第二章 ヒトあらざるモノ 5 ―崩壊―
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父と娘が袂を別つ――
家庭崩壊のきっかけは、みみ架の母親、黒鳳凰弥美と弦斎の確執ではなかった。
弥美の母であり弦斎の妻、琴乃との衝突が始まりだった。
「黒鳳凰琴乃の実家は琴の名家らしく、妹との後継者争いに敗れた祖母は、実家の箔付けという政略結婚でお祖父ちゃんと結婚した……と聞いているわ」
みみ架は淡々と話し始めた。
琴乃は十年前に病没しており、黒鳳凰と琴乃の実家の繋がりは完全に途絶えているという。
「箔付け、か」
「ええ。黒鳳凰というか【不破鳳凰流】自体は、魔術と魔術戦闘の確立によって完全に時代遅れとなり、また【不破鳳凰流】を体現できるのも黒鳳凰の血脈以外に未だいないわ。けれど、格闘家だけではなく警察および軍関係者の現場エリート達は、黒鳳凰の道場の門下生となり、【不破鳳凰流】のダウンコンバート版を各々の技量・才能レヴェルに合わせて学んでいるの」
業は時代遅れになろうと、黒鳳凰の名自体は廃れていない。むしろ神格化されている。
「知ってるというか、調べたよ。結構な規模らしいな」
「【不破鳳凰流】を維持する目的で、政府から多額の補助金も出ているし、年々規模は膨らんでいく一方よ」
現在では本来の道場は、精神修養と弦斎による演舞・組み手指導にしか使われていない。
道場の下に増築されている地下五階からなる広大な最新鋭のトレーニング施設・設備によって、総合的な肉体造りと技術指導が、専属トレーニングスタッフのもとで適切に行われている。
所属選手・門下生・内弟子のレヴェルと目的に合わせて、可能な限りワンツーマンで指導される。そのメソッドにより優れた指導者も多く輩出しているのだ。
「補助金だけじゃなくて成人した門下生による寄付金も少なくないし、お陰様で、道場は隆盛しているわ。スタッフへの充分な給料や内弟子の生活だけじゃなく、キッズコースを月額無料にしたり、プロ格闘家志望の選手には、道場側から経済的に支援できているわ」
伝説の武人――と名を馳せている黒鳳凰弦斎は、警察・自衛隊・格闘技界において、大きな影響力を持っている。弦斎を先生と敬い、みみ架をお嬢様と呼ぶ、官僚や警察官・自衛隊上層部も多い。正式な人間国宝ではないが、実質それ以上の重鎮なのだ。
海外から指導を受けに来る猛者も多い。世界を舞台に活躍するプロ格闘家も、マスコミに公表こそしないが実は弦斎の弟子、というケースもある。億のファイトマネーを稼ぐ現役のボクシング世界チャンプも、海外勢を含めると弦斎の弟子は十名を越えており、たとえ世界的プロモーターであっても、弦斎には頭が上がらないのだ。
「――話は戻るけれど、琴乃は『伝説の武人の妻』という肩書きの為に、実家から嫁がされたの。若い時の弦斎も女には不自由していなかったから、コネクションを優先してよく考えずに琴乃との婚姻を承諾してしまった」
「それでも結婚したんだから、互いに愛情はあったんだろ?」
「お祖父ちゃん本人に確認していないわ。お祖母ちゃんには、もう訊けないし。だから憶測や想像を交えずに事実のみを話すわ。お祖母ちゃんは母に対して、琴の英才教育を強制したの」
統護は首を傾げる。
「あれ?委員長のお母さんも【不破鳳凰流】を使えるんだよな?」
「そ。母はお祖父ちゃんから黒鳳凰の後継者としての修練を課せられ、その上で琴の技術を叩き込まれていたってわけよ。常人からすれば狂気じみた日々だったでしょうね。わたしだったら耐えられなかった」
「確かに、親からそれぞれ二兎追わされるってのは、かなりハードだな」
