アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第5部(第18話)

第三章  賢者か、愚者か 5 ―統護VSオーフレイム②―

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         5

 

 ヒュゴゥっ! 風切り音が連続した。
 綺麗な右半身から、オーフレイムのシャープかつ丁寧な左ジャブが、統護に打ち込まれる。
 距離が遠く、統護は手が出せないままだ。
 しかもへヴィ級の肉体なのに、オーフレイムのフットワークは軽量級のように軽やかだ。
 攻撃的な外見とは真逆の堅実で守備的なスタイルである。
 統護は典型的なボクサーファイター型だ。
 それもミドルレンジ主体で、時にクロスレンジまで踏み込んで、連打よりも一発強打を優先する。試合ではないので、完全にKO狙いのパンチャースタイルである。
 対して、オーフレイムはボクサー型だ。
 アウトレンジ主体で、相手よりもロングから主導権をコントロールしにくるタイプ。
 素人は接近しての『殴り合い』『打ち合い』を好み、ボクサー型を『非力な逃げ』のスタイルと誤解しがちである。
 現実は全くの逆――であり、ボクサー型の方がファイター型より上位の戦闘スタイルだ。
 そもそもパンチ力に乏しければ、ジャブで相手をストップできない。
 スピード・パワー・テクニック・インテリジェンス・タクティクス全てを高次元で備えていなければ『本物の』ボクサー型は体現できないのである。
 逆に、スピードがないからガードを固めて前に出るしかない者。
 テクニックに恵まれていないから接近して殴り合うしかない者。
 パンチ力がなく非力だから手数を出すのに接近するしかない者。
 本物のボクサーパンチャーは、卓越した技術・速度・パンチ力で、一発で相手を仕留める。
 最初からファイター型を指導するトレーナーは少ない。
 綺麗で華麗なボクサースタイルを諦めた落伍者が、前に出て殴り合うスタイルを強いられるのが大半というのが、現実なのである。
 むろん統護の様な例外も存在している。
 ファイターにはファイターなりのノウハウとテクニックがあるのだから。
 だが、テクニックのあるファイターは、同時に高次元のボクサー型も体現可能である。ボクサー型ができない――というわけではないのだ。
 故に統護は、オーフレイムがいる『ボクサーとしての次元の高さ』を看破していた。
 統護はオーフレイムのジャブに阻まれて、思うように接近できない。
 ロングレンジに釘付け状態だ。
 仮にジャッジがいるのならば、ポイントを取っているのはオーフレイムである。その反面、統護が負ったダメージはゼロだ。なにしろオーフレイムはダメージを与えにきていない。

 

 しかし、これはボクシングの試合ではないのだ。

 

 いくらポイントを取っても、相手をKOできなければ意味がない戦闘である。
 ならば、このアウトボックスに込められた、オーフレイムの意図とは? 狙いとは?
 それに【ソーサラー】であるオーフレイムが、魔術を全く使用してこない点も不気味だった。
(とにかく無理にでも中に入るか)
 統護は決断する。時間は有限なのだ。今回の潜入のリミットは二時間。締里とも別行動になっているし、敵【エレメントマスター】の存在もある。悠長にはしていられない。
 魔術が使えない統護は、近接格闘戦しか選択肢がないのだ。
 ボディワークとヘッドスリップでジャブを躱すのを止める。
 頭部のガードを固めた統護は、多少ならば体勢を崩しても構わないと、強引に飛び込んだ。
 ジャブの連打を被弾して統護の体勢が崩される――が、構わず突っ込む。
 ギラリ、とオーフレイムの双眸が光を湛えた。
 オーフレイムの構えが滑らかにシフト――ボクサー型からレスリング・スタイルになる。
 そして統護のステップインに反応し、超高速で始動する。

 

 体勢を崩しながら距離を詰めにいく統護に、カウンターでタックルを合わせてきた。

 

 統護は瞬時に悟る。自分からタックルの距離にいかずに、ジャブの牽制で相手の体勢を崩しつつ、タックル可能な間合いに統護を呼び込む戦法だったのだ――と。
 術中に嵌まった。オーフレイムのタックルの切れは、まるでジャックナイフのようだ。
(バックステップは間に合わない!)
 次の瞬間。
 轟音を響かせて、統護とオーフレイムの、二つの強靱な肉体が激突した。
 激突音の残響が止んで、統護とオーフレイムの動きが止まる。
 無意識に近かった。
 裏をかかれたからこその、思考が介在していない動き。肉体に染み込ませた、身体が覚えている挙動だった。だからこそ通常を超えた最速で対応できたのだ。

