アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第5部(第23話)

第四章  託す希望 2 ―真犯人―

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         2

 

 二振りのコンバットナイフ。
 そして黒いジャケット。
 敵【エレメントマスター】本人が自分で用意したのではないだろう。つまり、第三者によるこの二つの持ち込みが可能な程度には、【エルメ・サイア】もこの工場内に独自の極秘ルートを確保している――と考えるべきである。
 楽観するには厳しい状況だ。
 最悪で、警備関係者に【エルメ・サイア】の内通者がいる。
 とはいえ、【エルメ・サイア】ならば驚きには値しない。
 クリーンスタッフと警備スタッフの点検巡回を完璧に把握していなければ、女子トイレ内に異物を隠せない。仮に持ち込んで隠しても、この戦闘が始まる前に発見されてしまう。
 こちら側のミッション計画よりも【エルメ・サイア】側の妨害プランが上回っている――と締里は判断した。問題は、どの段階でこちらの計画が【エルメ・サイア】に漏れたのかだ。
 その反面、確定した事が一つある。
 魔術戦闘が不可能なシチュエーションで、わざわざ虎の子といえる【エレメントマスター】が出向くという事は、他に有用な戦闘員がいないのだ。他にも戦闘技能を有する工作員がいるとしても、単身で締里の相手ができるレヴェルではない。
 要約すると。
(直接戦闘による妨害行為は、この男を倒せば――終わる)
 戦闘外での妨害は残っているだろうが、基本的にこちら側はポアンと同調しているのだ。
 眼前の敵さえ無力化すれば、ミッション内の動きで【エルメ・サイア】からの妨害工作を凌げるはずだ。ここは外部からの武力介入(テロ)が警戒されている区域だ。よって第二戦力の投入はない状況である。あるのならば、ここで出し惜しまないだろう。この戦闘さえ制すれば、アドヴァンテージを取り戻せる。
 ひゅゥオン――

 

 相手は矢継ぎ早に、両手のナイフを突き出してきた。

 

 拳のラッシュのような怒濤の連続突きだ。
 ハンドスピードは中の上といったところか。締里は最小限のボディワークで躱していく。
 この間合いならば、スウェーバックが中心になる。無駄のない正確な動きだ。
 相手も締里の防御技術に驚かない。
 結構な事だ。この程度のディフェンスに驚かれては、戦う相手として役者不足である。
 狭いトイレ内なので、身体一つ分しかサイドに動けない。前後の動きと同時に、床のワックスでステップワークに制限がかけられているので、上半身の動きで避ける。
 相手は目まぐるしく軌道とタイミングを変化させているが、ナイフで刺突できる手首の角度は限定される。ゆえに拳の連打を避けるのに比べると、ナイフでの突きは避けやすい。
 しかも手の引きと返しが、無手と比較すると格段に遅くなってしまう。
 それに連打であって、コンビネーションではない。
 こんな低レヴェルな攻撃が、締里に当たるはずがないのだ。
 足下が滑る不利も、この程度ならば締里にはハンデたり得ない。

 

 いや。この場でワックスを床に撒くという策は、実は大して効果的ではないのだ。

 

 用意した策がこれとは、相手は頭が良くないのか。それを裏付けるように。
(ナイフを両手で突いてくる……か)
 相手はナイフ使いを名乗っても恥ずかしくない腕前であるが、締里は呆れた。
 違う。間違っている。ナイフの使い方は――根本的にそうじゃない。
 素人には効果的だ。刃を恐れて、判断と動きが鈍る。刃による威嚇効果は絶大だ。
 しかし刃物を恐れるのは素人だけである。
 当たらなければ、刃があろうと刃がなかろうと、所詮は同じ。
 銃口や刃物に怯えるという事は、すなわち銃や刃物に精通していないと同義だ。武器に精通している者ならば『銃弾が簡単に当たらない』『刃物で簡単に斬れない』という現実を、技術を習得する過程で嫌というほど体験しているのだから。武器の脅威を学べば学ぶ程に、武器に対して冷静に対処できる様になるし、逆に恐怖が先に立つのならば――戦闘の才能がない。
 相手が大胆に踏み込んできた。
 床のワックスをものともしていない。
 対して、靴底が滑る締里は、反応はできてもバックステップを充分に刻めなかった。
 締里もあえて前に出る。ステップインではなく、滑る床を利して滑り込んだ。
 ひゅ! ヘッドスリップで右手のナイフを躱す。
 肩と目線から判断すると、次は斜め下側から左手のナイフを――