さらに両親が要求しなかった学業においても、弥美は優等生だったという。
「とはいっても、堂桜くんの修練に比べれば、きっと生ぬるいってレヴェルでしょうが」
「そこはノーコメントで」
統護の苦笑を受け流し、みみ架は話を続ける。
「中学生頃までの母は、両親に大人しく従う他なかったわ。生活していく為にね。その当時から母はゲームに嵌まり始めたの。それで、ある日……」
琴乃が開く定期演奏会で、ノーミスで演奏できたのならば、新発売された携帯ゲーム機を買ってくれと交渉した。琴乃は参加者の中で一番の演奏ができたのならば、と承諾した。
業の修練と琴の稽古、そして勉強をこなした上でゲームに興じていた超人であっても、お金だけは自力で工面できなかった。身体を売る――などという発想はなかった。
「物で吊るってのもアレだが、で、結果は?」
「母曰く、ノーミスは勿論、ぶっちぎりで一番だったそうよ。なにしろゲーム代でお小遣いが消えているので、是非とも買ってもらうんだって猛練習したそうだから」
「まさに現金だな。ってか、委員長ってお小遣いどうなんだ?」
「お小遣いもなにも家計を管理しているのはわたしだもの。月二万円以内って自制しているけど、実際は月に三千円も使っていないわ。基本的にほとんどお金、使わないし」
「節約せずに月にたった三千円以内ってのも凄いな。それで、話の流れからして嫌な予感がするんだが、お母さんは晴れてゲーム機を買って貰えたのか?」
みみ架は首を横に振った。
「いいえ。やればできるのだからもっと稽古に身を入れろ、と逆に説教されたと母は言っていたわ。ゲームなど下らない事は禁止だとも。この話をした時の母は憤慨を越えていたわ」
「約束を反故にされたのか。酷い話だが、現状からして間違いなくオチがあるよな?」
母娘の確執というから深刻な悲劇を想像しがちだったが、どうにも低レヴェルな話っぽい。
というか、親が子との約束を翻意するパターンだと、大概の結末は――
「祖母の稽古はますます厳しさを増し、母は心を入れ替えて食らいついていったわ。そして、ついに時は来てしまう。祖母は母を擁して、実家の演奏会に乗り込んだの。母はその演奏会で一世一代のパフォーマンスを披露したわ。祖母の実家が祖母に嫁入り道具として持たせた名器で。母は人生で琴にかけた全ての時間を込めたといっていたわ。完璧な演奏だったそうよ」
「あれ? 予想に反して、なんかハッピーエンドっぽくないか?」
「最後まで聞きなさい。真っ青になった実家の面々に、祖母が勝ち誇ったその横で……
母はアルゼンチン・バックブリーカーで、祖母の琴を真っ二つにしたの」
それは決別のプロレス技。
弥美の意思表示だ。嘘をつかれた事に対する復讐と、もう琴には関わらないという。
みみ架は微妙な表情でため息をついた。
「演奏会は凍りついたというわ。特に無関係のお客さんは。そんな中、祖母は半狂乱で泣き喚いた。母は『嘘ついてゲーム機を買ってくれなかったらこうなったんだ!』と呵々大笑して一人会場を後にした」
統護は呆れた。
「アルゼンチン・バックブリーカーで真っ二つはやり過ぎな気が……。まあ、そりゃ確かに、元はといえば約束破ったお祖母さんに非がある話だが」
たかだか数万円の携帯ゲーム機を買い与えなかった代償が、嫁入り道具として持参した宝物の琴なのだから、結果的にかなり高くついてしまった。しかも面子丸潰れだ。
娘の人格を軽視した自業自得とはいえ、統護は同情を禁じ得ない。
「お祖母さん、色々な意味で再起不能じゃないか?」
