アニメを斬る!

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アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第6部(第52話)

第四章  宴の真相、神葬の剣 14 ―みみ架VS琉架①―

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         14

 みみ架は実妹――琉架を睨みつける。
(何を考えているの……ッ!)
 牙を剥くのならば、自分にだけ向ければいい。真っ直ぐに自分に挑んでくれれば、内々で済ませられたのに。それなのに、琉架は挑発目的で道場の門下生をスクラップにした。
 その人体破壊の痕跡は、紛れもなく【不破鳳凰流】の業によるものであった。ロイド・クロフォードは思い違いをして、偶然遭遇した芝祓ムサシと交戦してしまい、敗北し、重傷を負ったのである。
 妹だけではない。琉架を差し向けた母親にも、みみ架は憤る。
 みみ架を巻き込まない様に、ロイドを調査に向けた祖父にも腹が立つ。業の痕跡に気が付けなかった事にもだ。しかし、それは自分の普段の言動が、【不破鳳凰流】当代として、祖父(先代)の信頼を得られていなかったという裏返しだとも分かっていた。
 対して。
 琉架が実姉――みみ架に言った。
「お姉ちゃんの考え、手に取るように分かるよ。どうして他人を巻き込んだのかって。面白そうだからってのが一番の理由だよ。基本的に私は面白さ、優先だからね。それに、お姉ちゃんを本気にさせるのに手っ取り早いってのが二番目。で、最後に、少しでも実戦経験を重ねないと、現時点では勝てそうにないから」
「この姉に勝てるとでも? 本当に随分と思い上がったものね」
 みみ架の不機嫌が倍増する。
 その様を、琉架は嬉しそうに見つめた。
「勝てる。お姉ちゃんが万全なら、まだ無理だろうけどね。それにMKランキングでいい経験を積めたし。ストップによるTKO敗けなんて、本当に得難い、貴重な体験だった。お姉ちゃんを倒して名を奪う前だったしね。本番前に敗戦を味わえて幸運だったよ。無敗は名を奪ってから続ければいいから」
「ええ、そうね。無敗は無敵と同義じゃないわ。わたしも堂桜くんに喫したTKO敗けは、いい糧になっている。あの敗戦はわたしには必要だった」
 琉架の視線が、みみ架の右手と両足を這いずり回った。
「ふふ。お姉ちゃんがその状態なのは、私とって千載一遇のチャンスだ。しかも、お姉ちゃんから挑んでくれた。だから、怪我は敗けの理由にはならないよ?」
「当然でしょう。いつ何時、どんな条件、どんなルールによっても潔く勝敗を受け入れる。それが鳳凰流の戦場における在り方だもの」
 勝負を受けた以上は、どんなコンディションであろうが関係ない。どんなルールによる勝敗であっても、どんなハンデがあっても、同様に関係ないのである。コンディション、ルール、ハンデは敗北の言い訳にはならない――それが武に生きる者の仕合だ。スポーツマンとは根本的に考え方が違う。
 みみ架にはオルタナティヴ戦での負傷。
 琉架には、予選バトルロイヤルでのダメージと疲労。
 しかし互いにそれを承知で戦うと――決めた。故に、一切の泣き言は赦されない。
 みみ架は言う。
「常在戦場。全ての条件を呑んで戦う。それが鳳凰流よ」
「うん、そうだね。KO食らったくせに、殺し合いとKOは違うと負け惜しみをいう輩も多いよ。実戦と試合は別とかね。甘えだよ。KOされても死ななければ負けじゃない……なんて、弱者の戯れ言だ。例えば『グラついたら負け』のルールで戦って、一瞬でもグラつかされたら、もうそれは『死と同義』だからね。それで自害するというルールなら潔く自害する。そういう覚悟の元で、これから私達は戦うんだ。他の軟弱な連中とは違う。私達姉妹は、鳳凰流なんだから」
「異存も意義もないわ。けど補足すれば、殺し合いなんて所詮は技術的に未発達な前時代的な発想だけれどね。技術レヴェルが発展、向上しているこの現代では、戦闘における死は、事故と未熟の象徴でしかない。だからわたしは殺さずにキッチリと敗北を認めさせてみせる」
「できるかなぁ? お姉ちゃんに」
 少しだけ、冷静さが戻った。妹が強いのは、肌で感じている。
 純粋な格闘家としての評価はこれからにしても、戦闘系魔術師ソーサラーとしては、明らかに自分よりも格上だ。いや、純粋に魔術師として評価すると自分は間違いなく三流以下なのである。
 一比古が姉妹の会話に割って入った。

