アニメを斬る!

アニメ関連の話題をメインに、美少女DJ2名が会話形式でお送りする、仮想ラジオブログ!

アニメを斬る!

ヘッダー画像(第1回へ誘導)
— 最 新 記 事 —
【大人プリキュア第2弾】深夜アニメ『魔法つかいプリキュア!!~MIRAI DAYS~』のPVが公開される! やっぱりシコいぜキュアミラクル
【なろう系】『即死チートが最強すぎて』の強さランキングTOP100、発表される!!【ただし非公式】
【衝撃】「アクエリオン」の新作アニメ、キャラデザが凄いことになるwwwwwwww【第4期・想星のアクエリオン Myth of Emotions】
【悲報】マクドナルドの「いまだけダブチ食べ美」、案の定 二次創作を描かれまくるwwwwwww
【まほあこ】『魔法少女にあこがれて』最新フィギュア、ほぼ裸になってしまうwwwww【マジアマゼンタ】
【アニメ1クール総評その7】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2024年の夏アニメ】
【キン肉マン】ゆでたまご 嶋田先生、早とちりでSNSにて一般人にブチギレ凸った件を謝罪する【完璧超人始祖編】
【ロシデレ2期決定】「性の対象にするの止めない?」地下鉄の“美少女アニメイラスト”に嫌悪の投稿も、寄せられる反論「どこが性的?普通の絵にしか見えない」【アーリャさん】
【グレンダイザーU】新たな魔神「マジンガーX」爆誕! スペイザーや円盤獣の技術を取り込み究極進化!!
【マケイン】2024夏アニメ「負けヒロインが多すぎる!」温水の家が豪邸すぎると話題にwwwwwwww
【悲報】Fateシリーズに憧れるのを断念したのか、対魔忍のティッシュカバー、下品すぎて一線を超えるwwwww
【ガルクラ/迷子】トゲナシトゲアリとMyGO、対バンライブの開催が決定!! 円盤にチケ申し込み券封入【ガールズバンドクライ×BanG Dream!】
【アニメ1クール総評その6】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2024年の春アニメ】
【朗報】ガンダムSEED FREEDOMのアグネスさん、初期構想では桑島る予定だったが生存に変更されていた【死亡フラグ回避】
【くぎゅうううう】釘宮理恵(44)「えっアニメ『Lv2からチート』のOPを歌うんですか?」→結果
【アニメ1クール総評その5】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2024年の冬アニメ】
【悲報】『ぼざろ』の虹夏・山田・喜多「ぼっちちゃんには工場か品出しのバイトがお似合いだよw」【ぼっち・ざ・ろっく!】
【まほあこ】アニメ『魔法少女にあこがれて』、円盤でB地区を特典に付ける【公式乳首設定を解禁】
【卒業のフリーレン】コスプレなフリーレンさん、高校卒業を果たす【祝・アウラ前日譚が書籍化へ】
【立て看板シリーズ】二次創作『多浪のフリーレン』さん、京大2次試験で浪人生を煽りまくる【葬送のフリーレン】
【悲報】グリットマンの作監が謝罪するも、太ももがデブ過ぎな宝多六花さん、そのままフィギュア化へ【GRIDMAN UNIVERSE】
【悲報】『葬送のフリーレン』の「重い女」フェルンさん、原作で痩せた悲しい姿になる【変わり果てた姿で見つかる】
【葬送のフリーレン】フェルンさん、アクリルスタンドでビキニになる為に、強制ダイエットさせられてしまう【デブではない】
【ネタバレ注意】新型フリーダム(ストフリ)の名称予想企画の結果発表!【劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
【悲報】イザークさん、極楽湯コラボメニューにて『種まきミルク』を提供してしまう【劇場版ガンダムSEED FREEDOM】
【リゼロ】レムさんのフィギュア、完全にネタが尽きた模様wwww【Re:ゼロから始める異世界生活】
【勇気爆発バーンブレイバーン】ブレイバーンの正体(中身)や真主人公(ルイス)について考察してみた
【悲報】SPY×FAMILYのヨルさん、スト6とのコラボでブサイク過ぎて炎上wwwwwwww
【悲報】セイバー(アルトリア)さん、変わり果てた姿で見つかる【Fate/FGO】
【邪神ちゃん公式】「違法アップロードを合法化」というパワーワードで違法アップローダーとの最終決戦へ【二次創作は許諾申請でOKに】
【アニメ1クール総評その4】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2023年の秋アニメ】
【葬送のフリーレン】有識者さん「日本オタク史に残る偉業、『エルフといえば? フリーレン』になったのだ」
