アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第3部(第44話)

第四章  光と影の歌声 13 ―神声起動―

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         13

 ステージから広がる圧倒的な観客数は――実に七万人に達している。
 キャパシティは六万席である。急遽増設された席は三千程度。七千人は客席外を取り囲っている。その間に挟まれているガードマンは四苦八苦だ。
「みぃんなぁぁあっ! あたしの一八番、聴っきたいかぁなぁぁああ~~~~ッ!?」

「「「「「「 きぃきたぁぁあああぁーーい!! 」」」」」」

「おっけぇええええええ!! じゃいくよぉぉ!」
 絶好調だ。次で四曲目。
 七万人の熱気。
 そして歓声。曲調にシンクロして慣らされる数万の足踏みは、もはや地鳴りである。

 主役である歌い手は熱唱していた。

 ユリは己の限りを尽くして歌う。情熱、技術、体力、そして……魔術。
 聖沢のサポートがなくとも、【堂桜グループ】が手配した魔術師たちによる補佐により、七万人を魅了する大規模【結界】――《ドリーミング・ステージ》は問題なく作動している。
 歌と踊りだけではなく、観衆に千差万別の夢を覧させている。
 そう。此処はユリの夢の到達地点。
 ゆりにゃんコールが心地よい。
 踊る。舞う。軽やかなステップ。アドリブで少々オーバーになった振り付け。
 目まぐるしく角度を変えるスポットライトとカクテル光線が乱舞する。
 さあ、もっと歌と魔術による幻影を愉しんで!
(やっぱりニホンに戻ってきて正解だったわ)
 横田と聖沢の協力によって『ゆりにゃん』を造りだして以降、記憶が途切れる現象が出始めていた。苦手な『ゆりにゃん』を演じる為に、催眠術によって疑似的二重人格として、意識を切り替える訓練をした弊害だと、横田と聖沢には説明されていた。
 本音では、信じていなかった。
 何か得体の知れない事に利用されている感覚があった。
(でも、違った。意識が消えていたのは、元の私――大宮和子が意識を乗っ取っていたから)
 原因が分かった。
 衝撃の真実。正直いって歌える心境ではない。
 だから今は普段のステージよりも、更に意図して『ゆりにゃん』とユリを切り離している。
 ユリがどれだけ苦しみ悩もうが、ゆりにゃんは明るくポップに歌っている。
(この声援と応援が得られたのならば、私は……私は……)

 ――【結界】が停止した。

 同時に、スポットライトも落ちる。ステージ上の光量がダウンする。
(え?)
 釣られてユリも歌を止めてしまった。彼女の魔術に異変はない。
 堂桜の魔術師からの補佐が途切れている。【結界】の為の【AMP】も、いつの間にか配置が変えられている。トラブルだ。……いやトラブルというよりも、これは。
 とにかく歌わなければ。
 ユリは歌を再開する。しかし動揺から声が伸びない。
 焦躁を抑えられなかった。ユリは魔術を、ゆりにゃんは歌を――という意識分担で行っていたので、今さら歌だけに切り替えられないのだ。集中できない。
 そんなユリの前に広がる光景――

 会場の熱気が冷めて始めている。

 正確には、不穏な空気に支配され、声援がざわめきに変わっていた。
 幻想へ誘う魔術の効果がなくなり皆が物足りなさそうに顔を見合わせている。
 ユリは舞台袖に控えているスタッフを見るが、誰もが困惑していた。想定外とはいえ一人もまともに対処できないとは。はやく【結界】を再起動させなくては。
 喉が引き攣る。
 音域が広がらない。バックの演奏と合わない。もうバックバンドが必死にユリをフォローしている状態だ。
(誰か、助けて。誰か――)
 このままではライヴは大失敗を通り越して、大失態になる。
 ニホンでの歌手生命が終わってしまう。嫌だ。イヤだ。また失うのは――絶対に。