「このM(みみ架)K(黒鳳凰)ランキングは、1位の黒鳳凰みみ架を倒す為に創設されたものだ」

 その時は来た。一比古は満足げに微笑む。
 みみ架を倒せる者を錬成する戦闘者の蠱毒。それがMKランキングというシステムの正体、本意である。一比古が琉架に告げた。
「累丘琉架。姉をこの場に誘い、数多のランカーを倒して成長した君に、私は期待している。君ならば黒鳳凰みみ架を倒せると」
「もうMKランキングなんて用済みだから、貴方の目的や思惑なんてどうでもいいよ。数多の観衆が証人として観ている中で、完膚無きまでお姉ちゃんを倒してお母さんの念願を果たすだけ。そしてお姉ちゃんから名を奪って、私が正当な【不破鳳凰流】になる」
「君の事情は構わないさ。それでも私は、君に打倒みみ架を期待する」
 その言葉を無視して、琉架は【魔導機術】を立ち上げた。
 彼女の【基本形態】――《ダークネス・スモーク》が力強く揺らめいた。

「……お母さんの無念と悔しさ。この累丘琉架が晴らす」

 ああ、本当に腹が立つ。その台詞を実の妹から聞かされるなんて。みみ架は母の弥美に、母を止められなかった父にも怒りを覚える。妹がここまで思い上がっているなんて。
 それにこれでは、まるで自分が……
「お母さんには才能がなかった。黒鳳凰にはなれなかった。でもね。お祖父ちゃんとお祖母ちゃんとの確執と、お母さんが名と業を継げなかった事は一切関係ないわ」
「でも、一子相伝なのにこの私は産まれて、そしてお母さんから業を継いだ。この事実は揺らがないよ。忌々しい事にお姉ちゃんが現後継者である以上、私は正当な黒鳳凰を名乗れない。だから私は暫定的にこう名乗り上げるよ――

 ……【闇深鳳凰流】と」

 ちぃィィ~~ッスぅ! という言葉を最後に残し、琉架の姿が掻き消えた。
 闇夜に溶け込む漆黒の弾丸と化す。事実、琉架は漆黒の闇を纏い、闇の魔術によって推力を得ているのだ。
 みみ架も受けて立つべく前進する。癒え切っていない両足が悲鳴を上げるが、こちらからも動かなければ、対応できる相手ではない。
(速い)
 物理的な速度のみならず、加速の気配を消すのが絶妙だった。
 加えて。
 ずぅォォオオオぉぉぉオっ。間合いに入り、琉架の《ダークネス・スモーク》が轟く。

