アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第3部(第20話)

第三章  姉の想い、妹の気持ち 2 ―虹條サヤカ―

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         2

 二日目の武道館ライヴ。
 まだ開演まで充分に時間がある。
 初日を快心の出来で乗り切れたせいか、昨日に比べてユリにも余裕が窺えた。
 今は控え室での昼食タイムだ。
 この一時間休憩が終われば、午後のリハーサルと調整が始まる。
 ユリは仕出しの幕の内弁当を美味しそうに食べている。
 見守るオルタナティヴは、コンビニエンスストアから調達してもらった揚げパンとコーヒー牛乳で食事を済ませていた。
 昨日と異なるのは、ユリの様子だけではなく、オルタナティヴの服装もである。
 瞬時に脱げるように縫製に細工をしてあった黒の背広は、一日で元に組み合わせる事は困難で、かつ袖口の修繕もあるので、今はリフォーム業者に出していた。よって彼女は、黒のセーラー服タイプの女子高生姿をしている。さらには愛用の黒マントも羽織っていた。
 襲撃があったので、オルタナティヴがフォーマルな衣装ではなく、私的な女子高生的な格好をしていても、誰も咎めない。
「……今日も襲ってくるのかしら?」
 弁当箱を空にしたユリが、落ち着いた声色で訊いてきた。
 オルタナティヴは慰めや励ましではなく、率直な見解と意見を述べる。
「確率は低いわ。警備態勢を強化した上に実際に襲撃があった事で、現場の危機感と緊張感が昨日とは段違いになっている。あの女兇手とはいえ、容易に潜入できるとは思えないし、昨日のダメージもある」
「じゃあ、違う刺客は?」
「どうかしらね? この厳戒態勢をくぐり抜けられる者が、そう何人も短期間につぎ込めるとは、ちょっと考えがたいわね」
「そう……ね」
 凄腕の暗殺者を仕向ける際、他の暗殺者との共闘は極めて希なケースといえる。
 一人で目的を果たせないと判断された、とプライドを傷付けるおそれ――よりも、二名以上の刺客を向けると「互いに寝首をかかれて、口封じされるのでは?」という心理状況を招く。
 よって二名以上の刺客を向けるとしても、片方が完全に離脱してから、になる。
 そういった面も考慮して、オルタナティヴはあえて女兇手を逃した。
 あの場で無理に斃しにいき、斃せたとしても、任務期間から次の刺客を招くだけである。
 差し向けた真犯人については、すでに昨日の物証を提出して、独自の情報網に調査を依頼している。結論が出るには、少々の時間が必要だ。
 オルタナティヴは話題を変える。
「それよりも、今は例のストーカーについて考えましょうか」
 その一言でユリの顔色が、青白くなった。
 オルタナティヴにとっては、プロの暗殺者よりも余程手強い相手である。
 ファンからの郵便物は、マネージャーが厳重にチェックしている。危険物は郵便局の検査システムで弾かれるのだ。
 にも関わらず――

 会場入りした後のユリのハンドバッグに、ストーカーからの脅迫状が紛れ込んでいた。

 

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 昼休みになった。
 統護は指定した体育館裏で、晄を待っている。
 普段、一緒に弁当を食べている史基には「学食に行ってくる」と伝えてあった。実際は固形食品を一箱、胃の中に放り込んだだけである。
 優季の様子も気がかりではあったが、朝のSHR以降、特におかしな風には見えない。昼休みは、いつもの女子グループと弁当を食べ始めていた。
(とりあえず優季よりも、こっちを先にしないとな)
 人の気配がした。
 小さな足音も近づいてくる。
 統護は寄りかかっていた体育館の漆喰塗りの外壁から背中を浮かせた。
 建物の角を曲がって、姿を見せたのは――晄である。
「こ、こ、こ、こ、」
 コケッッコーと鶏のように鳴きそうな声を、彼女は引き攣った唇から絞り出した。
「こ、こンにちワ」
 ガチガチだ。完全に挙動不審になっている。顔が真っ赤で汗が凄い。
 統護は若干引きながらも、笑顔を心掛ける。
「いや。そんなに緊張しないでくれ」
「わ、私に何の御用でしょうか?」
「うん。確かに用はあるんだけど、なんつーか、宇多宵さんって対人関係が苦手?」
 統護にも身に覚えがある。自分も『ぼっち』として、基本的に他人とのコミュニケーションを避けていた。いや、今だって昔と大差ない。気の置ける友人以外とは、そっと距離を置こうとしてしまう。
 晄を見て、自分と同じ匂いを強烈に感じ取っていた。
 そう。晄は統護よりも格上の『ぼっち』だ。
「やっぱり分かる?」
「そりゃ、朝方あんな態度を見せられたらな」
「だったらどうして堂桜くんは私を呼び出したりしたの? 私が『ぼっち』だって分かっているんでしょう。どうして、なんで放って置いてくれないの?」
 恨みがましい視線を向けられ、統護は怯む。
 同じ『ぼっち』として、その気持ちは痛いほど理解できる。
 しかし、同時に『ぼっち』でなくなった時の嬉しさも知っている。だからその喜びを知って欲しい――というのが理由のひとつ。そして理由はふたつあった。
 もうひとつの理由を、統護は口にする。

