アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第5部(第04話)

第一章  魔法の王国 3 ―仲間割れ―

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         3

 赤信号ではなく、青信号を狙う。
 タイミングを見計らい、統護は駆けた。一気に車道を真横に突っ切るつもりだ。
 道路は中央分離帯を挟んで片側三車線――六車線の幅がある。
 当然、六車線分の車両が、それぞれ違うタイミングで通過する。
 しかし統護は苦にしなかった。
 彼の身体機能は常人の平均を遙かに上回っている。元の世界から異世界【イグニアス】へと転生・転移した際、統護の肉体は素粒子レヴェルで根本から再構成されていた。
 その結果、転生の副産物的に、統護は超人と形容できる筋力と持久力、回復力を得ている。
 一陣の風のごとく、車道を横切って、歩道に到達した。
 急ブレーキを掛けて、ターゲットの前で強引に停止するが、摩擦で靴底が悲鳴をあげる。
(なに?)
 統護は目を見張った。

 ターゲットに選んだ女性の前に、統護の接近に気が付いた者――屈強な青年が。

 大柄で鍛え込まれている体躯。歳は三十代以下だろう。正義感からというよりも、明らかに好戦的な雰囲気だ。道路を横断した統護の不審な挙動に――彼は嬉しそうだ。
 女性を庇うというよりも、ぶちのめして問題ない不審者を発見した、という雰囲気。
 衣服も流行や民族性ではなく、動きやすさを重視している。男性はランニング中だった。
 運が悪い。
 電撃作戦だったとはいえ、意表を突くために、不審に過ぎる行動だった。
 統護は瞬時の判断を迫られる。
 誘拐を諦めて、仕切り直しすれば、男性とのトラブルは避けられる。誤魔化しは容易だ。
 逆に、このワンチャンスで決めるのならば、男性を排除しなければならない。男性に戦闘する意志がないとしても、女性を確保した後に障害となるのは必至だろう。傍観するタイプとは思えない表情をしている。正義感ではなく、戦闘好きといったこの貌は、おそらく……
 ならば先手必勝――と、統護は男性に対峙した。

「――ACT」

 相手の男性も統護の戦闘態勢に対応する。
 男性の口から唱えられた単語。【魔導機術】において【ワード】と定義される呪文だ。
 特にこの「ACT」は、全ての魔術に共通する基本【ワード】にして、魔術を立ち上げる為に必要な起動用【ワード】である。
 ACTとは『アクセス・クリエイト・トランスファーメーション』の頭文字だ。
 男が嬉しそうに牙を剥く。
 やはりな、と統護は苦笑した。魔術師であっても魔術系技能職(ウイッチクラフター)ではなく、世間から戦闘狂と揶揄される【ソーサラー】――戦闘系魔術師であったか。
 しかも――強い。
 纏っている雰囲気だけで瞭然だ。
 男性の胸ポケットから、赤みを帯びた光が溢れる。
 ポケット内にある為に形状は不明だが、魔術師のみに携帯が許可される専用【DVIS】に違いない。誰でも購入・所持可能な規格品である汎用【DVIS】とは異なり、その魔術師の為にオーダーメイドされるワンオフ品だ。
 無意識下であっても、正確に魔力を供給しやすくする目的で、専用【DVIS】の形状は、各々の愛用品に組み込まれたり、模したりする事が多い。逆にいえば各個人に適する様に調整されていない汎用【DVIS】では、魔術師といえど実力を発揮できないのだ。
 魔術は魔力を源とするが、魔術に直接、魔力を供給するのではない。魔力→【DVIS】→【魔導機術】システム→魔術という径路を辿る。軌道衛星【ウルティマ】と魔術プログラムをフィードバックおよびフィードフォワードさせて、施術者は魔術を現世に顕現する。
 このシステムを『ダイレクト・ヴィジョン・インジケイター・サポートシステム』といい、頭文字を繋げた【DVIS】は、魔術用デヴァイスと同義として扱われていた。
 簡易型とも定義される汎用あるいは施設用【DVIS】は、魔術回路内のROM領域にプリインストールされている魔術プログラムを起動させるキーに過ぎない。
 だが、魔術師の専用【DVIS】は単なる起動キーとは違うのだ。