【葬送のフリーレン】原作の名シーンを麻雀で再現した二次創作『雀荘のフリーレン』が話題に
【超絶悲報】ラクス・クラインさん(20)のドレス姿、流石にキツすぎる……【劇場版ガンダムSEED FREEDOM】
【悲報】ストフリ後継機ではない新型フリーダムが公開されてしまい名称予想企画どうしよう【劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
【リコリス・リコイル2期】2025年Season2、魔法少女モノに路線変更か
【ガンダム 水星の魔女】シュバルゼッテさん、デザイン初期(発注時)はグエル用の機体だった事が判明【悲報】
【悲報】スパイファミリー(SPY×FAMILY)さん、TVアニメSeason2のキービジュアルで、主人公ロイドがモブと化すwwwwww
【アニメ1クール総評その3】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2023年の夏アニメ】
【悲報】オンラインくじ『スパイ教室』(秋の祝祭)にて不人気キャラがグッズからリストラされるwwww上位の3人はグッズ優遇!
【オリジナルアニメ限定】2000年以降のクソアニメで打線を組んでみた【球詠・新越谷高校風】
【悲報】メイリン・ホークさん(18)、たった2年で大幅劣化し、おばさん化してしまう【劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
【公式よりお気持ち表明】スレッタとミオリネの結婚が「なかった」風にボカされてしまう【機動戦士ガンダム 水星の魔女】
【告知】新型フリーダム(3代目)の名称を予想する企画について【劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
【悲報】ラクス・クラインさんに美容整形の疑惑が浮上してしまう【劇場版 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM】
【アニメ1クール総評その2】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2023年の春アニメ】
【アニメ1クール総評その1】視聴した作品をメインに振り返って感想・考察する【2023年の冬アニメ】
【2022年の秋アニメ】視聴完走した作品の感想を述べてみた【機動戦士ガンダム 水星の魔女、他12本】
【2022年の夏アニメ】視聴完走した作品の感想を述べてみた【リコリス・リコイル、他4本】
【2022年の春アニメ】視聴完走した作品の感想を述べてみた【パリピ孔明、他9本】
【2022年の冬アニメ】視聴完走した作品の感想を述べてみた【ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜、他5本】
【2021年の秋アニメ】視聴完走した作品の感想を述べてみた【マブラヴ オルタネイティヴ、他4本】
【フィギュア】不滅のボーカロイド『初音ミク』の商品ラインナップを紹介【新作 / おすすめ】
【アニメ『MAJOR 2nd』中学生編】Wヒロインとして着替えと活躍が期待される道塁を特集する【メジャーセカンド】
【PS4/Nintendo Switch】キャプテン翼 RISE OF NEW CHAMPIONSがヤバすぎと話題沸騰【ジャンル:サッカーアクション】
【フィギュア】止まらないホロライブ――全リリースを紹介【白上フブキが初】
【アニメ版ワンパンマン】ヒーロー紹介『戦慄のタツマキ』がロリセクシーな件【One Punch-Man】
【メニュー】『ダンベル何キロ持てる?』筋トレ講座を鍛える箇所別にまとめてみた【器具】
【再放送版ハチナイ】アニメ『八月のシンデレラナイン Re:fine』、もう作画崩壊とはいわせない【試合プレー場面まとめ】
【GIF動画で検証】名作女子ベースボールアニメ『大正野球娘。』の作画を振り返る【大正義野球娘】
【フィギュア】毛利蘭ねえちゃんの角が『ねんどろいど』でヤバい件【名探偵コナン】
【ぼっち料理】ハック(Hac) ちょこっと家電 贅沢鍋&グリルおすすめしてみる【Φ12cm HAC2254】
【アニメ版ワンパンマン】ヒーロー紹介『地獄のフブキ』が可愛い件【One Punch-Man】
【アニメ版ワンパンマン】ヒーロー紹介『サイタマ(ハゲマント)』の戦績【One Punch-Man】
【いもいも級の衝撃】きららアニメ『球詠』第4話の先行海外(北米)配信版が作画崩壊【dアニメ版と比べてみた】
