アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第3部(第43話)

第四章  光と影の歌声 12 ―深那実VS業司郎②―

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         12

 愕然となる業司郎に、深那実は告げる。
「この景色は私の《トランス・オブ・ツゥルース》が描き出した心象風景。写真用語で陰画。そして【結界】内においての因果」
 リンクする外部演算演算領域に異存するのは【結界】の規模であり、その質ではない。
 加えて【空】ほど、その質に依るエレメントは存在しない。
 恐怖した己を誤魔化すように、業司郎は吠えた。
「因果が何だってんだよ! この俺様を脅かしやがって。こんな虚仮威しがっ!!」
 基本性能に対する魔術抵抗(レジスト)どころか、自身にどんな影響・作用を及ぼす【結界】なのかすら業司郎には把握できない。電脳世界内に展開している【ベース・ウィンドウ】による魔術サーチ機能も沈黙したままである。ウィンドウ群には[ アンノゥン ]という表示のみ。それは得体の知れない――恐怖だ。
 ジャゴン。
 業司郎が勢いよく両腕を突き出すと、《ビースト・アームズ》の外層の一部が、オートマチック拳銃のように後方にスライド。スライドした部分が元の位置に戻り――

「喰らえっ! 《ビースト・シャワー》ッッ!!」

 ガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!
 けたたましい銃撃音が二重に響く。
 両腕の先端部から四十五口径相当の弾丸が間断なく連射されていく。
 スコールのごとく鉛球の雨が深那実へと殺到。
 問題ない。純粋な魔術攻撃ゆえに、【基本形態】と同調している電脳世界の高次元時間での認識が可能である。対応の為の魔術オペレーションを開始。
 秒を要さずに、彼女の身体が蜂の巣になって砕け散る――その寸前。

「――《インパクト・リアル》」

 深那実の唇が【ワード】を紡いだ瞬間。
 そして【アプリケーション・ウィンドウ】に実行用【コマンド】が書き込まれた瞬間。
 セカイの色調が一瞬だけ変化して、元のネガで安定する。
 全ての弾丸が深那実の身体をすり抜けて、壁面や床面へ潜り込んでしまった。
 壁と床に銃創はない。それどころか無音であった。
 摩訶不思議な光景に、業司郎は呆然となる。防御されたという感覚さえ希薄だ。
「なんだ、そりゃ?」
「至極簡単よ。貴方の魔術による弾丸は『床と壁を構成する金属』を元にしていた。私はそれを知っているわ。よってその『真実』を概念として、この【結界】内において反転再現させたの。いわば『真実を事実に還す』――それが私の【概念結界】の魔術特性」
 そして私の【空】の神髄よ、と云った。
 深那実は冷淡な瞳で業司郎を見据える。
 彼女の《ラヴリー・パパラッチャー》は、あくまでカメラによって記録した事象を概念化して、事象へと可逆させる魔術であった。
 しかし【概念結界】は違う。術者である深那実が真実として知った事象を、局地的な【結界】内限定とはいえ、世界の在り方に還元してしまえるのだ。
 業司郎は戦慄を隠せないまでも、まだ闘志は失っていない。
「難しいコト言って煙に巻こうっても、そうはいかねぇ。なにしろ俺様はバカだからな」
「じゃあ、言い方を変えるわ。私の【空】は、私が知った真実という概念によって、現実を覆っている虚飾を引き剥がすのよ」
 深那実は人差し指を立てた右手を頭上に振り上げた。
 ゆっくりと右手を、業司郎の額めがけて下ろす。

「これが本番――《ツゥルー・インパクト・リアル》」

 その【ワード】をスイッチに、またしてもセカイの色彩が変化した。
 写真用語でいうネガティヴ(陰画=因果)の色調から反転し、ポジティヴ(陽画)のセカイへと変わっていた。
 先程とは違い今度はネガに戻らない。ポジのままで安定していた。
 天井があるはずなのに、空から多数のカードが舞い落ちてくる。
 カードは写真であった。

 撮されているのは――業司郎についての様々な過去である。

 ドーピングにより筋肉肥大をはかる業司郎。
 サイバネティクス化の手術を受けている業司郎。
 トレーニングする業司郎。
 戦闘系魔術師ソーサラーとして覚醒する業司郎。
 家庭教師によって勉強の手ほどきをうける業司郎。
 そして……

「私は乱条業司朗についての情報を徹底して握っているわ。だから今のお前をカタチ造っている虚飾と虚栄の部分が解る。そして私は知り得た真実を概念化して、我が【概念結界】内にて現実へと顕現できる。よって、虚飾を剥ぎ取られた今のお前こそ――」
 深那実によって晒された業司郎の姿。

 それは、細身で気弱そうな何処にでもいる青年であった。

 肉が乏しい二の腕からは《ビースト・アームズ》の装甲が消えている。
 革ジャンしか羽織っていない裸同然の上半身は、筋肉のカッティングがなく、薄っぺらい。
 四肢はまるでモヤシである。
 己の姿を視認した業司郎は半泣きで訴えた。
「そんな莫迦な。なんで俺様がこんな弱そうな姿になっているんだ? 有り得ねえ」
「いいえ。それがお前の本当の姿よ。

