アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第4部(第46話)

第四章  真の始まり 15 ―新型―

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         15

 正式名称『ダイレクト・ライド・インジケート・ヴィジュアル・エンゲージ・システム』という理論。
 魔術――【魔導機術】における基礎である【DVIS】と【AMP】システムを統合・進化させたソレは、頭文字を繋げて【DRIVES】と略称されている。
 堂桜那々呼がルシアを強化する目的で、堂桜那々覇が『スーパーユーザー』認証を必要とせずに更に強力な魔術師を生み出すのを目的として、【DRIVES】は開発された。
 自身が【DVIS】そのものであるルシア用の強化理論である為、この【DRIVES】は使用者を仮想【DVIS】化して、【AMP】との直列結合が可能となる。
 術者と【AMP】を並列的に軌道衛星とシステムリンクさせる従来の【DVIS】理論は、その後の魔術の発展に対して、多くのロスを生じる結果となっていた。
 言い換えれば、『スーパーユーザー』や『マスターユーザー』といった特例処置による拡張魔術の存在は、システム側の欠陥の発露とも捉えられる。
 その欠陥の是正理論としても【DRIVES】には期待が掛けられていた。
 しかし、元々がルシアという規格外に適用する――という構想がスタート地点であったが為に、仮想【DVIS】化される使用者の負担までは軽減し切れなかったのだ。
 ルシアを別にして耐えられたのは、僅かに二名。

 堂桜統護と同じく超人化した肉体を誇る少女――オルタナティヴ。
 完璧な適性を誇る【ナノマシン・ブーステッド】完全体――笠縞陽流。

 共に奇跡的な偶発が生んだイレギュラーな存在だ。
 そして、使用負担に対する懸念は《ハルル・シリーズ》も例外ではなかった。
 ケイネスは「セカンドACT」に見切りをつける。改良理論への着手を決意した。
 オルタナティヴの使用データを元に、娘の那々呼も【DRIVES】の発展型に着手しているのは間違いない。常に新理論・新技術を。それが科学者の性というモノだ。
 ルシアの新【DRIVES】よりも先んじたので、起動【ワード】をこう設定した。
 サードACT、と。

 三機の《ネオ・リヴェリオン》が、新【DRIVES】とリンクして変形していく。

 世間が旧《リヴェリオン》と誤認している、セミオートで操縦可能な下位互換機ではない、結果として陽流用ワンオフ機体となった真《リヴェリオン》と同じ変形機構である。
 背中と手足の装甲が、二対から四対のパーツに分解し、伸長・拡張した。
 円筒形パーツ――頭部が、左右に展開された背面装甲の中から回り込んできて、鎧武者を思わせる顔となった。
 装甲が展開して四肢が伸びたのとは対照的に、胴体は狭まる。
 逆に広がった肩関節は、斜め上方へとパーツをスライドしてロックされた。
 そのスタイリッシュかつ先鋭的なデザインに、多くの者が呟きを漏らす。

「なんだよアレ……。まるでロボットじゃないか」

 完全に人型となった《ネオ・リヴェリオン》。
 四肢が伸びた為に、全高は五メートルにも達している。スーツ=着る、というコンセプトからは逸脱して、外観からは中に入って操縦している――というイメージが強くなった。とはいえ、中の操縦者は手足を伸ばして《ネオ・リヴェリオン》を着ているのだが。むしろスマートになった分、操縦者はより《ネオ・リヴェリオン》と密着している。
 新【DRIVES】起動に伴い、《ハルル・シリーズ》が着ているパイロットスーツが専用【DVIS】かつ【AMP】の役割を果たしていた。生地の表面に刻まれている電子回路図めいた紋様に、銀色の粒子が高速循環して、淡く発光している。
 パイロット達の声が綺麗に重なる。

「「「 【基本形態】――《ハイパーリンケージ》発動。ナーヴアクセス開始 」」」

 彼女達のオリジナルである陽流と同じ【基本形態】だ。
「「「 相互アクセス成功、リンク安定。動力回路のドライヴモードをチェンジ 」」」
 音はない。正確には、ほぼ無音といえる駆動音だ。
 機体に搭載されている魔術エンジンが、燃料電池(水素炭素電池)と通常モードのハイブリッド運転から、新【DRIVES】モードに切り替わる。
 魔術戦闘に対抗可能な新世代の物理科学兵器というコンセプトであった【パワードスーツ】が、この《リヴェリオン》シリーズの発展を礎とし、コンセプトを転換、最強の人型魔導兵器として定着していく。そして十年を要さない僅かな期間で――、魔導兵器としての【パワードスーツ】が、魔術戦闘と科学戦闘という垣根を越えた戦争において、有視界内戦闘、無視界戦闘、そして超視界戦闘の主力および、戦闘機をも凌駕して制空権争いの覇者へと成長していく事を、この時、極一部の者を除きまだ誰も想像すらしていなかった。
 サードACTによって新【DRIVES】を起動した三名の《ハルル・シリーズ》は、意識内にある電脳世界を一変させていた。
 彼女達三名の電脳世界に展開されている、とある【アプリケーション・ウィンドウ】内。