 オリジナル魔術の起動プロセスが始まる。

 彼の専用【DVIS】は声紋判定して、彼を登録者本人であると認識した。
 【DVIS】は青年の意識内に【ベース・ウィンドウ】を展開。これはPCのOS画面をコンセプトにしている電脳世界での立体映像だ。この【ベース・ウィンドウ】をPC操作のようにオペレートして、魔術師は現実世界を超える高次元(超時間軸と超視界)において各々のオリジナル魔術を操作するシステムだ。
 この【ベース・ウィンドウ】が正常に展開したという事は、魔術師が軌道衛星【ウルティマ】とのリンクに成功したという事だ。
 そして専用【DVIS】は、登録者によるIDの役割も兼ねている。
 青年はシステムへのログインを試みた。ユーザーアカウントは『ノーマルユーザー』だ。
 ログインに成功。
 システム・リンケージを認識した魔術師は、自身の魔力総量と意識容量を解放した。
 魔術師の魔力総量と意識容量が、電脳世界と同一化する。シンクロも正常にオン。
 【ウルティマ】に搭載されている超次元量子スーパーコンピュータ――【アルテミス】の演算領域が、青年に割り当てられた。
 ROM領域に規格化されている魔術プログラムのみがインストールされている汎用【DVIS】とは異なり、魔術師用の専用【DVIS】はRAM領域にオリジナル魔術プログラムが書き込まれている。
 資格としての魔術師――【ソーサラー】や【ウイッチクラフター】は、【国際魔術師協会】か【ニホン魔術連盟】に国際ライセンスを発行されている者だ。しかし一般的に魔術師という言葉は、常人よりも遙かに大きい魔力総量と意識容量を保持しており、加えてオリジナル魔術理論を研究・開発、なによりも実践可能な者、という認識となっていた。
 起動プロセスが最終段階に入る。
 彼が展開している【ベース・ウィンドウ】内に、多数の【アプリケーション・ウィンドウ】が表示され、その窓内に、膨大な数行の数式が上から下へとスクロールしていく。
 これ等は【ウルティマ】の演算によってコンパイルされた魔術プログラムが、魔術師へとフィードバックされてきた実行用の数式群だ。【スペル】と呼ばれる文字列であり、【イグニアス】世界の摂理に上書きされる事象の定義式でもある。
 この魔術プログラムを【ワード】の詠唱と【コマンド】の書き込みにより実行する。
 そうして魔術として顕現させ、物理現象を上書きする技術こそが【魔導機術】だ。
 契約や規則による『法規』ではなく科学システムを介した『技術』による事象のエミュレートなので、魔『法』ではなく魔『術』と呼称されている。
 魔術の起動が完了した。
 コンマゼロ数秒という一瞬での立ち上げだ。現実世界とは時間基準が異なる超次元とのリンクの為に、どんなに遅い魔術師でも一秒を下回る者はいない。
 青年は【ワード】を唱え、【スペル】を走らせた。
 魔術プログラムが実行される。
 彼の右腕に――炎による円形の楯が出現した。
 統護はその楯を注視した。可能ならば、相手の魔術特性を予想したい。
(楯の【基本形態】か)

 汎用(一般)魔術と戦闘用魔術の最大の違いが、この【基本形態】という運用理念だ。

 ダイレクトに一つの魔術で一つの効果(結果)を求める汎用魔術の運用理念だと、臨機応変が必須である戦闘には使えない。よって【基本形態】というベース・プログラムを常駐させて、【基本形態】から派生魔術を繰り出して、効率的に魔術を運用するのだ。
 顕現したのは炎――すなわち【火】のエレメントを使用している。
 【火】は最もポピュラーなエレメントであり、バリエーションに富んだ物理攻撃に適した魔術特性を発揮する。
 相手は、統護に対して炎の楯を構えた。
(その楯でブロックして、カウンターで楯から炎の攻撃魔術を撃つ――つもりか?)
 あるいは裏を書いて、左拳での反撃か。
 どちらにせよ、最初の一発を打たせてくれる事には変わりない――
 相手は強い。最初のボーナスをミスすると苦戦必至だろう。
「おぉぉおおおおおッ!」
 遠慮はなしだ。統護は右ストレートを放った。
 統護の戦闘スタイルのベースはボクシングである。
 狙いは相手の【基本形態】――炎の楯だ。当然ながら、余裕をもってブロックされる。
 ズドォゥオッ!! 右拳の破壊力に、相手が歯を食いしばった。超人である統護は充分に威力を手加減したが、それでも容易に片手で受け止められる威力ではないのだ。
 着弾と同時に、統護は魔力を拳に集中した。
 通常ならば無意味な行為だ。魔力を己に作用させても抗魔力性による多少の耐久効果しか得られない。
 しかし、統護の魔力は通常ではない。