 ――堂桜、幸司郎さん」

「その名前で僕を呼ぶなぁぁあああああああぁぁああああッ!!」
 泣き声に等しい、ひ弱な男の絶叫が響く。
 深那実は床面に散らばっている写真の内、一枚を摘み上げる。
 苛烈なイジメに遭っている幸司郎が写されている。
「お前は弱く虐められる現実を変える為に、真っ当な人の身を棄てた。堂桜の姓と共に。かの凶科学者・堂桜那々覇によって全身をサイバネティクス化した。そしてお前はイジメに関わっていた連中を皆殺しにした。警察に追われているお前に救いの手を差し伸べたのが、栄護というわけだったのよねぇ」
「畜生ッ! それがどうしたっていうんだ」
「名を乱条業司朗に変えたところで、身体をサイバネティクス化したところで、過去の経歴を消したところで、――真実のお前は堂桜幸司郎よ」
 深那実は【ワード】を唱えた。

「――《インパクト・キリング》」

 その生き方ゆえに、深那実は何度も命を狙われた。そして敵を撃退する為に、相手の命を奪う事を余儀なくされた事は幾度となくある。彼女は何度もその手を血で染めてきた。
 殺害の知識と殺人の記憶。
 ソレを概念と化して――現実へと顕現する。

 どぶぉッ!!

 業司郎の首筋から紅い間欠泉が吹き上がる。
 深那実が『死の概念』として選択して魔術としたのは、最初の殺人。最も強く根付いている記憶だ。その時、彼女は顔を歪めながら相手の勁動脈をナイフで薙ぐ。
 相手は糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちた。
 業司郎も、同じく糸の切れたマリオネットのように……

「そうは、いくかよぉぉおお!」

 想定外の光景に、深那実は目を見張る。
 絶命し、崩れ落ちるはずの業司郎が――絶叫と共に踏み留まった。
 屈強な彼ではない。【概念結界】によって虚飾を剥ぎ取られたか弱い彼のはずなのに。
 凄惨な笑みを添えて業司郎が言う。
「これがテメエの『死の概念』だと? 大したこたぁねえなぁ。俺様の死よりも辛い記憶と、死よりも深い恨みに比べたらよぉ。俺様は殺されないんだよ! この程度で俺様がくたばるかよぉおおぉぉお!!」
 自殺せずに復讐を選んだ業司郎の執念は、いわば『死への抵抗』という概念に近い。
 直接な死に至らなかった――自身の『死の概念』に、深那実は衝撃を受けた。
 口元が引き攣り、声が震える。
「なんて……事なの」
 記憶は決して色褪せていない。
 命を奪った手応えは、今でも克明に思い返せる。殺人の絶望と悲しみは今なおリアルだ。
 しかし――概念として不完全であった。
 単純に解釈すれば、業司郎の生への執着に敗北したという事であろう。

 深那実の【概念結界】は、知識を『=』として具現化可能とする万能な魔術ではない。

 それならば知識を基にした空想・想像を、そのまま【結界】内で再現可能となってしまう。
 あらゆる事象さえ、顕現可能となるが――現実にはそうではない。
 知った事象・事情・過去・経験などを、己の自我に転写する必要がある。
 よって深那実はジャーナリストとして活動する事を迫られている。他人から又聞きした知識では、【空】のエレメントとして魔術化できる記憶としては不全なのだ。

 業司郎を殺せなかった――という事象は、すなわち『死の概念』が揺らいでいる証左。

 【概念結界】の機能は完全だ。だから不完全なのは深那実の概念。
 統護の顔が、深那実の目蓋に蘇る。
 不殺を信念として、不殺の責任を負うために更なる戦いを背負う少年を思い出す。
(まさか感化されているというの……この私が)
 首筋の傷が消えた業司郎が嗤う。
「ぅひひひひひ。この程度かよ。脅かしやがって。テメエの魔術も高が知れているぜ」
「確かに……私の『死の概念』は、貴方には使い物にならないようね」
 しかし即座に、深那実は気持ちを切り替えた。
 この程度の危機は、今までの危機に比べればそよ風にも値しない。
 対策・対応は実に簡単だ。

 殺せないのならば――『死に至る概念』によって間接的に死に至らしめればいい。

 いわば『未必の故意』を概念魔術によって必然として起こす。
 揺らぎない概念を、現実として顕現化させる。
 その知識を支える記憶と経験は、イスラエルの総合格闘術――クラウマガ。
 幾千万と繰り返した鍛錬の記憶と知識。雑念や他者の意志が介在しえない不働の概念。

「――《インパクト・ラッシュ》」

 拳を繰り出した彼女の記憶と知識は、すでに彼女の一部である。
 その概念が、【結界】内で顕現する現実と転じて――暴風雨のごとく業司郎に襲いかかる。
 不可視であり無形であるが、確かに過去に深那実が繰り出した拳の衝撃。
 その拳は単なる記憶と経験を基としたイメージではない。
 一発たりとも想像や複製といった偶像ではなく、百の中のただの一撃でさえ、実際に深那実が過去に繰り出したパンチを消費しての『本物』の具現化である。

 ドゴッ、ドゴッ、ドゴッ、ドゴッ、ドゴッ、ドゴッ、ドゴッ、ドゴッォンン!!