 表示は[ 【NEO=DRIVES】正常ネットワーク中 ]となっている。

 NEOとは――
『ニューロリンク・イーサネット・オプション』の頭文字を繋げた略語である。
 すなわち選択肢(オプション)機能として、【DRIVES】の過負荷を《ハルル・シリーズ》三名がイーサネット化して同調・同期する事によって軽減しているのだ。
 新システム【NEO=DRIVES】と《ハイパーリンケージ》によって実現できる電脳世界内を繋ぐイーサネット化こそ《ハルル・シリーズ》最大の特徴にして利点。三名は一つの【ベース・ウィンドウ】を共用して魔術オペレーション可能なのである。
「「「 負荷、許容範囲内で安定。システム、オールグリーン 」」」
 三機の巨人が超次元において繋がり一体化する。
 開発者であるケイネスは、このイーサネット・システムをこう名付けた。

 ――《ハルル・ネットワーク》と。

 ケイネスは声高らかにマイクに向かって宣言した。
「それじゃあゲームスタートだ。若き戦闘系魔術師ソーサラーよ。諸君等の健闘を祈る」

 

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 これは一体どうやっていやがるんだ……ッ!!
 突如として状況が一変、いや激変した。
 ローラに拘束された統護は、懸命に事態を理解しようと努力する。
 大前提として朱芽――ローラが敵側で自分は謀れていた。そして現在、拘束されている。
 同時に、上空に隠れていた三機の【パワードスーツ】が乱入してきた。
 ローラとグルで、かつ《ハルル・シリーズ》という笠縞陽流をシリーズ化した少女達がパイロットをしている。
 現在、迎撃陣営を整えた各校の生徒達およびガードマンと交戦中だ。
 攻防は一進一退といったところか。
 《ハルル・シリーズ》を自慢げに解説した実行犯の一人――神家啓子は、このテロをゲームに例えた。まさか彼女が敵だったとは。しかも笠縞陽流と例の【パワードスーツ】に関係しているので、Dr.ケイネスこと堂桜那々覇と近い位置にいる者だろう。
 アリーナ席のブースにいるVIP達を守る為の魔術戦闘を、生徒達は強いられている。
 陽動だ。
 この【パワードスーツ】三機も《堂桜統護捕獲プロジェクト》の隠れ蓑なのだ。
 自分を連れ去る為の。
 MMフェスタから本家に戻った時、本家執事長の篠塚文昭に云われた警句を思い出す。やはり〔魔法〕の隠蔽は、堂桜財閥の影響力と情報操作力を以てしても完璧とはいかなかった。
 ローラが戦闘風景を一望して感嘆した。
「流石は次世代の【ソーサラー】達ね。即席の愚連隊とはいえ強い強い。シミュレータによる訓練と、嘉手納基地内での秘密演習の難易度とは全然、別レヴェルじゃない。初実戦でこれだけやれる《ハルル・シリーズ》も大したものだけど」
「ローラ、お前」
 弛緩剤が効いてきたのか、上手く喋れない。
 危機的状況だが、危機感さえ把握できなかった。それ程、意表を突かれていた。
「あの機体――《リヴェリオン》だけど、私もパパに頼んで操縦訓練を受けているのよ。でも本当にじゃじゃ馬でね。戦車や戦闘機、戦闘ヘリだって操縦できる私でも大苦戦中。ま、いずれは乗りこなしてみせるけどね」
 ローラは重力制御による軽量化魔術を統護に施した。
 もっともポピュラーな汎用魔術の一つである。介護現場や緊急搬送時に重用される。
 反面、汎用魔術の起動により、ローラは戦闘用のオリジナル魔術が使えなくなった。デリンジャーを用意していたのは、この為でもあった。
 四肢の自由を失った統護を抱え、ローラは戦闘に巻き込まれないように疾走する。予行練習していたので、特に問題なく走れた。今のところ全てが想定通りに進んでいる。
 戦況は乱戦・混戦具合だ。
 しかしその実、《ネオ・リヴェリオン》三機は精緻な連携を保ちながら、なおかつローラの逃走ルートを確保できるように戦っていた。シミュレート通り、ローラを援護・補佐する。
 応戦している生徒達およびガードマン達も、魔導教師陣の指揮系統で、組織だった集団戦闘を辛うじて維持していた。だが、対【パワードスーツ】戦闘そのものが未知数で定石が未確立である為、後手を踏んでしまっている。
 攻める側が【パワードスーツ】で守る側が魔術師隊と、形勢が固まりつつあった。
 ローラは隠し扉になっている秘密通路の出入口に着いた。
 この秘密通路から直通で隣接している競技場へ行ける。競技場には脱出用VTOL機が待機している予定だ。
 これだけのギミックを満載した建築物は、通常ならば建築法と消防法、魔術法といった法律によって建造を許されない。建造したとしても、完成時に課せられる消防完成検査をパスできない。だが『対抗戦が終われば解体する』という条件だったので、検査を杜撰化させたのだ。もちろん裏側では袖の下や、ゼネコン関係の利権も複雑に絡んでいた。
 足を止めたローラは、楽しげに笑みを浮かべる。