【萌えすら捨てて】作画崩壊風きららアニメ『球詠』のプレー場面を集めてみた【野球を追求】
【アニメ『MAJOR 2nd』】沢 弥生様のご活躍を追いかけてみる【メジャーセカンド】
【上条当麻】旧約(第1部)までの男女平等パンチを振り返ってみる【その幻想をぶち殺す】
【ハッカドール】伝説のお仕事アニメ、KUROBAKOを振り返ってみる【本家SHIROBAKOもよろすこ】
【海外での認識】織田信長のキャラデザを振り返る【日本人のイメージ】
【とあるシリーズ】能力者LEVEL5と各キャラの勢力分布を復習してみよう【禁書目録/超電磁砲】
【範馬刃牙/バキ】ごきげんな朝食(あさめし)【完全再現を目指してみた】
【HG/MG/RG】フリーダムガンダム&ストフリが超かっこいい件【登場シーン】
【松智洋先生なんと2作目】はてな☆イリュージョン、第4話でほぼ全編が作画崩壊【いもいもの悪夢再来か】
【登録方法】アニメをネット視聴する動画配信サービスは「dアニメストア」がオススメ【TVでもOK】
【HGCE/MG】デスティニーガンダムが超かっこいい件【まるで悪役】
【旧OPと新訳を比較】Zガンダムの変形シーン(機構)の進化を振り返る【ガンプラ系YouTubeも紹介】
【妖怪人間ベム】歴代アニメOPの比較と美少女化したJKなベラさん【令和版BEM】
【響/翼/クリス】戦姫絶唱シンフォギアXV 変身バンク集【マリア/調/切歌】
【第1期~第4期】シンフォギアの歴代ラスボス&フィニッシュシーン GIFバージョン【無印/G/GX/AXZ】
【第1期~第4期】シンフォギアシリーズの変身バンク集 GIFバージョン【無印/G/GX/AXZ】
【ハチナイ】『八月のシンデレラナイン』の野球描画に震えるがいい【作画崩壊な令和野球娘。】
【ジョジョ第5部】チョコラータ戦での無駄無駄ラッシュにおける原作とアニメの比較【黄金の風】
【鉄血ガンダム】伝説の「止まるんじゃねえぞ……」を振り返ってみた【オルガ・イツカの名台詞】
中古品『Panasonic Let's note CF-S10』(ワジュンPC)の購入レビュー
【アニメ版4期】キャプテン翼 必殺シュート集 ~中学生編~【完璧な再現】
【俺達の芋芋】作画崩壊アニメいもいも、感動の大団円【最終回、第10話】
【これが俺達の芋芋】作画崩壊アニメいもいも、第9話でまたも大惨事に【伝説級の特殊ED爆誕】
【各キャラ解説】シンフォギアシリーズの変身バンク集 まとめ【各ギア設定付き】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~切歌編~
シンフォギアシリーズの変身バンク ~マリア編~
【アニメ版4期】キャプテン翼 必殺シュート集 ~小学生編~【完璧な再現】
【緊急特番】俺が好きなのは妹だけど(作画崩壊している)妹じゃない【第2話で最速作画崩壊】
【アニメ2ndオープニング】刃牙のOPにみるアニメ3D技術の進化【グラップラー刃牙/バキ】
【ゲゲゲの鬼太郎】6期鬼太郎より2018年度アニメ界、クソ女・オブ・ザイヤ―が爆誕【第6期新章突入】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~未来&イグナイト編~
【マジンガーZ】リアル系ロケットパンチを放つスーパーロボを語る【超重神グラヴィオン】
【アニメ6期】ゲゲゲの鬼太郎、独断的な『神7』を大発表【西洋妖怪編へ】
【3代目ジョジョ 承太郎】スータープラチナの「オラオラ」、ベスト5【最強スタンド】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~響編~
【スーパーロボット】コン・バトラーVの新旧映像比較【昭和合体ロボ】
【アニメJOJO】ジョジョのOP映像、ベスト5【第5部決定】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~翼編~
【超次元サッカー】キャプテン翼の映像比較【再びアニメ化】
【アニメ】ゲゲゲの鬼太郎、6期で萌えに迎合する【猫&犬】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~クリス編~
【プラレス】ホビーバトル系アニメの歴史、推移を語る【ガンプラバトル】
【ゲーム版と】FateのOPアニメの変移を辿る【FGOも】
【二人組】最高のアニメ番組内ユニットは?【歌手限定】
【放送延期】万策尽きた……、ンゴ【総集編】
シンフォギアシリーズの変身バンク ~調編~
【独断】Fateシリーズ最高のコミカライズは?【選考】
【サイボーグ009】003(フランソワーズ)のキャラデザ変移【歴代アニメ版】
ヘッダー画像下ライン

魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第2部(第34話)

第四章  破壊と再生 7 ―訪問―

スポンサーリンク

 

 

         7

 執事であるミランダを引き連れて、ケイネスは【ネオジャパン=エルメ・サイア】の六名を潜伏させている某輸出会社の大型コンテナへと向かっていた。
 すでに敷地内であり、ミランダの事を知る、買収済みの数名しか勤務していない社屋を無視して、集配エリアにある特注大型コンテナを目指して歩いている。
 この会社は事実上、倒産している。最後の不渡り手形が出されるまで、可能な限りの在庫処分と債務整理を行っているだけの場所である。
「マスター。ロイドからの報告です」
「なにかしら」
 ミランダに視線をやる事なく鷹揚に訊き返した主人に、ミランダは独自法則により暗号化して送られてきた事実のみを告げる。通信機はミランダが開発したワンオフ品で、傍受の危険を徹底して排除していた。

「堂桜那々呼の確保に成功。ルートCを選択して移動中との事」

「へえ。成功したの」
 その口調から、ミランダは意外そうな顔になる。
「まさか失敗前提だったのですか?」
「成功確率は三十七パーセントと計算していたわ。三度に二度は失敗。けれども失敗したとしても私にとっては貴重なデータであるし、逆に今回の成功データは次回以降は使えないわね」
「そういうものですか」
「科学者にとっては、都合の悪い失敗データの方が後に重要だったりするのよ」
「……」
「分からないのならいいけれど」
「移動経路の変更パターンはどうしましょう? それからマーカーの発信は?」
 執事の確認に、ケイネスは足を止めた。
「マスター?」
「移動経路のパターンはロイドに一任するわ。それからマーカーの発信は夜の二十時まで切っておいて構わない。その程度ではルシアは誤魔化せないでしょうけれどね。優樹ちゃんについては――解放したければ好きになさい」
「優樹様を好きにしていい、とは?」
 ケイネスは平然と言った。