 

 統護はオーフレイムのタックルを、両足を後ろに投げ出し、上から被さって抑えている。

 

 いわゆる『タックル切り』の動作――スプロールだ。
 反射で動いたのが奏功していた。練習では体現できない仕合限定のレヴェルである。一切の無駄が削ぎ落とされた理想的なフォームを体現できたのは、幸運という他はない。
 加えて、超人化している身体能力に助けられた。多少ならば体勢を崩されても、筋力で強引に動きの軌道修正が可能だった。それも身体が覚え込んでいるが故であるが。
 次の展開――
 体格差、体重差をものともせずに、統護はオーフレイムを押さえつけている。
 首を極めにいくか。
 あるいは、格闘技では禁じ手である背面への打撃を振り下ろすか。
 主導権は統護にある。オーフレイムは統護の動きに対応するべく、油断なく手足を縮めて亀状態で守りに入っていた。迷い、隙を見せれば、この体勢からでも彼は反撃するだろう。

 

 統護は迷わず、オーフレイムを突き放した。

 

 両者は再びスタンディングに戻る。
 攻撃を放棄しての仕切り直しを選択した統護に、オーフレイムが意外そうに問いかけてきた。
「何故だ? 俺をガブっていた今の一瞬は、お前にとって好機だったはずだ」
「完全にラッキーだったからな。運で勝ちを拾うのは一回でお腹一杯だ」
「運――か。実に見事なタックルへの反応だったがな。お前は今の動きを運だというのか」
「ああ。納得がいかない。今の攻防は実質、俺の負けだよ」
「そうか。しかし予想通りに近代ボクシングだけではなく、最新のMMA技術をも会得しているようだな。それを確認できただけでも、今の攻防は俺にとって有意義だった」
 オーフレイムの見立ては正解である。

 

 統護のMMA技術は、父から伝承された『堂桜(蘊奥)の業』に由来していない。
 古流武術とは別に、最新ボクシング技術を統護に教え込んだ、母親によるものだ。

 

 母親はボクサーでMMAファイターではなかった。だから母親から直接の指導は受けていない。統護が指導を受けたのは、母親がアメリカ在住時代に築いた人脈――世界的に活躍している超一流コーチ陣であった。
 コーチ料は友人価格――相場の二十分の一でレッスンを施してくれていた。
 統護が小学生高学年になった頃から、スパーリングパートナーは現役のMMAトップファイターや世界レヴェルのアマレスラー、柔術家という世界最高レヴェルの面子だ。世界的に著名なトレーナーや選手と深い交友がある母親を、尊敬するというよりも呆れていた。アメリカ格闘技界では有名人かもしれないが、日本では単なる格闘技オタクの変人主婦なのである。
 拳の怪我が回復せずに現役引退した母親であるが、父親に出逢う前までのアメリカ時代は、それだけ凄いボクサーだったらしい。
 ボクシング命で、総合格闘技だけではなく他の格闘技を毛嫌いしている母親は、それ故に、統護にMMAやレスリング、柔術、柔道などの最新技術を、息子の統護に学ばせた。

 

 全ての格闘技にボクシングで勝つには、投げ、極め、グラウンド技術は必須だからと。

 

 父親から課せられた堂桜の修練とは別腹で、完全に強制だった。
 すぐにでも世界タイトルを獲れる――と、母親の知人である大物プロモータに太鼓判を押されていたボクシングですら、統護にとっては取り組む意味を見いだせなかった。堂桜の業だけでも、武力は過剰に過ぎるというのに。それなのに、そのボクシングで全ての格闘技に勝つ為に、他の格闘技を学ぶなんて、当時は本当にバカバカしかったという記憶しかない。
 何が悲しくて、年に三回以上で一度に一週間は費やす山籠もりとは別に、単身渡米して合宿をしなければならないのか。学校の大型連休の度どころか、時に仮病で学校を長期欠席してまで渡米していたので、出席日数は常にギリギリだった。ジムに寝泊まりしてのトレーニング漬けの生活は、最先端の格闘技術と格闘理論の学習と体得のみに特化したもので、身心の精錬を目的として躰と武術を磨く堂桜の修練とは対極であった。
 しかし熱心に指導してくれる周囲への義理で、トレーニングは真剣勝負だった。また、ちょっとでも手を抜くと怪我では済まないレヴェルでもあった。
 サポートしてくれたスタッフには悪いが、公式戦に出る事だけは頑なに拒否し続けた。
 この異世界に転生する前の統護にとって『戦い』や『強さ』――敵に勝つという事は、興味の範疇外だったのだ。
 けれど今になって、世界一の変人だと思っている母親に、心から感謝している。

