アニメを斬る!

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魔導世界の不適合者 ~魔術学科の劣等生~ 第3部(第02話)

第一章  ストリート・ステージ 1 ―デート―

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         1

 どうしてこうなった……

 少年――堂桜どうおう統護とうごは待ち合わせに指定した喫茶店の前で自問自答していた。
 答えは一向に出ない。
 統護は高校二年生である。
 外見的には極めてスタンダードな少年だ。体格は平均的な中肉中背。日に焼けて赤い部分があるが、染めてはいない黒髪。髪型もいたって普通。顔立ちは凛々しく整っているのだが、見る者に与える印象は不思議と凡庸そのもので一致している。
 見た目は平凡。どこにでもいる高校生。
 ただし幾つかの点において、統護は一般的な高校生とは異なっている。まずは所属している学校。彼が在籍しているのは名門【セントイビリアル学園】高等部の魔導科なのだ。
 つまり統護は、国家資格認定を必要とする職業魔術師の卵である。
 そして出自も極めて特殊であった。
 彼の姓――『堂桜』が、その特殊性を何よりも雄弁に主張している。

「……お待たせしました、お兄様」

 鈴の音のような声。
 振り向くと、ニホン人形と見紛うばかりの、上品な少女が小走りで駆け寄ってきた。
 日に焼けてグラデーションが掛かっている統護の髪とは違い、彼女の絹糸のような長い黒髪は一点の曇りもない。
 初滑り前のゲレンデの雪面のような美しい白い肌は、微かな荒れや染みもない。その透き通るような白い肌も、頬の部分だけは鮮やかに桜めいていた。嬉しさを隠しきれない、控えめな笑顔が眩しい。
 有り体に評して、超が頭につく美少女である。
「御免なさい。待たせましたね」
「い、いや、そんなに待っていないから」
 統護は駆け寄ってきた少女へ、緊張を隠せない笑みを返す。
 お兄様、と少女が統護を呼んだように、彼女――堂桜どうおう淡雪あわゆきは統護の妹である。
 同じ堂桜の姓を持つ、世界屈指の大財閥――堂桜一族の直系だ。
 ただし実の兄妹でありながら、血は分けていないという、極めて特殊な間柄であった。
 淡雪は【セントイビリアル学園】中等部三年に在籍する十四歳。
 彼女は白いワンピースドレスと麦わら帽子。そして赤いショルダーバッグと、真夏本番を前にして涼しげなチョイスでまとめていた。
 対して、統護の衣服はジーンズにポロシャツといった、変哲のないコーディネートである。
「似合うな、その服」
 台本通りの台詞を口にする。
 その褒め言葉に、淡雪は軽く驚いたような仕草を見せた。
「どうしたのですか? 今日のお兄様」
「別に。いつも通りだろ」

 さあ、腹をくくれ。ついにミッション・スタートだ。

 統護は内心で自分に言い聞かせて鼓舞する。本当は逃げ出したかったが。
 淡雪が弾むような声で言った。
「そうでしょうか。お屋敷から一緒ではなく、わざわざ千代田区まで……それもお互いに初めての店での待ち合わせ。ふふふ。お兄様も色々と勉強なさいましたのね」
「? そ、そうか?」
 上機嫌の淡雪に、統護は調子を合わせる。意味不明だ。兄妹で同じ家に住んでいるのだから、一緒に出かけた方が効率的なのは明白で、余所での待ち合わせに対して淡雪は怒っているだろう、と覚悟の上だったが、不思議と好評である。理解できないが結果オーライだ。
 今日は兄妹水入らずでのデートであった。
 つい先日に起こった『二人目のデヴァイスクラッシャー』事件で、淡雪に大きな貸しを作ってしまった為、その返済と感謝を兼ねて、こうして二人でお出かけと相成っている。
 淡雪は、とある方向を見上げた。
 統護も彼女の視線を追う。
 二人の視線の先には――ニホン武道館の屋根が見える。
 この武道館は、その名の通りに武道・格闘技系のイベントだけではなく、ライヴやコンサートの会場としても、ニホン芸能界のメッカの一つなのだ。
 本日、このニホン武道館にて、目下ブレイク中の超人気アーティスト、榊乃原ユリの帰国第一弾ライヴが行われる。
 二人はそのライヴを観に行く予定であった。
「よし! まだ開演まで時間があるから、とりあえず店内でお茶でもしよう」
「そうですね。本当に今日のお兄様は、なんだか別人みたい」
「そういう意味ありげな事は言うなよ」
 統護は苦笑した。

