アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第2部(第47話)

 

第四章  破壊と再生 20 ―淡雪VS陽流③―

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         20

 ぐォん、と不気味な音を残し、淡雪の上から輝く球体が《リヴェリオン》へと放たれた。
 光球は一直線に《リヴェリオン》に直撃。
 いや、身を丸めた《リヴェリオン》は光球を腹部で受け止めていた。
 じゅぅごぅぉぅううううッ!
 莫大な水蒸気が煙のように立ちこめる。
 黒い機体が、魔術の放射熱と輻射熱により、絶対零度近い球体の外層を溶かしにかかる。
 球体を抱えた両手からは、絶えず炎の魔術を連続起動していた。
 陽流は己の限界を超えて機体に魔力を供給する。搭載されている【DRIVES】によって、外部拡張演算を要さずに、機体内の魔術エンジンによる魔力増幅が加速する。
『あっぁあぁああああああああ~~~~ッ!!』
 マイク越しの悲愴な雄叫び。
 ゴーグルから紅い涙が溢れ、頬を伝った。陽流の全身の毛細血管が弾け、素肌が見えている顔の部分から紅い霧が発生する。
 黒い装甲が真紅に輝き――球体の外層を破壊した――瞬間に、ソレが起こった。

 超低温の外層に封じられていた超圧縮・超高温の水蒸気が、一気に解放されたのだ。

 摂氏数万度の水蒸気による熱伝播。
 擬似的な水蒸気爆発による衝撃波。
 最後に、プラズマ化による直接発電と疎密振動の発生。
 濁流のように《リヴェリオン》を襲った。
 ゴーグルの奥で充血していた陽流の両目が、絶望で見開かれる。
 発熱系の魔術によって球体外層の超低温をキャンセルしていた為、カウンター的にこれらのダメージを《リヴェリオン》は受けてしまった。
 様々なダメージが《リヴェリオン》の機体だけではなく、機体を構成している物質の分子結合にまで、致命的な爪痕を刻み込んだ。
 物理的な現象を魔術で制御した――さながら超新星のようであった。

 ッぉぉおオオオオオオオグゥワぁぁあアゥん!!

 盛大な爆発。
 破壊現象は【パワードスーツ】という構成物だけではなく、各々のパーツ全てに及ぶ。
 効果対象から除外設定されていた搭乗者を除く――《リヴェリオン》の全てが破壊し尽くされた。
 バラバラというよりも粉々と形容するべき残骸から、爆発の余波を受けた陽流は後方へ放り出された。完全に意識を失っている様子だ。
 想像を絶する殲滅・破壊現象を目の当たりにしたミランダは、愕然と呟いた。

「そうか。雪の閃光の正体は……雪と氷の管内に封じられていた超高温の水蒸気だったのか」

 正解を知り、ミランダは隣のケイネスに確認しようとした。
 だが、ケイネスが消えていた。
 出し抜かれた事実に驚きを覚えつつ、ミランダはすぐにケイネスの気配を捉える。
 ケイネスは吹き飛ばされていた陽流の身を確保していた。
 その事実が物語るのは、ケイネス自身も相当な戦闘能力を有しているという事である。ただそれに対しての意外性や驚きは、ミランダにはなかった。最終手段として自ら戦闘するという選択肢を用意しないケイネスではないだろう。
 淡雪はケイネスに言った。
「私の勝ちです。そのハルルさんという方を返し、貴女自身も投降しなさい、那々覇」
 拒否すれば撃つ、と淡雪は氷の槍を生成した。
 ケイネスは快心の笑顔であった。愉悦の顔とも表現できる。
「やはり流石だわ、淡雪。予想通りに貴女は強かった。流石に堂桜財閥の次期当主ね。ま、策が皆無で力押し一辺倒な頭の悪い戦い方だったけど。《リヴェリオン》はよく保ちこたえた方かしら。そして――陽流は本当に頑張ってくれたわ」
 タイムアップよ、とケイネスが告げた。
 視線を上げたケイネスにつられ、淡雪も空を仰ぎ見る。

