アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第3部(第26話)

第三章  姉の想い、妹の気持ち 8 ―キャンプ―

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         8

 イヤホン型【AMP】から起動している【間接魔導】による音声と網膜映像は、夕刻前にあった某ホテルの爆破事件についての続報を伝えている。
 ――【間接魔導】とは。
 魔術師が独自開発したオリジナル魔術理論とアプリケーション・プログラムによって起動する魔術を【直接魔導】と呼称・区分するのと対になっている表現だ。魔術師個人のオリジナル魔術理論ではなく、【ニホン魔術連盟】に認定・規格化されて一般流通しているコモン・プログラムにより起動する魔術の総称が【間接魔導】である。

『……怪我人はガラス片を被った通行人が数名。いずれも軽傷です。ホテル内の防犯カメラの解析が進められておりますが、依然として決定的な手掛かりはないまま――』

 歯切れ良く聞こえてくるアナウンサーの声。
 オルタナティヴの視覚には、魔術による疑似立体映像が投影されている。
 爆破されたのは、十五階の四人部屋。
 爆発した瞬間の映像はない。爆破音により、複数の通行客がスマートフォンやデジタルカメラ等で撮影したデータが、参考資料として警察へ参集されていた。
 公式ニュースに流れている映像のみではなく、有志によってネットにアップされている画像もあったのだが、そちらは全て削除済みであった。運営・管理サイドではなく、何者かがシステムに介入しての強制削除で、未だに犯人は不明との事だ。
(……加工されているわね)
 生のデータではなく、巧妙に手が加えられている。
 それも超一流の画像処理技術だ。
 職業柄、画像データの真贋を見極める訓練を絶やさないオルタナティヴでなければ見破れなかったかもしれない。【間接魔導】を遮断して、爆破ニュースの情報を切った。
 なんとなく気になったニュースで、アンテナを伸ばしてみたが、やはり怪しげな箇所がチラホラと目につく。この件に関しては、後に詳しく調べてみようと思った。
 宿泊客は、宿泊名簿によると『鈴森あいみ(23)』となっていた。
 部屋から死体は発見されていないと報道されているが、オルタナティヴは信用していない。
 ニュース映像は加工済みであり、ネット流出した未加工の元映像は強制削除だ。
 なんらかの不都合を隠蔽しようとしているのは明白である。

「――どうだったかしら? 二日目の出来は」

 ドアが開くと同時の一声。
 控え室に戻ってきたユリは、満足そうな笑みを浮かべていた。
 二日目のライヴも大成功で幕を閉じていた。
 武道館内の警備態勢は万全になっている。初日の襲撃を反省し、関係者全ての身元を改めて洗い出しており、かつマネージャーの横田と専属世話係の聖沢が常に目を光らせて、見知ったスタッフ以外の他者との接触をガードしている。
 オルタナティヴの役割は、このニホン武道館内においてはユリが一人きりになる時のみ、と変更されていた。
 横田と聖沢がやや強引に通してきた改案であったが、オルタナティヴは飲んだ。
 しかし、あくまで武道館内に限っての話である。
 ユリとの契約当初から、二人が自分を快く思っていないのは分かっている。何故ならば、オルタナティヴもまた同様であるから。
「初日よりも良かったと思わない?」
「この控え室のモニタで観ていたけれど、なかなか凄かったわ」
 リップサービスであった。
 実際は、イヤホン型【AMP】の【間接魔導】によって、館内の各監視カメラと視覚をリンクさせていたので、ライヴの様子もあくまで監視区域の一つとしてしか認識していない。
 ライヴが無事に終わり一段落したので、ニュース番組にアクセスしていたのだ。
 ユリのステージ衣装は、ラストダンスの為にセパレートタイプの水着と表現しても差し障りない、身体にフィットしたものだ。むろん水着とは違い、フリルやリボン等のアクセントが盛り沢山になっている。
 オルタナティヴはユリに両手を差し出す。
 ユリはファンからの花束を両腕一杯に抱えている。
 ありがと、と言ってユリはオルタナティヴに抱え込んでいた花束を渡した。
 造花でなく生花だ。鼻腔をくすぐる香りに、オルタナティヴの切れ長の目が細まる。
 花を傷めないよう、丁寧に鏡台の棚上へと――
「ッ!!」
 優しげだったオルタナティヴの表情が一変する。
 花を傷めるのも構わずに、彼女は花束の中に手を突っ込んで調べ始めた。
 慎重に摘み上げたのは、ティシューペーパーにくるまれているカミソリの刃である。セロハンテープでメモ書きが添えられていた。

