アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第4部(第47話)

第四章  真の始まり 16 ―仮面の奥―

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         16

 みみ架は走る。艶やかな黒髪をなびかせて、疾走した。
 緑の黒髪は、天井の照明による鮮やかな『天使の輪』を演出する。
 やはり手足が――重い。
 スタミナの回復具合も不十分である。特殊な呼吸法によって、体内の氣脈を活性化させて、ダメージとスタミナ回復を行ったがベストには程遠い体調だ。完全回復には栄養と睡眠が必要であり、三日前後かかるだろう。
 しかし四肢はイメージ通りにコントロールできる。それで充分だ。
 先を走る朱芽の背が遠い。差が縮まらない。
 おそらくは統護を抱える為に、軽量化の汎用魔術を使用している。戦闘用魔術――【基本形態】に必ず組み込まれている身体強化効果はないはずである。
「大した健脚じゃないの、朱芽」
 ローラは肩越しから、みみ架との距離を確認した。
「ミミの方こそ。魔術師なんて辞めて、陸上で短距離から中距離のオリンピック表彰台でも目指したら?」
「その台詞、そのままそっくり返すわ」
 もっと、もっとだ。もっと加速して追いつくのだ。
 秘密通路の長さは、闘技場と競技場に設置された出入り口との位置関係にもよるが、どう多く見積もっても直線で三百メートルない。
 つまり、百メートルを十秒と概算しても、三十秒以内で追いつかねばならない。
(追いつくわ。絶対に!)
 みみ架は息を吸い込むと、呼吸を止めて無酸素運動に入る。
 淡雪と優季の護衛をロイドに任せたのは、状況による合理的な判断ではなかった。
 単に、その状況を利用したに過ぎない。
 理屈をつけて淡雪と優季を遠ざけた本当の理由――本心は。

 ――堂桜統護を救うのは自分でありたいから。

 その役割は、誰にも譲りたくない。
 ルシアにも託されたのだ。拳を交えた彼女の為にも、統護はこの手で助け出す。
 運命の相手? 魔導書も予知夢も関係ない。すでに自身の気持ちで決めたのだから――
 想いが、みみ架を加速させた。
 距離が縮まっていく。
 これならば、出口に到達する前には、ギリギリで捉えられる。
 ローラがニヤリと楽しげに笑んだ。
 壁に埋め込まれている火災報知器の施設用【DVIS】に、通過する際、乱暴に拳を叩きつけた。
 施設内の【間接魔術】――防火用汎用魔術が起動する。
 ジリリリリリリリリリリリリリリ!!
 地区音響が耳障りだ。

 天井のスプリンクラーヘッドから水が噴き出してきた。

 給水ポンプによる機械設備のスプリンクラー装置機構とは異なり、みみ架を消火対象としてロックオンしている。
 内壁の塗装に誘導灯、照明だけではなかった。
(ご丁寧に、こんな装置まで!)
 コンクリ壁で囲った単なるトンネルだけでは、手抜き過ぎて、施工業者に怪しまれるとはいえ、すぐに取り壊す予定の建築物に、金を掛け過ぎ、手を抜かなさ過ぎだ。
 水で足のグリップが甘くなる。
 衣服が濡れ、肌に張り付いてフォームを阻害した。
 速度が落ちる。
 魔術が、【魔導機術】さえ使えるのならば、すぐにでも朱芽を捕らえられるのに――ッ!!
「どうしたの、ミミ。もっと頑張らなきゃ」
 ローラからの憎らしげな声も、必死なみみ架には届いていない。
 妨害はスプリンクラーからの撒水だけではなかった。