「音声データだけで充分把握できているけれど、もう助からないわ、あの子」

 ケイネスは横に追いついたミランダを流し目で睨む。
「随分と不満げね。その目」
「用が済んだら棄てる――のも、科学者にとって重要ですか」
 ケイネスは攻撃的な笑みを返した。
「そうよ。あの子の魔力と体力における推定値からして、ルシア・A・吹雪野との戦闘時間は予想以上だったわ。第一次検体としては充分に成功といえる。満足よ。本音をいえば、那々呼の確保に失敗したとしても、ルシアとの最後の勝負を聞きたかったくらい」
「ならば最初からルシア・A・吹雪野との戦闘だけを命じればよかったのでは?」
「それだけだと、単に優樹ちゃんの自殺で終わっちゃうでしょう? 真剣に戦っても、絶対に勝とうとはしないわね」
 あの子は優しい子だから、とケイネスは肩を揺すって嗤った。
「とにかく誘拐は成功しました。当初の約束通りに優樹様の弟君を返してあげて下さい」
「貴女も意外と優しいのね。安心しなさい。ちゃんと手筈は整えてあるから」
 最初から狂言誘拐だと知っているのは、ケイネスと比良栄忠哉だけだ。
 ケイネスは形の上だけでも智志の身柄を預かると提言したが、ケイネスを信用できずに息子の身を危惧した忠哉は、提言を拒否した。よって現在は、申し合わせ通りに智志は忠哉によって表に出られない状態のはずである。
「……ま、それが致命傷にならなければいいけれど」
 ボソリと、ケイネスは呟いた。
「何か言いましたか?」
「いいえ。何でもないわ。ふふふ。ただね、嘘をつくのならば徹底しないと、逆に自分の身に嘘が跳ね返ってくるのではって思っただけよ」
 智志の身柄譲渡を拒否された時点で、ケイネスは忠哉を見限っていた。
 すでに比良栄家と【HEH】に用はない。興味もない。
「優樹ちゃんや弟クンについては、今は後回しよ。那々呼の身柄引き受け時期について、これから調整する必要もあるし」
「例の特殊部隊ですね」
 まだ堂桜一族は那々呼が奪取されたと知らないはずだ。
 よって那々呼奪回については、情報を一手に握っているルシアがトップに立っている。
「ええ。子飼いの【ブラッディ・キャット】って女の子達もそうだけれど、現時点でルシアがどの程度の強権を発動して、他の堂桜の特殊部隊を動かしてくるのか――」
 追跡を振り切れれば、その時点で最適の答えが出る。
 逆に追跡を振り切れなければ、こちらから合流に対してのリアクションを起こす予定だ。
 ミランダに説明するつもりはないが、逆探知を攪乱する目的の偽マーカーもすでに発信させている。協力者である米軍【暗部】による超一流かつ最先端の妨害工作だ。いかにルシアといえど那々呼を失っている状態では、そう簡単にロイドを把捉する事はできまい。

「早く顔が見たいわ。……那々呼」

 ギラリ、とケイネスの双眸が獰猛に輝いた。

 

スポンサーリンク

 

 

         

 その店構えは、見る者に年期を感じさせる古びた木造である。
 みみ架の祖父が経営している古書堂【媚鰤屋】を目の前にして、統護は緊張していた。
 店の名はクラスの女子に教えて貰えた。店の場所はネット検索で見つかった。
 目的は古本ではない。
 此処で療養している締里の見舞いだ。
 今は放課後である。まずは締里の様子を窺ってから、優樹の件を相談しにルシアと那々呼のアパートに行くつもりだ。淡雪からの連絡は途絶えているが、米軍【暗部】に接触しているので、外部との遮断は当然ながら想定していた。
(さて……。どうしたものか)
 みみ架とはクラスメートであるが、御世辞にも友人といえる関係ではない。
 しかも女子である。
 加えて――