 事実として、統護はこの世界における『本来の堂桜統護』とは別人であった。

 端的にいえば、統護は異世界人であり、この【イグニアス】と呼ばれている世界の住人ではないのだ。元の世界から『とある事故』によって、統護は【イグニアス】に転生していた。
 ゆえに淡雪とは、定義としては兄妹であるが、血を分けた同族ではないのだ。
 淡雪が拗ねたように言う。
「……とはいっても、お兄様が異世界人であるという秘密を知るのは、今や私だけではなくなっていますし。二人だけの秘密だった頃が少し懐かしいです」
「まぁな」
 転生した当初は、統護と淡雪だけの秘密であった。だが、過日に巻き込まれた二つの事件によって、少なくとも他三名に統護の秘密を知られていた。
「幸いにして全員、秘密を守ってくれているけど、今後はもっと気をつけないとな」
「そうですね。特にユピテルに関しては、本当に運が良かっただけですし」
 おおよその秘密を知る一人――メイド少女のルシア・A・吹雪野ふぶきのによって撮影された超小型ドローンによるユピテル戦の映像が、幸いにもユピテルの黙秘をフォローするカタチになっている。ルシアが拡散させている統護の戦闘データは、ユピテルがニホン当局の尋問に耐えて黙っている統護の秘密を、巧く誤魔化して加工した映像なのだ。
 二人は店内に入った。
 周囲の耳目を考慮にいれて、その話題は打ち切る。
 高級な喫茶店ではなく、地元の大学生あたりが気軽に立ち寄るといった感の、奇抜さを排除した洋風の内装とインテリアであった。高級感はないが、清潔感に溢れている。
(よし。予定の席は空いているな)
 凹型の間取りになっているのは、事前調査済みだ。
 上からみて右上端のテーブルへと淡雪をエスコートする。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」
 注文をとりにきたウェイトレスに、統護は危うく噴き出しそうになった。
 淡雪は気が付いていないのか、メニュー表と睨めっこを始めた。
(な、な、な、なんでアンが!?)
 彼女は統護のリアクションなど何処吹く風、といった態で、あくまでウェイトレスとして振る舞っている。
 アンというのはコードネームであり、本名ではない。
 先日の事件で既知の仲となっていた特殊工作員の【ソーサラー】であった。
 堂桜一族の非公式特殊戦闘部隊【ブラッディ・キャット】の隊員だ。二十代以下の若い女性のみで構成されている組織で、率いている長はルシアある。
(ひょっとしてルシアの差し金か?)
 統護は店内を素早く見回す。
 メイとクウと名乗っている他の二名もいた。両名ともアンと同じくウェイトレスとして潜入していた。
 三人揃って、なかなかの美形であるはずだが、不思議と印象を殺した容姿をしている。統護が気が付けたのは、彼女達が進んで存在をアピールしたからに過ぎない。
 統護の視線に、三名とも素早いウィンクで応えた。
 ルシアからのバックアップ要員だと理解した統護は、感謝と共に心強さを覚える。
「すまん! ちょっとトイレに行ってくる」
「え。ええ。どうぞ」
「ちなみに今朝から腹の調子がイマイチだと付け加えておく」
「……」
 統護はそそくさと席を離れた。
 作戦通りである。
 これで十分、いや十五分は時間を稼げるはずだ。
 メイの案内で、店の裏口から裏通りへと脱出する。店長、他のスタッフも了承していた。
 裏通りから表通りへと回り込み――再び入口の前に立つ。
 腕時計で時間を確認しようと……