 

 相手は右ナイフを連撃(ダブル)で突いてきた。

 

 目と肩と肘の連動パターンを変えてきたか。予測を外されたが、締里は反射的にヘッドスリップを繋げて、二連続の突きを軽く躱してみせた。相手の右ナイフを、左サイドへ。間一髪ではなく、軽く、である。
 格闘家のように『見切り』や『予測』そして『勘』には依存しない。生物的反射をメイン感覚として運用し、機械的に最適な防御体勢を取る為の訓練を徹底している。
 締里の近接格闘技能は、みみ架の様な武芸者とは一線を画する代物だ。
 予測を外され、意表を突かれたとはいえ、二発目のナイフ突きの速度は、一発目よりも落ちるのだ。予測の裏をかけても速度を犠牲にしてしまっては、締里相手には愚策に過ぎた。

 

 二発目の引き戻しが――不自然に遅すぎる。

 

 締里の察知と同時だった。ごきりと鈍い音。相手は突きを伸ばしきったまま、右手首の関節を外して、刃の向きを旋回させる。つまり握りを変えずに逆手持ちと同じ向きに刃の位置が変わったのだ。
 それだけではなく、バネ仕掛けで刃身がスライドして伸びた。
 引き手が加速する。あえて突きの速度を落として、最初から引きのみを意識していたのだ。
 ナイフが元の位置に戻った。一拍遅れて、締里の頬に紅い筋が描かれた。
 薄皮一枚、斬られた。
 相手は手首の関節を嵌め直して、関節の具合を確認する。
 つつ、と締里の頬の傷から血が滴った。
「どうよ? 俺の得意技だ。最初からこれを狙っていたんだよ、これをな」
「つまらない隠し芸」
「まともに斬れなかったのはお前が初めてだぜ。でもな、ちょっと切るだけで充分なんだな」
「……」
「そのスカした面はやせ我慢か? そろそろ全身が痺れてきたろ?」
 即効性の痺れ薬か。別に驚くに値しない。刃に毒を塗るのは常套手段だ。
 絶対的な優位を確信しているのか、相手は締里の様子を楽しげに観察している。
 締里は四肢を駆け巡っている薬物の効果を確認し――
 ゴォキィ!!

 

 伸びのある強烈なワンツー・ストレートが、鮮やかに炸裂した。

 

 ヒットさせたのは締里だ。
 両足のグリップを奪われているので、体重伝達による威力は不十分であるが、それでもメキシカン・スタイルの打ち方で目一杯フォロースルーを利かせた。
 与えたダメージは軽微だ。それも織り込み済みで、目的はダメージではない。
 大きく仰け反らした相手の右手首に、左手を伸ばす。
 掴んだ。瞬時に手首の関節を極めて外す。相手が自ら関節を嵌め直した直後なので、簡単に脱臼させる事ができた。しかし手首関節の破壊が目的ではない。
 目的はナイフだ。握力を低下させて、相手の右手からコンバットナイフを奪った。
 相手は後ろに下がって間合いをとる。
「て、テメエ。痺れ薬は!?」
「幸運だったわ。塗っている薬は不良品だったみたいね」
 超一流のエージェントである締里は、多くの毒薬に対しての耐性を得ているのだ。
 むろん耐性を得る訓練は寿命を削る行為だ。耐性を獲得できなかった同期生は蓄積した毒素によって死亡していた。おそらく締里とて五十歳まで生きられない。
 締里とて全ての毒薬に対して耐性を得ているのではないが、相手が使った痺れ薬は耐性を得ている薬物のラインナップに入っていた様だ。
 これでナイフを手に入れた。
 エージェント育成教室に在籍し、同期と共に候補生として訓練を受けていた時代、締里は師ともいえる教官に、こう教えられた。

 

 敵が武器を出してきたのなら、その武器を入手できるチャンスと思え。

 