 元の世界にあった公立藤ヶ幌高校の、とある図書委員長を思い出す。

 クラスメートの彼女は、周囲から《読書ジャンキー》と変人扱いされていた。
 名前は、累丘覧架という。
 間違いなく【イグニアス】世界の累丘みみ架と同一だ。
 噂では、累丘覧架の家は大型図書店を経営しており、母方の祖父は小さな合気道の道場を開いていた。しかし覧架そのものは合気道をやっておらず、運動も大の苦手だったはずだ。
(……ってか、元の世界では一度もまともに会話した記憶がないし)
「やっぱり予め訪問をメールしておくべきだったか」
 今さらながら統護は後悔した。
 いや、正確には訪問を拒否されると傷付くので、メールできなかったのだ。
 引き返せないようにと、見舞い品である高級マスクメロンも用意した。このメロンを渡せない限り、撤退という二文字は許されない。

 女子の家を訪ねる――など、統護にはハードルが高過ぎた。

 締里とのデート以上に精神にくる。
 なにしろ、つい最近まで『ぼっち』だったのだ。
 考えてみれば、高校に進学してから男子の家だって訪ねた記憶がない。というか、友人の家に遊びに行った記憶は、小学校時代の優季まで遡らなければならない。
 呼吸が乱れ、心拍数が上がり、大量の汗がしたたり落ちた。
(くそっ! 頑張れ俺! もう『ぼっち』じゃないはずだろうが!!)
 しかし『女子の家』という試練は、現在の統護のレヴェルでは、まだ分不相応であった。
 おまけに訪問相手は親しいどころか、単なる顔見知り程度の関係なのだ。
 ゲーム風に表現すれば、統護の現在の対人スキルはLV5くらいで、女子の家に単身訪問という高難度のクエストをクリアするには、LV30は必須だろう。
 よし、納得できた。

「あれだ。まずは史基の家に遊びに行って経験値を得た後の方がいいな」

 統護はわざわざ声に出して言い訳していた。
 締里の件については、みみ架が定期的に報告してくれる。つまり――転じて、わざわざ様子見に来るなと牽制しているのではないか?
「うん。そうだな。委員長に迷惑をかけちゃいけないよな」
 笑顔になって、うんうん、と何度も頷く。
 店前に、書き置きを添えてメロンを残しておけば、きっと意図は通じるだろう。
 統護の心は――折れていた。
 こんな様だから、元の世界で『ぼっち』だったのだ。彼女など夢のまた夢なのだ、と理解はしていても、緊張感と重圧感と、なによりも得体の知れない恐怖感には勝てなかった。
「それにアリーシアが怒るかもしれないし。うん、今日は止めだ」
 逃亡の理由を婚約者(仮)に転化し、決心はダメな方向へ固まった。
 さて、そうと決めたのならばメモ用紙を――

「おぉおッ。君はいつぞやの彼ではないか!」

 そんな老人の声が背中から掛けられた。
 統護が振り返ると、そこには作務衣の上に大人用の赤いちゃんちゃんこを羽織っている、見るからに屈強な老人が、満面の笑みを湛えている。
「久しぶりだのぅ。また来てくれて嬉しいぞい、少年」
 その台詞に、統護は戦慄する。
 この世界の本来の堂桜統護は、過去にこの店を訪れていた事があるのだ。単なる古本屋の客なのか、それともみみ架を訪ねたのか――
 顔を引き攣らせる統護に、老人が訊いてきた。
「なんじゃ、ワシを忘れたのか?」
「あ、いえ。みみ架さんのお祖父さんですよね?」
 当てずっぽうだが、間違いである可能性は低い筈である。
 老人――みみ架の祖父は首肯した。
「そうじゃ。よかったよかった。忘れられたのかと思って、ちょっとビクビクしたぞい」
 熊のような外見の割に、心は繊細そうな台詞であった。
「あの~~。で、みみ架さんは?」
「孫娘ならば道場で若手連中に稽古を――って、そぅうかぁぁぁああああッ!!」
「な、なんだぁ!?」
 突如として素っ頓狂な声を上げた、みみ架の祖父――黒鳳凰弦斎に驚き、統護は慌てて周囲を見回した。
 優樹や締里の件もあり、敵でも潜んでいるかと思ったのだが、特に異変は感じられない。
 首を傾げた統護の両肩を、弦斎は力強く掴んできた。
 老人なのに大した握力であった。おそらく左右共に八十キロは下らないだろう。