「ええ。祖母はその事件以来、抜け殻のようになってしまった。以後、家事は母が引き受けていたそうよ。わたしが実際に知る祖母は、演奏家であった頃の面影は欠片もなかったわ。ただの無気力人間だったもの。わたしの記憶の限りでは、母と祖母は一度たりとも会話を交わしていないわ。本当に一度たりとも……」
死に目に立ち会ったのも、告別式に葬列したのも、みみ架の父で、弥美は一切関与しなかったという。
自浄作用的に関係修復できるのならば、もっと以前から両者は歩み寄っているだろう。悲しい現実として、子供を自身の価値観に縛ろうとする親は少なくない。特に、子供が親の扶養下にある内は。そういったケースは子供が親から経済的に自立した瞬間に、子が親から距離を置いてしまう。親孝行という名目で利用される打算を忌避するのだ。
子供を自分の将来の保険にと企てる親さえいる。そういった親は、子供の幸せではなく子供からの実入りを期待して、子供に優秀・有能であって欲しいと教育する。しかし、自身を親の道具として利用されると感じ取った子供は、親に対して醒めた視線を向けるものだ。
統護にしても、業と〔契約〕を子に継がせるつもりなので、色々と胸が痛くなる話である。
「つーか、妻と娘がそんな状態なら、あの爺さんは何やってたんだ? 仲裁したのかよ」
みみ架は渋面になった。
「糞ジジイらしいといえば、らしいんだけど。弥美が【不破鳳凰流】をちゃんと継ぐのならば、自分は別に口を挟まないって中立を貫いたのよ。他は全て好きにしろと」
「この場合の中立って最悪じゃね?」
誤った方、間違っている箇所を指摘して叱るどころか、喧嘩両成敗ですらない。
単なる日和見――というか無関心だ。卑怯な逃げともいう。
「母と祖母の心が、お祖父ちゃんから離れた決定打は、この件でしょうね」
家族は崩壊してしまい、そして元には修復されなかった。
「それでも委員長のお母さんは【不破鳳凰流】の修練は辞めなかったんだよな?」
「別問題ね」
みみ架の口調が豹変した。
「当代として言うのならば、凡才だったとはいえ母――いえ、あの女にも、確かにわたしや祖父と同じ黒鳳凰の血が流れているのだから。堂桜くんなら理解できるでしょうが、好き嫌い、やりたいやりたくないという話じゃない。わたしだって母以上に【不破鳳凰流】に興味はないわ。それでも、わたしも母も黒鳳凰の血脈なの」
「凡才……か」
「あくまでわたしの所見だけどね。母は黒鳳凰として無才に近かった。祖母の血が原因かしら。母は高校三年で学生結婚して、黒鳳凰と業を棄てたわ。嫁ぎ先は累丘家――つまりわたしの表向きの姓であり実家ね」
ゲーム云々について弦斎は娘に何も言わなかった。
学校での成績は常にトップクラスの優等生であったし、それに学校の成績も【不破鳳凰流】の継承者としての修練に比べれば、弦斎にとっては些事であった。
だから弥美に恋人ができても、その恋人が重度のアキバ系であったとしても、歓迎・祝福こそすれど、文句はなかったという。大学進学も行きたければ好きにしろ、行きたくなくとも別に構わないという意見で、担任教師は父兄面談で頭を抱えたそうだ。
弥美は就労する必要のない立場でもあり、弥美が背負う責務は、労働や納税ではなくて、黒鳳凰の次期後継者として、血と業を次代に残す事のみだった。だから責務さえ果たせば、彼女がゲーマーとしてニートになろうが、誰も困らない――本来そんな人生である。
「当時、父は大学生で母は高三。母のお腹に私が宿ったの。その時さえも、お祖父ちゃんは怒らなかった。世間的には、大学生が高校生を妊娠させるって、高校生側の親は激怒するけど。むろん学校側は困惑したでしょうね」
当然ながら琴乃は無反応だったという。
「爺さんなら怒るどころか、逆に喜んだってパターンだろ。委員長の言う通りに凡才なら」