「【魔導武術】――魔技《闇法師》」

 姉と同じ【魔導武術】として紡がれた【ワード】だ。分離した《ダークネス・スモーク》が琉架の分身として扇状に展開する。
 全部で四体だ。
 魔術サーチは追いつかない。みみ架の魔術オペレーション技術は、平均的な戦闘系魔術師ソーサラーの水準を下回っている。だから電脳世界に展開している【ベース・ウィンドウ】は、基本的に端から慮外する。しかし戦闘者としての反応で、みみ架は瞬時に防御用魔術を起動させた。専用【AMP】――《ワイズワード》から頁群が一斉射出されていく。その頁が重なって壁が形成される。円筒状の防御壁――局所的【結界】だ。
 四体の琉架が【結界】壁に発頸を放った。
 みみ架も腰を落として力強い震脚で踏み込む。頁壁へとカウンター気味に左掌底を返した。
 ガかぁぁんンンン! 発頸特有の甲高い共鳴音が響く。
 威力は互角か。
 顔を歪めるみみ架。激痛が走る。左わき腹の軋み。両太ももから血が霧のように噴き出した。包帯とテーピングで押さえつけているにも関わらずだ。
 防御壁が解除される。
 琉架の分身が消えた。
 魔術現象は物理現象の上位である。直接的に魔術を武術で打ち消したのではない。頸の共振共鳴による衝撃伝播で、互いの意識を瞬間的にだが半失神に追い込んで、派生魔術を強制シャットダウンさせたのだ。
 結果は痛み分けである――が、治りかけの故障箇所を再発させたみみ架の方が、多くの代償を支払っていた。
 恐るべきは、姉か妹か。
 魔術による分身でも発頸を再現できる妹。
 その妹の四発の発頸を一発で相殺した姉。
 甲乙付けがたい、恐るべき姉妹である。
「四対一だったのに、流石はお姉ちゃん。でもその足でいつまで持ち堪えられるかな!?」
 琉架が手業を繰り出してきた。
 みみ架も手業で応える。
 たとえ素人であっても一目で『同じ流派』だと判る技術の応酬であった。
 複雑に二人の両腕が絡み合う。交差する。ぶつかり合う。
 ハンドスピードは最低限だ。逆にいえば無駄な速度がないのである。
 二人とも上半身が綺麗に立っている。正中線も真っ直ぐだ。しかし頭の位置は固定されていない。摺り足めいた運足で、立ち位置を巧妙かつ必要最小限で移動している為である。相手に棒立ちと錯覚させる妙技――それが鳳凰流の極意だ。
 両手と上半身の挙動は一進一退である。
 けれど、下半身の挙動に差が出始めていた。
 琉架の方が動く。より細かく、正確にだ。ポジショニング争いで先行する。
 みみ架の正対が遅れる。リズムは琉架のもの。そして――
「はぁああああああああッ!」
 ついに、みみ架の死角を掌握して、琉架の連打が唸りをあげた。
 ハンドスピードをマックスに引き上げる。
 ドドドドド!! 静から動へのシフト。息をつかせぬ怒濤の連打だったが、みみ架は冷静に両腕を旋回させて捌いていく。手数に幻惑されない。ゆるり、ゆるり、と舞踏のような雅さだ。
 けれど有効打を許さない反面、反撃を棄てて、防御に専念するしかなかった。特に、折れている左側の肋骨を打たれれば、ジエンドだ。
 対して、琉架は防御の比重を必要最低限まで落として、攻撃の厚みを増してきた。

 琉架の猛攻に、観衆が目を見張る。

 予想外に過ぎる光景だ。誰もが姉の圧勝を予想していたのだから。
 近接戦闘世界最強との評価を得ている姉に、妹は近接戦で一歩も引けを取っていない。
 素の状態で、みみ架と近接戦で互角を演じられたのは、統護のみだったのだ。

 ぎシぃ。ギブスで固定されている右手が軋んだ。けれど、みみ架は痛みを無視する。身体スペックで圧倒されての戦闘は、三度経験している。ルシア、統護、オルタナティヴの三名だ。彼等との身体能力差を味わっているので、この程度の負傷は何ら問題などない。
「右手の反応が悪いかなぁ、お姉ちゃんッ!」
 見抜いた、とばかりに琉架が左回し蹴りをもってきた。基本的には手業を主体とする【不破鳳凰流】だが、独自の足業も有している。琉架は手業のみでは分が悪いと悟り、ここで大技を放ってきた。リーチ差を埋める為でもあった。
(いいえ。甘いわ琉架)
 意図的だ。右手の反応を遅らせたのは、罠である。
 身体を捻って、みみ架は琉架の左足を絡め捕る。と、続けて半身で体当てを繰り出しながら、合気で琉架を弾き飛ばした。
 頭が下になった体勢で、錐揉みしながら夜空を舞う琉架。
 琉架は察している。受け身どころか、身動きすら許さない独特の投げ業――宙に縛り付けて自由を奪った相手へ、みみ架が渾身の上段蹴りを放つと。その名称は《雷迅》だ。過日の対抗戦で、統護からダウンを奪った連続業である。
 《雷迅》の極意は、相手が地面近く落下するまでの猶予を与えない点にある。可能な限り高い打点で相手を捉えて、蹴りの威力によって墜落の衝撃を倍加させるのだ。
 琉架は《ダークネス・スモーク》をワイヤに変形させて、キュービクルへと伸ばした。左上段蹴りの射程に落ちる前に、とにかく身体を逃がせば――
 ゴギュあっッ!