「――あ、統護ぉ! ボクも今来たところだよ」

 明るい声色が耳に飛び込んでくる。
 後ろでまとめている亜麻色のセミロングを微かに揺らせた、愛嬌のある顔立ちの少女が軽やかに駆け寄ってきた。
 やや垂れ目気味のつぶらな瞳が、嬉しそうに潤んでいる。
 待ち合わせしていた彼女――比良栄ひらさか優季ゆうきは、ベージュ色を基調としたショートパンツルックに薄手のパーカーという、快活そうな出で立ちであった。
 彼女はつい最近、統護のクラスに編入してきた同級生だ。
 どうにか笑顔を作る統護。
「お、おう! 俺も丁度来たばかりだから!!」
 統護は焦った。ほぼ予定通りの待ち合わせとはいえ、ここまでギリギリになるとは。
 やはり綱渡りなミッションだ。
「さあ! 約束通りに今日はボクと幼馴染み水入らずで、デートだよ」
「任せとけ。デートプランはバッチリだ」
 親しげに腕を絡めてくる優季に、統護は力強く請け負う。
 本音では、このまま逃げ出したかった。

 

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 すぐに武道館へ向かおうとした優季を、統護は喫茶店内へと押し込んだ。
 小腹が空いているので軽食を摂ろうと提案した。
 凹型の間取りの左上端のテーブルへと、ウェイトレス――に変装しているクウが案内してくれた。二人が店に入った場面は、アンが淡雪のブラインドになってくれていた。
(この調子ならいけるぞ。プランは完璧なんだよな、ルシア……ッ!!)
 席についた統護は、確かな手応えに自信を持ち始める。
「ああっ。お客様、申し訳ございません」
 注文を取りにきたメイが、統護のズボンにお冷やを溢してしまった。
 もちろん演技である。
 統護は「スマン。ちょっと席を外すから」と、メイと一緒にカウンター奥へと向かう。
 優季から見て死角に入ったのを確認すると、統護は早足で淡雪の席へと戻った。
 一呼吸置いて、笑顔を心掛ける。スマイル、スマイル。
「お待たせ。悪い悪い。やっぱ腹の調子がさぁ」
「大丈夫ですか? そんなに酷いのならば無理をなさらなくても」
「平気平気。せっかくの二人きりなんだからな」
 これといった話題はなかったが、統護と淡雪は穏やかな時間を過ごしていた。
 淡雪は美味しそうに苺ショートケーキを啄んでいる。
 微笑みを維持するのに努力を要している統護は、……気が気ではなかった。
(そろそろ優季の方が限界だ)
 あまり放置すると怪しまれるだろう。
 コーヒーのおかわりを運んできたクウが、統護の左手にコーヒーをかけてしまった。
「熱ぃ、熱ぃ!」
「ご、御免なさい。急いで冷やさなければ!」
 おしぼりを統護の手の平に当てて、席を立つように促す。統護も腰を浮かせた。
 もちろん演技である。
「お兄様! 待って下さい。私の魔術ですぐに冷やします」
「え」
「それは予定外ですので、お客様、早くこちらへ」
 統護とクウは逃げるように――というか、実際に逃げてカウンター側へと連れだった。
 小声で囁き合う。
「おい。ちょっとヤバかったぞ」
「迂闊でした。しかし今は時間がありません」
 統護は駆け足で優季の席へと戻る。
 クリームパスタを食べていた優季は、怪訝そうに顔をしかめた。
「どうしたの? なんか様子がおかしいけれど」
「き、き、緊張しちゃって!」
「なんで?」
「いやぁ。優季があまりにも可愛いから。それに二人きりで、デートだしな!」
 イントネーションが滅茶苦茶であったが、統護はどうにか取り繕う。
 優季は「褒めすぎだよぉ」と、頬を両手で挟んで、嬉しそうに顔を真っ赤にした。
 統護の分の注文も優季が済ませており、ミニカレーライスセットだった。カレーライスは確かに好物であったが、最近カレーライスにいい思い出がなかったので少し複雑だ。
 話題は優季の方から振ってくる。
 全く頭に入ってこない状態であったが、統護はひたすら「うん」「うん」と聞いているとアピールに専念した。女性との会話は、意志のキャッチボールではなく、ひたすら相手を肯定するのが肝要だ、否定は厳禁だ、とルシアにレクチャーされていた。
 気が気ではない。そろそろ淡雪を一人にしておくのは、限界だろう。
「悪い!! ちょっとトイレ!」
 視界の端に収めていたメイから移動の合図を受け、統護はそそくさと席を離脱する。
 大丈夫だ上手くいっている、と懸命に自分に言い聞かせながら。