 魔術抵抗(レジスト)、防御魔術、回避行動――全ての選択肢を許さない。
 強烈なラッシングパワーを浴びて、業司郎は豪快に吹っ飛んだ。
 拳の形状に肉がひしゃげ、肌が波打ち、内蔵が破裂する。
 倒れ込んだ彼は、廃棄されるサンドバッグよりもボロボロになっていた。
 ごぼ、と口から血を溢れさせながら業司郎は毒づいた。
「くそったれがぁ。て、テメエは悪魔……かよ」
「ええ。私は悪魔よ。少なくとも善人でも人格者でもない……殺人者よ」
 仰向けに倒れたまま動けない業司郎の頭を、深那実は容赦ないサッカーボールキックで蹴りつけた。ゴキ、という鈍い音と共に、業司郎の首が引っこ抜かれたように伸びる。
 その一蹴りで業司郎は死に体になる。
 虫の息だ。
 あと一発、頭部に強い衝撃を加えれば、――彼は絶命するだろう。
 しかし深那実は蹴るのではなく、独り言を囁いた。
「私は真実を識る為ならば、悪魔にだって魂を売るし、死に神にだってなるわ」
 殺人者の目で、彼女は男を見下ろす。
 全てが自衛の殺人であった。しかし殺人には変わりない。殺人に後悔も痛痒もない。
 その末には、誰かに殺される結末が待っているだろう。それを承知で、手を血で染めた。

(私が【空】のエレメントに覚醒した、その時から)

 深那実は自身を『真実の探求者』と定義した。
 この【空】が在るのならば、全ての根源に繋がる真実に辿り着けば、理想の世界を顕現できると、そんな果てしない夢を抱いたから。
 そうして【概念結界】の顕現にまで成功したのだが、予想に反して『手に入らなかった』。
 この世界が選んだ【空】の使い手は、どうやら自分ではなかったようだ。
 ならば――この世界における自分の役割は?
「……あちらも終わったようね」
 外の気配を察知して、深那実は【結界】を解除した。
 解除した《トランス・オブ・ツゥルース》は、彼女の【基本形態】に設定されているので、自動的に【魔導機術】そのものがリセットされる。
 世界が元に戻る。
 深那実の概念は、世界を再構成する因子ではなく、彼女の裡に在る【空】想と同義に戻る。

「いったいどんな手品を使ったのかしら?」

 歩み寄ってきたのは鈴麗である。
 予想通りに、生き残ったのは【ブラック・メンズ】ではなく彼女だ。
「タネも仕掛けもない手品よ。いうなれば伝説の『魔法』に近いモノかしらね」
「戦いながら遠くから見ていたけれど、外からはサッパリ不明だったわ。おそらく精神攻撃系の【結界】だと思うけれど、いえ、そんな単純なタネではなさそうね」
「ふふん。ま、ご想像にお任せするわ」
 深那実は芝居がかった仕草で両肩を竦めた。
 《トランス・オブ・ツゥルース》は、外部からの監視を誤認させる機能を備えていた。
 足下を見る。
 大の字になっている業司郎は失神していた。
 姿は元の屈強な大男だ。魔術の方は術者の意識が途切れているので強制解除されている。
 殺し損ねて痛恨であるはずが……どこか安堵していた。
 鈴麗は意外そうに言った。
「どうして彼を殺さなかったの? チャンスはいくらでもあったはず」
「別に。単に気分的な機会を逸しただけよ。それにこの程度の小物ならば、殺さなくとも問題ないわ。いずれ再利用するかもしれないし」
「らしくないわね。もしかして――堂桜統護に影響された?」
「まさか」
 深那実は鼻で笑った。そのフリをした。
 彼は体よく利用しただけ。自分が彼に利用されたり感化されたりなど……
 深くは追及せずに、鈴麗はビジネスライクに訊いた。
「それで消えているお目当ての【ドール】だけれど、運ばれた先の当てはあるのかしら?」
「嫌味か。あるのならば、こんな罠には掛からないわよ」
「でしょうね」
「そっちはどうなのかしら?」
「残念ながら。【内閣特務調査室】も堂桜の狙いを掴んでいないわ」
 だから私を泳がせたのね――と、深那実は納得する。
 深那実は腕時計を見て、時刻を確認した。

 すでに『堂桜・スーパー・ミュージック・フェア』のメインイベントが始まっている。

 すなわち――榊乃原ユリが歌っているかもしれない。
 始まりにして、終わりの唄を。

 

 

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