 炎の楯に激しいノイズが走る。

 魔術攻撃ではなく、魔力を直接ぶつけられての【基本形態】の揺らぎに、相手の魔術師は驚きを隠せなかった。
 統護はその一瞬の停滞を見逃さず、左拳を下げて左側へステップ。
 左ボディフックを回す。リバーブローだ。ボクシング・スタイルをベースに近接戦闘を行う統護が、得意としているパンチである。
 めキャぁん!! 強烈に相手の右脇腹を抉り込む。しかしピンポイントで肝臓(レバー)まで拳の衝撃が達しない。決定打にはならなかった。不意打ちだったのに関わらずだ。
(ちっ! 反応が速いぜ)
 ダウンを拒否して、相手は立っている。しかしダメージは確かだろう。
 統護は相手の右サイドにポジショニングしたまま、更に右フックへと繋げた。
 相手は咄嗟に左手で顎をカバーにいく。……が、統護の狙いは顎ではなく胸だった。
 正確には胸ポケット内の【DVIS】である。
 ドンッ!!

 魔力が込められた統護の右拳で、相手の【DVIS】が小爆発を伴い破壊された。

 ポケットの中から煙が立ちこめる。
 【DVIS】を破壊された相手の【魔導機術】が消滅する。
 何が起こったのか理解できない――と、青年魔術師の表情が物語っていた。
 機器としての寿命はあっても、故障による爆発など【DVIS】にはあり得ない。何重にもセーフティが施されて設計・製造されているのだ。それなのに――破壊された。

 これが《デヴァイスクラッシャー》と呼ばれる現象で、統護を指す異名でもある。

 誰もが魔術を使える世界において、唯一、魔術を使えない特性と逆手にとった攻撃だ。
 魔術を破壊した次は、相手の意識を断つ。
 相手の左テンプルに、統護の左ストレートがクリーンヒット。
 鋭い打撃音を残し、両膝を屈した相手は、糸が切れたマリオネットのように崩れ落ちた。
 後味は最悪だ。これを勝ちにはカウントしたくない。
(悪いな。騙し討ちみたいな真似をして)
 紛れもなく強敵だった。咄嗟の反応だけではなく、身のこなしも相当な手練れだ。不意を突かず、かつ彼が事前に《デヴァイスクラッシャー》を知っていたのならば――
 可能ならば再戦の機会が欲しいものだ。
 統護は意識を切り替える。
 ターゲットの女性は、呆然と固まったまま、倒れている青年を見ている。
 悲鳴はなかった。どうやら自分がどういった状況に置かれているのか、分かっていない。
 無理もない事である。見た目、何処にでもいる二十代の若者なのだから。有事に対しての心構えなんて、普通の女性は持っていないのだ。
「悪い。身の無事だけは護るから、俺に浚われてくれ」
 ニホン語が理解できると期待していないが、統護は思わず謝ってから、相手を背後から拘束した。そして、軽く頭部へ掌底を当てる。抵抗されると厄介なので、気を失わせた。
 失神した女性を支える。
 路肩に目をやると、手筈通りに赤いライトバンが滑り込んできた。
 運転手の他には助手席に一名、中央座席に二名、そして後部座席にラグナスがいる。
 勢いよく後部座席のドアをスライドさせ、ラグナスが女性を中へと引きずり込む。
 ラグナスの顔は若干引き攣っていた。
「咄嗟の妨害が入ってどうなるかと思ったけど、流石は《デヴァイスクラッシャー》ね」
 統護は何も言わず、ライトバンに乗り込んだ。
 これで自分の役目は終わりだ。まさか犯罪に荷担するとは。
 忸怩たる思いだが、とにかく次の展開を考えろ。万が一、誘拐が失敗して、警察に逮捕される事だってあり得るのだから。

