アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第4部(第52話)

第四章  真の始まり 21 ―大天使光臨―

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         21

 

 漆黒の二挺拳銃が連続して吠えた。獰猛な獣のようだった。
 応戦も反撃もない。
 陽流は恥と外聞を棄てて逃げる。逃げ惑う。
 策のない敗走だ。制限時間や撤退径路といった事が、頭から消え去っている。
 電脳世界内で幾つもの【アプリケーション・ウィンドウ】が警句と共にオペレーションとパラメータ再調整を求めているが、それも無視だ。いや、思考能力が喪失している。
 ランダムにエレメントを変化させて撃ち込まれてくる魔術弾丸に、適切な防御魔法を展開できない。締里は背を向ける獲物に、容赦なくトリガーを引き続けた。
 締里は決着を焦らない。機械的に相手を追い詰めていく。
 一方――、三機の《ネオ・リヴェリオン》も、動きはメチャクチャになっている。
 ホストである陽流の援護になっていない稚拙な挙動だ。
 かといって、独立して締里と戦闘している気配も皆無だ。
 陽流のパニックに巻き込まれて、支配下に置かれている機体も統制を欠いていた。
 闘技場という限定空間での逃げは、長くは保たなかった。逆サーチというデメリットを背負う魔術的ロックオンは要らない。締里は陽流が走るパターンを学習して、先読みした位置へと銃口を照準する。
 キュドィゥ!!
 エレメントが【重力】の魔力弾が、陽流の背中に炸裂した。
「がッ、ハぁぁッ!」
 前のめりに倒れ込んだ陽流は、衝撃と激痛で、ようやく我に返った。
(なにを、やっている、の、あたしは――!!)
 沸々と怒りが湧き上がってくる。
 チカラを手に入れ、【DRIVES】の過負荷にだって耐えたというのに――
 結果は、惨めに這いつくばっている。
 両目が真っ赤に充血し、ブツン、と頭部の血管が切れた。
 血管の破裂は【ナノマシン】によって修復されるが、頭に血が上った宿主の思考が修復する事はなかった。理性が飛び、ブチ切れ状態になった陽流は、空に向かって吠え猛る。
「敗けないッ!! こんなはずじゃなかったぁ! あたしは二度と負けないんだから!! ぅぅううううううううううわぁぁああああああああああぁぁあっ~~~~~~~~!!」
 恐怖を上回る屈辱と赫怒に、魔力を限界まで引き上げる。
 ダメよハルル――という締里の声は、陽流に届かない。
 まだだ。まだ足りない。
 《ネオ・リヴェリオン》三機の魔力エンジンをもフル回転だ。リミッターを解除。
 相乗効果で、限界点どころか臨界点を突破しろ。機体と《ハルル・シリーズ》が安全領域を超えた過負荷に悲鳴をあげる。しかし陽流は構わず暴走させた。
 もっと魔力を! もっとチカラを!! 憎き《究極の戦闘少女》を倒すため。
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 

 陽流の魔力暴走に、闘技場が揺れ始めた。

 

 不自然な縦揺れだ。
 地震ではない。かといって魔術による揺れでもない。
 異変を察した締里が、愕然と『とある擬態』に気が付いた。

 

「ひょっとして、この闘技場は――【魔方陣】なのか!?」

 

 魔術によって行使された魔力を蓄積している。
 魔力蓄積用の【AMP】が、法印を描くように隠されて配置されているのだ。
 締里は確信する。もう疑いようがない。
 【パワードスーツ】での強襲テロは、実戦テストと出資者へのデモンストレーションという表の目的だけではなく、闘技場に擬態させた巨大な【魔方陣】に魔力を蓄積させて、ナニかを引き起こすという裏の目的があった。
 【魔導機術】とは異なる魔術的なナニか。締里の生存本能が警鐘を掻き鳴らす。
 陽流に警告した。
「魔力の増幅を止めなさい、ハルル! 貴女の魔力暴走が最後の引き金になる!!」
「五月蠅い、五月蠅い、五月蠅い、うるさぁいぁいいいぃいいィィィっ!!」
「貴女はDr.ケイネスに利用されているのよ!」
「あたしのトモダチを悪く言うなぁぁあああああああああああッ!!」
 ィィィイイイイイイイぃんんンんンンんんんぅぅゥゥヴんんンン――