 防火シャッターまで降りてきた。

 幸い、降下速度は遅い。間に合うかどうか微妙な位置とタイミングだ。
 急停止をかけて、降り切ったシャッターを発勁で破壊するか。
 挟み込み防止用の危害防止装置が取り付けれているので、仮に挟まれても死亡事故はない。けれども、降下が接触時点で止まるだけで、挟まれる事に変わりはない。
 どうする?
(って、立ち止まったら、間違いなくアウトでしょうに!!)
 シャッターの強度が不明だ。一発で破壊できる保証がない、のならば――
 みみ架は足からスライディングした。
 床面が水に濡れているので、走っている勢いを殺す事なく滑っていく。
 頭がシャッターラインを通過する寸前、簾状の鎧戸部分が、着地しようとした。
 ギリギリのタイミングに、みみ架の顔が引き攣る。
 間一髪で、みみ架の通過が先であった。
 立ち上がって再び走る為に、みみ架はスライディングを止めず、身体を捻ると横のローリングに移行した。数回転した後、ハンドスプリングで前へと跳ねた。体操の床競技の要領で、みみ架は側転、前転、最後にバク宙と決める。バク宙で体勢を整えて、着地時に前を向き、最低点のロスで全力疾走を再開してみせた。
 熱感知器と煙感知器が「異常な熱源なし」の誤報と判断して、防火装置が停止した。
 地区音響が止み、防火シャッターが上昇していく。
 みみ架のアクロバティックかつ大胆な挙動に、ローラは賞賛の口笛を送る。
「凄い凄い、ミミ! アンタやっぱり格別だわ! サイッコー♪」
「ぁあぁかぁめぇぇえええッ!!」
「そっちはミドルネーム。ローラよ!! 私はローラ・朱芽・アンダーソン!」
「どっちだって――っッ!!」
 追いついてみせる。絶対に、絶対に!
 だが、想いも虚しく、ローラは出口に到達し、みみ架に先んじて通過してしまった。
 扉は閉まらない。
「出血大サービスしてあげる! そこから指を咥えて見てなさい!!」

 ヴン! 扉は閉まらなかったが、出口を物理遮断【結界】壁が塞いだ。

 みみ架は走り込んだ勢いを利して、体当てにいった。
 一太郎に見舞った業――体技《鉄山轟》である。
 しかし渾身であった体当ては、呆気なく【結界】障壁に弾き返された。
 どれ程、みみ架の発勁が神秘的かつ強力であっても物理現象にカテゴリされる攻撃だ。よって魔術現象である【結界】は破壊できない。
 みみ架が【結界】を破壊するのには、武術に魔術を組み込んだ【魔導武術】が必要だ。発勁だけではなく、勁と氣を魔力によって放出する術が必要なのである。
 あるいは……
「こんな時に、魔術を使えないだなんて」
 泣きそうな声音。眼前の【結界】は、相当に強力な代物に違いない。
 間違いなく打撃しか選択肢のない【魔導武術】では、短時間での破壊はできないだろう。
 けれども《ワイズワードの導き手》としての、封印している例のチカラなら。
 夢が悪夢として顕現する、あの禁断だったら――
 統護の為ならば、己の夢を。
「使えたらッ。今だけでも魔術を使えたら、夢を失っても構わないのに!」
 みみ架は【結界】を殴りつける。
 出口の向こうには、ローラがニヤつきながら、みみ架の悪足掻きを観察していた。
 統護は悲痛な表情で、みみ架を見ていた。
 泣いていた。みみ架は大量の涙を溢れされている。
 左右の掌底を交互に打ち込むが、【結界】は小揺るぎもしない。
 両手首と両肘が悲鳴を上げているが、構わない。統護を救えるのならば、壊れてもいい。
 早く、早くしなければ。統護が連れ去れてしまう。
 米軍【暗部】のVTOL機が、ステルス魔術を解除して、降下してきた。
 作戦の進行状況に応じて、使用可能な航路の調整をニホン政府を介して行っていたが、そのゴーサインが下りたのだ。堂桜財閥がこの取引を知った時には、作戦が終わっている。
 みみ架はしゃにむに【結界】を殴り続けた。泣き叫びたいのを堪えながら。

 その手を、背後から誰かが掴んで止めた。

 振り返ると、そこには……
「伊武川先生。どうして」
 腫れ上がっているみみ架の両手首を見て、夏子は冷ややかに告げた。
「ここから先は、お前ではなく、この私の役割だ」
「え。でも」
「どけろ。邪魔だ」
 夏子は乱暴にみみ架を横に除けると――

 そのまま【結界】の障壁をすり抜けて、競技場へと踏み入った。

 みみ架は呆気にとられる。
 開放状態で固定されていた扉のセンサが、通過者を感知してロックを解除する。
 扉が閉ざされた。
 ワケガワカラナイ。
 どうして物理遮断用の障壁であるはずの【結界】を、伊武川夏子はパスできたのか。
 このまま事態から取り残されるわけにはいかない。
 みみ架は再び右拳を振りかぶった。