 

 間違いなく『堂桜(蘊奥)の業』のみでは、オーフレイムのタックルを防げなかった。

 

 神秘的な古流武術と理詰めの現代格闘。二つのエッセンスが内包・共存するのが統護だ。
 どちらが上、というのではなく、その両方を局面に応じて最適に運用できる事こそが肝要といえる。
 そして統護は肌身で感じ取っている。
 このオーフレイムという男――想定よりも上のレヴェルにいるかもしれないと。
 オーフレイムのSMAを、統護は知らない。
 しかしタックルからのグラウンドを狙っている事は理解できた。
 統護とオーフレイムは小刻みにステップを刻む。

 

 元の立ち位置に戻った両者は、互いに距離とタイミングをはかっていた。

 

 今度もオーフレイムが先手をとって、鋭い左ジャブを伸ばす。
 拳の軌道は把握している。タックル狙いが分かった以上、ジャブの連打でオーフレイムをリズムに乗せるのは愚策である。
 連打はさせない。許すのは一発のみで出鼻を挫きにいく。
 統護はヘッドスリップで躱すと、ジャブの引きに合わせて強引かつ大胆に踏み込んだ。ワイルドで大振りの右フックを振るう。身長差とリーチ差から、コンパクトには打てない。

 

 狙いはオーフレイムの頭部ではなく――左前腕の専用【DVIS】だ。

 

 右フックを意図的に左腕に宿る『炎の円楯』でガードさせて、そのままガード越しに《デヴァイスクラッシャー》を発動させる。まずはオーフレイムの魔術を破壊しにいく。
 ドンッ!!
 統護の右ロングフックを、オーフレイムはクロスガードでブロックした。
 右拳が着弾しているのは――左腕ではなく右腕だ。
 彼の左腕に灯る『炎の円楯』は、隠れるように縮小している。
 オーフレイムは左ジャブの引きと共に、右半身から左半身――サウスポースタイルにスイッチしていた。そして、右腕を上にして左腕の籠手型【DVIS】を《デヴァイスクラッシャー》から守ったのである。
「ちぃ!」
「少しばかり雑だったな」
 統護の右腕が、オーフレイムの右パーリングによって払われる。
 パーリングからの切り返しで、オーフレイムのコンパクトな右フックが統護を襲った。
 ヒュオ、と空気が嘶く。やや苦し紛れのダッキングで躱す統護。
 統護のダッキングを先読みしていたオーフレイムは、返しの左アッパーを突き上げて、統護の顔面を起こしにいった。その下からの左拳を、統護は左へのサイドステップで避ける。
 二人の視線がぶつかり合う。
 互いにまだ余裕をもっている攻防だと、刹那の視線で会話した。
 左へのステップインでオーフレイムの右側へと位置取りした統護は、オーフレイムの肝臓めがけて左ボディフックを打ちにいく。
 得意のリバーブローだ。
 どんなタイミング、どんな角度であっても、自在に繰り出せる統護の十八番である。
 同時に、オーフレイムは右足を外側に踏み出した。
 統護はオーソドックスでオーフレイムはサウスポーの構えだ。つまり鏡合わせの様に、互いの肩と足が左右逆で付き合わされている。この場合は統護の左足とオーフレイムの右足だ。
 統護の左の軸足が、オーフレイムが踏み広げた右足とぶつかり、外へズラされた。
 バランスが崩れ、統護のリバーブローはオーフレイムにクリーンヒットしない。
 一拍遅れで、オーフレイムの右フックが統護の顔面を痛打した。相打ちだが、分が悪い。
 しかし統護は怯まずに打ち返す。ショートの右ストレートだ。
 オーフレイムはスウェーバックで拳の射程から逃れた。
(まずいッ!!)
 ストレート系をミスブローしたのは痛恨だ。このままでは、この距離では組み付かれる。
 スウェーからの反動を利して姿勢を低くしたオーフレイムに対し、統護は大きくバックステップした。流石にこの体勢からのタックル切りは――不可能だ。
 先程のようなラッキーは二度もないし、統護自身も運や偶発に頼るのは不本意である。
 距離を空けた統護に、オーフレイムのタックルが迫った。
 スプロールを敢行しても失敗に終わる。
 統護に許された対応はカウンターによる迎撃のみ――だが、上から振り下ろすパンチで下を高速で移動している物体にタイミングを合わせるのは、神業に等しい。仮に当てても、打撃の衝突ベクトルが直角に近くなるので、ほとんど威力(運動量)を伝達できないだろう。
 打ち下ろしは無理――となるとフックかアッパーという軌道になるが、タックルにくる相手に対して、弧を描くパンチで対応する為には、あらかじめ相手の頭部をパンチの射角に呼び込む必要がある。今は後手を踏んでおり、統護にそんな余裕はなかった。