 左手を軸に倒立したみみ架のスピンキックが、琉架を薙いだ。

 左ハイよりも更に一段階高い打点での蹴り。アクロバティックな動きながらも、正確に琉架の延髄をヒットしていた。
 ダウンだ。受け身云々どころか、まともに頭から墜ちた。琉架は床に転がったまま、即座に起き上がれない。

「――【不破鳳凰流】連技、《裏・雷迅》」

 その名は《絶風》。文字通りに、表を知る者の裏をかく隠し業だ。
 ダウンを奪ったが、みみ架は油断なく構えたままである。慎重に距離をキープしつつ、琉架の反応を伺う。
 起き上がらずに、夜空を仰いでいる琉架が呟く。
「凄い。この私相手に難易度の高い《裏・雷迅》を決めるなんて。お母さんだって無理だったのに。やっぱりお姉ちゃんだ」
「トドメは要るかしら?」
 ダメージは小さくないはずだ。
「ううん。やれるものなら、やってみるといいよ」
「なら、決めさせて貰うわ」
 みみ架は《ワイズワード》の頁から多節棍を精製した。その棍先を琉架の後頭部へと打ち出す。安易に近づかない。まだ充分な余力を残していると踏んだのだ。
 琉架の《ダークネス・スモーク》も多節棍に変化した。
 漆黒の棍先が、純白の棍先を弾き返す。
(やはり、この程度じゃ終わらないか)
「仕切り直しだね、お姉ちゃん♪」
 キレのあるヘッドスプリングですかさず起きあがる琉架。低い姿勢で真横に疾走しながら、漆黒の多節棍を縦横無尽に操っていく。
(ああ。そうくるわけね)
 みみ架は多節棍を解除して、頁の群を大太刀に変えた。
 飛来してくる琉架の多節棍の先端を巧みに斬り伏せつつ、接近を試みる。
「へえ♪ それがお姉ちゃんの剣か」
 嬉しそうに笑い、琉架は《ダークネス・スモーク》を多節棍から太刀にチェンジした。そして、みみ架の剣技に剣技で対抗した。
 姉妹は激しく刃を交える。
 驚異的なのは、正面から前後の動きで刀を打ち合うのではなく、横方向に走りながら、剣を競っている事だ。みみ架は右へと、琉架は左へと疾走しつつ、太刀筋をぶつけ合っている。
 もしも走りを止めたならば、即座に回り込まれて、背後を取られてしまう。故に、両者とも走り続けるしかないのだ。
 屋上の端に到達して、二人は同時に反対方向へと切り返す。
 往復するのか――と誰もが思った、その時。
 フェンスを背にしている琉架が、思い切ったバックステップをした。ステップというよりも、ジャンプに近い。直角の軌道で真後ろに飛んだ琉架を、みみ架が刺突の構えで追従する。
 ぎゅオォ! 空気が唸った。
 鋭い刃先。琉架は太刀を長槍に変えてカウンターを狙った。
 槍先を刀身でいなしたみみ架は、琉架と同じく得物を長槍へと切り換える。すかさず稲妻めいた突きを連続した。
 太刀同士から槍と槍へ。
 迎撃する琉架であったが、背中にはフェンスが迫る。下がってしまった琉架と、追って前に出ているみみ架では、圧力と勢いが違った。
(どうするかしら? 琉架)
 後退を金網に遮られて、琉架の動きが止まったならば、一気に間合いを潰して畳み込むつもりだ。金網を蹴って、左右か前への方向転換をはかるのならば、その瞬間を狙ってフェンスを斬り裂いてみせる。
 琉架はニィ、と不敵に笑んだ。
 更にバックステップのギアを上げて加速すると、背中から金網フェンスに体当たりする。
 体当てからの発頸で、フェンスの網を突破してしまった。
 そして屋上の端から大ジャンプだ。体勢は一切崩していない。加速する為に、後方宙返りを加えている。運動性能も桁違いだ。
 屋上から飛び降りた琉架に、里央が悲鳴を上げた。
(正解ね。合格だわ)
 悲鳴は里央の早合点だ。このまま投身自殺にはならない。琉架の下には地面ではなく――西棟屋上の床がある。
 みみ架も琉架に続いて本館屋上から西棟屋上へと飛び移った。
 戦いの舞台が西棟に変わり、一比古が苦笑する。
「これは予定外だな。大した問題でもないが」
 先に着地を決めた琉架が、みみ架の着地を狙って槍を突いた。
 その一撃を、みみ架はトンファーで受ける。あらかじめ槍からトンファーへと頁を変化させていたのだ。
「じゃあ、これならどうかな!?」
 琉架は槍の刃を納めて長棒にした。そして槍術ではなく、棒術で躍り掛かってきた。
 みみ架もトンファーから長棒に切り替えて、同じく棒術をもって応戦する。五合の攻防を終えて、今度はみみ架から武具を換えた。
 青竜刀である。
 ならば当然とばかりに、琉架も《ダークネス・スモーク》を青竜刀にした。
 武具のデパートはまだ終わらない。
 様々な国を発祥とする数多の武具が、二人の戦闘系魔術師によって再現される。
 純白と漆黒。さながら光と闇。
 対照的な色彩だが、全く同型状の武具を姉妹は次々と繰り出していく。
 武具の形状と特性を最大限に発揮する為に必須となる、最適な身体運用と武具の制御を、二人は完璧に体現している。武具を換える度に、身体の使い方がまるで違うのだ。いや、身体操作のみならず、呼吸法まで変えている。
 右手は添えるだけであるが、みみ架は琉架の武芸に付いていく。肋骨と両足が痛むが、それを無視する。姉として、ここで妹に劣るわけにはいかないのだ。
 オルタナティヴの頬に、一筋の汗が伝った。
「恐るべし業前ね。器用貧乏どころか、まさしく武芸百般だわ」
 決して器用貧乏ではないのだ。
 姉妹は一つ一つの武具の操作を、達人級までに高め、極めている。
 ただし、個別に修練しているのではない。それでは操る武具の数に正比例して、修練時間を要してしまう。いくら時間があっても不足してしまうのだ。
 つまり、この姉妹はあらゆる武具を精通可能とする『根源と真理』に到達しているに他ならないのである。
 その『根源と真理』とは――