「……落ち着きなさい、委員長

 聞き覚えのある凛としたその声音に、再度、振り返る。
 夏子に続き、《スカーレット・シスターズ》のシスター二号と、風間二三子がいた。
 この組み合わせに、みみ架の頭から余計な熱が冷める。
「貴女は……」
「統護の救出は伊武川先生に任せるしかないわ。この状況で私達がやるべき事は、統護の救出に失敗した場合に備える事よ。具体的には敵の情報を集めて、交渉において先手を取る」
 二三子が苦笑した。
「強過ぎっちゅうのも考えもんやと、しみじみ思ったで、累丘はん。アンタ、今の今まで実力で打開できない事態を経験しとらんやろ。せやから逆境に弱過ぎやで」
 みみ架は素直に認めた。
「ええ。わたしは弱いわ。ひょっとしたら、誰よりも弱いかも。情けない。風間さん、というか、貴女と弟さんの本当の目的ってコレだったのね」
「せやで。こっちが本命の任務や。一太郎には闘技場の外を偵察させておる。情報遮断用超大規模【結界】――《アブソリュート・ワールド》は厄介やからな。遠隔通信が一切できん。けれど、外で待機しているミス・ドラゴンっちゅう工作員に口頭でなら事態を伝えられる。ミス・ドラゴンも今回の極秘任務の仲間や」
 そのミス・ドラゴンが学園外に脱出して、外部とのコンタクトを取るのだ。
「一太郎が戻ってきたら確認するけど、確認するまでもなく、このテロそのものが胡散臭いにも程があるで。間違いなく、戦っている生徒達とセンセ方は騙されておる」
「でしょうね」
 陽動目的どころか、とてつもなく大規模の茶番であると、みみ架も察していた。
 みみ架はシスター二号に訊く。
「それで《スカーレット・シスターズ》は解散でいいのかしら?」
「まぁねぇ。一号と一緒に、対抗戦であの莫迦をとっちめてやるつもりだったけど、緊急事態にあって私のワガママで方々に迷惑かけ続ける訳にもいかないし」
「ホンマや。めっさ色々な関係者が苦労したんやで」
「ええ、ありがとう。極秘護衛も含めて皆には感謝しています。それからね委員長。一号との《スカーレット・シスターズ》は解散でも、あの子との義姉妹は解散じゃないわ。だって主従関係以上に、あの子と私は【光の里】での家族なんだから」
 シスター二号が紅の仮面を外した。
 勝ち気な美貌が現れる。
 造形のしての美ならば、おそらく自分やルシアが上だ。
 気品や儚さといった清楚さと雰囲気は、淡雪が上である。
 可愛さと愛嬌は優季に軍配が上がるだろう。
 オルタナティヴと締里のようなスタイリッシュさやクールさもない。
 けれど、他の誰よりも生命感に満ち溢れて輝いている、炎のような美貌である。
 統護は彼女を「最高の女」と言っていた。
 みみ架は彼女をこう感じた。太陽のような女だと。
 統護との約束以降、衛星通信では何度も会話して、映像で顔を見ていたのに、こうして直接目にすると、こんなにも眩しく見える、まさに「太陽の女」である。
 クラスメートとしての彼女と同一人物でありながら、別人としか思えない圧倒的なカリスマを身に纏っている。道理で、世界中が彼女をプリセンスと熱狂的に支持するわけだ――
「……そっか。家族で義妹だからこそ、彼女を貴女の護衛から解放したのね」
「おそらくあの子の友達がこの場にいるはずだから。だから私はあの子の足枷にはなりたくなかったの。今の私はあの子の邪魔だから」
「せやから、バックアップ要員だったウチ等がアクションを起こしたって寸法や。同時にエリスエリスが指揮をとる特務隊も会場外で動き出している筈やで」
「委員長いえ、みみ架。衛星通信では何度も話しているけど、CG映像じゃなく、直接会っての再会は久しぶりね」
 ごく自然に差し出されてた右手を、みみ架は無意識に握った。
 二人は微笑みを交わす。

「そうね。改めて久しぶり。そしてある意味、初めましてとも言えるかしらね《シンデレラ・プリンセス》――

 ……アリーシア・ファン・姫皇路」

 

 

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