「君がみみ架の子作りの相手――つまり恋人か!」

 予想外の台詞に、統護はポカンとなる。
 皺だらけの強面をくしゃくしゃにして、弦斎は涙ぐんだ。
「そうかそうか。よかったぁぁ……」
「え? 何言ってるんだ、爺さん」
 アタマ大丈夫か、という言葉を辛うじて飲み込む。
 弦斎は統護に縋り付いたまま離そうとしない。体格通りの万力のような膂力である。
「ワシはずっと心配しとったのじゃ。前に一度、君――いや婿殿が来てくれて以来、誰も友達が遊びに来てくれなかったのじゃ……。いわゆる『ぼっち』だとばかり」
「じ、爺さん……ッ!!」
 恋人とか婿殿という誤解はともかく、『ぼっち』という単語に統護は激しく胸をうたれた。
 何故ならば、統護も優季以外は誰も家に遊びに来てくれなかったから。
「孫娘を頼みますぞ、婿殿」
「あ、ああ」
 誤解を解かないまま、統護は力強く頷いていた。
 同じ『ぼっち』を経験した身として、首を横に振るなどできるはずもない。
「大丈夫だ。俺と委員長は、」
 クラスメートで知人なだけという現実を余所に置き、更についさっきまで逃げ帰ろうとしていたにも関わらず、いけしゃあしゃあと「友達だ」と宣言しようとした統護を、弦斎は遮った。
「末永く、どうか見捨てずに、孫娘をお願いしますぞ!!」
 あまりの剣幕に押され、「あ、はい」と、つい受諾してしまう統護。
 なんか話が重たくないか? と、流石に引き始めていた。
 とにかく一段落ついたので、締里について訊こうとしたが、その前だった。
「あの子があんな性格になってしまったのは、実はワシにも責任の一端があるのじゃ……」
 半泣きで語り始める弦斎。
「そ、そうスか」
 みみ架には、本ばかり読んでいる堅物というイメージしかないので、何とも言えない。
 というか、随分と強引な爺さんだな、と呆れ始めてもいた。
「孫娘は我が黒鳳凰一族が伝える武術の継承者なのじゃが。あ、婿殿は知っておるよね?」
 正確には、みみ架は正式に継承者を承諾していないのだが、事実上の当代だ。
「ええ、まあ」
 とりあえず話を合わせる。
 みみ架が優樹を一蹴した戦闘データは、ルシアに見せてもらっていた。
 加えて、彼女が封印しているという『変態魔術』なる存在も史基から聞き及んでいる。その魔術についても、ルシアは軌道衛星が記録した観測データを保管・解析していたが、今は個人情報保護とプライヴァシーの観点から、どういった魔術かは教えられないとの事だ。
 改めて考えると、割と謎が多い委員長である。
「ワシなりの愛情をもって育てたつもりじゃったのだが、ちょっとばかり厳しくし過ぎたのか、あの子は歪んでしまったのじゃ。本の世界に逃げ込むだけじゃなく、冷血というか、人の心が分からぬというか。要約すると、性格がねじ曲がっておるのじゃよ」
「ぶっちゃけ、自分の孫に対して、酷い言い様だな」
「アレの母親も早々にワシから離れて嫁入りしてしまったのも、やっぱりワシの教育に問題があったのかもしれん……」
「娘と孫娘が揃って同じ結果なら、間違いなく一番の原因は爺さんじゃね?」
 統護の言葉に、弦斎は大粒の涙を流し始めた。
 泣かれてしまって、統護は途方に暮れる。しかも両肩は掴まれたままで、放してくれない。
 事態は急を要しているというのに、いったい何をやっているんだ、俺は……
 弦斎が駄々っ子ように声を張り上げる。
「で、でもでもっ! みみ架はいい子なんじゃ!! 本当はいい子なのじゃ!」
「そうだな」
 悪い人間ならば、不必要なリスクを冒してまで締里の面倒を見たりはしない。
「性格はかなりダメじゃが、ほれ、見た目というか、着飾ってないが素材はなかなかじゃろ」
「確かにルックスは抜群だと思うけど、一番に褒める点が外見かよ」
 顔を顰める統護。
 お洒落っ気とか、飾り気は皆無である反面、素材の絶美は統護とて気が付いている。スタイルも男受けする方向で最高級だ。
 とはいえ、あの偏屈そうな性格では、宝の持ち腐れ以外の何物でもないが。
「むむ。じゃあ婿殿は、みみ架のどこを好いておるのじゃ? 正直いって、我が孫ながら見た目以外に理由が思い浮かばんのじゃが」
 返答に詰まった統護に、弦斎はしたり顔になった。
 そこで逆に統護が質問する。
「ところで爺さんは、逆に俺なんかが可愛い孫の相手でいいわけ? 委員長なら性格がアレでも見た目がいいから、恋人なんて選び放題じゃねえ? 玉の輿を狙っているのならば、あまり期待に添えないかもしれないから。堂桜財閥の御曹司ってヤツでも、今の俺ってマジで劣等生として落ちぶれているってか、一族のお荷物的な扱いだからさ」
 元々からして誤解なのであるが、後で「玉の輿だと思ったのに」とか揉められても困るので、先手を打って予防線を張った。
 弦斎は首を傾げる。
「玉の輿云々は興味ないのぅ。ほれ、ワシはもういい歳じゃし。みみ架も金には興味ない子じゃ。そんな事よりも……、正直にいうと婿殿の体付きと立ち姿じゃろうな」
「そういう事か」
「どうか気分を害さんでおくれ。着痩せしておるが、ワシの目は誤魔化せん。他にも色々と。当然ながら、みみ架も同じじゃろう。婿殿の噂は耳に入っておるしな」 
 最初の「子作り」という言葉を思い出した。
 統護は苦い顔になる。弦斎に悪気がないのは理解できるので、文句もいえない。