 そして武器を失った程度で戦う手段を失うのならば、戦闘の才能がない――と。
 締里にとっての戦闘とは、強さを競い合う格闘ではないのだ。いかなる手段をもってしても、常に最適なルートで制圧と無力化という結果を追求するという事である。
「ふざけやがってぇ。なんて女だ」
「時間が惜しい。早く続きをしましょう」
「ぶっ殺してやる!」
 敵は左手一本でナイフを構え直す。
 締里は入手したナイフを右手に持ち換えて、左半身のサウスポー・スタイルにスイッチした。
 右手を前に出し、相手と鏡合わせの体勢になった。

 

 ナイフの使い方――教えてあげる。

 

 キン、キン、キン、キン、キィン――ッ!
 相手が繰り出したナイフを、締里は全てナイフで弾き、いなし、受け流していく。
 完全に防御するだけではない。相手の左腕の挙動と比較して、締里の右腕の動きは最小限で無駄がないのだ。肘から先の動きすら少なく、手首の返しのみでナイフを操っている。
 これがプロのナイフ捌きだ。
 攻撃用としてよりも、主に刃物に対しての防御用として機能させるのだ。
 そして相手の隙を誘導して、巧みに刃先で牽制する。
 ナイフ対ナイフで、締里は相手をコントロール下に置いた。
 これで両足のグリップが充分ならば、左拳をカウンターで叩き込んで一発KOできる。
 じり、じり、じり、と締里が前に出て、相手が後退させられていく。
 相手はナイフによる攻撃を諦め――右ミドルキックを放つ。
 締里にとっては想定内だ。
 仮に想定外でも、予備動作(モーション)が稚拙であるので、反射で対応可能であった。
 左肘と左膝による挟み込みで、相手の右臑をカウンターする。
 足下が滑る故に、骨は砕けなかったが、それでも効果は充分であった。ただし踏ん張りが利かない状況だ。締里の小柄な身体は蹴りの威力で、真横に飛ばされ――個室のドアに叩きつけられる格好となった。しかし締里に動揺はない。
(まあ、そうくるでしょうね)
 相手は床の状態とこの地形を生かした――つもりなのだろう。
 締里は足下が滑る為に、蹴り技を封じられている。軸足と体軸はどうにか維持できても、床が滑るので、蹴り足が使えずに、技を始動できないのだ。
 脳裏に、みみ架の姿がフラッシュした。
 みみ架ならば、足下がスケートリンクであっても、自在に移動し、自在に蹴れるのだろう。
(私には出来ない芸当ね。いえ、必要ないの芸だわ)
 臑の骨にダメージを受けた相手は、その激痛によってたたらを踏んだ。
 状況は整った。よって仕上げにいく。
 締里はナイフを投擲した。ナイフは相手には当たらずに、個室のドアに突き刺さった。
 再び、無手とナイフになる。
 これ幸い、とばかりに敵は臑の激痛を堪えて、ナイフを繰り出そうと――

 

 ドン! 背中にある個室のドアを、締里は右足でキックした。

 

(単純にこれで事足りる)
 神秘的な足捌きなど不要だ。床を蹴れないのならば、横にある壁を蹴れば、それで済む。
 封じたつもりだった締里の蹴り技に、敵は反応できない。
 わざとナイフの投擲を外し、相手の心に安堵と隙を作り出して、射程内に誘き寄せている。
 確かに床はよく滑る――けれど、この程度では体軸がブレる事はない。
 右足の推進力で、両腕の振りと共に上半身を逆に捻り、腰の回転力へと転化していく。
 軸足である左足の踵を浮かして、床の滑りを利用した。
 締里の身体が旋回する。畳んでいた右膝を伸ばし、右足を鞭のようにしならせた。
 ぱぁぁんンっ!! 空手やキックボクシングのキックというよりも、ムエタイの蹴り方に近いハイキックが綺麗に相手の側頭部を捉えた。
 ぐにゃり、と相手の身体が力感を失い、フラフラになる。たこ踊り状態だ。
 締里は袖に仕込んでいる極細のワイヤを伸ばし、相手の首に巻き付ける。一気に勁動脈を締め上げて、失神させた。
 問題なく敵の無力化には成功した――が、締里の顔が焦りで歪む。

 

 おかしい。弱過ぎる。無策に過ぎる。

 

 自分と統護を分断して、この場にナイフを隠し込んだ手口に比べると、あまりに弱い。
 お粗末で、策がなさ過ぎだ。これでは、まるで……

 

 ……捨て駒、だ。

 