 

 不規則な音が反響、共鳴する。

 

 光と闇の雨が、さながら落雷のように発生し始めた。

 

 しかし雷雨の音はしない。
 否、唐突に音という概念が喪失していた。
 さらに世界から色彩も消える。存在する色は真白だけ。外郭は黒のみとなる。
 例えるのならば、ワイヤフレームで構成されているCGソフトのモデリング画面だ。
 それは白と黒のセカイ。

 

 ――全てが『停止』していた。

 

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 競技場に潜り込んでいたケイネスは、セカイの停止現象にほくそ笑んだ。
 実験は成功だ。
 この超常現象は〈ゲイン〉と名付けられている。
「ふふふふ。前回は見物するだけだったが、今回は私が引き起こしたぞ」
 MMフェスタでは後塵を拝する格好になったが、ケイネスは〈資格者〉の一人として、停止世界が実在する事を確認できた。
 そして今回、ケイネスが〈ゲイン〉を起こして、停止世界を顕現させたのである。
 アリーナ席に到着し、眼下のグラウンドに注目する。

 

 統護だけではなく、冬子も停止していない。

 

 狙い通りだ。
 二度目の〈ゲイン〉に統護は困惑を隠せない様子だ。
 一方、冬子はこの停止世界を当然と受け入れていた。
「どういう事なの? 伊武川冬子もまさか〈資格者〉だというのかしら?」
 隣からの質問に、ケイネスは横を向く。
 そこには、詠月がいた。
「お前も〈資格者〉だったのか」
「意外だったかしら」
「いや。予想しているメンバーに、堂桜ナンバー3は入っていたわ。ちょっとだけ予想外だったのは、この場に貴女がいる事かしらね」
「会場が二つ隣接している――というヒントがあったから」
 なるほど切れ者だ、とケイネスは感心した。
 闘技場が〈ゲイン〉現象を起こす巨大な【魔方陣】。
 対して、この競技場が〈儀式〉の為の祭壇なのである。
 ケイネスは詠月に訊く。
「同じ〈資格者〉として私と戦う? お前の《ダークムーン・サキュバス》とやらで」
「生憎と私はまだ謎かけの正解に到達していないわ。この場で貴女を斃すメリットは、今の私には皆無ね。Dr.ケイネス、いえ、堂桜那々覇。お手並み拝見とさせて貰うわ」
「見物ってワケね」
「ええ。だから答えて貰えると嬉しいわね。伊武川冬子は〈資格者〉なの?」
 ケイネスはサービスする事にした。
 他にも〈資格者〉は存在する。詠月に最低限の貸しを作り、情報を与えるのも悪くない。
「伊武川冬子は堂桜の血を引いていないわ。よって〈資格者〉ではあり得ない。アレは今回の〈儀式〉に使用する〈素体〉として用意したの。停止しなかったという事は成功して〈素体〉認識されたようね。実験は最後の一押しを残すのみ」
 クィーン細胞の隠された目的が〈素体〉精製である。
 ケイネスは【ドール】ではなく、ヒトを元にして〈素体〉を造り出すのに成功したのだ。
 冬子はその為の贄であった。
「理解したわ。で、どちらの?」
 これだけで納得できるとは詠月は侮れない――と、ケイネスは気を引き締めた。
 一拍置いて、ケイネスは教える。

 

「――《ライトエンジェル》の方よ」

 

 解答には至っていないが、解答外であっても名付ける事ならば可能だ。
 それが堂桜の血を引く〈資格者〉の資格である。
 《ライトエンジェル》と《レフトデビル》ならば、解答失敗のペナルティーはない。
「ならば、あの〈素体〉に何と名付けるの?」
「リクエストがあれば聞くわよ、詠月」
「遠慮させてもらう。伊武川冬子の名付け親になるつもりはないわね」
 詠月が辞退したので、ケイネスは決めていた〔名〕を告げた。
 高らかな声で嗤うように。