「……ああ、やっぱりマークされていたわね」

 彼女の前には、淡雪と優季、そしてみみ架が立ち塞がっていた。
 それもローラの想定内である。
 統護は何も出来ない自分が歯痒い。自身がターゲットにされる事は、常日頃から警戒していたつもりだったが、実際に強襲されるとこんなにも脆かったとは。
「お兄様を返してもらいます」
「まさか朱芽が敵だったとはね。だけど統護は渡さないよ!」
 みみ架は無言でローラを睥睨していた。
 ローラは計画通りの台詞を言った。
「あらら。ミミってば一人なんだ? 一緒に来ていた場合もパターンは用意してあるけど、あの子――美濃輪里央がいないんだったら、この先は楽かな? 統護だけじゃなくて、その子の頭にも風穴開けない為にも、首筋にちょちょいっとね♪ ミミなら楽勝でしょ?」
 みみ架は頷き、スルリと淡雪と優季の横に移動し、二人の首筋に手刀を打ち込む。
 まさかの味方からの攻撃に、淡雪と優季は呆気なく気を失った。
 その光景に、統護は奥歯を噛み締める。みみ架が悪いのではない。この状況ならば自分も同じ手を選択する。自分だけではなく友人まで人質に取られた彼女は拒否できないのだ。
「お見事、ミミ。やっぱ流石だわ」
「調子に乗らないで朱芽。脅しに屈したのではなく、利害が一致したからに過ぎないわ」
 恐い声音で、みみ架が声を張り上げた。

「ロイド・クロフォード! 悪いけど貴方の出番よ!!」

 統護だけではなく、ローラも目を丸くする。
 漆黒の燕尾服に身を包んだ青年――ロイドが、里央を脇に抱えて参上した。
 本来は金髪である彼の頭髪が、漆黒に染まっている。
 彼の【基本形態】――《ミッドナイト・ダンシング》が、起動済みである証だ。
 使用エレメントは【火】だ。魔術強化した頭髪を自在に操り、導火線とするのが、ロイドの魔術師としての戦闘スタイルである。体術や武器の扱い、そして暗殺術も超一流だ。
 ロイドは、今でこそ比良栄優季の執事を本業としているが、ほんの少し前まで、裏社会の違法【ソーサラー】として名を馳せていた凄腕である。今でもその戦闘力に陰りはない。
 みみ架がロイドに指示した。
「今だけ執事から用心棒に戻ってもらうわ。二人のお嬢様と里央を護って」
「承知した、武神の孫娘。お前に云われなくとも、ボディガードも執事の仕事だしな」
「後はわたしがやるから、任せて」
「私も堂桜統護の奪回には興味がない。好きにしろ。だが、奪回できなければ優季お嬢様が悲しむから、やるなら失敗はするなよ」
 すまし顔のロイドに、みみ架は苦笑した。
「わたしが言うのもアレだけど、貴方も大概素直じゃないわね」
 ローラが悔しげに顔を歪めた。
「なるほど。利害は一致って、確かにね。これは一本取られたかな」
「逃走に邪魔だから排除というよりも、淡雪と優季の二人は堂桜側の超VIPだものね。下手に首を突っ込まれて怪我でもされたら後の裏取引に響く。絶好の機会なのに、即座に堂桜くんを殺さないって事は、どうせ堂桜財閥との取引材料にでもする予定なのでしょう?」
 みみ架の推理と指摘に、ローラは肩を竦める。
「ザッツライト。お気遣いとご協力、感謝するわ、ミミ」
「礼は不要よ。これからわたしが堂桜くんを取り戻すのだから。力ずくでね」
 みみ架は歩幅を広げる。重心が落ち着く。
 眼光が鋭い。一刀足で踏み込んで、統護を取り戻すつもりだ。
「例の運足――確か《縮致》だっけ? 一度見たし、なによりミミだって十全じゃない。それから統護に魔術を破壊されている。それとも予備の専用【DVIS】があるのかな?」
 みみ架の足を、ローラは観察する。膝のバネが微かにだが頼りない。
 統護との試合で負ったダメージが全快しているなど、あり得ないのだから。

 キュドドドドドドドドッ!!

 魔術弾がローラとみみ架の間に降り注いだ。
 エレメントの属性は【風】で、流れ弾ではなく、《ネオ・リヴェリオン》からの援護射撃である。砂地だったので盛大に砂埃が舞った。これも計画内である。
 ローラは砂の煙幕に紛れて、隠し扉を遠隔操作でオープンして、大胆に飛び込む。
 扉は通過者をセンサで認識して自動で閉まる――が、開いたままだ。
 統護は思わず頬を緩めた。

 ロイドの黒髪が伸びて、扉が閉まるのを防いでいる。

 躊躇せずに、ローラは扉の閉鎖を諦めて、全力で駆けた。
 みみ架も扉を通過して追ってくる。こちらも全速力のダッシュである。
 軽く口笛を吹き、ローラが楽しげに囁いた。
「これはちょっと想定外かな? でも、せっかくだしこの鬼コッゴを楽しもうかな♪」

 

 

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