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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第1部(第50話)

第四章  解放されし真のチカラ 14 ―夜明け―

 

         14

 少女達の会話が止んだ。
 二人の会話に付いていけずに傍観していたエルビスが、オルタナティヴに訊く。
「堂桜統護が何者か、とかよく分からないけれど、僕については終わったんだよね?」
「ええ。そうよ」
「じゃあ、教えてくれないかな。……君の本当の依頼主を」
 オルタナティヴは冷たい目をエルビスに向ける。
 エルビスは慌てて弁解した。
「い、いや。実はもう見当はついているんだ。だけど本当かどうか確かめたい。だって僕はもう――お父様の息子じゃないから」
正解よ」
 オルタナティヴは苦い口調で肯定する。
 ファン国王――ファン・ファリアストロⅧ世は『あくまで息子の存命』だけを目的としてオルタナティヴに保護を依頼した。手段は問わない、かつ後始末も負わないというシビアな条件であった。よって彼女はフレアの命令に従って堂桜一族へのテロ行為にまで手を染めた。締里もアリーシアも余裕はないと判断して切り捨てた。
「……僕はバカだな。本当に愚かで、莫迦だった!」
 エルビスは顔をくしゃくしゃにして泣いた。
「生きているのだからそれでいいでしょう。二度と再会は叶わなくても、それでも父君と母君の血がその身体に流れて、お互いを思い合っていれば――それは親子のはずだわ」
 オルタナティヴの台詞に、エルビスは大声をあげて号泣した。
 子供のように泣きじゃくる彼に、オルタナティヴは鋭く言葉を飛ばす。
「どんなにみっともなくとも、生きなさい。泥水を啜ってでも生き続けなさい。貴方の命にはそれだけの対価が支払われているのだから」
 いかに政治的価値が皆無になったとはいえ、エルビスを存命させる事に対して王政派側は、反政府側に対して貸しを作ったカタチになる。
 水面下の交渉がどの程度まで進捗しているのかは不明だが、仮にアリーシア姫が【エルメ・サイア】経由で反政府側に渡れば――王政側が相当追い込まれるのは想像に難くない。
 ルシアが言った。
「王子の件は両陣営が天秤を揺らすキッカケに過ぎないでしょう。反政府側はアリーシア姫を奪取して一気に交渉を優位に進めるつもり。対して王政派側は、将来の王位継承を決意したアリーシア姫さえ死守すれば、状況を五分以上に戻せる自信がある筈でず」
 オルタナティヴは頷いた。同意である。

 アリーシア姫を手中にしたまま『コードネーム持ち』がニホン国外に脱出するか、それとも統護と淡雪が『コードネーム持ち』を倒してアリーシアを奪還するか。

 決着の構図は至ってシンプルだ。
 シンプルだからこそ、ファン王国の両陣営は命運を託したのだ。
「知っての通り強いですよ、フレアと偽名した『コードネーム持ち』の彼女は」
 オルタナティヴも承知していた。だからフレアと直接戦うのを避けたのだ。新たなチカラを得た今でも、果たして正面から戦って勝てるかどうか……。
「でも勝つ。勝つわよ。かつての堂桜統護ならばともかく、今の堂桜統護は」
 存在と名を捨てた少女は、確固たる思いで断言した。
 ルシアは見比べる。エルビスとオルタナティヴを。
「先程の彼への台詞」
「何よ?」
「今後への経験値が必要とはいえ、いきなり危ない橋を渡った本当の理由は、彼への台詞にあるのかな、と僭越ながら感じました。他人には任せられなかった、と」
「穿ち、過ぎね」
 絞り出したような言葉は、震えていた。
 その言葉に、淡々とした口調が被せられる。
「言い忘れていましたが、仲介人から別の報酬を預かっています。これからの貴女に必要な新なるチカラです」
「チカラは充分だわ」
「そうでしょうか? それにチカラとはいっても物理的な戦力ではありません」
 眉を潜めた少女に対して、ルシアはメイド然として改まった。
 言付けです、と前置きして。

「――お前はもう自由だ。どこまでも羽ばたいていけ、我が娘よ」

 その言葉を耳にし、オルタナティヴの瞳に涙が浮かんだ。
 ぐっ、と奥歯を噛み締める。
 一度でいいから聞きたかった単語であった。
 しがらみを斬ったと思っていた。
 けれども切れていなかった。
 繋がったまま――やっと解き放たれたのである。
 想いが本当の意味で叶った。
「チカラとはいっても、心のチカラです。貴女がより強力な【空】を振るう為に必要な。仲介人にとって貴女は、一度は拒絶して袂を別っても、やはり永遠に家族なのですよ」
 だから無理に棄てなくてもいいのでは、とルシアは無表情のまま付け加えた。
 オルタナティヴは涙を堪えるために、空を仰ぐ。
 太陽が眩しい。