「……宇多宵さんの歌、世界に届けたいなって思ってさ」

 晄が大きく息を飲んだ。
 彼女をこの場に呼び込む脅し文句が「ストリート・ライヴを知っている」であった。
「世界にって……」
 気弱な半笑いを浮かべた晄に、統護は勢い込む。
「俺さ、昨日の宇多宵さんのステージ、偶然にも居合わせていたんだ。それで感動したっていうか、あのままで終わるの勿体ないって思ったんだ」
 晄は顔から表情を消すと、首を左右に振った。
「私の歌は趣味だから。ありがとうね。感動したって言ってくれて。そうやって聴いてくれた人が、少しでも何かを感じてくれたのなら、私はそれで――」
「満足ってのは嘘だな」
 統護は晄の台詞を先回りして、断言する。
 晄はカッとなり言い返した。
「分かったような事を、したり顔で言わないで!」
 その反応は深那実の予想通りであり、また激昂の激しさが晄の本心の裏返しだと、統護は感じ取った。
 相手が感情的になったので、統護は努めて冷静さを演出する。
「調べたのは俺じゃないんだけどさ。宇多宵さん、ストリート・ライヴだけじゃなくてネットに配信しているんだろ? それで何度かスカウトも来たって話じゃないか」
 晄は視線を足下に落とす。
「それって、前の話っていうか終わった話だから」
「じゃあ、どうして未だにストリートで歌っているんだよ」
 趣味だから、と晄は小さく呟いた。
 それはもはや統護への答えではなく、自分に言い聞かせているに過ぎなかった。
 統護は黙って晄の目を見つめる。
 その視線に、晄はポツリ、ポツリと独白し始めた。

