アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第5部(第13話)

第二章  見えない敵 6 ―オーフレイムVS一太郎②―

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         6

 空間を最大限に利用する。
 二三子と一太郎は、オーフレイムのSMAに対しての戦法を端的にそう結論付けた。
 オーフレイムは過去の魔術戦闘データにおいて、ただの一度さえ迎撃以外では、攻撃魔法を使用していない。彼の攻撃手段は、ボクシングをベースとしたスタンディングから、レスリングをベースとしたタックルへと繋ぐ近接戦闘ベースだ。そこから柔術も加えてのテイクダウンを奪う。
 そこから先――グラウンド入ると、オーフレイムの独壇場となる。
 パウンドによるKO。
 サブミッションによる関節破壊。
 絞め技による失神。
 この三つの未来を、対戦相手は運命として強いられるのだ。
 対抗するのには、オーフレイムのスタンディング技術を抑えこむ。単純に立ち技のみの攻防に縛り付けて、イニシアチブを握る。

 オーフレイムの周囲に三つの《エア・スクリュー・スポット》を配置して、一太郎はその三点を足場として、立体的な跳躍を繰り返す。

 忍者ならではの驚異的なアクロバットを高速で披露する一太郎。
 それも固定された三点を飛ぶのではなく、《エア・スクリュー・スポット》もランダムに動かしているのである。まさに変幻自在の動きであった。
 オーフレイムは超変則かつ超立体的に飛び回っている一太郎を、冷静に見つめている。
 一太郎は暗器として隠し持っていた鉄球を投げた。
 魔術攻撃とは違い、【ベース・ウィンドウ】でのサーチはできない。
 投げたのは、オーフレイムの背後に回った一瞬である。鉄球の大きさは拳よりも二回りほど小さい。しかし直撃すれば容易に骨を砕く威力を秘めている。
 これはルールがある格闘技の試合ではなく、魔術戦闘だ。そして魔術戦闘には『武器を使用してはいけない』というルールなどない。正々堂々という不文律もないのだ。

 背中に飛んでくる鉄球を、オーフレイムは最小限の動作で躱す。

 滑るようなステップワークで半身になり、軽くダッキングしただけで避けてみせた。【基本形態】による魔術的な防御に頼らない。それがオーフレイムの流儀である。一太郎もそれを承知で、飛び道具を用いた。
 その動きを誘導させた一太郎は、今度こそ自身で攻撃にいく。
 死角をとりにいく――と見せかけて、自分からオーフレイムの正面に、一太郎は飛び込んだ。
 見守る二三子は、握った拳に力を込めた。
 ベストのタイミングでのステップインに成功した。一太郎の右ストレートが当たる――

 ぱぁんッ!! 一太郎の右ストレートが弾かれていた。

 パーリングで捌かれたのではなく、左のショートアッパーで迎撃されたのだ。小さく、鋭く突き上げられた左拳を、オーフレイムは手の甲の向きを変えながら、流れるように肩口へと再セットし――左リードジャブを繰り出した。
 ジャブは一太郎の顔面を捉える。
 クリーンヒットであったが、一太郎は倒れなかった。
 二発目、三発目とオーフレイムのジャブが連続して襲ってくるが、一太郎は迷わず後方へと飛び退いた。当然ながらオーフレイムは追い足を利かせて、一太郎との距離を詰めにくるが、一太郎が飛び退いた先には、《エア・スクリュー・スポット》があった。
 オーフレイムの追撃を間一髪で躱した一太郎は、再び《エア・スクリュー・スポット》の間を跳躍して距離をキープする。オーフレイムも無理に前には行かない。
「よし、よし! ナイスや一太郎ッ! 焦らずにそのペースでいいんやで!!」
 セコンドとして二三子が声援を送る。
 通常の魔術戦闘ならば、この様な状況だと、相手は一太郎の機動力を封じようと、先に《エア・スクリュー・スポット》を攻撃魔術でどうにかしようとする。しかし、オーフレイムはそうはしない。『できない』のではなく、『しない』のだ。
 あくまで堅実に左リードジャブで相手の体勢を崩して、テイクダウンを奪う為の隙を作ろうとする。スタンディングでの攻防はその前段階と割り切っているからである。
 相手の懐への潜り込みを許さない。
 右ストレートすら使おうとせず、左ジャブのみを打つ。
 その左ジャブも威力を抑えて、スピードとキレを最重視したパンチだ。左ストレートとして打ち抜けばダメージを与えられるのに、引き戻し時の隙を作らない為、とにかく迅く、そしてシャープかつコンパクトに打ってくるのである。
 地味で、見ている者には最もつまらない手段であるが、一番厄介な戦術だ。
 二三子が一太郎を励ます。
「パワーは臣人の方が上やで! 臣人のパンチを経験しとるんや!! オーフレイムのパンチなんて恐がる必要ないで!! 多少もろても大丈夫や! 落ち着いて、そのペースや!」
 互いに譲らない攻防が続く。
 左ジャブで相手を崩すまでマイペースを守るオーフレイムを、一太郎は攻めあぐねている。だが反対に、一太郎もオーフレイムに次の展開を許さないで、間合いをキープしていた。
 手に汗握る二三子は、一太郎の戦いぶりに希望を抱く。
(いける! いけるで!!)
 ヒット&アウェイを規則正しく繰り返していくうちに、一太郎のリズムが完成されていた。能動的に戦闘をリードしているのは一太郎であり、ペースは一太郎が握っている。
 しかしダイナミックに動き回る一太郎の方がスタミナの消費が激しい。
 対して、オーフレイムは無駄な動きを極限まで省いていた。
 一太郎の顔付きが変わる。長期戦を避けるため――勝負をかけにいくつもりだ。
 リズムが完成しているので、スピードは更に上げられる。オーフレイムの反応を上回る接近で、攻撃を当てる事が可能と、二三子は判断した。
 リズムに乗った一太郎は、《ハッタリ君》から特殊火薬を自身の背中に噴出させた。
 それを魔術スパークにより着火し、推力として利用する。