 

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 冬子が正体を現し、万能細胞のチカラで若返った直後である。
 いきなり世界が停止した。
 統護はこの現象――〈ゲイン〉を知っている。過日のMMフェスタで経験した。
 色彩を喪失したワイヤフレームの中、統護は内心で毒突く。
(くそ! よりによって、こんな時にかよ!!)
 偶然であるはずがない。今回も〈資格者〉の誰かが狙って引き起こしたのだ。
 今回の統護奪取計画と強襲テロを隠れ蓑にして。
 おそらく、この停止世界の顕現こそが、真の目的だったのだ。
 その証左として……

 

 ――伊武川冬子が停止せずに、更にその姿を変化させていく。

 

 変貌していく。
 彼女はクィーン細胞の万能性で、夏子から冬子へと姿を変換した。
 その若返った冬子は眩い光を纏うと、再び姿を変じていく。神々しく換わっていく。
 これは万能細胞による変化ではない。もっと大きな〔意志〕によるものだ。
 変質あるいは進化というべきか。
 基本的には冬子のままだが、ヒトというカテゴリから逸しているとしか思えない偉容だ。
 冬子の顔から表情が抜ける。
 明らかに一種のトランス状態だ。

 

「……ようやく時がきた。イレギュラーの〈資格者〉よ」

 

 その台詞に、統護は息を飲む。
 四肢の具合を確認するが、まだ十全には動けない。ダメージの回復には、もう少しかかる。筋弛緩剤の効果よりも、みみ架の発勁が尾を引いているのだ。
 それでも冬子との一騎打ちで、彼女を打倒できる算段はあった。《デヴァイスクラッシャー》のみで勝利し、状況を打破する自信があったのだ。
 それがまさか、こんな事態に陥るとは。
(ちくしょう。みんな無事なのか?)
 脳裏に浮かんだのは、仮面で素顔を隠した謎の二人組。
 その正体は――果たしてどちらだ? やはりアリーシアと締里か。そうであってくれ。
 次いで懸念する事。
 シリーズ化された少女。
 ならば、そのオリジナルは?
 奔流する統護の思惟を、無慈悲な声色が途絶えさせた。

 

「さあ、この世界にお前(イレギュラー)が存在している意味を、私の前に示すがいい」

 

 儀式魔術――という単語が、堂桜の血脈である統護の〔魂〕に浮かび上がる。
 ふぉおぉおおぉおん――……
 多重する振動音を伴い、ゆっくりと展開される三対の六枚羽。
 停止世界にあって音を赦されている。
 妖精的な羽ではなく、豊かな羽毛をたたえた鳥類を模している翼だ。一対で三メートルを超える長さの巨大な羽翼。それがヒト型の背から生えていた。その姿はまさに――
「お前は……いったい?」
 そして、この異世界【イグニアス】とは?
 愕然となる統護。
 この相手に、統護の《デヴァイスクラッシャー》が通用しないのは、もう確定的である。
 このまま戦っても確実に負ける。倒されてしまう。命を奪われてしまう。
 紛れもなく最大の危機だ。

 

 もはや隠している〔魔法〕を使うしか対抗手段はないのか。

 

 いや、違う。
 相手は識っている。統護のチカラを知っている。隠すことに意味はない。
 コレはそういう存在だ。外観は冬子だが、もうコレは……
 抑揚に乏しい無機質なアナウンスが、冬子だけではなく、統護の意識にも届く。
『個体名・伊武川冬子を〈素体〉として登録完了。エンジェルコードの獲得を認め、【イグニアス】世界内の純虚数空間(インナースペース)において、存在係数の再調整を実施します。成功――〈神下〉を開始。顕現まで残り五秒、四、三……、』
 なんだ? 声? いったい何が聞こえたんだ?
 統護の疑問を余所に、進化という変質が最終段階に入る。
 そして、ついに存在が固定された。
「告げよう。この世界において私は名付けられた。我が名は……!!」

 

 ―― 大 天 使 ジ ブ リ ー ル ――

 

 

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