 以前は、歌手を夢見ていた。

 オーディションにも参加した。しかし対人恐怖症が原因で、人前ではまともに歌えなかった。
 デモ・テープを作成して、幾つものレコード会社に送付した。何社からか色よい返事を貰えたが、面接で断られるのが大半であった。
 同時に、ネット配信した歌から、スカウトの声も掛かっていた。
 人前では歌えないという晄の欠点を逆手にとって、人前では歌わない謎の歌手として売り出そうと提案が、何社からか持ち上がった。晄の対人恐怖症を考慮して、歌以外の負担は極力なくす方向でサポートすると。
「……でもね。それには家族が猛反対してね」
 宇多宵家は魔術の名門であり、代々警察関係に優秀な【ソーサラー】を輩出している。
 仮に晄が【ソーサラー】ではなく、歌手としての道を歩むのならば、歌以外を他人のサポートに丸投げする様な生き方は、絶対に赦さないと云った。
 その話を聞き、統護は頬を緩める。
「いい家族だな。宇多宵さんの将来をちゃんと考えている」
 もしも晄が人前で歌えない欠点を克服せずに、まわりの庇護下で一人歌うだけで歌手として世に出たとして――末路は『歌しか歌えない』社会不適応者であり、周囲は彼女の歌に群がり褒め称えるだけの連中になっているだろう。
 晄は誇らしげに言った。
「うん。家族仲は凄くいいんだ! っていうか、私がまともに話せるのって家族だけだし」
「でも今は俺と話せているだろ」
「あ。そういえば……」
 晄は探るような視線で、統護の顔を見つめる。
「やっぱりさ。みんなが言っている通りに、堂桜くんって凄く変わったよね」
「それは認めるよ」
 変わったどころではなく、今の統護はかつての堂桜統護とは別人である。
 この【イグニアス】世界においての、本来いたはずであった堂桜統護。
 淡雪の――本当の兄。
 対人関係が苦手ゆえの『ぼっち』である統護とは異なり、孤高で他人を寄せつけず、そして何処か寂しげであったという――堂桜一族の正当後継者にして【魔導機術】の若き天才。
 その天才魔術師が消えて、今の統護が元の世界から入れ替わりで転生してきた。
 統護は自虐気味に言う。
「今の俺は、魔術を失った劣等生だ。堂桜一族次期当主の座も妹の、」
「ううん。そうじゃなくて」
「え?」
「堂桜くんが《デヴァイスクラッシャー》になった云々は、割とみんな気にしなくなっているって思う。実際、魔術的には劣等生になっても、前と変わらずに強いしね。ううん、ひょっとしたら、前よりも凄くなってるかも」
「強い……か」
 晄が苦笑する。
「ほら、堂桜くんの戦闘データが魔術師界では、ちょっとした話題になっているし」
「あ。その事……ね。ハハ」
 魔術が使えなくなった堂桜財閥本家の嫡男は、やはり堂桜にとって相当に不都合だった。
 従って魔術を失っても魔術戦闘では強いまま――と、世間体の為にアピールするべしと一族上層部は判断したのである。それ故のステルスマーケティングというよりも、ダイレクトマーケティングめいた、統護の宣伝行為だ。データの改竄および放流を担っているのは、統護の秘密を知り、統護の秘密を隠す様にデータを改竄可能なルシアである。外部への秘密の漏洩には細心の注意が必要であるが、統護の周辺にはルシアが飛ばしている撮影用の小型ドローンが常時マークしている。昨日の魔術戦闘もすでに編集されてネットにアップされていた。
 統護は薄ら笑いになる。
「俺の成績不振と魔術が使えない事で、一族とグループに凄く迷惑かけているのは理解しているけど、正直いって勘弁して欲しいのが本音だよ。マジでどうにかして欲しい」
「そうなんだ」
「お前は俺が魔術戦闘の戦績をドヤ顔で自慢している、とか思っていた?」
「え、ええと……」
 魔術が使えなくなった時点で、本来ならば普通科に移籍するべきだ。しかし堂桜本家の御曹司という立場がそれを許してくれない。
 それに戦闘系魔術師ソーサラーの世間的なイメージは決して良好ではないのだ。一般人が私闘――つまり喧嘩をしたのならば、すぐに通報されて現行犯逮捕だ。けれども戦闘系魔術師ソーサラーの魔術戦闘は例外的に、当事者同士の示談が前提とされて、基本的に警察は介入しない。介入するのは魔術犯罪と判断されてからである。
 そして一般人は魔術戦闘に興味がない。戦闘系魔術師ソーサラーの存在が【魔導機術】の底上げと発展に貢献しているとはいえ、【ソーサラー】同士の私闘は、社会的には迷惑以外の何物でもなかった。
 よって、統護の社会的評価は――
「俺の世間一般での評価ってか、魔術師界以外からの噂って、最悪だろ」
 成績劣悪の劣等生でそれを誤魔化す様に喧嘩自慢をアピールする大金持ちのDQN坊ちゃん。
 要約すると、そういった悪評が広まっている。劣等生になっても只者ではない、と一目置かれているのは、あくまで魔術師界と戦闘系魔術師ソーサラーに限っての話だ。
「自業自得とはいえ、俺、穴があったら入りたい心境だよ」
 魔導科でぶっちぎりの劣等生だが、当の魔導科よりも魔導科以外の生徒からの視線が痛い。
 もの凄い蔑まされた視線を浴びまくっているこの頃だ。
 統護はガックリと肩を落とす。
 晄がクスリと笑んだ。微笑ましい顔だ。
「やっぱり堂桜くんって前から変わった。劣等生とか天才だとかとは、全然違うところで」
「それってどういう意味だ?」
 猛烈に嫌な予感がした。
 晄が遠慮がちに言う。
「前の堂桜くんは女を寄せつけない孤高の狼って雰囲気だったけれど、最近の堂桜くんって、ハーレム作って女の子達の尻に敷かれて、ご機嫌を伺っているチワワみたいだって」
「……」
「あ、ゴメンね。ひょっとして気を悪くした?」
「いや平気だから。少しも傷付いたりはしていないから、心配しないでくれ」
 ザックリと傷付いていた。孤高の狼からチワワに格下げ……か。
「でもハーレムって程じゃないだろ? ちょっとオーバーじゃないか?」
「休学中の通い妻やっていた下級生のカノジョに、幼馴染みの恋人に、委員長とも怪しげだし、それに美人の専属メイドさんがいて、実はお姫様だったアリーシアさんとも噂によると……」
 指折り数えて言う晄を、統護は止めた。
 言いがかりではなく全て正解なのが、自分でもアレだと呆れてしまう。
「分かった。もういいから。俺が全面的に悪かった」
 そして気が付く。喧嘩(魔術戦闘)のDQNアピール以外にも、こんな要素で世間から白眼視されていたのか。謎が一つ解けた。どうにもできないが。
「だから……、私も脅されて堂桜くんのハーレムに入れられるのかなって」
「誤解だ!!」
「う、うん。それは分かったけれど」
「そうか。それならいい」
「でも、不思議。どうして私はこうして堂桜くんと話せるんだろう」
 それは俺も『ぼっち』気質だから――とは口に出せない。
 微笑みながら晄は言った。
「やっぱり堂桜くんって変わったというか、変わっているよ」
「一応、褒め言葉として受け取っておく」
 晄の視線が熱を帯びている。
 統護は咳払いして誤魔化した。
「それで話を歌に戻すけど」
 その言葉に晄は居住まいを正す。
「趣味で……いいんだよ。もう失敗したりスカウトしてくれた人達に迷惑かけたくないし。だから私は将来の目標は【ソーサラー】として警察官になる事。歌は学生時代だけの趣味」
「その答えが、あのストリート・ライヴか」
「私に気を遣って、影からこっそり聴いてくれるファンがいる。ネットで応援してくれているファンがいる。私の歌で何かを感じてくれている。それで充分だから」
「本当に?」
「そりゃあ、本音をいえば私だって榊乃原ユリさんみたいになりたいよ……。裏路地の隅じゃなくて、武道館でステージがしたい。世界中に歌を届けたい。だけど私には無理な夢物語。叶わない夢だったら、願わない方が幸せだから……」
 微かに震える声。そう言って俯いた晄に、統護は何も言えなくなった。
 悪い、深那実さん。
 今の彼女には、これ以上は踏み込めないよ。