 通常の最速を超えた――超最速。

 これまでの生涯において、一太郎が実現した最高のステップインで、オーフレイムの右サイドをとった。狙い通りの完璧なポジショニングである。
 オーフレイムの左拳は遠い。
 この位置関係からジャブを打っても、弧を描いた追いパンチになる。あるいはジャブを諦めて左フックを打つしかない。どちらにせよ、タイミングを合わせてダッキングすれば――

 ズガァッ! オーフレイムのジャブが一太郎の顔面を捉えた。

 衝撃で視界が暗転する一太郎。
 オーフレイムの左拳は始動していないはず――と、下がりながら一太郎は混乱する。
 ダメージは軽微であり、足捌きに影響は出ていない。
 二三子が叫んだ。
「右や!! 右ジャブをもろたんや!!」
 追撃の右ジャブをどうにかヘッドスリップで避ける一太郎だが、完全に余裕を失った。構築したリズムも崩壊している。全ての動作がバラバラで噛み合わなくなった。
 一太郎の踏み込みに合わせて、オーフレイムは右利き様のオーソドックスから左利き用のサウスポー・スタイルにチェンジしていたのだ。
 リズムを読まれていた。
 それどころか、一定のリズムに乗らされていた可能性さえある。
 二三子は下唇を噛む。一太郎は生涯最高のパフォーマンスを発揮したというのに。
(それさえも相手の掌の上っちゅうわけかい)

 オーソドックスに戻したオーフレイムが、左ジャブ以外のパンチを解禁した。

 暴風雨のように左右のパンチが一太郎を襲う。
 がむしゃらな連打とは違う。高度に洗練されたコンビネーション・ブローだ。
 だが、オーフレイムは倒しにはきていない。
 万が一にでもラッキーパンチのカウンターをもらわない様に、徹底的にリスクを排除したボクシング・スタイルを実行している。とはいえ、ポイント狙いのタッチボクシングとも違う。軽いパンチで触れにいくのではなく、安全圏からハードブローを振り回しているのだ。
 KO不可能な距離からの強打なので、一太郎は倒されはしない。
 しかし防戦一方で反撃ができなかった。強打を凌ぐだけで精一杯である。
 一太郎は魔術どころか全く手が出せない。リーチ差、パワー差、技術差、どの要素をとっても圧倒されてしまっていた。
 それでも辛うじて、オーフレイムがタックルに来ても、タックルを切れる体勢と間合いだけは堅守していた。タックルを切る――とは、タックルの初動に反応し、両足を揃えてバックステップすると当時に、上半身を相手の背中に被せて、タックルを潰す(切る)動作である。
 または相手の頭を自分の脇中に引き入れて潰す、あるいは、そのままフロント・チョークスリーパーに移行する。MMAでは基本中の基本の技術だが、この動作を練習していない素人だと、玄人のタックルに対応するのは不可能といっていい。
 二三子は祈る。スタンディングで立て直して、次のチャンスを待つのだ。
(焦るな、焦るなよ、一太郎)
 左のダブルで一太郎のガードを崩したオーフレイムは、遠い位置からロングの右ストレートを振り込んできた。これもKOどころかダメージを与えるのが目的ではない。
「ダックで躱せ、一太郎っ!!」
 二三子の声も虚しく、一太郎はダッキングではなく、クロスアームブロックを強いられる。
 ドゴぉんンっ!! 上半身を後ろに逸らされて、重心を浮かされた一太郎に、二三子は顔を歪めた。

