アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第5部(第01話)

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プロローグ  冷たい銃口

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 累丘覧架は公立藤ヶ幌高校において《読書ジャンキー》と揶揄されている変人である。
 二年生の間だけではなく、三年生と教職員、そして一年生にも入学半月で広まってしまう程の変わり者であった。
 友人はいない。少なくとも本人が友人と定義している同年代はいなかった。
 覧架は独りを好んでいる。
 変人と認識されているが、学校で孤立はしていない。交友関係のきっかけになれば――と、担任教師は彼女に図書委員長を命じたが、覧架はそつなくこなすだけで、担任の真意や彼女と仲良くしたいと思っている生徒の気持ちには、鈍感なままだった。
 用が終われば、即座に図書室から出て行ってしまう。お世辞にも大規模とはいえない図書室は、彼女の読書欲と愛着に火をつける事はなかったのだ。

 そんな覧架が珍しくクラスメートと帰宅の途についていた。

 一緒なのは、美人と評判の覧架にも劣らない、凛とした美貌の女子生徒である。
 グラマラスかつ肉感的で、それでいて細身という覧架に対して、その女子のスタイルは均整が素晴らしかった。男性から見ると、好みによって甲乙が決まるであろう。
 とはいえ、覧架にはオシャレに対する関心はない。リソースは全て読書につぎ込んでいる。
 だから化粧なしで黒髪を二房の三つ編みにまとめるという、野暮ったくも堅物な委員長ルックが定番となっていた。これでメガネをかければ完璧な文学少女――と呆れられている。
 対して、クラスメートの容姿には、華がある。
 素材のみの覧架とは違って、さりげなく自己主張を交えている洒脱さと、流行を意識しつつ常識を逸脱しない基礎と、本人の理知的さが、絶妙なバランスで美貌を演出する。
 覧架に匹敵する容姿であるので、当然ながら二学年に収まらずに、高校全体および教職員にも評判であるのだが、覧架は彼女の名前を思い出せない。
 もとより他人の名前を記憶する必要性がない。
 それに脳内のメモリ容量は、読破した本に登場した登場人物名で一杯になっている。
 茜色に染まる河川敷を、二人は並んで歩いていた。
 無言ではない。
 相手から話し掛けてくるが、覧架は名前の確認はしなかった。ひょっとして思い出すかもしれないし、訊けば傷付ける、あるいは落胆させるかも、という程度の気遣いはできた。

「……へえ、覧架の夢って童話作家になる事なのね」

 知的な口調が心地よかった。
「ええ。流石にそれ一本で食べていけるとは思っていないけど」
 新人賞への投稿は始めていた。まだ一次選考の通過もできないが。
「覧架だったらミステリ作家とかSF作家かな、なんて勝手に思っていたわ。もちろんミステリだったら本格で、SFもやっぱり本格。そんなイメージだったけどね」
「本格は読むのは好きだけど、書くのはやはり敷井がね」
 彼女には言わないが、現実にはない魔法や魔術、異能が存在するファンタジー系も好きである。それも西洋の本格ハイ・ファンタジーよりも、ライトノベルの学園異能バトル系が。
 会話は楽しかった。覧架の言葉も弾んでいる。
 他人には興味がなく、他人への干渉を嫌う覧架であったが、つい訊いていた。
「逆に質問するけど、貴女の夢は?」
 彼女は覧架の前に躍り出ると、軽やかにターンして向き合う。背後には夕日だ。
 印象的な笑顔を向けて、彼女はこう言った。

「今この瞬間、こうして貴女と一緒に帰宅している事よ。――みみ架」

 ドキリ、とした。
 現実感が入れ替わる。この日本はニホンから観測(読書)すると異世界であると。
 此処は。このセカイを創造したのは。
 そして覧架――みみ架は、不意に思い出す。クラスメートの〔名〕を。
 彼女が悠久とも呼べる刻において抱き続けていた夢までもを。ああ、そうだったわね。
 そう。彼女の名前は、堂桜――……

 