 

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 優季はイヤホンマイク型【AMP】を、耳から外した。
 隣の淡雪に話し掛ける。
「なんか統護は統護で、厄介事に関わっているみたいだね」
「そうですわね」
 やはり淡雪は心ここに在らずといった態である。
 二人は今、高等部校舎の屋上にいた。
 優季は統護が一人で教室から出たのを見計らい、友人との弁当タイムを切り上げて、約束していた淡雪と合流したのだ。
 当面、外泊すると連絡してきた統護に探りを入れる為の盗聴――だったのだが、統護の盗聴が半ば趣味と化している淡雪は、乗り気ではなかった。
 正直いって、統護についてはあまり心配していない。彼の事だから、それなりの理由があるに決まっている。なにより信じている。
 本当に心配なのは――淡雪の方であった。
 この盗聴も実のところ、淡雪の反応を確かめたいというのが本当の目的だ。
 昨日、オルタナティヴと名乗った『何でも屋』と出くわしてから、様子がおかしい。
 淡雪が虚ろな声で言った。
「お兄様が気に掛けている宇多宵さんの歌とは、それ程のものなのでしょうか」
「それはね……」
 優季も再転校した後に、気が付いて驚いたものだ。
 まさか《ザ・ステルス》と渾名されている『ぼっち』が――『彼女』であったなんて。
 統護も間違いなく気が付いているはずだ。
 優季が有している『もう一人の』比良栄優季の記憶にある、統護の元の世界。
 日本どころかアメリカ、ヨーロッパを股に掛けてミリオンセラーの大ヒットを連発する稀代の歌姫。虹條サヤカという芸名の彼女が、まさかこの【イグニアス】世界では無名のストリート・シンガーだったなんて。
 記憶にある虹條サヤカの歌は、まだデビュー間もない頃であったが、それでも圧倒的な才能を発露していた。『もう一人の』自分もファンとしてCDを購入した。
「きっとメジャーデビューすれば、大成功するはずだよ」
 虹條サヤカ――本名・宇多宵晄だけではなく、気が付いたのは、もう一点。
 いないのだ。 統護の元の世界には、『ゆりにゃん』こと榊乃原ユリなんて歌手は存在していない……

 

 

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 本作品は、暴力・虐め・性犯罪・殺人・不正行為・不義不貞・未成年の喫煙と飲酒といった反社会的行為、および非人道的、非倫理思想を推奨するものではありません。また、本作品に登場する人物・団体などは現実とは無関係のフィクションです。