 すでに朝日が昇り、突き抜けるような蒼穹であった。

         …

 朝日が昇る前に、統護に決断の時が訪れた。
 所用がありますので、とルシアはアリーシアの部屋から辞していった。
 御用の際は連絡を、との事だ。
 主が不在の部屋に残されたのは、統護と淡雪だけになった。
 メイド少女は、羽場国際空港内(通称で、正式にはネオ東京シティ国際空港)にある堂桜管轄のシークレット発着場に、栄護が小型ステルス機の離陸準備を手配した事を教えてくれた。ただし誰が乗るかまでは掴めなかった。
「……やばいな」
 統護は唇を噛み締めた。
 おそらくチェックメイトされている。栄護が手配したステルス機がニホンから発進した時が、今回の事件の敗北だ、と状況が告げている。栄護は騙されたのだろう。
 淡雪が意見する。
「今から栄護伯父様に問い質しましょうか?」
「間に合わないだろう。それに正直に言うとも思えない。最悪、フェイクの可能性もある」
 あるいは全くの無関係か。
 すでに、ここからワンアクションする猶予しかない。
 空港に向かうのは決まりだが、仮にフェイクだった場合、かなりの痛手になる。【エルメ・サイア】の国外脱出ルートが他にあったならば、ジ・エンドだ。
「お兄様、まだ締里さんから連絡はありませんね」
「ああ。エリスエリスの見立て通り、これはちょっと不味い事態かもな」
 エリスはエリスで動き始めている。
 邪魔はしないが、互いに不干渉、独自路線でアリーシアを救出する事になった。
 ひょっとしたらエリスが救い出してくれるかもしれない。そんな期待もある。
 だが、他力本願で何もしないなどあり得ない。
(考えろ。考えるんだ)
 締里が敵でなくこちら側だと仮定して、だったら自分はどう動く? と統護は自問する。
 そこにヒントがある筈。締里はエリスがニホンに来る事を想定していないのだ。
 丁寧に台詞を思い出していく。

 ――〝こちらにもシナリオってやつがあるのよ〟――

 ――〝統護がきた時点で味方に通信を入れたんだけど、ルシアのお陰で通信不能。その程度は想定内だからアナログに信号弾を二発。それで脱出用のヘリを呼んだってわけ。期待通りにネックだった【結界】を破壊してくれてありがとう〟――

 ――〝《隠れ姫君》は私達【エルメ・サイア】が身柄を預かるわ。丁重にもてなすからその点だけはご心配なく〟――

 統護の目が大きく見開かれた。
「お兄様?」
「そうだよ……ッ!! シナリオだ! アイツは必要もないのに、自分が【エルメ・サイア】の二重スパイだって俺に教えてくれていた。やはり味方だ!」
 統護が締里の立場だったのならば、あの場でわざわざ【エルメ・サイア】と口にはしない。
「あ」と、淡雪も気が付いた。
「思い出せ。思い出せ、あの時の状況を……」
 加えて淡雪の話で、王子の命を受けてアリーシアを襲った【ブラック・メンズ】達と締里が同じ側として会話をしていた事も判明している。【ブラック・メンズ】達と締里が完全に無関係ならば、アリーシアをめぐり問答無用で戦闘になっていなければおかしい。
 不自然な点が一つ解消されれば、後は数珠つなぎで推理できた。
「王子が雇っている【黒服】の襲撃を、締里は『シナリオ外』だとアリーシアを保護した。つまり王子が独断で命令した。で、アリーシア保護を締里に指示したのは、=極秘で入国した【エルメ・サイア】の幹部だろう」
 当然、目的はアリーシアの身柄を手中に収める事だ。虎視眈々とその機会を窺っていたのは想像に難くない。
「ええ。だから締里さんとその幹部は繋がっているのですよね」
「その命令で繋がったんだろう。締里は命令が下り接触できる機会を待っていた。そうじゃなかったら、もっと早い段階で【エルメ・サイア】の幹部はニホンの国防機関に攻撃されていなければおかしい」
 その台詞で、淡雪は大きく息を飲んだ。
「……つまり締里さんは【エルメ・サイア】の幹部を突き止める為に?」
 統護はニヤリと笑んだ。
「たぶんな。確定させ、自分で倒すのが目的だった。そんでもって王子サマの命令をいち早く察知できて、なおかつ栄護に飛行機の手配を依頼可能な人物って――一人しかいない」
 すなわち。

 フレアと名乗っていた王子の護衛こそが――【エルメ・サイア】の幹部だ。

 乱暴な推理だが、他に選択肢が思い浮かばない。
 容疑者がいない状況だ。ブレーンが奥に隠れっ放しだとニホン脱出に不都合が生じる。
 それにフレアが犯人だと仮定すると全てがスムーズに繋がるのだ。
「どうします? とにかく私かお兄様、どちらかが空港に向かうのが先決かと」
 おそらくフレアは王子の護衛という隠れ蓑を棄てた。だとすると一刻も早く国外への脱出を選択するだろう。その最有力ルートが栄護の用意した空路だ。王子の頼みとあっては、栄護とて拒否はできない。これがフレアの描いたシナリオである。
 栄護が脱出ルートを手配した、という事は、残念ながら締里は敗北したのだろう。命が無事ならば良いが。
「とにかくフレアに連絡をとって王子の無事を確認しようぜ」
 同じく締里に出し抜かれた相手として、今の今まで王子を失念していたが、フレアが締里にコンタクトをとって王子の暴走を止めたという事は、すなわち王子に反旗を翻したと解釈できる。つまり空路が手配済みの今、王子が無事という保証はない。
 電話番号はルシアから聞いている。
「だけど繋がりますかね?」
「どっちでもいい。この状況で繋がらなかったら、それこそビンゴって事だろ」
 その時は問答無用で空港へ向かう。
 統護はフレアのスマートフォンに発信した。

 

 

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