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         ◇

 そこで夢から覚めた。
 最近、また少しずつ夢を視る様になっている。予知夢というか運命夢というか、明晰夢ではない事は確かだろう。統護との一戦以降、彼との運命に拘りはなくなった。もう自分の意志(気持ち)だから。故に余計、自分ではなく彼の運命が気がかりで、助けたいと思う。
 累丘みみ架は周囲を見回して、己の状況を再確認する。
「珍しいわね、委員長が居眠りなんて」
 隣席の少女が笑いかけてきた。紅い双眸が、みみ架を覗き込む。
「本当ね。たるんでいるわね、わたし」
 みみ架は素直に認めた。今は学校の授業中どころか、大事な任務中だというのに。
 此処はニホン政府が手配したチャーター便の客席である。
 表向きは、与党の大物議員の為――となっていた。
 しかしそれはフェイクで、みみ架の隣にいる同級生を極秘帰国させるのが本命だ。
 同じ【セントイビリアル学園】の魔導科二年に籍を置く彼女の名は、アリーシア・ファン・姫皇路という。飛行機が向かっているファン王国の第一王女にして、次期女王である。
 アリーシアのやや癖のある紅い長髪は、みみ架に燃えさかる炎か輝く太陽を想起させる。
 《シンデレラ・プリンセス》と世界中のマスコミから持ち上げられている一番の要因は、単に美人というだけではなく、ニホン人とファン人の特徴が顕れている特徴的な顔立ちだ。
 二番目の要因は、孤児院【光の里】で暮らしていた天涯孤独の孤児――とされていたアリーシアの出自が、ファン王国現国王ファリアストロⅧ世の隠し子であり、その存在と王位継承権が明らかにされるというシンデレラ・ストーリーだ。
 アリーシア護衛隊は指揮をとっているエリス・シード・エリスハルトをはじめとして、陽動活動を行っていた。現在、上手くファン王国の反王政派を欺けているとの情報である。
 ファン王国に到着したら、護衛はみみ架から風間姉弟にチェンジする。姉弟の二名はすでにファン王国の合流地点で待機しているのだ。
 そして、みみ架は風間姉弟と入れ替わりで、ニホンに蜻蛉帰りする。
 みみ架の膝元の本へ視線をやり、アリーシアが言った。
「せっかくの読書タイムだっていうのに、疲れているのかしら?」
「どうかしら。わたしは精神的にはタフじゃないしね。にしても、貴女は疲れ知らずね」
 自分が読んでいた文庫本は、エッセイ集だ。しかしアリーシアが目を通している電子書籍の内容は、政治経済における専門書である。魔術の名門【聖イビリアル学園】の学生でもあるアリーシアは紛れもないエリート候補である。魔導や物理・化学関連の専門分野に関しては紛れもなく天才、通常科目であっても高校生としては全国屈指の学力を誇る彼女なのだが、近い将来、為政者となる為の準備、そして王女として外交に係わり始める為の勉強に、心血を注いでいる。相手は同年代の子供ではなく、修羅場を経験している大人だ。
 アリーシアは肩を竦める。
「私は個人としては凡庸だからね。特に魔術師としては。だから王女という立場でアイツを支えるしかできない。委員長とは違って、アイツの横には立てないもの」
「わたしも彼の横に立てる――と考えると微妙だけどね。ルシアみたいにメイドにはなれないし。懐という意味では比良栄さんが一番でしょうし、相棒という意味でならば、きっと……」
「そうね。大丈夫かしら、二人とも」
 アリーシアは無事を祈っている。
 対して、みみ架は思った。今回のミッションが平穏無事に済む筈がないと。
 けれど二人は立ちはだかる困難を乗り越えられる、とも。
(期待しているわよ、《究極の戦闘少女》さん)

 

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 ソビエト、という単語の意味は『評議会・会議』である。
 同時に『ソビエト社会主義共和国連邦』の略として知れ渡っていた。いや、統護が暮らしていた元の世界では、ソビエト=旧ソ連という認識が一般的だ。ソビエト=評議会・会議という意味を知る者は、日本では少数かもしれない。
 そして統護がいた元の世界とは異なり、この世界では『ソ連』は継続しているのだ。

 堂桜統護は異世界からの転生者である。

 いや、彼がいた元世界を基準にするならば、この【イグニアス】世界こそが異世界だ。
 統護がこの異世界――【イグニアス】に転生した原因となった事故は、まだ詳細を思い出せない。統護は確かに死亡し、そして転生して、異世界【イグニアス】に転移した。
 日本にある公立藤ヶ幌高校の二年生であった統護は、ニホン屈指の魔術名門校である【セントイビリアル学園】魔導科の二年生となっていた。
 二つの世界の時代は同時期で、かつ文化と科学技術レヴェルは似通っているが、差異も少なからずある。
 似て非なる元世界と【イグニアス】世界。
 この異世界には【魔導機術】と呼ばれている魔術が、一般的に広まっている。
 魔術が空想上の存在であった元世界とは違い、この異世界はいわば魔導世界なのだ。
「ソヴィエル連邦……か」
 統護はその単語を小さく口に出した。
 この異世界においては、元世界とは微妙に名称が変更されている事がある。ソ連もそのケースに当て嵌まっており、ソビエトと語源としたソヴィエルなる造語が、ロシア(これもロビアという変化した名称が使われるケースがある)を中心とした社会主義共和国連邦を成立する際の名称とされた。
 旧ソ連はアメリカ合衆国と双璧をなす超大国であったが、1991年に解体消滅していた。だが、この異世界では、ソヴィエル連邦はアメリア合衆国と肩を並べて健在なのだ。
 差異は名称だけではない。
 統護は元の世界の世界地図を正確に覚えていないが、ロシア領の中に『別の小国』が存在しているのだ。その国は王国であり、あろうことか社会主義共和国連邦に加盟していた。