 ――その歌をヤメロ。さもないとオマエは死ぬ。

 角張った歪な筆跡で書かれている脅迫。怨嗟が込められている文字である。
 オルタナティヴはそっと嘆息する。
 この複数の花束は全て横田と聖沢のチェックが入っているはずである。それにも関わらず、ユリへの脅迫が混入していた。
 横田と聖沢のユリを見張る目が、脳裏に蘇った。
 自然、奥歯に力が籠もる。
 鏡台の椅子に座り、スポーツドリンクを味わっているユリに訊く。
「辛くはないの? 自分を偽り続けるのは――」
 その問いに振り返ったユリは『ゆりにゃん』スマイルでピースサインを返した。
「辛いけれども、同時に幸せだから」
「そう……」
 オルタナティヴはそれ以上は何も言えなくなる。
 自分は――どうだったのだろうか?
 偽り続けるのは不可能だった。堂桜統護では、男性ではいられなかった。自分は女性なのだ。だから在るべき自分になる為に何もかもを、全てを――棄てた。
 ……本当に?
 淡雪を思い出す。淡雪を忘れられない。
 つまり、本当に棄てられてはいないのではないだろうか……

 

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 ニホンの関東区域における魔術師養成の名門校。
 世界に知れ渡っているその名は――【セントイビリアル学園】という。
 中等部・高等部・大学部を通じての一貫教育が基本であるが、他校かの編入も素質があれば、分け隔てなく門戸を開いている。
 中等部と高等部は隣接しており、大学部は【セントイビリアル大学】として独立していた。
 敷地は広大である。
 魔術師候補生たちにとっての花形――【ソーサラー】を育成するカリキュラムで最重要とされている【魔術模擬戦】に使用する訓練エリアが、贅沢にとられていた。
 平地戦用のグラウンドだけではなく、山岳戦用の小山地に、室内戦用の特殊シェルター区域まで揃っている。その充実さに、関東内にある【ソーサラー】養成専門学校の生徒が、遠征に来る事もある。
 煙は、訓練用の小山の中からあがっていた。
 夜の闇に溶け込んでいるので、近場でなければ視認するのは困難だ。