 ――〝うふふ。超ピンチだね。よかったら手を貸してあげよっかぁ?〟――

 そんな声が、頭の中から響いてきた。
 ギクリとなる。まさか……これは……
(貴女は大宮和子?)
 無意識に自我の奥に封じ込めた『失敗と屈辱に塗れた過去の自分』の集合意識。
 今の自分――榊乃原ユリとは決別した存在。
(ぶっぶぅ~~!! 不正解。こうやってこっちから呼び掛けるのは初めてだけれど、あたしはゆりにゃん! ユリと一緒にライヴを成功させてきた、ゆりにゃん様でっす)
 ユリは愕然となった。歌を完全に止めてしまう程に。
(え? ゆりにゃんに自我が?)
 自分が演じていた仮想人格――だったはず。ゆりにゃんには自我なんて無かったはず。
(隠してたんだよね~~。ほら知られたら、きっと消えちゃうから。ユリはあたしを消すから。でも今だったら、ユリはあたしを必要としてるから、打ち明け時かなぁ~~なんて)
(そんな……そんな……)
 【魔術人格】――という単語が脳裏に閃く。いや、今まで失念していた。
(どっするぅ? いやぁ、あたしを創り出す過程で『大宮和子』なんて人格が分離して逃げ出したけど、ユリは大宮和子を拒否ったんだよね? つまりゆりにゃんを選んだんだよね)
 ごくり。大粒の唾を嚥下する。
 ユリが歌を止めたので、バックバンドも演奏を中断していた。
 何よりも。

 ゆりにゃんコールが聞こえない。

 自然とユリの唇が動く。
「ゆーりにゃん、ゆーりにゃん、ゆーりにゃん、ゆーりにゃん、ゆーりにゃん」
 胡乱に呟かれた音をマイクが拾った。
 観客のざわめきが大きくなる。
(ああぁ。もう駄目なのね)
 ここから立て直すには、持ち直すには、もう榊乃原ユリでは駄目なのだ。
 このライヴはニホン全国どころか、世界各国に衛星中継されている。
 大宮和子という自分の本名を名乗った、魂の一部の言葉が蘇る。
 ――〝歌を辞めなければ死ぬわよ〟――
(うん。死ぬかもね)
 けれども歌手としての死よりは、こっちの方がずっとマシだ。
 頭の片隅から聞こえてくる声は――大宮和子?
 それとも、あの子――光の歌の使い手?
 ユリは覚悟を決めて、一息吸った後、唱えた。
 本当の意味でゆりにゃんに変身する為の言葉。すなわち【ワード】を。

「――マスターACT」

 

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 榊乃原ユリは魔術師ではない。
 ユリにとって自身はあくまで歌手である。
 しかし彼女には膨大な魔力総量と意識容量が先天的に備わっていた。けれどユリは魔術師としての教養はゼロである。榊乃原ユリには独自の魔術理論どころか基礎理論すらない。当然ながら魔術オペレーションもできないのだ。
 そんなユリがオリジナル【結界】という高度な魔術を起動できたのは、ひとえに専属マネージャーの横田と彼が連れてきた世話係の聖沢の指導の賜だ。
 いや、賜というよりも――施術というべきか。
 催眠による自己暗示で、ユリは仮想人格『ゆりにゃん』を演じられるようになると同時に、 《ドリーミング・ステージ》という魔術に特化した疑似魔術師になれた。
 疑問に思わなかった事はない。
 けれど、成功という結果の前には、そんな疑問は些細であった。

 催眠による仮想人格だと教え込まれていた。しかし――ゆりにゃんの正体は【魔術人格】だ。

 睡眠時に、聖沢によって限定的に顕現していた【魔術人格】が、ついにユリ本人の魔術によって人格として顕現する。自我を隠して潜んでいたソレが牙を剥いて本人を侵食する。
(きっと私は終わるわね……)
 【魔術人格】を起動した後、元の人格に戻る方法をユリは識らない。
 そして【魔術人格】は二度と主導権を渡さないだろう。
(大正解よ。くくくくく。魔術人格を起動して主人格を明け渡した瞬間、このあたし――いえ、私と貴女は人格の主従が入れ替わる。ようやく、この身体は私のモノ)
 ユリは手にしたマイクを前面へと突き出し、その先端の集音部に右手を添えて握る。
 がこん。
 先端部を九十度、捻り込む。するとスティック部の下がスライドして伸びた。これで流し込める魔力を抑制していたリミッター解除となる。
 スライドした箇所には紅く煌めく宝玉が埋め込まれていた。
 このマイクこそユリの専用【DVIS】である。
『ベース・ウィンドウを初期化します』
 ユリが《ドリーミング・ステージ》の為に展開していた電脳世界内に、無機質な警告がなる。
 その警告をきっかけに――