 締里はそう判断した。失神させた男は【エレメントマスター】ではないだろう。
 黒ジャケットの男の手足を拘束して、個室の中に入れる。外から、ちょっとしたテクニックを用いてドアを施錠した。最悪でも夜中の最終点検で発見されるはずだ。不審者として警察送りにされたら、王家側に手を回してもらえばいい。
「早く統護と合流しなければ」
 自分に言い聞かせるように呟いた。
 誘き出されたのは承知していたが、まんまと時間を稼がれてしまった。
 他にいる【エレメントマスター】は、統護を狙っているはずだ。
 まともに戦えば、統護に勝てる相手は、現状で締里には思い付かない。例外は黒鳳凰みみ架くらいで、間違いなく統護は戦力的には最強だろう。しかし、まともに戦って勝てないのならば、まともに戦わなければいいというだけの事だ。締里ならば統護を無力化できる戦法は、何通りも思い付けるし、実行も可能だ。
 そして、敵もそうではないという保証はないのだ。

 

 ぐぅぁわあぁああああぁぁああああんン。

 

 女子トイレ内ではなく、工場の建物全体が大きく揺れ始めた。
 地震だ。
 縦揺れではなく、揺さぶるような横揺れである。
 そして、この揺れは自然現象ではなく――魔術現象だと、締里は判断した。
 すなわちブリステリ邸で締里達を襲った【地】の魔術である。
 攻撃はこない。
 トイレの入口付近には、人の気配はないままだ。
 此処は二階だ。
 トイレ内の奥に窓がある。ただし窓枠は小さい。換気用であり、侵入や脱出ができない大きさに設計されていた。けれども外の様子は確認できる。
 急いで窓から外を見回すと――

 

 事務員の制服を着ている女性が足早に離れていく。

 

 魔術が停止した。
 目的は締里を魔術で攻撃する為ではなく、防犯・警備システムに報せてガードマンを呼び出す事だった。
 相手を追いたいが、今はこの場を立ち去り、身を隠して安全を確保するのが先である。
 鍛え抜かれた締里の視力は、チラリとこちらを振り返った女の横顔を、鮮明に捉えていた。
 挑発的な笑みだった。あるいは快心の笑顔か。
 特殊メイクに近い化粧技術で、女は一見して別人になっている。
 けれど、締里の目は誤魔化せない。
 頭部の骨格を視認・識別できた。
 締里は人間の顔を、表層ではなく骨格の形状で判別できるように訓練されているのだ。

 

 裏切られた――のではなく、最初から敵だった。

 

(なるほど。顔の怪我は嘘だったのね)
 まんまと一杯食わされた、と締里は感心する。罠の為にあそこまで演出するとは。
 黒ジャケットと彼女はグルだった。
 それならば、あの時の来客人数はやはり八名で合っているし、専用【DVIS】の運搬も黒ジャケットの男が担当すればクリアできる。締里がいくら身体検査と家宅捜査を徹底したところで、第三者が【DVIS】の持ち込みと持ち去りに協力すれば、どうにもならない。
 確かに彼女が真犯人ならば、色々と辻褄が合うのだ。しかし、最初から彼女が犯人やスパイかもしれないと、そのリスクを充分に考慮して用心していた。締里は彼女が敵として行動して、自分達のミッションに紛れ込むのには、色々と無理があると判断していたのだ。どうやって運や偶然に頼らずに状況を誘導できたのか。そこが、どうしても腑に落ちない。
 彼女を倒して捕らえたら、是非ともその方法を確認しよう。
(今後の参考にさせて貰うわ)

 

 ――真犯人の――ラナティア・ブリステリさん。

 

 心中で語りかけると、締里は女子トイレから逃げた。
 ピンチではない。こういったケースも計画に織り込まれている。
 潜入工作のプロである自分は大丈夫だが、気がかりなのは統護と、ラナティアの動きだ。
 ラナティアが敵だったという事は、ラナティアは統護のフォローに回っていない。統護は単身での行動を余儀なくされている。果たして、一人で検査室に到達できるのだろうか。
 痛恨の作戦ミスである。
 ラグナスの裏切りを考慮してのラナティア起用であったが、ラナティアが真犯人ならば、統護のフォローはラグナスに任せるべきだった。
(無事でいて、統護)
 今の締里には、祈るだけ、そして信じるだけであった。

 

 

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