 

 よって残された選択肢は、左の膝蹴りでのカウンターだ。

 

 タックルをカウンターするのに、もっとも有効で、一番多く用いられるのが膝蹴りである。当然ながらオーフレイムも統護の左膝を読んでいた。
 カウンターで突き出された膝頭を、オーフレイムは額をカバーした右手でキャッチして、そのままの勢いで両腕を左足に絡めた。変形の膝十字によって膝関節を狙いにくる。
 対する統護も、カウンターを防がれるのは承知であった。
 左足を踏ん張り、膝に膂力を込める。
 常人の足ならば即座に膝を破壊されるであろうが、超人化している統護の左足は、一瞬ならばオーフレイムの関節技を堪えられる。
 その一瞬こそが、一瞬の停滞こそが、統護の本当の狙いであった。
 統護の左足を捉えた為に、逆に位置が固定されているオーフレイムの後頭部へ、KOを期した右パンチ――チョッピング・ライトを振り下ろしにいく。
 だが、オーフレイムも読んでいた。
 彼は瞬時での膝関節破壊に失敗したと悟ると、迷わず次の動作に移行して、統護のチョッピング・ライト(打ち下ろしの右)に反応する。
 タックルから低い姿勢での膝関節狙い、そこから更に、統護の左足を解放すると当時に、右手を地面について支点にすると、身体全体を大きく旋回させた。滑らかに一挙動として連綿しているのが、オーフレイムの驚異的な点である。
 変則的な動きで、オーフレイムの体勢が回転を伴って変化する。
 ブレイクダンスめいた倒立に近い姿勢で、両足が凶悪な蹴りとなって唸りをあげた。
 統護は右拳を途中で止めると、上体の動きだけで、連続するオーフレイムの逆立ち蹴りを躱した。大きくバックステップして、再び間合いを確保する。
 即興での動きではない。統護はそう感じた。
「今の独特な動き……。そうか、図体に似合わずカポエイラを身に付けているのか」
 統護の言葉に、オーフレイムは不敵に笑んだ。
 見方によっては嬉しそうな笑みである。
「ほう。俺の蹴りが苦し紛れの変則な我流ではなく、カポエイラを基礎としていると見破るか。どうやらお前はカポエイラさえも習得しているとみえる」
「数代前の嫁さんがカポエイラ使いだったそうだ。だから堂桜の一部としてカポエイラが取り込まれてるのは認めるが、正直いって俺はあまり得意じゃないぜ」
 しかしカポエイラをマスターしていなければ、オーフレイムの蹴り技を躱せなかった。
 堂桜の一部としてカポエイラを習得した経験は、この一瞬の攻防に生きただけでも無駄ではなかった。統護にとっては充分に意味と意義があった。
 二人の戦いを見守るポアンが呟く。
「双方、高いレヴェルでの攻防が続いている。実に見応えがある。特に今のタックルとカウンターを巡っての駆け引き。果たして、どちらがより多くの情報を得て、今後の展開の鍵とできるか。興味がそそられる」
 この流れでタックルが成功しない――となると、オーフレイムは戦法を変えざるを得ない。
 そしてタックルに対応してみせた統護は、流れを引き込む為に――

 

 三度目のスタンディングで、初めて統護が先手を取る。

 

