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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第4部(第58話)

第四章  真の始まり 27 ―凍結―

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         27

 ――……世界は〔神〕によって修復された。
 統護が立っている場所は、宇宙空間ではなく、先程まで戦っていた競技場である。
 時間の調整にミスはない。
 破壊された箇所は全て修繕しておいた。巻き込まれた人達の身体と〔魂〕も。

 目の前には、イヴ・ウィンターがいる。

 すでに大天使ジブリールではない。〈神下〉は解除されて人間に戻っていた。
 大天使化した影響で、揺れる長髪は輝く白銀である。両目はオルタナティヴと同じ真紅だ。
 イヴが蘇生して人間に戻ったのは、統護が彼女の因果素子に干渉した結果である。
 以前、〔太陽神アマテラス〕の召喚によって優季を蘇生させた。あの時は、今よりも記憶が不完全であったので因果素子を認識できなかった。存在すら忘れていた。だから〔太陽神アマテラス〕のチカラで、優季の右手を復元できたと思っていたが、そうではなかった。
 あの時は〈光と闇の堕天使〉の介入によって無意識下で行っていた作業を、今回は〔神〕として実行できた。イヴを人間に戻しただけではなくクィーン細胞も除去してある。ただし【ナノマシン】による生体強化はそのままだ。【ナノマシン】まで除去するとイヴとしての存在を維持不能であった。
 最初からこれを狙ってイヴを素粒子レヴェルまで消滅させたのだ。地球まで巻き添えにしてしまったのは失敗であったが。
 召喚によって間接的に〔神〕のチカラを振るうのと、自身を〈神化〉させて振るう〔神〕のチカラとでは、その次元が違いすぎた。今回はそれを再認識できた貴重な機会だった。
 彼女は穏やかな顔で、統護に語りかけてくる。

「ありがとう、〔神〕よ。主のお陰で私達姉妹は救われた」

 統護は軽く驚く。こんな結果は予想していない。
 まさに神が『サイコロを振る』のならばあり得なかった――奇蹟である。
「その口調。まさか、冬子さんじゃなくて夏子先生なのか?」
 透明な微笑みで、イヴは肯定した。
「ああ。そうだよ堂桜。謝罪会見から逃げて病院に閉じ籠もっていた時とは違い、《クィーンズ・アブソリュート・カッティング》の中に籠もったイヴ・ウィンターは、孤独に耐え切れなくなり己の生体データにある記憶と経験を分割して、二つの人格を造り上げた。主人格である冬子と副人格としての私だ。私達は会話した。半年以上の姉妹二人きりの会話の末、クィーン細胞がこの身から消える前、冬子はイヴとしての自我と主導権を私に明け渡して眠りについた。クィーン細胞が消えた今、永遠の眠りに」
 微笑みを浮かべている左右の頬に、水滴が伝っていく。
「冬子は去り際に、こう私に告げたよ……

