アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第2部(第33話)

 

第四章  破壊と再生 6 ―ルシアVS優樹⑤―

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         6

 キレイな紅が優樹を彩る。
 身体の崩壊が加速し、結晶化した皮膚の奥から血飛沫が舞った。
 その血飛沫を《サイクロン・ドレス》が巻き込んで、真っ赤なドレスとなっていた。
 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……――
 赤い竜巻が優樹の周囲に発生していた。
「【ナノマシン・ブーステッド】の力だけじゃ君には敵わないけれど……、ボクの全てを最後の魔術に込めるよ。命を賭けた最後の一撃――悪いけど付き合ってもらおうか」
 その言葉に応えようと、ルシアも己の周囲に竜巻を発生させた。
 優樹は眦を決する。
 ルシアの双眸はガラス細工のようなままだ。
 二つの竜巻と、二人の少女が激突しようとした、その時。

間に合いました、優樹様」

 ロイドの声に、二人は振り返った。
 二人の視線の先には――ロイドに拘束されている、褐色の肌をした赤茶色の髪の毛をしている、異国の血筋であろう青年の姿があった。
 祖国の戸籍を鬼籍とされ、身寄りのないニホン人として那々呼のアパートに居候している、河岸原エルビスである。
 複雑そうな顔になった優樹は、唇を噛んだ。
 二段構えの計画はギリギリで成功したが、いっそここで終わりにしたかった。
「ルシア殿。取引です。この元王子の命を救いたければ、那々呼殿が入ったキャリーバッグを置いて立ち去って下さい。彼の身柄はリニアライナーから降りた時点で解放します」
 この地域だけは、不可侵という事でエルビスに監視はついていない。
 逆にいえば、この地域から離れた瞬間から、彼は極秘の監視下に戻るので、その監視員へ彼を引き渡せばいいのだ。
 エルビスは事態を飲み込めないのか、ハンズアップしながら呆けた顔をしている。
「ええと!? なんかバイトを早退しろって連絡入って帰ったけど、いったい何がどうなっているだい?  どうも物騒な様子だけど」
 竜巻を消したルシアは、呆れた視線をエルビスに向けた。
「まったく。本当に使えない人ですね」
「そんな目で僕を見ないでってば。最近はバイト先のお嬢さんにも冷たくされて、本当に傷付いているんだよ」
 ルシアはロイドに言った。
「ネコの身心に危害を加えない、と約束して頂けるのならば、この場は引きましょう」
「約束します。ケイネスに引き合わせた後までは保証できませんが、可能な限り無事にお返しできるよう尽力します」
「え? まさか僕って人質なのかい? でも今の僕にはそんな価値なんて――」
 困惑するエルビスの耳元に、ロイドが囁く。
「そうですね。色々な人にとって今の貴方は亡き者になった方が好都合でしょうが、少なくとも彼女はそうではない、という事です」
 魔術を消した優樹が前のめりに崩れ落ちた。
 ナノマシンを停止した彼女に、ルシアはそっと息を吐いた。
 颯爽と踵を返したルシアは、エルビスに冷たい一瞥を添えて言い残す。
「家に戻ったらお仕置きですよ、エルビス」

 

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 帰途についたルシアに、物陰から姿を現した三名の部下が問いかけた。
「隊長。見逃してよろしかったのですか?」
 彼等――というか彼女達はみな若い女性で、表面を様々な模様に変化させる機能をもつ特殊なロングコートを部隊のユニフォームとしている。
 電脳世界の【ベース・ウィンドウ】でのサーチに引っかかるリスクを用心して、魔術が使用されていない特注で開発させた純粋な機械製品だ。
 今は木々に溶け込む迷彩模様を解除し、【ブラッディ・キャット】の名に即した、真紅のデフォルトカラーに戻している。共通仕様のヘッドマイクも、側面から見るとネコ耳に見えなくもない特徴的なデザインであった。
 奇襲に遭った際、対抗するのではなく、予備戦力として奇襲者の退路である駅周辺へと退避していた者達であった。
 彼女等は、ルシアの指示であえてエルビスをロイドに捕獲させた。
 ルシアは部下達に答える。
「こちらが引かなければ、比良栄優樹は間違いなく絶命していました」
 それは統護が望む結果ではない。ゆえにケイネスの意図に乗るしかなかったのだ。彼女の作戦では、こちら側が譲渡する理由までもを織り込んでいたに違いないだろう。
 問いかけた隊員が、表情を曇らせた。
「しかし、もはやあの少女が助かる状態とは……」
「大丈夫です。ご主人様――堂桜統護ならば、きっと彼女を救えます」
「その為に、那々呼様を危険に晒して?」
「今までが不可侵に過ぎたのです。今後、この様なケースが起こる事も想定しての話です」
「那々呼様は敵の手に堕ちているのですよ。すぐにでも奪回しないと」
「追跡は怠らないように。ただワタシの命令があるまで手出しは禁じます」
 元より、那々呼の身に危険があるケースだと判断したのならば、そもそも優樹達をアパートに接近させなかった。こちらにも相応の思惑があっての対応だった。
「仮に……ネコの身や命に異常が生じたとしても、次善の策はあるので心配無用です」
 本来ならば、この場で比良栄優樹の身柄を確保したかったが、あの状態では統護に託す他なくなってしまった。
 リスクは倍増するが、リターンも大きくなる、第二シナリオへの展開を脳裏に描きながら、ルシアは部下達を引き連れてアパートメントへと戻った。

 

 

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