「そうよ。お祖父ちゃんは新しい後継者候補に狂喜したわ。これは推測だけど……、黒鳳凰としての母のプライドは傷付いたのかもしれない。祖母の血も入っているのだから」
黒鳳凰家は国の保護と道場経営により、経済的には極めて恵まれている。
弥美の高校生での学生結婚・学生出産も、何ら障害がない状況だった。
「これで父方の家が普通なら、父が責任をとって黒鳳凰に婿入り――ってなるのだけどね」
「実際には累丘弥美になったんだよな」
「父が婿入りしないという風向きに、お祖父ちゃんは一転して、二人の結婚に猛反対したわ。そして孫は寄越せと」
累丘家は累丘家で、弦斎に対して一歩も引かなかった。
強奪に近い形で、弥美を黒鳳凰から嫁として迎え入れる。高校も卒業間際に編入という荒技であった。現在でも弦斎と累丘は折り合いが悪い。年賀状のやり取りすらないのだ。
「お前の実家ってどんな家なの?」
国を背後につけているに近い弦斎と真っ向から渡り合えるのは、普通ではない。
「法曹界の人間ね。公認会計士とか弁護士とかの総合法律事務所をやっているわ。父方の祖父は公認会計士で、父も弁護士よ」
みみ架はスマートフォンの液晶画面に写真を表示させた。
イタリアンブランドの背広を着込み、胸に弁護士バッチが輝いている、理知的で細面な紳士の写真が載っている。いかにも真面目で誠実そうな表情だ。
「アキバ系オタクには見えないな」
「プライヴェートではこちらよ」
みみ架は画面上に指を滑らせ、写真を次へスライドさせる。
アニメ絵の美少女がデカデカとプリントされたTシャツを着た中年男性が、これまたアニメ絵の美少女がプリントされている最高クラスのベンツを背に、変なポーズをとっている。
信じられないが、背広の紳士と顔が同一だ。
「これって、いわゆる痛車ってやつか。ベンツの痛車かよ。背広姿と別人じゃねえかよ」
「本当に痛々しいでしょう? 車内BGMは全てアニソンよ」
(この写真をスマホに保存しているって、委員長もなんだかんだで……)
背広の弁護士ヴァージョンのみしか保存しない、他人に見せないという選択肢もある。
しかし、彼女はそんな女ではない。
統護は目尻を緩めた。みみ架らしい、と思う。
「母の写真はこれね」
何かのコスプレと思しき露出度の高い甲冑剣士に扮した、十代後半から二十代前半の女性が写っている。夫も隣にいて、楽しそうで幸せそうだ。
みみ架に顔立ちがそっくりだ。ほぼスッピンのみみ架とは異なり、メイクは凝っている。
「母ちゃんって割に、異様に若いな。何年前の写真?」
「先々月にメールで送りつけてきたから、つい最近だと思うわ」
驚く統護。
「大学一年の夏に委員長を産んだにしても、見た目が若過ぎだろ。不老の妖怪かよ」
高解像度なので、メイクで若作りしても騙されない。
まさか画像編集した代物を、実の娘に送信しないだろう。
「確認するけど、画像編集なしでコレなんだよな?」
みみ架は、化粧の薄い弥美の顔写真のアップを統護に見せた。
やはり若々しい。十代と思う者も多いだろう。どう見ても母ではなく姉にしか見えない。
「氣の循環や遺伝子的な結果なのか、黒鳳凰の女って代々あまり老けないらしいわ」
「これで三十半ばって恐ええよ」
不気味とすらいえる。
みみ架はサバサバした表情で言った。
「……ま、ウチのジジイの世話が忙しくて、今では実家にほとんど顔を出せないけど」
幼少時に、みみ架は弦斎に預けられたという。
【不破鳳凰流】の基礎的な訓練は、すでに弥美によって施されていた。
以前、みみ架は「母に後継者と【不破鳳凰流】を押しつけられた」「いつの間にか本籍を黒鳳凰に変更されていた」と、統護に愚痴っていた。
今となり、統護は実相を察する。