 その国の名は――ファン王国。

 統護と締里の二名が、超音速ステルス機で向かっている目的地でもある。
 戦闘機である機体内のデザインは、旅客機とは異なり、機能と効率が重要視されているので随分と殺風景だ。特にこの機体は存在自体が機密扱いである。非軍属には目にできる機会がないので、統護には貴重な経験でもあった。
 二人は表沙汰にはできない重要任務を帯びていた。
 秘密裏での遂行はもちろんの事、漏洩防止の為に、可能な限り人員を絞ったミッションだ。
 特殊工作員ではない統護をサポートするのは、その資質と技量ゆえに例外的に複数の特務機関に籍を置き、現在はアリーシアの側近をメインに務めている――楯四万締里である。
 プロフェッショナルな彼女は、裏社会では《究極の戦闘少女》の二つ名で畏怖されている。
 そして【セントイビリアル学園】の普通科一年生でもある。統護にとっては一学年後輩だ。
 隣席の締里が言った。
「航行は順調ね。残り二時間でファン王国に到着する。ここから先は、魔術による最新ステルス機能を起動させて、レーダーに対して空路を完全遮断させる」
 空路に設定された領空域への侵入については、堂桜財閥および米軍【暗部】という、巨大勢力による手回しで、黙認を取り付けていた。
 反面、黙認する対価として、トラブルに対しては一切の責任を負わないとされている。
 統護は締里に疑問をぶつけた。
「今さらだけど、最短で直進すれば、もっと早かったんじゃないか?」
「妨害の可能性を考えると、ある程度の攪乱は必要だ。それに姫様の移動もある。こちら側はこちら側で、領空侵犯の黙認をとりつけた各国に対しての囮にならなければならない」
 アリーシアのファン王国への帰国こそ、真に秘密にする必要があった。
「大丈夫かな、アリーシアと委員長」
 締里は統護に追加のおにぎりを差し出した。具は鮭だ。
「心配は分かるけど、今は食事に専念しろ。栄養補給は身体だけではなく、心にも重要だ」
「あ、うん」
「どう? 前よりも上達しているだろう」
 締里は手作り弁当をこれでもかと押しつけてくる。
 三角おにぎりを主食として、唐揚げ、卵焼き、ポテトサラダ、ひじき、ウィンナー等がバラエティー豊かに添えられていた。目新しさや独創性はないが、実に堅実な味とメニューだ。
 統護は締里の食事を見る。
「お前は相変わらず……なんだな」
 各種サプリメントとスティック状の固形食料である。
「私にはこれが一番だ。普通の食事は逆にストレスにしかならない。ああ、心配いらないぞ。お弁当もちゃんと栄養バランスとカロリーを計算してある」
 統護が食事する様を、締里は熱心に観察している。
 学校の昼休みを思い出す。この任務が終われば、昼休みに締里が弁当を携えて、自分の教室に来る日々が帰ってくるのだろうか。
「任務中は私情を殺す《究極の戦闘少女》が随分と変わったものね」
 今回のミッションで随員に抜擢された王室警備隊員、オリガ・アンドレーエヴナ・エリツィナが、締里に笑いかける。親しげな笑みと口調だ。
 ロシア系のファン人である彼女は、古くからの締里の友人だった。
 年齢は三十一才。戦闘系魔術師――【ソーサラー】だ。高校一年の締里とは一回り以上歳が離れているが、魔術師系の特殊工作員(エージェント魔術師)としては、締里の方が先輩であった。
 変わった――という言葉に、締里は微かに頬を緩める。
「ありがとう、オーリャ」
「別にお礼なんて要らないわ。管制や索敵からのロスト状態が前提で、行動が締里に一任されている今が、私達にとっては勝負だし。つまり変わったって、別に褒めてないって事よ」
「オーリャ?」
 統護のこめかみに冷たい感触。

 座席の背後に立ったオリガは、統護と締里の側頭部に銃口を押し当てた。

 小型のハンドガンだ。携帯性に優れており、片手でも堅実に扱える代物である。
「ホールドアップ! ちょっとでも怪しい動きで、まずは締里からトリガーを引くわよ」
 眼球の動きだけで、統護と締里は互いの横顔を確認する。
 こんな展開は想定外にも程がある。王室警備隊および王家直属特務隊の中でも、実力だけではなく、特に信頼が置ける人物――と評されての、オリガのミッション参加であった。王国民として名誉ある抜擢のはずだった。それが裏目に出るとは。
 オリガが冷徹な口調で述べた。
「アンタの専用【DVIS】と【黒服】【AMP】といった装備はすでに隠してあるわ。堂桜統護の方はそもそも魔術が使えない身。パイロットも仲間よ。抵抗は無意味と理解しなさい」
 無言のまま締里は大人しく両手を挙げた。反撃不可能と判断したのだ。
 プロである彼女が投降した以上、素人の統護にはどうにもできないが、つい質問していた。
「このハイジャックの目的は何だよ?」
「私達は反王政側よ。悪いけれども、私達のゲストとして招かれてもらうわ」
「今は従う他ない、統護。パイロットも相手側なのよ」
 コツン、と冷たい銃口が統護のこめかみを軽くノックする。
 状況を理解した統護は、締里に続いて両手を挙げた。

 

 

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