 オーフレイムのタックル技術は学習した。
 もう左ジャブを基点とした崩し『のみ』では、統護にタックルを仕掛けるのは、いかにオーフレイムといえど容易ではなくなっている。
 オーフレイムの左ジャブに怯まず、統護は飛び込んでの左フックをねじ込んだ。
 ズゥゴォ!
 右ショルダーブロックでガードしたオーフレイムであるが、統護を懐に入れてしまった。
 こちらから飛び込んでも、簡単にカウンターでのタックルにはいかせない。統護とて世界レヴェルのレスリング技術を幼少時から叩き込まれているのだ。そのレスリング技術は、相手にレスリングを仕掛ける為のものではなく、こうして相手のレスリング技術を封じる為だ。
 両拳での打撃に――ボクシングを貫く為に。
 距離が変わる。
 アウトからの左ジャブが生きるロングレンジから、統護の射程距離であるミドルレンジに。
 統護は自然と元の世界にいる母親に心の中で語りかける。
(これだろ母さん。この戦い方こそが母さんの望んだ――ッ)

 

 ――ボクシングでMMAを叩き伏せる!!

 

 ニィ。これが俺にしかできない『世界最高の母親孝行』だ、と統護は獰猛に笑んだ。
 猛然と強打を繰り出していく。
 統護の猛攻に、オーフレイムもボクシングのインファイト・スタイルで応戦した。いや、応じなければ、統護のボクシングに飲み込まれてしまう。
 オーフレイムもハードパンチをコンビネーションする。
 牽制や体勢を崩す事が目的のパンチではなく、ダメージを与える為の強打だ。
 彼とてロングレンジでのアウトボックスしかできないのではない。中間距離での攻防や至近距離での打ち合いも、オールランドにこなせる『完璧な』ボクサーである。
 打ち合いだ。
 しかし、クリーンヒットは少ない。互いに浅い手応えで、渾身のダメージング・ブローを叩き込む機会を窺っている攻防だ。
 オーフレイムと両拳を交換しながら、統護は氷室臣人戦を思い出す。
 臣人のボクシング技術は、超高校級だった。
 彼の超人的なパワーも相成って、高校や大学といった学生レヴェルの大会ならば、世界選手権であっても無双するだろう。だが、それはあくまで学生――いや、ジュニアクラスの話であり、年齢無関係のシニアクラスだと話が大きく違ってくる。
 臣人のボクシングは、大人のプロボクサーレヴェルで評価すると、最大限に評価しても東洋や中南米といった地域ランカークラスであった。
 端的に欠点を指摘すると、防御技術が未熟で攻防一体とはいえない。
 正直いって、純粋にボクシングをする相手としては、臣人は統護にとって物足りなかった。
 けれども、このオーフレイムは違う。
 みみ架とオルタナティヴは流石に別枠にしなければならないが、二人を別にすると、オーフレイムのボクシング技術は、統護が知っている過去最高レヴェル――

 

 すなわちオーフレイムのボクシングは、ワールド・クラス。

 

 パワーは臣人が上でも技術のクォリティーが雲泥の差だ。
 本場アメリカでは、無名の六回戦ボーイが日本チャンピオンと同等の実力と云われている。時にオーバーな表現とも解釈されるが、しかし決して嘘でもない。特にフェザー級以上の階級になると、その傾向が顕著になっていく。
 そんなアメリカで近代ボクシングを身に付けて、めきめきと強くなっていく統護に目を付けた、母親の知人である某大物プロモーターが何度も契約を誘ってきていた。
 殺し文句が、統護の脳裏に蘇る。

 

 ――〝君なら無敗で七階級制覇してラスベガスのスーパースターになれるよ〟――
 ――〝世界中から賞賛されて、スポットライトを浴びて、一試合で百億円は稼げるさ〟――
 ――〝君が伝説を作る、そのお手伝いをさせてくれないかい?〟――
 ――〝世界を獲れなかったお母さんの夢を叶えて、大金持ちにしてあげようじゃないか〟――

 

 けれど母親は統護にプロボクサーだけではなく、プロ格闘家になる事を、ただの一度だって要求してこなかった。目の前に、スカウトの前金として莫大な札束を積まれてもだ。
 統護は不思議に思っていた。大金と名誉の為でなければ、どうして母親は自分にボクシングと最新鋭の近代格闘技を身に付けさせるのか。
 一度だけ、高校生になった当初、母親と最初で最後の山籠もりをした。
 四日間の予定だったが、母親は初日でギブアップして二日目に一人で下山した。
 堂桜の修練について、母親は「理解できない」と不干渉であった。
 統護にとってはラスベガスのスポットライトよりも、雄大な自然の展望の方が心地よい。
 プロのリングも名声も大金も興味が湧かないのだ。
 我欲を統護の〔魂〕が拒絶していた。
 夜明け。母親は統護と共に、朝日で輝く山頂からの景色を一望して、こう云った。