娘に去られた祖父と抜け殻のままの祖母を、みみ架は見棄てられなかったのだ――
「お前はいつも、いつだってそうだよな」
「なによ」
「いいや。やっぱ図書委員よりも委員長キャラだなって改めて思っただけだ」
みみ架は小さく肩を竦めた。
「誤解しないで。変な買いかぶりも御免よ。わたしを先代に寄越した母も、先代の元に残ったわたしも結局は黒鳳凰の血統ってだけなのだから」
液晶画面の写真が変わる。
――みみ架に相似した、されど雰囲気が真逆な少女が嗤っている。
笑っている、ではなく嗤っているのだ。そして細められている目が猛禽類のソレだ。
ゾクリときた。統護は表情を改める。
「これが例の妹さんか」
「そうよ。ようやく話がここまで来たわね。名前は累丘琉架。中学一年の十二歳よ」
「最近まで、お互いに存在を知らなかったんだよな?」
「異母姉妹でも異父姉妹でもないのよ。同一の両親から産まれている正真正銘の実妹。両親が意図して隠さなければ不可能よ。出産を隠し、わたしの帰省時にバッティングするのを避けるのは、偶然に頼るのは無理があるもの」
みみ架の声は震えている。
そう。みみ架は十三年近く両親に謀れていたのだ。
それは妹の琉架も同じだ。
そして姉妹が互いを知った、その時から、弥美は沈黙を貫いている。
その理由と目的は?
ギラギラした双眸で、みみ架は独り言つ。
「この琉架って女、間違いなく黒鳳凰よ。ねえ母さん、いえ、累丘――いや違うわね、黒鳳凰弥美。貴女、何を考えてこんな愚かしい真似をしたのかしら? 先代から去って【不破鳳凰流】を棄てたはずなのに、どうして再び子を成したの? 貴女とて分かっているでしょうに。血を継げば、また魂と宿命に引きずられると」
底冷えしそうな怖い声音。ゾッとするほどに美しい。だか、それは凄惨な美貌である。顔つきが変化していくみみ架に、統護は息を飲む。
みみ架は覚悟しているのだ。実の妹と場合によっては――殺し合い、壊し合いになると。もっとも穏便な結末であっても、業を封じる為に肉体を破壊し尽くさねばならぬと。
大きく深呼吸をして、みみ架は声と肩の震えを消した。
統護に真剣な眼差しを向ける。
「可能性として、対抗戦に琉架が何らかの手段で参戦してくるかもしれない。あるいは、証野を闇討ちした賊の片方が琉架かもしれないわ」
「ひょっとして【ソーサラー】としても、妹さんは強いのか?」
「【不破鳳凰流】の業は不明だけど、戦闘系魔術師としての戦闘データは動画として送られてきたわ。挑発ね。《ワイズワード》頼りで、純粋な魔術の才能に乏しいわたしとは違い、琉架は戦闘系魔術師としても超一級品の才能を秘めているわ」
「マジかよ」
「とにかく琉架の件は、今後なにがあっても、わたしが片付けるわ。お祖父ちゃんにも絶対に喋らないで。これはわたしの問題なのよ。黒鳳凰の当代としての」
その決意表明に、統護は何も言えなかった。
…
二人は古書堂【媚鰤屋】に到着した。
営業時間はとっくに過ぎており、店は閉まっている。
しかし店先には出迎えがいた。
店主である弦斎ではない。最近アルバイトとして雇われている青年でもない。
その者はエプロンを着けているが、店の物ではなく、フリル付きの純白のエプロンドレスだ。
麗容の少女が身を包んでいるのは、メイド服である。
もはやお馴染みに近いメイド少女だ。
彼女――ルシア・A・吹雪野は、完璧な角度でお辞儀して、たおやかに統護を迎える。
「お帰りなさいませ。お待ちしておりました、ご主人様」
ちなみに、みみ架には一瞥もしない。
そして、みみ架もルシアから視線を逸らしていた。
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