 

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 ラグナス達のセーフハウスは、郊外の内側に位置している一軒家であった。
 外観に特徴はない。
 他の住宅とのデザインの差は、僅かな差異でしかなく、大きな違いは色彩くらいか。
 庭は広く、車庫が三つもある。左側に、統護を乗せたライトバンは駐車した。
 真ん中と右側には、他の車両が停まっている。
 車から降りる際、統護は後ろ手に手首を拘束された。特殊素材製のラバーバンドで、統護の膂力をもってしても千切れない。バンドは剛性だけではなく弾性に優れている。
 ラグナスが言った。
「どう? 手錠だとアンタの腕力じゃチェーンを引き千切れるものね」
「逃げる気どころか、反抗する気もないんだけどな」
「保険よ、保険」
「これじゃ小便が足せないんだけど」
「締里みたいに大人用紙オムツに替える? 私が穿かせてあげるわよ。イヤなら私が貴方の用を手伝ってもいいし。進んで協力してくるのなら、生フェラもサービスしてあるわよ」
「遠慮しておくよ」
 クスリとも笑えなかった。
 気を失ったままの女性を、他のメンバーが運んでいく。彼女は両手首に手錠を嵌められて、猿轡を噛ませられている。もちろん目隠しもだ。その様子に、統護の胸がズキリと痛む。
「私達は私達で、信念と目的に従って行動しているから、野蛮やゲスな真似はしたくない。お願いだから、仲間の男達にあの女性を見せしめの為に、強姦させる――なんて結果にはしないでね、堂桜統護」
「最終的に、あの女性は無事に帰してくれるんだよな?」
 統護がラグナスの立場だったら、何かしらの保険をかけない限り、そのままの解放はない。
「金で買収はするつもり。それから喋ったら身内に危害を加えると警告するわ。このセーフハウスも今回で使い捨てるしね。こればかりは信用してもらう他ないわ」
「……信用するぜ」
 不安はつきまとうが、信用するしかない。
 セーフハウスの玄関へと促された。
(ご丁寧なことだぜ)
 目を凝らしてみれば、薄い透明な膜が建物を覆っているのが、見える。
 防犯用【結界】だけではなく、来訪者を識別する【結界】まで二重に張られているのだ。
 玄関先に防犯カメラを設置すればいいのに、わざわざ魔術を使用しているとは。
 ラグナスが玄関先で統護を止めた。
「ちょっと待ってね。【結界】を一時的に解除するから。アンタの魔力性質からすれば、最悪で【結界】の魔術プログラムにエラーが起こるかもしれないし」
「魔力を放出しない限り問題ないぜ」
「万が一よ」
 玄関に設置されている施設用の汎用【DVIS】に、ラグナスが触れた。
 一時解除命令によって【結界】が消える。
 統護とラグナスはセーフハウスの中に入っていった。


 通されたのは、二十畳はあるかという広々としたリビングだ。
「堂桜財閥のお坊ちゃまには狭いかもしれないけど、我慢して頂戴ね」
 ラグナスが言ったが、統護の耳には届いていなかった。
 統護の視線は、一点に釘付けになっている。

 視線の先には――締里がいた。

 彼女も統護を見て、驚きを隠せない目をしている。ポーカーフェイスは完璧なのだが、雰囲気から感情が漏れていた。
 オリガが締里の後ろに立ち、締里を拘束している。そして銃口は締里のこめかみだ。
 むろん拳銃による牽制だけではなく、後ろ手で手錠を掛けられていた。手錠で締里を拘束できないのは事実だが、いかに締里であろうと、一瞬で手錠を抜く事は不可能だからだ。
 締里は無事な様子である。統護は心底から安堵した。
 統護は締里に頷いて見せた。締里も微かに頷き返してきた。
 二人のコンタクトに、ラグナスが警句を発する。