 ステルス系の隠蔽魔術を解除した、米軍【暗部】のヘリコプターが上空から降りてきた。

 淡雪は奥歯を噛み締めた。
 彼女の【基本形態】である《シャイニング・ブリザード》は、デフォルトの設定値から上空索敵がやや苦手であるが、ここまで接近されて気が付かないとは、と驚きを隠せない。
 ヘリコプターからマイク音声が聞こえてきた。
喧嘩はここまでだ、Dr.ケイネスとプリンセス・パウダースノゥ。両名共に我らの大切なフレンドであり同志だ。ここは我らの顔を立てる為にも、双方、収めてくれないか』
 淡雪は悔しそうに視線を落とした。そして魔術を消した。一面の雪世界が、無機質なコンクリート地帯へと戻る。
 ケイネスは降ろされた縄ばしごに捕まった。肩には陽流を担いでいる。
「こちらに来なさい、ミランダ。撤収よ。我が友人も今回の実戦テストには満足してくれている様子だし、上々だったわ」
 ミランダは首を横に振って、依頼主を拒絶した。
「申し訳ありませんが、貴女との契約はここで打ち切らせてもらいたい。もう貴女をマスターとして扱う自信がありません。違約金は後で口座に振り込んでおきます」
 ケイネスは気分を害した様子も見せずに、ビジネススマイルになる。
「違約金は要らないわ。退職金代わりにしましょう。貴女の仕事ぶりにはとても満足していたわ。契約解除は残念だったけれど、また縁があれば契約しましょう。ああ、そうそう。娘の件は手を引くから、同業の執事さんに伝えておいて。もう堂桜に返していいわよ、と」
 顔をあげた淡雪はケイネスを睨み付ける。
「那々覇。貴女はこの私が倒します。そしてハルルさんを救い出します」
「ええ。次回、相まみえる時を楽しみにしているわ」
 ケイネスを回収した米軍【暗部】のヘリコプターは、空の彼方へと――消えた。

 

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 扉は、なんの前触れもなく、唐突にそして乱暴に開けられた。
 開かれるはずのない扉であった。これは【HEH】本社ビルの社長室の扉である。
 社長の比良栄忠哉は、本日のアポイントを全てキャンセルし、三人の秘書も遠ざけて、息子の智志と共に籠もっていた。
 電子ロックと魔術ロックの双方が欠けられている重厚な扉は、忠哉にしか解錠できない仕組みのはずであった。それが――いとも簡単に開いた。
 驚愕に顔を引き攣らせ、忠哉は開かれた扉へ視線をやる。
 淡々と参考書の設問を解いていた智志も、開かれた出入口へ向けて、顔をあげた。
 彼は、自身が父によって軟禁状態にあるという程度は、すでに理解していた。
 出入口には、比良栄父子が見知っている人物が立っている。
 いや、政財界に身を置くアッパークラスならば、顔を知らねば恥という超大物だ。

 堂桜宗護が、ビスクドールめいた美しいメイドを従えて、其処にいる。

 世界有数の巨大財閥――堂桜財閥の総帥にして、【魔導機術】の根幹技術と利権を独占している【堂桜エンジニアリング・グループ】社長である。
 智志は軽く首を傾げ、手元の参考書を閉じた。
「どうして、どうして貴方が此処にっ!!」
 声を荒げる父を、智志は冷ややかな視線で見つめる。
 確かに異常事態だ。いくら堂桜宗護とはいえ、このような形での無断来訪など許される非礼ではないし、なによりもその情報が届かなかったという事がありえない。加えて、セキュリティ・システムが沈黙しているのも不可解である。
 そして父に軟禁されている智志の状況も異常――
 つまり何らかの形で外側から事態が動いたのだ、と智志は判断した。
 宗護はやや困惑した表情で、比良栄父子から傍らのメイド少女に視線を移す。
 メイド少女はその視線を受け、冷たい視線を返すと宗護よりも前にでた。
「貴方はそこで大人しくしていなさい、宗護」
「そうさせてもらう」と、宗護は一歩後ろに下がった。
 その光景に、忠哉は顔を真っ赤にして怒鳴る。
「おいっ! 貴様はメイドの分際でなんだその態度はぁ!! 分を弁えろ使用人風情が!」
 高慢な口調の父を智志は冷静に諫めた。
「落ち着いて、父さん。警備に連絡するのは、話を聞いてからでもいいよ」
 警備に連絡しても無駄だろうと思いつつ、智志はメイド少女に言った。
「メイドのお姉ちゃん。話はなんですか?」
 美しいガラス細工のような少女は、優雅に一礼すると名乗りでる。