 ――嘘をついて迷惑をかけた全ての人達に、ごめんなさい、と」

 微かに震えているその言葉に、統護は息を飲んだ。
「冬子が、決して間違いを認めなかった、あの冬子が謝った。謝ってくれたんだ」
「そうですか」
「私は冬子を許した。〔神〕としてではなく、堂桜統護としてのお前に言いたい。出来ることならば、お前も伊武川冬子という最愛の妹を、愚かな妹を、許してやってくれないか」
「はい。俺も許します。〔神〕としては出来なくとも、俺として」
 冬子によって被害を被った多くの人々を思えば、〔神〕としては許せないのだ。
 だが、堂桜統護としては許せる。罪は罪だが、伊武川冬子という女性を心から許そう。
「その言葉、私の中の冬子にも届いたと思う」
「夏子先生はこれから?」
「私は伊武川夏子ではない。夏子本人は死んでいる。死の寸前まで憶えている。私はあくまで夏子の自我と記憶を継承している――イヴ・ウィンターという名の【ソーサラー】だよ」
 統護にも分かっていた。伊武川夏子は死んでいる。
「今からの言葉が伊武川夏子としての最後になる。私の遺産は全て伊武川冬子名義で、税金の自主返納に充ててもらいたい。優先順位は奨学金、研究費、【魔術化学研究所】からの給与で返納してくれ」
「わかりました。確かに引き受けました」
「むろん税金の自主返納くらいじゃ、冬子を許してくれない国民が大半だろう」
「すぐに忘れますよ。大半の国民は新しいスキャンダルに食いついて、クィーン細胞なんて、あっという間に過去の話になりますって」
「そうかもしれない。けれどニホン科学界が世界に対して失った信頼と信用、そして決して恵まれていない経済状況で日夜、研究に励んでいる若き科学者、研究者たちを思うと、な。今回の件でも百名以上の研究者達が、予算削減によって【魔術化学研究所】の職を追われている。彼等とその家族は人生と将来を狂わされて、冬子を恨んでいるだろう。遺産で支払いきれなかった分は、これから私が稼ぐ金で補充していく。全額返納が終わった後は、私の稼ぎは全てニホン科学界の発展に捧げるつもりだよ。せめてもの罪滅ぼしに」
「先生はこれから?」
「伊武川夏子のコネを利用して、スカウトされている特殊機関のエージェントに復帰する」
 他に彼女が生きていける道はないだろう。
 イヴは統護の背後に視線をやる。
「Dr.ケイネスに身を寄せるという選択肢もあるが、彼女とは馬が合わない」
 ケイネスと詠月は客席から統護の後ろまで来ていた。
 イヴにケイネスが問いかける。
「貴女の本体を殺して、冬子を嵌めた私を恨んでいるかしら?」
「いいや。殺されたのは私のミス。冬子に関しては、貴女の干渉なしでも破滅は避けられなかった。確かに貴女は嫌いだが、恨みはない」
 イヴは踵を巡らせて、統護に背を向けて歩き出す。
 そのままケイネスと詠月の横を通過した。
 一度だけ肩越しに統護を見る。
「それじゃあ、一時のお別れになる。機会があれば戦闘系魔術師ソーサラーのエージェント、イヴ・ウィンターとして再会しよう。できれば敵ではなく味方として」
「はい。また会いましょう。その時までお元気で。ご指導、ご鞭撻ありがとうございました」
 統護は深々とお辞儀した。これが最後の夏子への礼となる。
「ふふっ。お前は最強の存在かもしれないが、私の生徒としては紛う事なき劣等生だったよ」
「出来の悪い生徒ですいません」
「けれども……、私が信仰する〔神〕としては合格だ」
 イヴ・ウィンターは去った。
 残された統護に、ケイネスが話し掛けてきた。
「流石は〔神〕サマ。慈悲深いわね」
 皮肉げな口調だ。
 統護はその皮肉を苦笑で返した。
「個人的に冬子さんを救いたかったってだけだよ。結局、救ったのは夏子先生だったけど」
「いいや、そちらじゃなく、イヴ・ウィンター戦の最終局面よ。ご丁寧に私と詠月まで時間感覚から保護してくれた。お陰で私達は発狂を免れたわ」
「その後、地球ごと吹っ飛ばしちまったけどな」
「なるほど。《デヴァイスクラッシャー》の後に起こった爆発はビッグバンだったか。消滅はさせられたけど、こうして再生してくれたのだから文句はないわ」
 詠月が統護に疑問をぶつける。
「私達二名は〈資格者〉よ。【堂桜グループ】内でも共闘路線ではない。私達を再生しないで、そのまま消滅させるという選択肢もあったはず」
 何故? と訊かれて、統護は誤解を避ける為、正直に答えた。
 今の統護では、伊武川姉妹――イヴを救う為の改変にリソースをつぎ込んでしまい、他の事にまで手が回る余力などなかったと。
「それに一応は〔神〕なんでね。この【イグニアス】世界は俺が創造した世界じゃないから、そこまでの責務はないけど、救える命と魂は全て救いたい。それが〔神〕の性ってやつだ」
「納得はした。しかし〔神〕というのも少し考えものだ」
「ええ、同感だわ。つまり私達二名云々って話じゃなく、他の〈資格者〉や必要な情報も因果素子から探れなかった……と。慈悲を優先とは、本当に〔神〕様は寛大で尊大だこと」
「不自由というか、予想よりも堅苦しそうだ」
 呆れつつも感心した視線を向ける二人に、統護は肩を竦めた。
 表情を改めてケイネスが言った。
「堂桜統護としてのお前に言う。お前の〔名〕は推定できたわ」
「口にするのは止めてくれ。〈神化〉を解除してヒトに戻れなくなる。その対価として闘技場と競技場に施工したアンタの小細工も除去しておいた」
「わかった。ギブ&テイクで私も引き下がろう。お前を完全に〔神〕のままにしておくメリットもないしな。この世界の〈創造神〉が提案したゲーム、というか課題は、間違いなく序盤だろう。ああ、どうせ堂桜財閥が突き止めるだろうから教えるが、お前の捕獲計画を主導したのは米軍【暗部】だよ。今回の計画失敗で、バックアップした国連の連中共々、当分は大人しくせざるを得ないだろう」
「結果的にアンタには今回、助けられちまったな」