『……怪我人はガラス片を被った通行人が数名。いずれも軽傷です。ホテル内の防犯カメラの解析が進められておりますが、依然として決定的な手掛かりはないまま――』

 携帯ラジオから聞こえてくるニュースに、統護は浮かない顔になる。
 謎の爆破事件として報道中だ。大事になっている。
 目の前には、焚き火に炙られている鯉の焼け具合を、真剣な顔で見極めている深那実。
 すでに飯盒で米は炊き終わっており、おにぎりにしてある。
 寄せ集めた枯れ枝が「パキパキ」と乾いた音を立てて灰になっていく周囲で、頭から背骨にそって枝で串刺しにされている鯉から、仄かな香りが漂い始める。
「よし! いい頃合いよ」
 深那実は鯉の塩焼きをおかずに、おにぎりを頬張った。
 微妙な表情で見つめる統護に、深那実は別の鯉の串焼きを勧める。串焼きは全部で六本だ。
「どしたの? 食べないの?」
「いや。焼いた以上は食うけどさ……」
 統護は鯉にかじりつく。塩をふっただけだが、甘味があり美味しい。
(残したら、むしろ悪いよなぁ)
 罪悪感が統護を満たす。
 この鯉は魚屋で購入した物ではなく、校庭の池から捕獲してきた物であった。
 仰天した統護であったが、深那実は「小さめのを少々獲ったところでバレないって」と笑っていた。血抜きとわた抜きといった処理も、実に見事な手際でこなしていた。深那実いわく、渡り歩いた発展途上国によってはネズミやゴキブリだってご馳走だった――との事だ。
 統護は思わず顔をしかめた。
「あれぇ? ひょっとして生焼けだった?」
「違う。魚は美味いけど……。本当にホテルの方は大丈夫なのか?」
 あれだけ派手な爆発事件だ。
 堂桜本家か淡雪、あるいはルシアに連絡を取りたかったが、深那実に禁止されていた。
 今は外部との接触を断って身を隠すべきだと理解していても、もどかしい。
「その質問、何度目よ」
「だってよ」
「言ったでしょ。あの部屋を借りた鈴森あいみさんの行方を警察が追う事はないって。まあ、ほとぼりが冷めるまで『鈴森あいみ』の使用は自粛するけどね。あっちとしても派手にやってしまった以上、警察やマスコミに手を回して事後処理ってか、隠蔽に走るはずだから」
 鈴麗がホテルのセキュリティを無効化した時点で、統護も察しはついていた。
「本当にアンタ、色々なネタを握ってんだな」
「まぁねぇ」
 鈴麗を差し向けた組織は、深那実を亡き者にしたくはあっても、警察に逮捕されたりマスコミに晒されるのだけは、絶対に避けたがっている様子だ。
「しかし、よく助かったよな、俺達」
 思い返すだけでも背筋が凍る、間一髪での脱出劇であった。
 爆弾が着火する寸前、深那実が統護に向かって全力で駆けてきた。右の親指で背後の窓を指しながら。意図を悟った統護は、彼女を受け止めると、そのまま迷わず窓へとダッシュ。
 背中に焼けるような輻射熱を感じながら、気が付けば、鈴麗の後を追う形で地上十五階から飛び降りていた。
 深那実が用意していたフック付きワイヤロープを使い、どうにか隣の立体駐車場に飛び移るのに成功した。超人化している身体とはいえ、地上十五階から落下して無事とは思えなかったので、必死のパフォーマンスであった。
 深那実は平然とした顔で言った。
「そう? 私一人でも脱出できたし、統護くんの身体能力なら余裕だと思っていたけど。実際にかなり余裕だったじゃない。流石に世界最強と呼ばれるだけあるわ」
「いやいや。俺的には全く余裕なんてなかったって。それに、まさか爆弾で部屋ごと吹っ飛ばすまでは想定していなかった。最初に使われなくて命拾いだったな」
「部屋にいるのが私達って確認しないで爆弾なんて使えないって。それに爆弾は置き土産ってか、最後っ屁みたいなもので、鈴麗だって仕留められるとは思ってないわよ」
「マジで?」
「うん。あの手は二度目だから。一回目はもっとギリギリのタイミングの爆破だったんだけどね。私がタックルかまして、二人して結構な火傷負ったのよ。いや~~。違法ルートでの治癒魔術で、皮膚移植なしで治したんだけれど、金かかった金」
「治癒魔術って……おいおい」
 医療行為に魔術を使用するのは、通常ではかなり面倒な法的手続きを要する。現行の法律ではほぼ違法といっていい。理由は、魔術による人体改造と紙一重であるからだ。治癒魔術でしか対処できない極一部の病気にのみ適用が認可されている。
「二度目は着火までのタイムラグを大きくしてきたわね。アイツも懲りたようね」
「むしろ深那実さんに懲りて欲しいよ、俺は」
「統護くんと私、そして先に脱出した鈴麗の映像が出回っていないでしょう? つまりは隠蔽に走っているって証拠よ。それにどの道、弾バラ撒いた時点であのホテルからはトンズラこかなきゃならなかったし、物証ごと綺麗に吹き飛ばしてくれて、むしろラッキー?」
「本当になんて女だ……」
 深那実の笑顔に、統護は頭を抱えた。こんな規格外な女は初めてである。
 二本目の串鯉に齧りつきながら、統護は話題を変えた。
「――で、トンズラは異存ないけれども、どうして学校の裏山に来ているんだよ?」
 現時点で通常の宿をとるのが危険なのは、肌身を以て味わった。
 だからといって、学校の裏山で野宿という選択肢は疑問だ。しかも裏山とはいえ侵入するのは容易ではないはずだ。なんといっても名門【セントイビリアル学園】の管理・セキュリティ下にある区域である。
「ここが一番安全っていうか、仮に戦闘になった場合、周囲を気にしないで戦れるから」
「なるほど。けど、かなり簡単に侵入できたよな?」
 外部からの侵入は容易ではない。
「私は【セントイビリアル学園】のOGだからね。侵入経路の確保にサバイバル用具の備蓄なんてお手の物。っても、寝袋一つしかないのは参ったわね」
「気にしないでくれ。寝袋なんて上等な物は俺の野宿に必要ない」
「へえ?」と、深那実の両目が細まる。
 気に留めずに、統護は別の疑問を口にする。
「侵入成功とはいっても、いずれは見つかるんじゃないか? 学校の警備態勢ってそんなに甘くないはずだ」
「平気平気。言ったでしょOGだって。現職教諭の弱みはしっかり握っているから。加えて、警備態勢も把握しているわ。なんだかんだで生徒を過剰に監視できないってんで、監視システムはかなり甘い。まあ、楽勝で校舎に入れるわね」
「校舎に入るつもりなのか!?」
「もちろん」
 悪戯っ子のような深那実の含み笑顔に、統護は嫌な予感を覚えた。