 淡雪の席に戻ると――肝心の淡雪がいない。

 統護はギクリとなる。まさか作戦がバレて帰ってしまった!?
 焦躁を抑えながら店内を見回す。
 クウに連れられた淡雪が席に戻ってきた。どうやら統護の様子を窺いにキッチンまで行っていた模様であった。鉢合わせせずに済み、統護は胸を撫で下ろした。
(あ、あ、危なかったぜ)
 これ以上、喫茶店で時間を潰すのは危険だと判断する。
 統護は会計を済ませて、淡雪と共に店を出た。
 当然、まだ店内には優季が残されている。このまま置いてきぼりにはできない。
 次は彼女と会計をして、淡雪とのブッキングを避けた上で店外脱出させなければならない。
 今日は快晴であるが、統護の心境は台風であった。

「うっ! 持病の癪が」

 出口付近で待機していた着物姿の老婆が、淡雪の前でしゃがみ込んだ。
 淡雪は「大丈夫ですか?」と、老婆の背中をさする。顔を上げて統護を見た。
「お兄様。急いでこのご婦人の介抱を――」

「ひったくりよぉ!!」

 二車線の車道を挟んだ反対側の歩道で、若い女性が悲鳴じみた声を張り上げた。
 ニット帽にサングラス、そしてマスクで口元を隠した、ツナギ姿の屈強な大男が女性用ハンドバッグを手に、猛然と走り去ろうとしている。
「淡雪! そのご老人はお前に任せる」
 返事を待たずに、統護はひったくり犯と思われる男を追いかけた。
 もちろん全て演技である。
 被害者役、逃走犯役、周囲の通行人に至るまで――全部仕込んでいた。道を往来する無関係の一般人には、騒ぎにならないように「これは芝居の練習です」と直前通知してある。
 病人役の老婆も、実は特殊メイクで老人に扮している若い役者であった。
 老婆は淡雪を近くの公園まで誘導するのが役割だ。
 交差点の死角まで回り込んだ統護は、全速力で喫茶店の裏口へと蜻蛉返りした。
 統護は元の世界から、この異世界【イグニアス】に転生する際、身体を構成する全ての要素が再構築されていた。異世界人の統護がこの世界に強引にアジャストした結果なのか、超人的な身体能力を得ているのだ。
 今の統護の身体能力ならば、短距離走の速度でフルマラソンを行ったところで、息が切れるという事はない。肉体的な疲労も感じなければ、汗もかかない。
 だが――精神的な疲れから、大きく呼吸を乱し、全身から汗を噴き出していた。
 正直にいうと、この辺で逃げ出したい。
 飛び込むように店内に戻ると、呼吸を整えながら優季が待っている席へと早足で急ぐ。
「よう。待たせたな」
 デザートのチョコレートパフェを食べていた優季に、微かに震える声で言った。
 汗だくの統護を目にした優季は、心配そうに表情を曇らせる。
「随分と長いトイレだった――って、凄い汗だよ! ひょっとしてお腹の具合悪いの?」
「へ、平気だから。問題ないぜ」
 額に浮かぶ大量の汗を袖で拭って、統護はヒクヒクと口角を釣り上げた。笑顔のつもりだ。
 プレッシャーとストレスで本当に腹を下しそうである。
 統護は優季を促し、会計を済ませると店外へ出た。
 段取り通りに淡雪の姿はない。上手く近くの公園へと退避させる事に成功したようだ。
 そっと一息つく。
 第一段階は無事にクリアした。
(いけるぜ! この調子で、どうにかやり過ごすんだ……ッ!!)

 

 

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