 ユリとゆりにゃんの人格の優位が逆転した。

 【魔術人格】が実用化されていない最大のデメリットは、生成した【魔術人格】に魔力総量と意識容量の九十パーセント以上を割り振られてしまう点にあった。元人格が魔術師として使い物にならなくなり、そもそも元人格が魔術師として【魔術人格】を起動不可となる。
 だが榊乃原ユリの素質は別格であった。
 実に九十二パーセントの魔力総量と意識容量を【魔術人格】に奪われようと、ユリは魔術師ではないにも関わらず【結界】を起動・維持できた。僅か八パーセント以下の容量でだ。
 それ程の規格外であった為に――彼女は。
 人格交代。そして再ログイン実行。
 ユーザー認証はユリが保持している『ノーマルユーザー』から、特別規格である『マスターユーザー』へと切り替わっている。
 魔術特性は同一で変化はない。【風】から派生する、特殊エレメントの【音】である。
 電脳世界をその魔術特性一色で染め上げていく。
 通常の魔術師は、複数のエレメントを使用するにしても、同一の電脳世界にフォルダを共有させている。だが彼女はあえて存在しているフォルダを一種類に限定させていた。
 今まで【魔術人格】として封印されていた全リソースを、その単一系のフォルダへと注いでいく。通常のユーザーならば、単一系に統一されたフォルダに全リソースを注いだところで、約三十パーセントは使用可能領域が余る。そのように安全設計され、割り当てられている。
 しかし――その許容量を突破する莫大な魔力を注がれた場合。
 ニィ、とユリが口の端をあげる。
「榊乃原ユリは死んだ。

 そしてあたしの本当の名は『ゆりにゃん』ではない……ッ」

 彼女とシステム・リンケージされている電脳世界にエラーが起こった。
 リミット・オーバーだ。軌道衛星【ウルティマ】側が、通常ユーザーに割り当てている演算領域の限界を超えてしまった。【ウルティマ】搭載の超次元量子スーパーコンピュータ【アルテミス】が、警句を発する。
『このままではオーバーフローによる魔術暴走が起こります。よって特別措置として第二演算領域をサブとして割り当てます。ID確認――すでにサブ領域が登録済みのユーザーと認識。マスターユーザーとしての再起動完了を認証。再アクセス、自動で立ち上げます』
 単一エレメントにおける安全領域を意図的に突破する。基本システムの盲点を突き、安全措置による臨時拡張領域を確保できる魔術師を、人は【エレメントマスター】と畏怖する。
 コミカルで愛らしい表情から一変して、【エレメントマスター】は残虐な貌になる。
 観衆へ向かい、艶やかな声を張り上げた。

「――私はセイレーン!!」

 ぐぅおんんンンんんんッ。
 彼女――セイレーンを中心として、凶悪な音の波動が伝播していった。
 七万人を収容している屋外大会場を覆い尽くす『音と歌の世界』が完成する。
「ふふふふふふ。私の忠実なファンにしてしもべ達よ。改めて自己紹介しましょうか。我が誇り高きコードネームは……《神声しんせいのセイレーン》よ」
 彼女は名をコードネームだと云った。
 すなわちセイレーンは【エルメ・サイア】の幹部であるいう証左。
 いや、正確には【エルメ・サイア】によって魔術的に生み出された幹部である。
 セイレーンの表明に、パニックは起こらない。
 すでにセイレーンの【結界】に観衆は囚われているのだ。
 そう。歌によって幻影へと誘い支配下におく大規模【結界】――セイレーンの歌の世界。
 歌と音による魔術の極地ともいえるセカイにしてステージ。
 彼女は両手を拡げ、高らかに宣言する。
「私が歌いあげる【基本形態】

 ――《ナイトメア・ステージ》の世界へようこそ」

 七万人が人質に取られた。
 警護しているガードマン達も同様である。意識を奪われ、人形の様に立ち尽くすのみだ。
 この《ナイトメア・ステージ》を魔術抵抗(レジスト)できる者は、そうはいない。
 計画通りである。榊乃原ユリを葬り、人質を確保した。
 セイレーンは【エルメ・サイア】からの命令を果たす前に、ステージ袖に視線をやる。
 そこには――紋様めいた紅いラインが入った、クラシックな女子用学生制服を着ている、ポニーテールの少女がいた。
 颯爽と黒いマントをなびかせ、少女はステージに上がった。
 セイレーンは愉快げに少女を出迎える。
「流石に【結界】の基本性能程度ではビクともしないか。【基本形態】を未起動状態――抗魔術性のみでの抵抗とは、やはり口だけではないわね。まずは目障りだったお前から始末しましょうか。その後は堂桜統護かしらねぇ。ふふふふ」
 二人はステージ中央で対峙する。
 黒髪をポニーテールにまとめている魔術師は、冷然と言った。
「起動前に【魔術人格】を除去できなかったのは遺憾だけれど、特に問題はないわ」
「問題ない? 誰に云っている?」
「お前の中のユリさんに、よ。お前を斃して――依頼通りに榊乃原ユリを救ってみせるわ」
 オルタナティヴは専用【DVIS】である指輪を嵌めた拳を、眼前に翳した。
 期待に応えましょうか、とウィンクを添えるとクールに笑んだ。

 

 

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