         

 真っ暗な中、統護は熱いシャワーで肌を流していた。
 照明は使用できない。照明を点けるのには【DVIS】が必要であるが、統護は無所持だ。窓ガラスから灯りが漏れるので、たとえ照明が使えてても、使う気分でもなかったが。用心の為に持ってきた懐中電灯も消してある。
 運動部棟にある男子用シャワー室を拝借していた。
 公衆トイレと同じ間取りで、横長の一室を敷板で七つに分けている。各個室はスイングドアで胸から足下だけを隠せ、施錠はできない。
 深那実の手引きで、あっさりと運動部棟に侵入できた。
 鉄扉のシリンダー錠を、深那実は二分で無効化(ピッキング)してしまった。
 鮮やか過ぎるその手際を思い出す。
(ジャーナリストってよりも、完全にスパイじゃねえか)
 彼女ならば特殊工作員としても充分にやっていけるだろう。ただし技能的・精神的な話であって性格的には無理に決まっている。
 シャワーの熱で身体が火照る。
 寝る前に一日の汚れを落とせるのは、確かにありがたい。
 深那実は女子棟のシャワー室を使っている。一人でも裏山に帰れるが、解錠した扉を再施錠するのに、彼女のピッキング技能が必要になる。

 暗かったシャワー室が灯りで照らされた。

 巡回者に発見されてしまった!? 統護は身構える。
 そして――脱力する。
 入ってきたのは、裸身にバスタオルを巻いている深那実であった。伊達メガネは外しており、解かれている髪の毛はしっとりと濡れている。
 彼女が手にしているのは、一般人用の簡易【DVIS】だ。
「おいおい。なんでこっちに来たんだよ?」
 小声で訊く統護に、深那実がニンマリと頬を釣り上げる。獲物を狙う獣の目だ。
「いやぁ~~。夕べは失敗に終わったけれど、これなら統護くんを襲えるかもってね」
 はらり、とバスタオルが落ちる。
 ニホン人として平均的な骨格でスタイル抜群とはいえなくとも、それなりにメリハリがある、健康的な肢体が惜しげもなく晒される。深那実自身、恥じらいなく誇らしげだ。
 統護は慌てて視線を逸らす。
 それが致命的な隙となった。
 深那実はスイングドアに手を掛ける。統護が縁に手を掛ける前に、引き開けてしまった。
「じゃ、お邪魔しまぁ~~す♡」
「おいおい。マジか。ってか勘弁してくれ」
「超マジよ。さあ遠慮しないでいいから、合体しましょう!」
「合体いうな!」
 貞操の危機に、統護は両手で股間を覆い隠す。
 しかし、すでにナニが反応してしまっており、内股の前屈みにならざるを得なかった。
 助けも呼べない。正真正銘の絶体絶命――
 くくくくっ! と深那実の勝ち誇った含み笑いが、シャワー室にこだました。

 

 

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 本作品は、暴力・虐め・性犯罪・殺人・不正行為・不義不貞・未成年の喫煙と飲酒といった反社会的行為、および非人道的、非倫理思想を推奨するものではありません。また、本作品に登場する人物・団体などは現実とは無関係のフィクションです。