 ついに――スプロール(タックル切り)ができない姿勢にされた。

 完璧な展開。まさに詰め将棋だ。
 オーフレイムは満を持してタックルにいく。リスクはゼロだ。一太郎は簡単にテイクダウンされてしまった。
 体重差、体格差がある為に、一太郎は呆気なくマウントポジションを奪われる。
 馬乗りの体勢にもちこんだオーフレイムは、冷然とした双眸で一太郎を見下ろしていた。

「グラウンドに入ったぞ。さあ、お前は強いのか? それとも――弱いのか?」

 審判の問いかけ。
 対【ソーサラー】戦における彼の決まり文句として、いつしか有名になっていた。
 タックルを決められてグラウンドに持ち込まれた戦闘系魔術師ソーサラーたちは、戦闘系という名称とは裏腹に、ひたすら魔術でオーフレイムから逃れようともがくのだ。そんな【ソーサラー】の魔術を《フレイム・オブ・アイギス》で遮断して、オーフレイムはいとも簡単に相手の精神と肉体を破壊する。あまりの歯応えの無さに、失望しながら。
 完全にSMAの術中である。
 二三子は一太郎に叱咤激励を飛ばした。
「迷うなアホ、余計なコトを考えんでええ!! この状態に持ち込まれてからの訓練を信じるんや! お望み通りに真っ向勝負で、お前の強さを思い知らせたれぇええええええっ!!」
 一太郎はスタンディングからグラウンドに気持ちを切り替えた。
 この体勢だと、仮にオーフレイムが攻撃魔術を使えば、一太郎には何もできない。彼にマウントポジションを取られた対戦相手は、絶えずその事を頭の片隅に置いてしまう。
 けれど一太郎はオーフレイムの魔術を頭から消した。そして一太郎自身も自分の魔術の存在を忘れる。全身全霊、全てをグラウンドの攻防に集中するのだ。
 一太郎は起き上がりにいく。
 とにかくマウントポジションから逃れたい。できればガードポジションを取るのだ。
 オーフレイムは細かいパウンドを降らせてきた。あきらかに牽制だ。
 一発いいのを貰ったが、一太郎は構わずにオーフレイムの左脇からの潜り抜けを試みる。
 スイープと呼ばれる動作だが、しかし先読みしたオーフレイムは変則的な体捌きをみせて、あっさりとサイドポジションに変化する。柔道でいうところの横四方固めに近い体勢だ。
「落ち着いてハーフガードやで、一太郎!」
 指示に従い、両足でオーフレイムの右腕を搦めにいく一太郎。
 しかしパスガードされた――と二三子が認識した次の瞬間には、体勢を入れ替え済みのオーフレイムは、一太郎の左腕をアームバー(腕ひしぎ逆十字)に極めにいっている。
 巨躯とは思えない俊敏性だ。
 一太郎は両手を組んでロックして、十字固めで肘を伸ばされないように歯を食いしばった。
 肘が伸びきった瞬間、靱帯を破壊されて、勝負がつく。
 オーフレイムは力ずくではこなかった。
 アームバーを自発的に解放する。一太郎は両手をロックして踏ん張っていた反動を抑えられずに、反転してしまった。それは一瞬であったが、背中を曝した一太郎を、オーフレイムが見逃すはずがない。
 背中から組み付き、上から押さえつけると、やや強引にチョークスリーパーにいく。
 まるで獲物に絡む大蛇である。
 一太郎は勁動脈とオーフレイムの腕の隙間に、辛うじて自分の右手を差し込んだ。
 オーフレイムは冷静だ。上から覆い被さったまま、一太郎の両腿を、自分の両足で外側から巻き込んでフックをかけた。そしてチョークスリーパーを締め込む前に――
 ぐるゥん、と反転してオーフレイムは自分を下に、一太郎を上にもっていった。
 そのままフックした両足と締め上げている一太郎の首を支点に、一太郎の胴体を引き伸ばす。
 弓なりに体を伸ばされた一太郎は無抵抗状態だ。
 あまりの一方的な展開に、二三子は言葉を出せないでいる。
 オーフレイムが冷酷に審判を下す。