「ワタシはルシア・A・吹雪野と申します」

 堂桜宗護とは旧知の間柄で、堂桜統護を主人とするメイドです、と付け加えた。
「統護を主人? そんな話は初耳だぞ」
 後ろから宗護に言われ、ルシアは平然と言い返す。
「その件は特に隠していませんでしたが。知らなかったのは貴方の怠慢です、宗護。それからこの場はワタシが主導します。二度と許可なく口出ししないように。これは命令ですから」
「そうだったな。すまない
 二人の会話に、忠哉は毒気が抜かれた顔になる。信じられない、いや、信じたくないといった表情のまま、縋るような視線を宗護に向けるが、宗護は否定の言葉を発しない。
 対して、智志はありのままを受け入れた。
 表情を一切動かさずにルシアは言う。
「本日は堂桜一族と比良栄家の未来の為に、少々無茶で強引な手段で参上いたしました」
 無茶も強引さも『少々』どころではないはずだが、それを平然と言ってしまうルシアというメイド少女はただ者ではない、と智志は気を引き締めた。
 幼いながらも何度か経験している社交界のパーティや、月に一度は見学している【HEH】の幹部会議よりも、おそらく重要で重大な出来事が起こる――と予感する。
「後ろの宗護はこの場に赴く為の手段の一つであり、これから交わす両家の契約の立会人として、このワタシが連れて来ました」
 ルシアによって全ての予定をキャンセルされ、強引に連れ出された宗護は、苦々しく顔を歪めた。しかし、内容は不明だが『相応のメリットがある』と云われてもいる。
「な、な、なんなんだ。その未来って?」
 声を震わせる忠哉を完全に無視し、ルシアは静謐な双眸で智志のみを見ている。
「お話の前に、まずはコレをご覧下さい。……比良栄の未来の当主様」
 そう断り、ルシアは純白のドレスエプロンのポケットからタブレット型PCを取り出して、内蔵されている【DVIS】を起動させた。
 プリインストールされている汎用【魔導機術】により、PCモニタから疑似立体映像が智志の前の空間に投影される。
 精緻かつ美麗なクォリティで再現され始めた映像の内容は――
 智志だけではなく、忠哉と事情を知らされていない宗護までもが絶句した。

 再生されている映像は【ナノマシン・ブーステッド】として起動して、ルシアと戦っている優樹の戦闘データである。

 映像の優樹は瀕死であった。智志を救う為に、命を投げ出していた。
 愕然となった智志は、歯の根をガチガチと鳴らし始める。
「な、なんなんだよ……これ。どうして、どうして、お兄ちゃん――いや、優樹姉ちゃんが」
 怒りで見開かれた息子の眼を向けられ、忠哉は狼狽も露わに弁明した。
「ち、ちがう。し、知らなかった。こんなのは知らなかったんだよ、誤解だ」
 大量の汗を流す父の顔に、智志の怒りが倍増した。
 宗護は正視に耐えられない、と視線を足下に伏せた。
 装飾や憶測を交えずに、事実のみをルシアは智志に説明する。智志は、自分が父に軟禁されていた理由を理解して、全身の血液が沸騰するかのような感覚を覚えた。
 説明を聞き終えた智志が、肩を怒らせて吠える。

「――どうして優樹姉ちゃんがこんな事になってるんだよぉッ!!」

 

 

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