 

 ――〝手に入れたチカラは、アンタの責任で、アンタが納得のいくカタチで、自分の為に使いなさい〟――

 

 これを言いたくて、母親は興味のない山籠もりに付き合ったのか。
 この時、統護は強く思った。母親もやはり『堂桜に嫁いだ女』なのだと。
 こんな母親だからこそ、父親は惚れたのである。
 ちなみに統護の疑問に対して、母親は呆れ顔でこう答えた。
 そんなのご大層な教育方針とかじゃなく母親のエゴで趣味に決まっているじゃない、と。
 趣味かよ、と統護は顔を顰めるしかなかった。

 

 オーフレイムとのボクシングは、アメリカでのスパーリングを思い出す。

 

 ただし、あの頃のスパーリングパートナーよりもオーフレイムは数段上にいる。
 そして自分も同じだ。超人化した肉体の恩恵もあるが、それ以上に、技術的に向上した。
 この異世界で実戦を経験して、自身の意志で『強くなる事』を選んだからだ。
 より強くなる為の経験となるボクシングをやれている。そんな充足感が統護を包んでいた。
 技術レヴェルはほぼ互角だ。
 けれど、一攻防の度に成長できている――そんな実感が湧き上がる程に噛み合っていた。
 感覚が研ぎ澄まされていく。
 オーフレイムの左フックが統護の頬を掠める。
 統護は目線と細かい肩の動きでフェイントを入れて、左側へと大胆にサイドステップすると――オーバーハンド気味に左ストレートを見舞った。
 メギャァッツ!! 左ナックルパートがオーフレイムのテンプルにヒット。
 反撃はこない。
 どず、ン。重々しい音と共に、身体を傾げたオーフレイムが右膝を地面に落とす。
 拳によって片膝立ちの姿勢を強要される――ダウンだ。
 ぎゅぅぉおおおおおおおッ。
 紅い嵐が唸った。オーフレイムの周囲に魔術による『炎の渦』が巻き起こり、統護の追撃を阻む。彼の【基本形態】――《フレイム・オブ・アイギス》の防衛機能が自律発動したのだ。
 無理に深追いはしない。
 統護は油断なくバックステップして、次の展開に備える。
(手加減に失敗したか)
 コンディションが万全でないのが影響していた。
 上手く威力を調節できていれば、今の一撃でKOできていたはずだ。しかし身体感覚が微妙に狂っている状態では、相手を殺さない為に、安全サイドで威力を抑えるしかない。
 いや。それだけではないのは理解していた。
 オーフレイムは咄嗟にヒットポイントずらして、パンチの威力を殺していたのだ。
 ダメージを確認しながら、オーフレイムは悠然と立ち上がる。
 ダウンによる精神的なダメージは窺えない。冷静だ。それどころか嬉しそうですらある。
 フフ、とオーフレイムの口から楽しげな笑みが零れた。
「流石は世界最強――と評されるだけはあるな、堂桜統護。いや、ボクシングで俺に膝をつかせる程度ができないのならば、世界最強などという評価はお笑い種だがな」
 オーフレイムの構えが変わる。
「ちなみに俺はボクシングが苦手でな。ゆえに【ソーサラー】に転身する前の格闘家時代は、総合格闘技を選んだ。レスリングの方が得意だったが、ルールが性に合わなかった」
 負け惜しみや虚勢ではない、と統護は感じた。
 間違いなく世界レヴェルにあるボクシング技術を持っていながら、オーフレイムの自己評価においては苦手という分類なのだ。
 変化したオーフレイムの構えは、打撃を主体とする立ち技系のフォームではなかった。

 

 ――姿勢を低く保ったショルダータックルの構えである。

 

 対して、統護はボクシングのオーソドックス・スタイルを変えない。
 この戦いは、このオーフレイムとの戦いは、己の両拳による一撃で決めてみせる。
 オーフレイムが言った。
「そして今の俺は格闘家ではなく、戦闘系魔術師だ。よってここからはSMAと呼ばれる俺流の魔術戦闘でいかせてもらうぞ、堂桜統護。……俺が待ち望んだ世界最強の男よ」

 

 

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