 申し合わせたかの様に、みみ架と琉架が武具を消した。

 二人は微かに右半身の極自然な立ち姿になる。
 無手だ。
 武具の扱いに特化した訓練なしで、様々な武具を達人級で極められるのは、無手であらゆる武具に対応可能なメソッドを幼少時から刷り込まれているからである。逆に考えれば、達人級の剣を振るえない者では、無手で達人の剣には勝てない――という事だ。無手で全ての武具を制圧可能な理念――その行き着く先こそが、みみ架と琉架が体得している『根源と真理』である。そして、それは極意でも奥義でもなく、鳳凰流にとっての基礎であり初歩なのだ。
 二人は、同門として互いの『鳳凰流の基礎』を入念に確認し合っていたのだ。武具の扱いが未熟ならば、その先に在る――本気の素手では戦うに値しないと。
 オルタナティヴはムサシを窺った。
 ムサシは満足気だ。間違いなく、今までの攻防を〔ラーニング〕する事により、己の〔スキル〕として蓄えている。この姉妹決戦は、ムサシにとっては格好の餌場だ。
 琉架が言った。
「小手調べは充分かな。お姉ちゃんの練度は、おおよそ掴めたよ。やっぱり流石だ」
「それはわたしも同じね。師としてのお母さんの資質も」
「お母さんは黒鳳凰にはなれなかった。でも、師匠としての資質はお祖父ちゃんに劣っていない。ううん。お祖父ちゃん以上。それを弟子の私が証明するんだ。これは弟子同士の代理戦争でもあるんだよ、お姉ちゃん」
「くっだらないわ。勝手に一人で盛り上がっていなさい、琉架。アンタの一人相撲に付き合わされる羽目になったこっちは、本当に大迷惑なんだから。でも、他人を巻き込んだ事については、わたしが責任をもってケジメをつけさせてもらうわ」
 微妙に噛み合っていない会話と、獰猛に噛みつき合う視線。
「ここからが本番だよ。超が付く本気だからね。次からは【不破鳳凰流】を名乗るから、これが最初で最後の名乗り上げ……」
 その言葉を皮切りに、みみ架は二房のおさげを解く。受けて立つ、と。
 集中力が上がり、双方の殺気が研ぎ澄まされていく。
 姉妹の唇がそれぞれ紡いだ。

「――【闇深鳳凰流】一代継承者、累丘琉架」

「――【不破鳳凰流】継承者、黒鳳凰みみ架」

 そして、綺麗に口上が重なる。

「「 いざ、参るッ!! 」」

 

 

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