「すいません。ちょっといいですか、店主」

 四十代のサラリーマン風の男性が、弦斎に声を掛けてきた。
「おおぉ、お客じゃ!」
 店への来客によって、ようやく統護は解放された。
 みみ架の部屋で締里が寝ていると教えられて、締里を見舞うついでに、みみ架の帰りを待つ事となった。直接、挨拶と礼くらいはしたいと思い直していた。

         

 扉のロックが掛かっていない時点で予想はできていた。
 匿っている六名の仮住まいである特殊大型コンテナの中を見回し――ケイネスは牙を剥くように口の端を釣り上げていた。
「優樹ちゃんに構っている内に、どうやら想定外の展開になったようね」
 ギリ、と奥歯が軋む。
 第二陣の最終ミーティングを行う予定だったが、離反されてしまった模様だ。
 見立てが甘かったか。もっと用心しておくべきだった。
 主人の許可を待たずに、ミランダは簀巻きにされている人物に駆け寄り、拘束を解除した。
 たった一人、もぬけの殻となっていた室内に残されていた少女――

 ――笠縞陽流は、簀巻きから解放されても無反応であった。

 ミランダに軽く頬を叩かれても、陽流は虚ろだ。
 ぽつり、と少女は言葉を零す。
「また……あたし棄てられちゃった」

 

 

前のページ   目次へ   次のページ

 

 

注記)なお、このページ内に記載されているテキストや画像を、複製および無断転載する事を禁止させて頂きます。紹介記事やレビュー等における引用のみ許可です。

 

 

 本作品は、暴力・虐め・性犯罪・殺人・不正行為・不義不貞・未成年の喫煙と飲酒といった反社会的行為、および非人道的、非倫理思想を推奨するものではありません。また、本作品に登場する人物・団体などは現実とは無関係のフィクションです。