が登場する以前は、魔術や魔術師という定義(認識)は、統護の元世界の本物と同じであった。
 けれど新たな魔術――【魔導機術】システムにより、それ等が刷新される。
 旧来の魔術師は【メイジ】、すなわち古代魔術師という区分に一括扱いとなった。
 そして新たな魔術師は近代魔術師と定義されたのだ。
 この世界における魔術師とは、【魔導機術】システムと魔術プログラムを専門で扱う技術職であり研究者なのである。その近代魔術師も【メイジ】と同じく、代々親子で魔術理論を継承し発展させていく【家系型魔術師】と、全てを秘匿し個人のみで完結する【一世代型魔術師】で在り方が違っていたりする。企業や特許が深く絡んでいる汎用系の規格型魔術は、また別の考え方となる。
 すなわち近代魔術師の【ソーサラー】に【ウィッチクラフター】と古代魔術師(非近代魔術師)の【メイジ】の三つ――が『現実に存在する』魔術師の呼び名だ。
 ちなみにウィッチは魔女を指す単語であるのだが、魔女とは女性のみではない。男性の魔女も存在しており、女性のみというのは誤解だったりする。
 【ソーサラー】――戦闘系魔術師。
 【ウィッチクラフター】――魔術系技能職。
 二代区分される近代魔術師に、残りの【メイジ】。
 しかし、魔術師を呼称する名は、もう一つある。
 それは【魔導機術】が目指し、模倣した伝説の存在……

 ――【ウィザード】。

 この異世界における語源を知り、統護は気持ちを引き締めた。知られてはいけない。
 自分はこのままの劣等生でも構わない、と。
 窓から教室内へと視線を戻す。
 ふと、みみ架と視線が合い、統護は慌てて逸らした。
 

 

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