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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第1部(第42話)

第四章  解放されし真のチカラ 6 ―規格外―

 

         6

 統護と淡雪は緊急入院した特務隊のメンバーを見舞っていた。
 全員、無事に手術も終え、今では意識も回復している。
 浚われたアリーシアの追跡は、追跡用マーカーかの信号がロストしてしまったので、ルシアを通じて那々呼に依頼していた。
 大丈夫、ワタシの飼い猫を信用してください、とルシアは請け負ってくれたが、今のところ有用な情報は入ってきていない。諜報は専門外という上、那々呼が操れる軌道衛星【ウルティマ】【ラグナローク】の衛星カメラ機能にも限界はある。
 衛星カメラからの追跡と、容疑箇所を推測して、その近隣の監視カメラ類のハッキングを行うらしいが、敵方もプロで情報を絞り込めずにいる。

「……入るぞ」

 病室に入ってきたのは、二十代前半に見える金髪碧眼の美女。
 生活感溢れたシンプルな私服姿だが、不思議と威厳を伴ったドレスに見える。
 淡雪が息を飲み、『アクセル・ナンバーズ』が「総隊長!」とベッドから半身を起こす。
 統護も彼女を知っている。有名人だ。
 少女の様な若々しさを保っているが、実際は三十一歳。
 その佇まいと大人の色香は、三十歳前後とは思えない程、成熟している。その知的な言動と相成って、ファン王国民にとってはアイドル以上のアイドルだ。
 愛称・エリスエリス。
 二つ名は《聖剣》エリス。
 フルネームはエリス・シード・エリスハルトである。
 ファン王家直属特務隊ナンバー1、すなわち総隊長かつ、その下部組織である花形の宮廷魔術師団の長も兼任している超エリートだ。魔術師界で彼女を知らぬ者は皆無だろう。
 アクセル6が言った。
「まさか総隊長自らがお越しになるなんて……」
 他の者も困惑の声を上げる。
「王の、王の警護はいいのですか!?」
「総隊長がいなければ本国は」
「本国は大丈夫ですか?」
「他に、他に手立ては――」
 部下の台詞を遮って、エリスは断じた。
「すでにそういう事態だ。現状、最優先すべきは姫様の安全。王はそう決断なされたし、私も同意見だ。仮に王が討たれる事があっても姫様を護る。姫様だけは。それが我らが祖国の未来に繋がる。故に私は王の警護から外れ、本国を離れてニホンに来た。堂桜内部でゴタゴタが起きているとの報告もある。加えて、《究極の戦闘少女》まで離反したとの情報も聞いた」
 エリスが統護を向いて訊く。
「詳しく話してくれないか、堂桜統護」
 統護は状況の一部始終を話した。
 聞き終えたエリスは黙したまま何も言わない。無言で考察している。
「申し訳ない。俺はアリーシアを護れなかった」
 統護は締里を過小評価していた、と思うが、過小評価させていたのも彼女の実力だ。
 実戦で三連勝して無意識のうちに図に乗っていた。四戦目で、締里に不覚を取って、ようやく自分が異世界での生活に足を踏み入れたのだ、と実感していた。
 控えめに、淡雪が言った。
「でもお兄様。アリーシアさんに誓いを立てた締里さんは、間違いなく本気だったと思います」
「油断させる為の演技じゃ、ない?」
 淡雪は頷く。
「あの誓いがなくとも、もう充分に私達は彼女を信用していました」
 統護は淡雪の目を見た。
 その目は自信に溢れている。
「だとすると――締里は裏切ったフリをして、逆に敵の懐に入ったというのか?」
 確証はないが、そうであって欲しいと統護は願った。
 それに堂桜一族を完全に敵に回したくない意図があったとしても、あまりに淡雪のダメージが軽すぎる。仮に統護が締里の立場で、敵方のスパイだったとしても、当面は動けない程度のダメージは与えておくだろう。
 熟考を終え、ようやくエリスが発言する。
「そうだな。裏切りではなく作戦なのだろう。敵の懐に潜り込む為の」
 エリスの結論に、統護と淡雪は安堵の顔になった。
 けれど、対照的にエリスの表情は険しい。
「勝てばいい。しかし今回ばかりは無茶な作戦かもしれない。いかに《究極の戦闘少女》であっても、何しろ相手は……」

         …

 アリーシアは壁際で縮こまっていた。
「ぁ、っぁアアあ、ッ、ぁ、ゥ」
 歯の根が合わずに、声がまともな音にならない。
 このフロアを構成している素材は、全て最新の防火機能と耐魔性能を備えているのに――

 壁と床と天井が――全て真っ黒に炭化していた。

 目にした光景があまりに圧倒的過ぎて、アリーシアは思考を破棄してしまいたくなる。
 恐怖、なんてものじゃない。
 聞いていた。知識にはあった。いくつかの映像記録も目にした事がある。
 だが間近で目撃すると、こんなにも凄まじいチカラなのか。
 淡雪の封印解除も凄まじかったが、これはそれに匹敵する――似て非なるチカラ。

これが……【エレメントマスター】」

 真の能力を解放したフレアは、部屋の中央で丸まっている締里へと歩み寄り、蹴った。
 意識を失っている締里は大の字になる。
 辛うじて息がある様子に、アリーシアは安堵した。
 基本として、魔術戦闘において殺人は起こらない。超物理現象である魔術による攻撃は、人を殺さずに相手を制圧できるのだ。それが通常兵器に対しての利点の一つでもある。
 しかし魔術プログラムのパラメータ設定と魔術特性のコントロールによって外見こそ無傷に見えるが、締里が被っているダメージは甚大だ。
「お、お願い、締里を殺さないで……」
 ニィ、と笑んだフレアが満足げな口調で言った。
「姫様のご命令とあれば」
「……」
「まあ本当のところは、逃げられた王子に代わる遊び道具が必要なだけなんですけどね」
 あははははは!! と愉快そうに高笑いするフレアに、アリーシアは戦慄する。
 駄目だ。
 ぜったいに駄目だ。
 こんな化け物と戦ってはいけない。
 勝てるはずがない。
 反則だ。インチキだ。詐欺だ。チートだ。
 どうしてだ。これを許してまで、この世界は魔術の存在が必要というのだろうか。
 お願い統護。もう私はどうなってもいいから、絶対にこの女と戦わないで――
 戦っては、ダメ。

 

 

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