 もしもケイネスがイヴに〈素体〉としての細工を施さず、〈ゲイン〉現象の発動実験を行わなければ、統護は冬子の手に堕ちたまま米軍【暗部】に拘束されていた。
 状況として判断するのならば、《ネオ・リヴェリオン》の実戦テスト観戦に出資した連中の一人勝ちであろう。統護としても死傷者がゼロである以上、無理に干渉できなかった。
「実験の結果、本当に結果的というだけだ。お前がイヴ・ウィンターに敗北して捕獲されても、米軍【暗部】への役目を果たしている私には何ら関係なかった。まあ、ローラよりも冬子を使うように進言した件は責められるだろうが。お前が私に恩に着る必要はないわ。基本的には、私お前は敵対関係でしょうから」
「そうだな。次はおそらく戦う事になるか。笠縞陽流さんの救出もあるしな」
「陽流については何とも。利用はしているが、決して騙しているわけではない。取り戻したければ実力行使ではなく、陽流の心を救ってみろ、と《究極の戦闘少女》に云いなさい」
 イヴに続いて、ケイネスも去った。
 残った詠月に統護は訊く。
「詠月さんはケイネスと一緒に行かないのか?」
「今回は偶然、一緒に観戦していたというだけだから。複雑な心境ね。前回の〈ゲイン〉現象――要するに我ら〈資格者〉による停止世界の顕現を体験して、託宣によって告げられた〈創造神〉から提示されたゲームが本物だと分かったばかりだというのに、ケイネスによる二度目の停止世界で早くも〈神座〉が実在していると判明するなんてね」
「託宣……か」
「貴方は授かっていないようね。やはり〈イレギュラー〉か」
 統護はMMフェスタでのオルタナティヴとの会話を思い返す。
 おそらくオルタナティヴも託宣を得ていない。元々は正規〈資格者〉であったはずなのに。
「当面は敵対する意志はないわ」
「お互いに距離を置く?」
「むしろ私から確認したいのだけど、貴方は〈創造神〉のゲームに対して、どういったスタンスをとるつもり? なにしろすでに〈神座〉を得ている。その気になれば完全なる〈神化〉だって可能でしょうに。貴方の希望はなに?」
 統護は即答した。
「俺は俺――堂桜統護というヒトとして生きて、そして寿命を全うして死ぬだけだ」
 そして、みみ架との子に次代の堂桜を託す。
「悟っているというか、やはり〔神〕というか……」
「詠月さん?」
「本音をいえば、私は【イグニアス】世界の支配者には興味があっても、〈神座〉を獲得してこの世界の〔神〕になりたいか、というと困惑するわね。今はそこまでの覚悟はないわ」
 次いで「ケイネスも〈神化〉したいのではなく〈神座〉の研究が目的」と云った。
 その言葉に、統護は納得がいった。
 正義や悪、正しい間違いという基準ではなく、研究心のみに従っているのがケイネスだ。
 去り際の言葉通りに、ケイネスは陽流が己から去るとなれば、無理に引き留めないだろう。
「……で? 貴方のゲームに対してのスタンスは傍観でいいのね?」
「基本的には。ただし〈イレギュラー〉という俺が発生した原因があるはずだ。主催者側である〈創造神〉と俺という存在を仕掛けた側は、共に俺を放っておかないだろう。状況から、俺という〈イレギュラー〉を介入させた側は、間違いなくゲームを邪魔したがっている」
「戦うのならば、そちら側?」
「そうなるのかな。それに俺の第一目標は〈創造神〉のゲームじゃなくて【エルメ・サイア】というテロ組織の壊滅だからな」
「〈神化〉した状態で現界し続ければ、余裕じゃないかしら?」
「世界に与える影響が洒落にならないって。下手すりゃ世界そのものがブッ壊れる。それに【エルメ・サイア】は〔神〕ではなく人間の俺が打倒しなければ意味がない。【エルメ・サイア】にも【エルメ・サイア】として存在している因果がある。それを〔神〕が独断で消去してはいけないんだ」
「だから人間として倒す……ね。分かったわ。【エルメ・サイア】打倒に関しては、この堂桜詠月が貴方をバックアップしましょう」
 協力の申し出に、統護は驚いた。
 詠月が表情を改める。
「今回の奪取計画が実行された事によって、堂桜財閥第一派――堂桜宗護の息子としての貴方の立場は風前の灯火でしょう? 第三派閥と呼ばれている私と同調しなさい。あくまで対等の立場として。現当主である宗護との折り合いは悪化するけれど、メリットは大きいはずよ」
「答えは少し待ってくれ。淡雪と相談するから」
「ええ。良い返事を待っているわ」
 停止世界であるはずの純虚数空間に異変が発生した。
 白と黒で構成されていた景色が、少しずつ色づき始めている。
 詠月と統護は周囲を見回す。
「世界が動き出したわ。時間切れね」
「ああ。元に戻り始めているな。早く〔神〕からヒトに戻らないと」
 統護は〈神化〉の解除を試みる。
 人間に戻るために〈神座〉を〔魂〕の座に封印した。
 それだけではなく厳重に封印を施す。〔魂〕の蓋に鍵をかけた。この【イグニアス】世界には、強制的に統護の〈神座〉を起動させられる〈資格者〉が存在しているからだ。
 仮に〔神名〕を言い当てられてしまうと、統護は人間として存在できなくなってしまう。
 封印完了。これで開封できるのは〈光と闇の堕天使〉のみだ。
 統護は人間に戻った自身の調子を確認した。
(違和感や異常は……ない、な)
 ただし重い。超人化している力感はそのままだが、疲労感が半端ではなかった。元のコンディションに回復するのに、それなりの時間を要するだろう。なにしろ〔神〕からヒトへという、過去に前例のない真似をしたのだ。
(これだと〈神化〉を解除した後での戦闘は無理だな)
 場合によっては致命傷だ。詠月に悟られたくない。統護は懸命に疲労感を隠した。
 詠月が感心する。
「案外あっさりと人間に戻れるのね。平気なの?」
「大丈夫です。俺も驚いているよ。それじゃあ闘技場へ急ぎましょう、詠月さん」
「そうね。でも【パワードスーツ】によるテロについては心配無用でしょう。私が首謀者ならどう考えても撤退を指示するタイミングだもの」
 動き始めている世界の中で、統護と詠月は闘技場へと走った。