「お前が強いか、弱いか、の答えが――このチョークスリーパーだ」

 それでも一太郎はタップ(ギブアップ)しない。意識を繋ぎ、失神も拒否している。
 腕力だけの締めではない。首に巻き付いている左腕と後頭部を押している右腕による、テコの原理を利した、理詰めにして芸術的なフォームである。
 ギシ、ギシ、ギシィ。
 ミシリ、と一太郎の首が軋む音。オーフレイムの太い腕に血管が浮かび、二回りほどパンプアップした。だが、一太郎は耐えている。

「アカン!! そこまでや! ギブアップや!!」

 タオルの代わりにハンカチを投げる。
 首の骨を折られてしまう。たまらず二三子はストップを申し出た。
 オーフレイムはチョークスリーパーを解いて、一太郎から離れて起き上がる。
 消耗し切っている一太郎は、大の字のまま微動すらできない。全身汗だくで、口を大きく空けて深呼吸を繰り返し、肺に酸素を補給していた。
 脱いだ制服を上半身に着ていくオーフレイムは、汗一つかいていなかった。
 対照的に二人に、二三子は力なく座り込んでしまう。
 虚ろな口調で本音を漏らした。
「ダメや……。差があり過ぎや。ここまで強いなんてチートやで。どれだけ研究しても、どれだけ作戦を練っても、何回戦っても、こんな怪物に勝てるわけあらへん」
 小細工なしの強さ。オーフレイムは策や作戦でどうにかできる男ではない。
 オーフレイムに勝つには、純粋にオーフレイムよりも強くなければ話にならないと、二三子はこれ以上なく思い知らされた。再戦など無駄だ。端的に、二三子は心を折られていた。
 弱者は己の弱さを補う為に武器(魔術)を手にとる。
 しかしオーフレイムはより強力な武器(魔術)をもって、相手の武器(魔術)を難なく封じてしまう。そして強力な武器(魔術)をあえて使わずに、強者であるオーフレイムは相手の心と体を、徒手空拳で無慈悲に破壊する。
 相手が武器(魔術)に頼る時点で「お前は弱者だ」と見下して、相手に絶望を刷り込んで。
 自身の絶対的な強さを相手に刻み込むのだ。
 全く対等という、己に言い訳ができないシチュエーションにて。
 強者にしか許されない戦い方であり、強者にしかできない勝ち方である。
 呼吸は荒いままだが、一太郎がアリーシアに礼を言った。
「ありがとうな、姫サン。今の俺とオーフレイムとの差がハッキリと分かった」
 アリーシアは一太郎に頷き返す。
 次いで一太郎はオーフレイムにも言葉を掛けた。
「オーフレイム。俺はアンタへの逆恨みを忘れるわけじゃない。けど、それとは別に、俺が弱いって事を教えてくれたアンタへの礼として、今から俺はアンタの背中を追う。尊敬するよ。アンタは凄い男だ。だからアンタより強くなってやる。いつか必ず。そして……、俺みたいな弱いヤツの相手をしてくれて、本当にありがとうございました」
 一太郎は憑きものが落ちたような、穏やかで、充足した表情をしている。
 二三子の心は折れたが、一太郎の心は折れていなかった。
 微かに笑むオーフレイム。
「そうか。今は弱いがこれから強くなる――が、チョークスリーパーの答えだったか。いいだろう、一太郎よ。お前が強くなった時、再び俺が相手をしてやろう」
 その言葉に、二三子が息を詰まらせた。泣きそうになるのを辛うじて堪える。

 オーフレイムが一太郎を認めたのだ。

 誰も歯牙に掛けない孤高の男に、一太郎という存在が刻まれたのである。
 それだけで今回の戦闘には意味があった。仇討ちは叶わなかったが、無駄ではなかった。
 いや、今の一太郎を見ていると、オーフレイムとの戦闘で事故死した従兄弟が生きていても、憎しみを動機としたリベンジ戦など望まないだろうと理解できる。リベンジ戦を挑むならば、純粋にオーフレイムを超えたいという気持ちを動機としなければならない。
 また姉弟一緒に一から出直しだ。
 二三子はオーフレイムに深々と腰を折った。
 そして思う。
(未熟で弱い思てたのに、いつの間にかウチを追い抜かしてたんやなぁ、一太郎)

 

 

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