「おっと! 反撃や脱出なんて考えないでね。こちらには別の人質がいるんだから」

 気付けで失神から回復させられた女性が、男達に囲まれている。
 統護は素早く室内を見回して人数をカウントした。十五人前後か。当然、リビング以外にも仲間は潜んでいるだろう。
 彼女はガタガタと震えていた。
 街中に沢山いる普通の女性が、こんな状況に放り込まれれば、怯えるのは当然だ。統護は痛ましい思いで女性を見つめた。自分が彼女を選ばなければ――と悔やんでも意味はない。
 人質の女性と囲っている男達を観察する締里の目が細くなる。

「こんな手筈は聞いていないわッ!! 説明しなさい、ラグナス!」

 赫怒の声を張り上げたのは、オリガだった。
 オリガは手にしている三十二口径オートマチックの銃口を、締里の頭部から離してラグナスに向ける。狙いはラグナスの右肩だ。
 味方同士の対立に、場の空気が一気に緊張する。
 オリガの行動に男達は色めき立ったが、ラグナスは全く動じない。
 ニホン語での会話でないので、統護には何が起こっているのか、理解できなかった。
「怒らないでよオーリャ。貴女を欺いたのではなく、ちょっとした計画修正よ」
「何が計画修正よ。他のみんなも、一般人にこんな真似するなんて、ねえ、許せるわけ!?」
 しかし、その言葉には誰も反応しなかった。
 知らされていなかったのは自分だけ、と察したオリガは、歯軋りした。
「私が誇りを棄てて姫様を裏切ったのは、国民の為に姫様にもできない事を為し得られる、と説得されたからだというのに……ッ!! この事、フェリエールさんは承知しているの?」
 剣呑な雰囲気の中、締里がニホン語で口を挟む。
「ユリエル・フェリエールの事? 初代リーダーだった夫が死亡して、今は彼女が反王政派の旗頭になって陣頭指揮をとっているはず」
「ええ。その子――ラグナスは二人の娘よ」
 オリガもニホン語に切り切り替えた。
「なるほど。画像データと一致しているわ。彼女についての情報も知っている。どうも相当なじゃじゃ馬らしいわね」
 ラグナスが横長の唇の端を、鋭角に釣り上げた。
 統護にも理解できるようにニホン語で言う。
「この場では私が絶対のリーダーよ。ママにも口出しはさせない。なにしろ我らの逆転のチャンスを握っているのは、この私が発案した作戦なんだもの」
「ラグナス、貴女……」
 ようやく統護は場の状況を飲み込めた。ラグナスとオリガで意志の疎通が取れていないと。
 さらに締里が言った。

「貴女は本当に騙されている、オーリャ。そして統護も。その人質の女――グルよ」

 締里の台詞に、ラグナスだけではなく人質の女性もビクリとなった。
 そしてラグナスの部下達も戸惑い始める。
 締里はなおも言葉を続けた。
「恐怖している演技は合格ラインだけれど、呼吸が落ち着き過ぎている。心の底から演じていないから血色が良過ぎ。全身の筋肉もリラックスしている。それでは私は欺けないわ」
 人質役の女が手錠を解除して、目隠しを外すと、統護の背後に回って隠し持っていた拳銃を統護の後頭部に添えた。男達は、その手際の良さに唖然となったままだ。
 統護は震える声で言った。
「ちょっと待て。俺は街中にいる四人から無作為で」
「その四人全員がサクラだったのよ」
「マジかよ。なんてこった」
 統護は自分の甘さと未熟さを痛感した。本当に自分は戦闘能力だけなのだ。
 ぱちぱちぱち……。乾いた拍手を贈るのは、ラグナスだった。
 彼女は締里に対し、純粋な賛辞を口にする。
「流石は、裏社会に名だたる《究極の戦闘少女》ね。いい作戦だと思っていたのに通じないか。でも運はこちらにある。なにしろ私に反抗の色を示す、反逆の可能性が大の……

 ――『新しい人質』が目の前にいるんだものねぇ、オーリャ」

 凄みが込められたその言葉に続けて、ラグナスは冷徹に「ACT」と唱えた。
 魔術戦闘を仕掛けるつもりだ。
 同時に、オリガがラグナスに向けたままの拳銃のトリガーを絞った。

 

 

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