 

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 二人が闘技場に戻ると、すでに事態は収拾していた。
 【パワードスーツ】三機は撤退し、ケイネスの指示で冷静さを取り戻した陽流も、用意してあった逃走経路により姿を消した。
 撤退を邪魔するのならば戦闘不能状態の生徒達を射殺する――と警告されてしまえば、いかに締里であっても、見逃す以外の選択肢はなかった。
 強襲テロという表向きの事件に対しては、途中参戦から防衛し切った締里の勝利だ。
 陽流を救えず、敵の真意である実戦テストを完遂させてしまったという面では敗北だ。
 中断されてしまった対抗戦も、今大会はここで中止となる。
 被害状況の確認に、教師陣とガードマン達が駆けずり回っていた。
 警察も現着して調査を開始している。
 救急車による負傷者の搬送も行われていた。
 だが、事件の真相は、米軍【暗部】と国連によって揉み消されるのは必至だ。
 堂桜財閥と【セントイビリアル学園】理事会と経営陣は、今回の件で米軍【暗部】と国連に、小さくない貸しを作ることとなる。それが妥協点といったところか。
 しかし、今はそれどころではなかった。
 統護の周りには、みみ架、里央、優季、締里、アリーシア、二三子、ロイド、そしてエリスや和葉(リーファ)といった面々がいる。
 全員、沈痛な面持ちだ。
 詠月も言葉を失っている。
 アリーシアと締里との再会を喜べる事態ではなかった。

 ――淡雪が目を覚まさない。

 生きている。いや、死んでいないと形容する方が正確なニュアンスか。
 微かな呼吸と脈はある。しかし体温は雪のように冷たい。
 それだけではなく、淡い雪のような燐光に包まれており、三秒以上は触れられないのだ。
 眠りという名の停止状態である。
 泣くのを必死に堪えている優季が、統護に縋り付いた。
「統護、どうしよう……。淡雪が、淡雪が」
 思い付く原因――不完全な状態で〈光と闇の堕天使〉を召喚して〈神化〉した影響か。
 統護は両拳を握りしめた。
「大丈夫だ、優季。淡雪は必ず復活させる。元通りに、元気にしてみせる」
 固く決意する。
 淡雪が停止状態になった責任は、間違いなく自分にある。それに、淡雪は大切で特別な存在なのだ。〈光と闇の堕天使〉の為に、このまま淡雪を消えさせたりはしない。
 感覚はある。淡雪がこの状態であっても〈光と闇の堕天使〉は喚べる。しかし、次に〈光と闇の堕天使〉を現界させた時、おそらく淡雪という存在は消失する。それは許容できない。
 覚醒時、〈光と闇の堕天使〉は自身を『不完全で〈不適合〉』と言っていた。
 その〈不適合〉な状態を解消するまで、〈光と闇の堕天使〉は起動させないと決めた。
「で、でも。どうやって淡雪を元に戻すの?」
「まずは堂桜の研究機関か、ルシアと那々呼に相談して詳しく調べてもらう」
 みみ架が《ワイズワード》を翳して、統護に告げた。
「そうね。迷っている暇も、悲しんでいる時間もないわ。行きなさい、堂桜くん。淡雪を救いたければ……

 ――ファン王国へ」

 

 

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